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自動運転
学会誌「冷凍」に掲載された記事を集めました。
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自動運転が実用化の段階を迎えようとしている.警察庁は2018 年12 月20 日,自動運転社会の到来を見据え,道路
交通法の改正案を発表した.今後パブリックコメントを経て,早ければ2019 年中に国会に改正法案を提出,2020 年前
半の施行を目標としている.
今回の改正案は,運転席にドライバーが存在し,一定の条件下でドライバーに代わってシステムが運転を担うレベル
3 の走行を可能にするもので,渋滞中の高速道路などでの実用化を想定している.緊急時にはドライバーが即座に運転
を交代できることが条件となるが,自動運転中はスマートフォンの利用,カーナビ操作,読書をすることも可能といっ
た内容が盛り込まれている(ただし,飲酒や睡眠は認めない).また,車両の不具合や事故の際に原因究明をしやすくす
るため,車両に運行データの記録装置の装備を義務付け,メーカーに対し警察がデータ解析に協力を求めることができ
る規定も盛り込んだ.
自動運転は技術レベルによって5 段階に分かれる.
レベル0:【運転自動化なし】ドライバーがすべての運転を実施
レベル1:【運転支援】システムがアクセル,ブレーキ,ハンドル操作のいずれかを担う
レベル2:【部分運転自動化】システムがアクセル,ブレーキ,ハンドル操作の複数を担う
レベル3:【条件付運転自動化】限定的な領域で,システムが運転を行う.緊急時はドライバーが対応する
レベル4:【高度運転自動化】一定の条件下において,システムが運転を行う.この条件下ではドライバーの操作は不要
レベル5:【完全運転自動化】無人運転.考え得るすべての状況,環境での運転をシステムに任せる状態
現行の道路交通法ではレベル2 までは対応可能,レベル3 から法改正が必要となってくるため,今回の改正案の提示
となった.
各自動車メーカーやIT 企業は,自動運転の技術開発を加速させており,既にレベル3 の技術を実用化レベルにして
いる企業もあるようだ.また日本政府としても,国土交通省を中心に自動運転の実現に向けた後押しをする中,官民に
よる公道での実証実験を開始しており,法改正・法整備が急務となってきている.
この自動運転をめぐっては,事故時の責任問題も焦点となっている.政府が2018 年4 月に定めた「自動運転に係る制
度整備大綱」では,民事上の賠償責任は一般の車と同様にドライバーや車の所有者が負うが,車両や仕組みに欠陥があ
れば,メーカー側が製造物責任を問われるとされている.現在の自動車の事故はドライバーの責任とされることが多い
が,自動運転中は整備不良など明らかな場合を除いて,過失をドライバーに問うのは難しいと思われる.
法整備以外の課題として,サイバー攻撃に対するセキュリティー強化も必要である.自動運転のためには,GPS,
レーダー,カメラなどの活用が必須であるが,これらのシステムが乗っ取られる危険性が指摘されている.
夢の技術と考えられてきた自動運転,ハード面での開発が先行する一方,法整備やセキュリティーなどソフト面での
整備も並行して進める必要があり,解決するべき課題はまだまだ多いようだ.一方,毎日のように高齢者の運転ミスに
よる事故の報道もされており,自動運転の早期普及が望まれる.
参考文献
国土交通省:自動運転車の安全技術ガイドライン.
高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議:自動運転に係る制度整備大綱.
ウィキペディア(自動運転車).
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