最近気になる用語 39  
四類感染症の概要
                             

①インフルエンザ
 インフルエンザは、近世においても大きな流行は何度となく起こった。インフルエンザは2~7日で治癒するが、 基礎疾患のある人や免疫力の低下した乳幼児及び高齢者が罹患すると重症化することがある。インフルエンザウイルスには、 A,B,C型がある。二次的に肺炎、気管支炎を合併する事が多い。
 潜伏期間:24~72時間

②ウイルス性肝炎
 ウイルス肝炎とは向肝性ウイルス感染により生ずる炎症性肝疾患を指す。急性肝炎を引き起こす肝炎ウイルスには、 現在A,B,C,D,E型の5種類が明らかとなっている。F型,G型というべき肝炎ウイルスの存在が示唆されるに至っている。 これらのウイルスは臨床的には同様の病態をとり、不顕性感染から極めて予後不良など劇症肝炎までさまざまな臨床像を呈する。
 潜伏期:B型急性肝炎の場合は平均87時間、C型急性肝炎の場合は2週間~6ヶ月。
 
③黄熱
 アフリカ西部や南米に地方病として存在する伝染病。フラビウイルス科黄熱ウイルスによる感染症で蚊が媒介する。
突然の寒けとともに高熱を出し、頭痛、腰痛、黄疸、嘔吐などが起こり、死亡率が高い。黄熱がアジア、アフリカ極東沿岸部に 発生した報告はない。
 潜伏期:3~6日
 
④Q熱
 Q熱は、もともと「解らないQuery熱」からつけられた名称である。欧州から中近東、アフリカ、南北アメリカ、豪州などに広く 分布する。ヒトへの感染は病原体に汚染された肉や牛乳の摂取や、塵埃中の病原体の吸引などによると考えられている。ヒトからヒトへの感染はない。
 潜伏期:2~4週間
 
⑤狂犬病
 狂犬病ウイルスに感染した動物の咬傷により感染する。原因は狂犬の唾液中のウイルス。物が食べられなくなり、よだれを流し、 水を見ると痙攣を起こす。ついには全身が麻痺し、死亡する。昭和45年にネパールからの輸入例があり、死亡している。1957年以降、 日本国内ではイヌ、コウモリや野生動物に感染が認められた報告はない。
 潜伏期:2~8週間
 
⑥クリプトスポリジウム症
 世界的に広く分布していると考えられるが、1976年に初めて発見された原虫による下痢症である。1982年には米国でエイズ患者の重篤な 合併症として注目されるようになった。水系感染を起こし、塩素に強いことから、水道水が汚染されると大規模な集団発生を起こす。1993年米国 ミルウォーキーで、1996年埼玉県越生町で水道水を介して集団発生した。
 潜伏期:4~10日間
 
⑦後天性免疫不全症候群
 後天性免疫不全症候群は1981年に初めて記載された比較的新しい症候群である。ヒト免疫不全ウイルスの感染により、免疫不全により、カリニ 肺炎、カンジダ食道炎、サイトメガロウイルス網膜炎など、エイズの診断基準に上げられている日和見感染症が出現してくる。
 潜伏期:2~10年

⑧性器クラミジア感染症
 非淋菌性尿道炎では、その30~60%を占めるものが性器クラミジア感染症である。世界中にまん延し、欧米では、健常男子の1~7%に、 女性に5~20%の無症状ないし軽微症状の感染者がいるという。性行により感染する。テトラサイクリン等の抗菌薬により治療する。淋病の次に 多く、近年は淋病を上回ることがある。
 潜伏期:2日~6週間
 
⑨梅毒
 性病の一つ。スピロヘータ-パリダという螺旋菌の感染によって起こる慢性伝染病。局所に発病し、放置すると局部は治癒するが菌は 全身に広がり、種々の部位発症する。梅毒性大動脈炎、大動脈弁閉鎖不全症、脳脊髄梅毒などが知られる。末期には麻酔性痴呆や脊髄癆を起こす。 梅毒に感染するとワッセルマン反応が陽性になる。
 潜伏期:10~90日
 
⑩麻疹
 麻疹は発熱及び発疹を主徴とする疾患であり、不顕性感染は少ない。先進国では現在はワクチンが普及して麻疹の罹患率が減少しているが、 歴史的には致命率の高い疾患であった。開発途上国では、現在でも小児死亡率の主な原因となっており、先進国でも流行することもある。 潜伏持続感染により亜急性硬化性脳炎(SSPE)として発症することがある。
 潜伏期:10~11日
 
⑪マラリア
 蚊によって媒介される代表的な熱帯性原虫感染症であり、世界90か国が汚染地で、年間3~5億人が罹患し150~300万人が死亡している。 熱帯熱マラリアが最も悪性であり、致命率が高い。現在は国内での感染は見られない。近年では、毎年60~70人程度の海外での感染例が報告されて おり、時には死亡例も報告されている。
 潜伏期:熱帯熱マラリアは12日前後、三日熱マラリアと卵型マラリアは平均2週間、四日熱マラリアは30日前後。
 
⑫メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症
 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌による感染症である。多くの抗菌薬に耐性を示す。(1)肺炎、肺化膿症、膿胸などの呼吸器感染症、 (2)肺血症、感染性心内膜炎、(3)腸管感染症(いわゆるMRSA腸炎)、(4)難治性の褥瘡、重症火傷の創感染等を起こす。
 潜伏期:潜伏期という概念はなく、免疫力が低下したときに発症する。
 
 資料:「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」速報(厚生省)の
参考資料 法律の対象となる感染症の定義・類型より

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