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MIR(最大オゾン生成能) 
 
学会誌「冷凍」に掲載された記事を集めました。
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MIR(Maximum Incremental Reactivity)とは,増加したVOC 排出量あたりのオゾン存在量の増加量である(MIR= オゾン増加量(mg)/VOC 増加量(mg)).
 VOC(揮発性有機化合物:揮発性を有し大気中で気体状となる有機化合物の総称)は光化学オキシダントの原因物質 とされている.大気中の光化学オキシダントは,高濃度では粘膜への健康影響があり,農作物などの植物にも被害を与 える公害となる.この光化学オキシダントの中でもっとも大気中濃度が高いのがオゾンで,公害への影響が大きく,ま た二酸化炭素よりもはるかに強力な温室効果を持つ.対流圏オゾン濃度が2 倍になると地球の平均気温が0.9 度上昇す るとの試算があり,GWP(地球温暖化係数)で表すと2000以上になる.成層圏のオゾン層は太陽光に含まれる有害な紫 外線を吸収して地表に到達するのを防ぐ役割を果たしているが,対流圏オゾン濃度の増加は地球規模の気候変動に影響 を及ぼす重要な因子となる.
 大気中には様々なVOC が排出されるが,それらの光化学反応のしやすさは異なるため,オキシダントを生成する効 率(生成能)を考慮してオキシダント生成のリスクを評価する必要がある.この指標のひとつがMIR で,対象地域内で 排出されたVOC が対象地域内の大気中で光化学反応を起こした際のオゾン生成量を基準にしている.
 冷凍装置で使用される冷媒もVOC である(R 717 は無機化合物なので含まれない).フルオロカーボンのみの組成から なるフロン冷媒のMIR は低いが,低GWP 冷媒として用途が広がっている自然冷媒の中にはMIR が高いものが存在す る.表1に主な冷媒のMIR を示す.
 温暖化対策の冷媒規制として,多くの国や機関はGWP のみを指標としているが,光化学大気汚染の対策としてVOC である炭化水素(HC)の規制が非常に厳しいアメリカでは,「重要新規代替物質政策(SNAP)」プログラムにおいて,MIR が高い理由からプロピレンおよびこれを含むR 443A の使用を禁止している.今後の冷媒選択にはGWP 以外の環境影響 にも注意を払う必要がある.

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