最近気になる用語 302
ハイブリッド型ドローン
学会誌「冷凍」に掲載された記事を集めました。
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空中を自在に飛行できるドローン.もはや知らない人はいないと言っても過言ではない.ドローンの安定した飛行は
ジャイロセンサーとプロペラの制御にある.プロペラは必ず偶数個が取り付けられ,ひとつのプロペラにひとつのモー
ターが付いており,それぞれの回転を個別に制御することができる.隣接するプロペラは回転方向が逆方向になってお
り,プロペラで生じる回転力の反作用を打ち消しあっている.
ドローンの姿勢制御は,たとえばホバリングのとき,ジャイロセンサーで機体の傾きや回転を検知し,検知されたセ
ンサーからの信号によってモーターの出力をフィードバック制御する.急に風にあおられても直ちに水平姿勢にもどる
ので安定した飛行を維持できるのである.ドローンを移動させたいときは, 進行方向側のモーターの回転数を下げ,反
対側のモーターの回転数を上げる.そうすることで機体は傾き,進行方向に進むことができる.この傾いた姿勢を維持
するのもジャイロセンサーとプロペラの制御である.
通常のドローンはリチウムイオンバッテリーに蓄えられた電力を動力源にしている.蓄えることができる電力には限
りがあるので1 回の飛行は15 ~ 20 分と短時間である.エネルギーの密度としては単位体積,単位重量あたりのどちら
をとってもガソリンの方がリチウムイオンバッテリーよりも有利である.ガソリンエンジンで発電し,プロペラのモー
ターを駆動して飛行することも考えられるはずである.しかし,エンジンを搭載するとエンジンの振動が前述のジャイ
ロセンサーにノイズ成分として入力されてしまう問題がある.ノイズ成分の影響を受けにくくするためには,ジャイロ
センサーの感度を下げる必要があるが,感度を下げると姿勢を素早く立て直すことができなくなるので,強い風にあお
られると墜落してしまうのである.この問題を解決すべく,きわめて振動の小さなツインクランク対向ピストンエンジ
ンを搭載したドローンが開発されている.右にイメージ図を示す.
二つのピストンに挟まれた空間が燃焼室である.ピストン~クラン
クシャフト,発電機まで完全に左右対称で,動作・回転方向が正反
対なのでお互いに振動を完全に打ち消しあう構造になっている.こ
のきわめて独創的なエンジンを搭載したドローンは,ハイブリッド
カーにたとえればシリーズハイブリッドと同様のシステム構成に
なっている.荷物を積んだ状態で1 時間以上の飛行が可能で,飛行
時間が大幅に伸びている.
ガソリンと農薬の補給を終え,農家の軒先から飛び立ち,そして
自動で畑に農薬を散布する.このようなハイブリッド型ドローンの
姿が見られるのもそう遠くないように思える.
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