最近気になる用語 244
 ノンフライヤー  
 
学会誌「冷凍」に掲載された記事を集めました。
当時の記事をそのまま掲載していますので古い内容や、当会の専門分野とは無関係な内容もあります。
また、お問い合わせに対しては答えられませんのでご了承下さい
                             


 筆者の長女は現在小学校5 年生である.低学年の頃は,クラスのリレーの選手になるほど足が速く,スリムな体つき をしていた.ところが最近,少々ぽっちゃりした体型になり,本人も気にしているのか,脂肪の多い肉や揚げ物などを あまり食べなくなった.3 月は家内の誕生日で,子どもたちに「何をプレゼントしたらいいだろう?」と尋ねると,長女 が「ノンフライヤーがいいよ」と言った.どうやらどこかでこの商品名を知り,自分のためにノンフライヤーで料理を 作ってもらいたいという目論見のようだ.まあいい.年頃の娘でもあるし,美味しく食事をしてもらえるならばと,早 速「ノンフライヤー」とやらを大手通販サイトで購入してみることにした.
 届いてみると何と構造は至ってシンプル.食材を入れる引き出し式トレーと,温度設定ダイヤルと,加熱時間を設定 するタイマーしかない.どういう商品なのかも調査せずに購入した自分に一瞬後悔の念が浮かんだ.しかし,きっと何 か斬新な仕掛けがあるに違いないと,早速分解してみることに,いや,使ってみることにした.

 この製品は,オランダに本拠がある大手調理機器メーカーのもので,ヨーロッパでは2010 年に「Air fryer」という名 称で発売され,瞬く間に「当社史上最もヒットした調理家電」と言われるほど絶大な人気を誇り,100 万台以上も売り 上げた.その後,2013 年になり日本では「ノンフライヤー」という商品名で販売されはじめた.したがって,正式には エアフライヤーと言うべきなのだろうが,製品の特徴を表している名称が日本では付けられたわけだ.ちなみに,この 調理機器メーカーの海外サイトを見てみると,Low fat fryer という説明が記されていた.
 その構造を図に示した.上部に付けられたヒータとファンにより,80 ~ 200 ℃の熱風を 高速で循環させ食材の内部も含め全体を一気に加熱する.これにより,油で揚げたような サクサクした食感に仕上げることができる.食材自体に含まれる油を利用することで,表 面を均一に加熱し旨味を閉じ込め,また余分な油は下部に滴下し,油を一切使わずに最大 で約80 %の脂肪分がカットできるという特徴がある.
 操作方法も簡単だ.基本的には,通常の揚げ物と同じような下ごしらえを行い,数分 間の予熱を施した後,まず,①食材をバスケットの金網上に載せる.②調理温度(80 ~ 200 ℃)をセットする.③調理時間(0 ~ 30 分)をタイマーでセットする.食材にもよるが, 加熱時間は15 ~ 20 分程度.完全に密閉された内部で調理が行われるので,通常の揚げ物 のように部屋が油っぽくなる心配もない.当然ながら火気を使用しないので安全性の面で も優れている.本体には簡単なレシピ本も付属され,また,クックパッドという調理レシ ピサイトにもノンフライヤー(エアフライヤー)専用のレシピが数多く掲載されている.
 実際に使用してみた感想であるが,鶏の唐揚げなど肉類そのものを使用したフライはかなり美味しくできあがる.ま た,加工品の再加熱,たとえばチキンナゲットやフレンチフライ,冷めた揚げ物などはサクサクに美味しく仕上がる. しかしながら,生パン粉を付けたトンカツなどは,衣が白っぽくなるのでスチームレンジ同様,多少工夫をする必要が ありそうだ.
 このノンフライヤーであるが,現在では前述の調理機器メーカー以外の数社からも同じような構造の物が市販され, 比較サイトなどには機能や価格,できあがりの状態など様々な情報が寄せられている.興味のある方は検索してご覧頂 きたい.
 考えてみると,このような単純な技術の応用で,大ヒット商品となることは珍しいことだろう.特に目新しい技術を 用いることなく新製品(新しいしくみ)を開発するということは,我々研究者や商品開発者は見習うべきことであろう と思う.
 蛇足だが,この記事をなんとか冷凍関連の内容に結びつけようと考えた筆者は,モナカアイスをエアフライヤーで調 理した結果を報告しようと考えた.しかし,上記のとおり品物の内部も加熱する仕組みであるため,自明な解と直ぐわ かり試みずに終わった次第である.
 参考:オランダに本拠がある大手調理機器メーカーのサイト(日本向け,米国向け)など

「最近気になる用語」
学会誌「冷凍」への掲載巻号一覧表