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  電源構成/エネルギーミックス  
 
学会誌「冷凍」に掲載された記事を集めました。
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  発電はその燃料や方式により,大きく,火力発電,原子力発電,再生可能エネルギー(再エネ)に分けられる.火力発 電の燃料としては,石炭,石油,LNG(液化天然ガス)がある.再生可能エネルギーは主に,太陽光,風力,地熱,水 力,バイオマス・廃棄物などによる発電である.国家全体でのエネルギー政策としての,これらの発電の構成比率のこ とを「電源構成」「エネルギーミックス」と呼んでいる.「最適な」比率という意味をこめて「ベストミックス」という言 葉も使われる.
 2011 年3 月の東日本大震災と福島第一原発事故により,日本のエネルギー政策は大きな見直しを迫られることになっ た.震災後ほぼ3 年を経過してようやく2014 年4 月に「新しいエネルギー基本計画」が策定され,安定供給(Energy Security),経済効率性(Economic Efficiency),環境適合(Environment)といった従来からの政策の基本的視点(3E)に 加えて,当然ながら安全性(Safety)が大前提として盛り込まれて(3E+S)が掲げられた.この基本計画では,「原発依存 度については,省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより,可能な限り低減させる」, 「電源構成については,エネルギー源ごとの特性を踏まえ,現実的かつバランスの取れた需給構造を構築する」として, 電源構成の具体的目標値は提示されなかった.
 震災後は原発停止により,代替として火力発電の運転を余儀なくされて構成比率が9 割にも高まり,それによるコス ト上昇(電気料金約2 ~ 3 割増),温室効果ガス排出量が過去最大に増加(エネルギー起源CO2 排出量1 235百万トン), エネルギー自給率の低下(6 %)など,3E の視点からは震災前よりも大幅に後退する結果となった.また,2012 年7 月 に始まった再エネの固定価格買い取り制度(FIT)により,再エネの太陽光発電が想定を上回るペースで普及し,電力コ ストをさらに押し上げる要因になっている.
 経済産業省の諮問機関である総合資源エネルギー調査会の長期エネルギー需給見通し小委員会等では,2030 年までの 自給率(震災前を上回る概ね25 %程度),電力コスト(現状よりも引き下げる),温室効果ガス排出量(欧米に遜色ない 削減目標)を政策目標として検討審議が進められた.
 温室効果ガス排出については,日本は,ポスト京都議定書として重要な位置付けとなる今年12 月パリで開催予定の第 21 回国連気候変動枠組条約締結国会議(COP21)に向けて,2030 年までの温室効果ガス削減目標の提示を迫られている.
 審議決定された電源構成の内容は,2013 ~ 2030 年までの経済成長等による増加(経済成長率年1.7 %)を見込みつつ, 徹底した省エネ・節電(対策前比17 %減)により,2030 年度に9 808 億kWh 程度の電力需要を想定,これに送電ロスな どを加算して総発電電力量は10 650億kWh 程度として,その電源構成を原子力20 ~ 22 %,再エネ22 ~ 24 %,LNG 27 %,石炭26 %,石油2.6 %としている.
 原子力については,事故後の新規制基準に従って停止中の原発を再稼動させてさらに「原則40 年廃炉ルール」を厳守 して廃炉したとすると,2030 年の比率は震災前の水準の約半分の15 %程度となり,目標とする電源構成比率20 ~ 22 % は老朽原発の廃炉延期や原発の建替え・新設・増設を前提としないと成り立たない数値である.
 今回審議決定された電源構成は,原発再稼動が不透明な状況で,安定供給,経済効率性,環境適合のバランスに苦慮 した現実的な“ベストミックス”との側面もあろう.一方,原子力と再エネの比率については,再エネの比率を上げて 25 ~ 30 %程度,原子力を15 %程度に下げるべきとの意見もある.
 「長期エネルギー需給見通しは,3 年ごとに行われるエネルギー基本計画の検討にあわせて見直す」とされており,今 後も動向に注目する必要がある.
 
 参考資料
 資源エネルギー庁:「エネルギー基本計画」.
 資源エネルギー庁:総合資源エネルギー調査会 長期エネルギー需給見通し小委員会資料.

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