最近気になる用語 248
 β-グルカン  
 
学会誌「冷凍」に掲載された記事を集めました。
当時の記事をそのまま掲載していますので古い内容や、当会の専門分野とは無関係な内容もあります。
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  筆者は埼玉大麦食品普及・食のモデル地域実行協議会に参画し,「美味しく健康によい大麦食品の開発と普及」活動を 推進している.本稿では大麦に多く含まれ最近注目を浴びている,β-グルカンについて取り上げる. 大麦が日本に伝わったのは3 世紀ごろと考えられており,奈良時代には日本各地で広く栽培されていた.また江戸時 代に市民をたびたび襲った飢饉において,米よりも早く収穫可能な大麦が多くの人の命を救ったといわれている1).大 正元年,東京大学農学部の鈴木梅太郎先生がオリザニン(ビタミン)を発見し,脚気の予防にはビタミン類の豊富な麦 ご飯(大麦)の摂食が効果的であると知られるようになった.
 大麦はビール,ウイスキーや焼酎製造に用いられる二条大麦,麦ご飯や麦茶に用いられる六条大麦に大別される.大 麦の収穫量は1950 年代に200 万トンであったのに対し,現在は二条大麦が約11 万トン,六条大麦が約5 万トン(食用 大麦は計7 万トン,そのほかは飼料など)であり,年々減少傾向にある2).しかし近年大麦の機能性が明らかになり,大 麦が見直され始めている.大麦の機能性としては,大麦に多く含まれる食物繊維がグルコース(ブドウ糖)の腸管吸収 を遅延させる血糖値上昇抑制効果,腸のぜん動の活発化による整腸効果,血中コレステロール濃度の上昇抑制など,生 活習慣病予防のみならず日常生活における体調管理に重要な機能が知られてきている.
 とりわけ大麦に多く含まれる水溶性食物繊維であるβ-グルカンは,免疫応答の活性化,感染症の予防,アレルギー や花粉症低減,皮膚の保湿作用など,感染症・抗腫瘍・アンチエイジングの観点から注目されている.β-グルカンは 酵母,真菌,キノコなどの細胞壁を構成する高分子多糖類で,D-グルコーピラノースがβ1 - 3 またはβ1 - 6 結合でポリ マー化した構造を有する3).
 2006 年アメリカ合衆国食品医薬品局(FDA)は,β-グルカンの摂取が,血清コレステロール値を低下させる効果が あることを認め,大麦およびそれを含む食品に含まれる大麦の水溶性食物繊維が1 食あたり0.75 g 以上含む製品に対し “冠状心疾患の危険を減らす”という健康強調表示を許可し,大麦水溶性食物繊維を1 日3 g 摂取することを推奨した1). 日本では大麦由来のβ-グルカンについて,コレステロールの正常化,食後血糖値の上昇抑制,満腹感の持続作用の3 機能について,「機能性について,肯定的な根拠がある」と消費者庁の補助事業報告書において評価されている4).最近 では大手製薬食品メーカーがβ-グルカンを多く含むヘルスマネジメントフードを開発・市販するのみならず,地場の食 品企業により大麦ダックワーズ(洋菓子),大麦ココアなどが市販され,各方面において人気を博しており,スーパーや ドラッグストアのみならず土産店などでも目にする.
 本学会会員は,大麦の価値を主にグラスの中で評価してきたと思われる.これからは,のどこしのみならず,咀嚼に よる大麦の摂食をオススメしたい.
 
 1) 「大麦粉を使った学校給食料理集」,大麦食品推進コンソーシアム,pp. 1-14,(2013).
 2) 農林水産省大臣官房統計部:「農林水産統計 平成25 年度4 麦の収穫量」
 http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_kome/pdf/syukaku_4mugi_13.pdf (2014/9).
 3) 「生化学辞典」,東京化学同人,p. 1242,(2007).
 4) 消費者庁補助事業:「平成24 年度「食品の機能性評価事業」報告書」
 http://www.jhnfa.org/topic146-1.pdf (2014/9).

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