最近気になる用語 264
 機能性表示食品 
 
学会誌「冷凍」に掲載された記事を集めました。
当時の記事をそのまま掲載していますので古い内容や、当会の専門分野とは無関係な内容もあります。
また、お問い合わせに対しては答えられませんのでご了承下さい。


 食品には美味しさが求められるが,味や香りなどはさて置き,人間に対して何らかの 健康効果を期待して摂取する食 品を広義で「健康食品」と呼んでいる.この健康食品には,栄養を強化した栄養強化 食品や栄養補助食品,健康補助食 品など様々な名称で呼ばれている物があるが,あくまでも食品であるため医学的な効 果・効能すなわち機能性を表示す ることはできなかった.しかし,1991(平成3)年に「特定保健用食品(トクホ)」 表示が当時の厚生省によって制定され, 審査により認可が得られれば,「これを摂取すると血圧が正常に保てます」というよ うな機能性を謳った表示が可能と なった(本誌2002 年4 月号最近気になる用語で解説).その後,2001(平成13)年 に,「栄養機能食品」表示が始まり,高 齢化やライフスタイルの変化などにより通常の食生活を行うことが難しく,1 日に必 要な栄養成分を摂れない場合にそ の補給・補完のために利用してもらう食品として,栄養成分量が国が定めた上・下限 値の規格基準に適合している場合, 所轄官庁への届出なしで,その栄養成分の機能表示ができるようになった.この「特 定保健用食品」と「栄養機能食品」 のふたつを合わせて「保健機能食品」と呼んでいた.しかし,特定保健用食品は審査 が厳しく,またヒト臨床試験の実 施などお金と時間がかかるため認可取得へのハードルは高いのが現状である.
 そこで,機能性をわかりやすく表示した商品の選択肢を増やし,消費者がこのような 商品の正しい情報を得て選択で きるよう,2015(平成27)年4 月から新しい食品表示法が消費者庁より施行された. これは,米国のダイエタリサプリメ ントの表示制度を参考にしたもので,「企業等の責任において科学的 根拠のもとに機能性を表示できる」という制度で,この制度に則っ た食品が「機能性表示食品」である.現在では,この機能性表示食 品を含めた3 つを「保健機能食品」のカテゴリーとしている(図1). 表示にあたって必要となる科学的根拠とは,「①最終製品を用いた 臨床試験」あるいは「②最終製品または機能性関与成分に関する研 究レビュー」のいずれかである.すなわち,ヒト臨床試験あるいは 投稿論文による科学的根拠ということになる.そして商品販売の60 日前までにこの科学的根拠を添えて申請さえすれば,国の審査がな く商品パッケージに具体的な機能性を表示して販売できるため,か なりハードルが低い表示法であると言える(図2・表示例).一方で は,あくまで企業の自己責任のもとで判断され国がお墨付きを与え るものではないため,「チェックが甘い」「根拠が曖昧だ」と消費者 団体が批判をしている.まだ始まったばかりの制度であり,2016(平 成28)年2 月末時点で届出されている商品は240 品目である.今後 の動きには注意を払い,まずは自分の食習慣,食生活を振り返るこ とが大事なのかもしれない.

 参考資料:
 東京都福祉保健局
 (http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/anzen/hoei/hoei_015/hoei_015.html)
 消費者庁(http://www.caa.go.jp/foods/index23.html)
 清水俊雄:機能性表示食品の科学的根拠
 (http://www.mac.or.jp/mail/151201/02.shtml)
 高橋久仁子:食品機械装置,53(3),50(2016).
 など

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