会長挨拶

会長
 

日本冷凍空調学会24代会長

齋藤 潔

Kiyoshi SAITO

 令和5年度5月18日に開催されました通常総会および理事会でご推挙賜り,令和5,6年度の会長という大役を拝命することとなりました.
 日本冷凍空調学会は大正14年に設立された長い歴史を有する学会で,冷凍・空調分野における唯一の学術機関として発展してきました。歴代会長および理事のみなさまのご尽力により、4000に近い会員や団体が活発な活動を継続しています.この歴史と権威のある学会におけるこれまでの活動を引き継ぐとともに,まもなく創立100周年を迎える本学会のさらなる発展を目指し,全力で尽力する所存です.
 冷凍空調技術は,近年では,感染症や異常気象から人類を守り,安全安心な食の提供をも可能とする人類には必要不可欠な生命を守る技術にまで発展してきています.産業用熱プロセスなどでは,技術立国への再挑戦を目指す我が国にとっても必要不可欠な高温生成ヒートポンプ技術として,適用範囲を広げています.引き続き経済をもけん引可能な強力な技術であり,次の時代を創りうる一つのキーテクノロジーといっても過言ではありません.科学技術全体を俯瞰してみれば,コンピュータの急速な発展によって,デジタルやAI技術が高度化し,科学的方法や教育体系の在り方まで大きな転換期を迎えつつあります.これまでの学問を継承しつつ,新たな時代の中で冷凍空調分野が切り拓く未来社会を共創し,その実現に向けて,学術機関としてのビジョンや方向性を打ち出していきたいと考えています.
 このような冷凍空調分野をはじめとした科学技術の目覚ましい発展の陰で,地球温暖化が人類に多大な影響を与えていることは承知の事実です.冷凍空調分野においても技術が普及するほどCO2排出量の増大は避けられず,更なる機器性能向上が求められています.オゾン層破壊に端を発した冷媒の問題は,地球温暖化問題へと形を変え,早急な低GWP冷媒への転換が必須となっています.これら難題の解決に向け,関連学協会や業界団体とも連携を図り,学術機関として,早急に対策を打ち出していきます.一方で,負の側面ばかりが前面に打ち出されれば,優秀な研究者,技術者がこの分野に魅力を感じないことでしょう.将来を担う若手のみなさんが活躍できる場を広げ,次の時代の冷凍空調分野や魅力ある学会作りを共に考えていきたいと思います.
 学会の活動としては,100周年を目前にして,現行の事務や運営体制を見直し、次の時代にふさわしい新たな体制づくりを進めていきたいと思います.多くの会員が基盤技術だけでなく最新の技術や研究について情報収集や意見交換が可能な機会を増やせるよう,技術交流や学術講演会,セミナー,見学会,技士講習会などをさらに充実していきたいと思います.これがひいては懸案となっている会員減少に歯止めをかけることともなりうると考えています.
 グローバル化が進む中で,学術機関として冷凍空調分野の今後の在り方を模索し,課題解決に向けた方策を打ち立てるためには,国外との連携も不可欠です.国際冷凍学会(IIR)との連携を一層強固なものとし,アメリカ暖房冷凍空調学会(ASHRAE),大韓設備工学会(SAREK),中国制冷学会(CAR),台湾冷凍空調学会(TSHRAE)など長きにわたる交流の歴史を持つ学術団体との親睦をさらに深めてまいります.新興のアセアン諸国やインドなどとも連携を模索していきます.2024年に我が国に誘致したコールドチェーン関連の国際会議であるICCC2024などを成功裏に導き,国際化に弾みをつけたいと思います.
 副会長に選任されました古庄和宏氏,鹿園直毅氏,佐々木正信氏をはじめとして50名の代表会員(内 理事 19 名)とともに,学会運営に尽力していく所存ですので,今後も変わらずご協力賜りますようお願い申し上げます.

2023年5月18日 
公益社団法人 日本冷凍空調学会 会長 齋藤 潔