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 ハラール食品  
 
学会誌「冷凍」に掲載された記事を集めました。
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 2013年7 月に,東南アジア5 カ国の観光ビザ発給要件が緩和されて以降,ムスリム(イスラーム教徒)が多いマレーシ アやインドネシアからの観光客が増加したことにより,最近,日本を訪れるムスリムの数が急増しているという新聞報 道があった.一方で,非イスラーム国に滞在するムスリムは,ハラールのために食の問題に悩まされている.
 このハラールとは,イスラーム教の聖典クルアーンで許可されたもので,イスラーム法上合法的なものをさす.たと えば,イスラーム教の教えにのっとって処理された食べ物はハラールである.ハラールの逆は,ハラームまたはノン・ ハラール,ハラールか疑わしいものはシュブハという.ムスリムにとって,ハラールの食べ物を食すのは神(アッラー) に対する崇拝行為と考えられており,すべてのムスリムにとって宗教的に守るべき最も重要なことである.
 ムスリムがノン・ポークやノン・アルコールであることは周知の事実で,ポーク,アルコールがノン・ハラールであ ることは簡単に認識できる.しかし,特に食肉はハラール要件が非常に細かく規定されており,牛,ヒツジ,ヤギ,鶏 などの家畜類は神(アッラー)の名によって屠り,血抜きをすることが規定されている.また,製造工程や製造環境につ いても規定があり,屠殺する際のお祈りや屠殺するスタッフはムスリムであるなど,また設備の洗浄,食肉の保管・流 通についても規定がある.原材料・輸送・原材料保管・運搬・製造工程・包装・製品保管・流通など,すべての工程で ハラール性をクリアした食品がハラール食品であり,イスラーム団体あるいは各国の認証機関などによって,イスラー ムの食物ガイドラインに合致していることを明確に証明されてはじめて,ハラール認証を得ることができる.ハラール 認証を得たハラール食品のみ,包装材などにハラールマークを表示できる.ムスリムはこのハラールマークを確認し, 市場で商品を選択している.
 ハラールマークが必要になった背景は,以下のとおりである.
 (1)食品製造技術の発展により,ハラール,ノン・ハラールの区別がつきにくくなり,ハラール性の疑義がもたれる ようになった.
 (2)ムスリム圏の発展に伴い,海外からの製品や中間原料が輸入されるようになり,食品の選択の余地が増えた.
 (3)非ムスリム圏でイスラーム教徒が,イスラームの教えを忠実に実施するため.
 最近では観光客の増加に伴い,イスラーム圏に進出している日本企業だけでなく国内おいても,地方の食肉会社,菓 子製造会社,レストラン,宿泊施設がハラール認証を受けるなど,ハラール対応の企業が増えている.また,食品・飲 料製造企業や飲食店に止まらず,スキンケア用品の製造企業もハラール認証に向けて動いている.ビジネスをきっかけ に始まったハラールへの関心は,ムスリムを理解する機運を高めている.
 お・も・て・な・しの文化を持つ日本でハラールの意識が広がり,ハラール食品が増えれば,観光で訪れるムスリムの 人々の選択肢が増え,食に悩まされることが少なくなるだろう.また,無形文化遺産に登録された和食に対してもムス リムの興味が増すことだろう.そうなれば,日本の魅力はより一層増えることだろうと思う.
 
 参考資料
 ・日本貿易振興機構(JETRO) www.jetro.go.jp
 ・ハラールソリューションジャパン www.halal-solution.jp
 ・「ハラルマーケットがよくわかる本」,総合法令出版,(2013 年12 月3 日発行).

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