冷凍技士制度設立の経緯
昭和31年6月13日 | 在京理事会にて決定 (制度設立) |
昭和33年7月16日 | 定例常務理事会にて冷凍技術士を冷凍技士に替えることに決定 |
昭和37年5月25日 | 定例常務理事会にて冷凍技士を冷凍空調技士に替えることに決定 |
冷凍空調技士設立の経緯
(冷凍誌 第31巻・第345号 昭和31年7月号より)
昭和30年7月28日神奈川県箱根観光会館で行われた全国高圧ガス作業主任者大会で「冷凍設備施設業者に特定の試験制度を適用して、 資格を得た技術者を置く法律を設け保安を期すること」と決議し、その実現方を官庁に要請することを協議決定した。 通商産業省においては、この議決の趣旨を酌んで一応は機器製造業者及び設備業者の資格を検定して、 その登録の実施を考慮した模様であるが、今年4月1日付け(昭和31年4月)で公布された高圧ガス取締法の一部を改正する法律では 遺憾ながら実現されるには至らなかった。
高圧ガス作業主任者大会で上記の様な決議が行われるに至った根拠は、高圧ガス取締法においては、一定規模以上の冷凍設備を取扱う (法では冷凍設備を使用してする高圧ガスの製造の作業に関するといっている)冷凍機械作業主任者は、国家または都道府県がする 作業主任者試験を受け、作業主任者免状を有するものでなければならないとしている。然るにこの作業主任者が現に取扱っている 機器並びに設備を製作または据え付ける技術者には何等かの資格の制限がないのは、片手落ちで遺憾とするところで、 寧ろ機器製造の技術者ならびらに設備担当の技術者の試験制度を確立して、その資格を定め、かくして登録された優秀な 技術者をして完備した冷凍設備を造らせ、これを実際に取扱う有資格の作業責任者に手渡すならば、不安のない運転が行われ災害を防ぐ ことが出来るというのである。
今次の高圧ガス取締法の改定に際して、折角の作業主任者大会の意向に反して、この問題が通産省当局によって採択されなかつたことは、 何らかの重要な理由があるものと推量されるが、甚だ遺憾なことである。 この問題は将来採択されるものかどうかも予測されず、たとえ取り上げられても数年後の法律改正の時期まで待たなければならない。 この状況下でこの問題を放任することは、各般の情勢から見て忍び得ないことである。 よつて日本冷凍協会はここにこの冷凍技術士規定を制定して自主的に登録を行い、以って昨年の作業主任者大会の要望に応えると共に、 冷凍機器製造並びに設備の施行工事に従事する冷凍技術者諸君の期待に添うこととしたのである。
<中 略>
この冷凍技術士登録制度が実施されると、設備の註文者は能率のよい、故障のない優秀な設備を得むがために、 その工事に実際に携わる技術者として登録された冷凍技術士を指名して安心して工事を任せることになるであろう。 従って現在冷凍機器の製造あるいは設備の工事を担当している技術者は、先づその分に応じた冷凍技術士の検定試験に 合格するとか、資格の認定を得て、冷凍技術士名簿に登録し、いつ註文者の指名を受けても差支えのない体制を 整えておくべきである。
冷凍技士改名のいきさつ
(冷凍誌 第37巻・第417号 昭和37年 7月号より)
昭和33年7月16日 常務理事会にて決定
冷凍技士の登録制度は当初「冷凍技術士」なる名称のものに昭和31年7月1日から出発したのであるが、翌昭和32年5月20日に発令された科学技術庁所管にかかる法律「技術士法」に「技術士」なる名称を名称独占と規定したがため「冷凍技術士」なる名称がこれに抵触することとなり、「冷凍技士」と改称せざるを得ないこととなったのである。(註:正確にいえば冷凍技術士制度を採用するに至った以後に出来た法律「技術士法」に無理やり抵触させられたもので、その際の当局の処置が甚だ遺憾であったことを此処に特に付記しておく。)
詳細は冷凍第33巻第369号(昭和33年7月号)に掲載
冷凍技士改名のいきさつ
(冷凍誌 第37巻・第417号 昭和37年7月号より)
昭和37年5月25日 常務理事会にて決定
最新の冷凍界の発達は日本における工業技術革新に呼応して目覚ましいものがあり、 大は20,000トンにも及ぶ冷凍工場の建設、小は大衆に直結した電気冷蔵庫、ユニットクーラー、ショーケース等の 普及に至るまで数年前には予想だにし得なかった進展を遂げつつあるのであるが、 特に近代建築域は新興工業における空気調和設備の発展は著しいものがあり、従来の冷蔵、製氷施設に比して格段の 比率で進展を遂げつつあることは周知の事実である。
勿論空気調和は冷凍応用とは多少設備の内容と その取り扱いがことなるので、最近米国の冷凍協会が暖房空調協会と合併して米国暖房冷凍空調工業協会と 名称を変更した様に、端的にその内容をテーマに表すことが賢明であると考えられ、今度「冷凍技士」なる名称を 「冷凍空調技士」と改称することとしたのである。従って今までの冷凍技士登録者は自動的に冷凍空調技士となり、 その既得権はそのまま存続することとなるのである。
註:当時の全日本高圧ガス(一般ガス・冷凍)大会とは 主催が、通商産業省(現、経済産業省)、神奈川県、(社)高圧ガス協会(現、高圧ガス保安協会)、 (社)日本冷凍協会(現、(公社)日本冷凍空調学会)、神奈川県高圧ガス協会(現、(一社)神奈川県高圧ガス保安協会)である。 現行の標記団体が主催者として開催したと思われる。 第一日目は高圧ガス大会 大講演会、第二日目は全国高圧ガス(一般ガス・冷凍)作業主任者大会、 第三日目は見学会として3日間開催された。 昭和30年7月28日に開催されたものは、二日目のものである。
食品冷凍技士制度の発足
(冷凍誌 第41巻・第470号 昭和41年12月号より)
昭和41年9月22日 常務理事会決定
本協会は、すでに冷凍空調技士制度を創設して12年におよび、資格を取得した会員数は1628名を数える にいたった。この人々が冷凍業界において、現に果たしつつある役割は極めてめざましいものがある。 この制度にひきつづき、今回あらたに食品冷凍技士制度を発足させ、主として食品の冷凍処理に携わる 有能な技術者を対象として、技士の資格を付与することを決定した。前者がどっちかといえば冷凍機器の 専門技術者を中心としているのに対して、食品冷凍技士は、冷凍食品の加工処理、品質保全の技術に 焦点を絞ったものである。
すでに公表した、日本冷凍協会食品技士規定に述べられているとおり、この制度は、 食品の低温による加工 、保管ならびに輸送・流通の業務に従事する技術者の技術の向上を図るとともに、適正な機器保全をふまえて 、斯業の能率を増進し、同時にまた、冷凍食品の製造、品質保持の不備による損失あるいは公衆衛生上の危害 事故の発生を防止することを目的としたものである。
したがって、対象となる資格予定者は各方面にわたり、それが、冷凍食品の処理加工に携わる人ばかりでなく、 その技術を開発する研究者、普及指導を分担するエンジニア、流通の間、その品質を見守る管理技術者、品質 検査、処理条件の保持に関与する人々をも含む各般にわたるのである。
したがって、資格として食品冷凍法の全般に通じていることはもちろん、 その背景となるべき食品学、食品化学 の知識についても習得するところがあり、なお、側面からは食品衛生の効用に関しても、およその要領を呑みこんで いることが必要となる。細則に記載されている4種の検定試験科目をとりあげたのもこの理由による。
科目のより詳細な内容もしくは水準については、いずれ本誌上、および定例として実施される食品冷凍講習会 において、指示される予定であるが、基本的には食品冷凍技術者として、 備うべき最低限度の経験に裏づけされた 知識技能を、正当に評価できるような検定方法がとられることになっている。
すべての技術がそうであるように 、食品冷凍においても、特に実務経験が大切である。教育機関だけで学んだものは、単なる技術の方向付けである から、上級学校の卒業というだけで、実務に無経験の者を対象とすることは避けなければならない。 大学出身者といえども、1年以上の実務経験が要求されているのは、このためである。