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フィジカルインターネット 
 
学会誌「冷凍」に掲載された記事を集めました。
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アトランタにあるジョージア工科大学のサプライチェーン&ロジスティックス研究所では,物流にインターネットの 概念を取り入れた「フィジカルインターネット」の研究を行っている.フィジカルインターネットとは,「物流施設やト ラックなどの物理的な機能を利用して,インターネット上で情報が動くのと同じように効率的にモノを運ぶ物流」1)の ことである.
インターネットの世界と現状の物流インフラを簡単に比較すると,以下のようになる1).
・現在の物流インフラ 「ハブ・アンド・スポーク」
基地局中心のネットワークを築いてきた通信インフラと同じであり,大都市に中心拠点(ハブ)を置き,ここに一度 荷物を集約した後に,各拠点(スポーク)ごとに仕分けて配送している.
 
・インターネット
電話会社は膨大な投資を行って電話回線の能力を高めてきたが,常に最大能力で回線を使用することは少ないので, 大量のデータを送る際には「パケット」に小分けし,それぞれのパケットがその時々で最適なルートを通って相手に送 り届けるようにして効率化を図っている.
インターネットの世界で起こったことを物流業界で置き換えて考えてみる.現状ではそれぞれの企業で倉庫やトラッ クを社内のアセットとして抱えているが,それらをオープンにすることであらゆる事業者や利用者がシェアできるので, 大量の荷物を小分けしてそれぞれの荷物をその時々で空いている倉庫やトラックを使って輸送することが可能となる. 日本では高齢化に伴うドライバー不足,長時間労働,積載率の低下,EC 普及による小口荷物の急増など,物流クラ イシスが社会課題として顕在化しているため,国土交通省では総合物流施策大綱を策定し,物流の効率化に関する課題 に取り組んでいる2).また,国が進める戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)においても重要課題になっている. フィジカルインターネットを物流業界で広げるためには,荷物の大きさの規格化(コンテナやパレットに載せやすい サイズ,作業者が扱いやすいサイズ),発注伝票などの情報のデジタル化,積み込む際の包装,荷物管理作業,検品作 業など,製造からリテールまで多岐にわたる課題が存在する.
ヤマトグループ総合研究所は,ジョージア工科大学フィジカルインターネットセンターと,フィジカルインターネッ トを通じた日本における革新的な物流システムの構築に関する覚書締結を発表している3).産官学の協力を得て,物流 サービス需要者側,および物流サービス提供者側の問題を把握し,日本の物流事情をふまえた,フィジカルインター ネットのシステム設計・構築を推進する目的で活動するのである.
 
参考文献
1) 特集 物流革命 フィジカルインターネット,日経ビジネス,(2019.9.16).
2) 物流を取り巻く現状について,国土交通省物流政策課,(2018.10.11).
3) ヤマトホールディングス ニュースリリース,(2019.9.9).

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