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アベノミクス  
 
学会誌「冷凍」に掲載された記事を集めました。
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 日本は1990 年初頭に株式や不動産を中心に資産価値が過剰に高騰し,景気が拡大し たバブル景気となった.しかし,実態経済から乖離した資産価格であったため,急激に資産価格が下落し,景気後退と なった.いわゆるバブルの崩壊である.バブル崩壊以降,デフレーション(以下,デフレ)が始まったといわれている が,本格的なデフレへの突入は,橋本内閣が1997 年4 月に消費税率を3 %から5 %に増税した翌1998 年度である(1998 年度には名目国内総生産(GDP)は対前年比-2 %,GDP デフレータは-0.5 %に落ち込み). 2012 年12 月26 日より誕生した第2 次安倍内閣において,長期のデフレを脱却し,名目経済成長率3 %を達成するた めに,安倍首相が表明した「3 本の矢」を柱とした経済政策をアベノミクスという.アベノミクスは安倍首相とエコノミクスをかけ合わせた造語で,レーガノミクス(1980 年代の米国レーガン政権の自由 主義経済政策)にちなんでいる.アベノミクスの基本方針(3 本の矢)は「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」で,以下 に主な内容を示す.
 
大胆な金融政策:
インフレターゲットを2 %に設定し,日本銀行にも2 %の物価目標を働きかけ,無制限の量的緩和 策を決定した.
 
機動的な財政政策:
2013 年1 月15 日に過去2 番目の規模となる13 兆1 千億円にの ぼる補正予算案を閣議決定した.内訳は東日本大震災の復興・防災対策に3 兆8 千億円,暮らしの安全・地域活性化に3 兆1 千億円, さらに再生医療の実用化支援などの成長による富の創出に3 兆1 千億円などとなって いる. 
 
民間投資を喚起する成長戦略:
研究開発・イノベーション創出促進,省エネルギー・ 再生可能エネルギー投資の促進,新ビジネスへのチャレンジを骨子とし,①産業の新陳代謝 ②人材力強化・雇用制度 改革 ③立地 競争力の強化 ④クリーン・経済的なエネルギー需給実現 ⑤健康長寿社会の実現  ⑥農業輸出拡 大・競争力強化 ⑦科学技術イノベーション・IT の強化 の7 つのテーマについ て,有識者で構成 する産業競争力会議でテーマ別に会合を開き,2013 年6 月を目処に具体案をまとめ る予定である. 成長戦略で重要なカギとなるのは環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)である.貿易 品目の関税撤廃 が加われば輸出産業にとって追い風となるが,経済再生の起爆剤となるかは今後の交 渉次第である.
また,アベノミクスに対する各国の反応は,アメリカ,カナダ,スイス,インドネシ アなどは日本国内の内需を刺激 し,デフレ脱却に向けた戦略について肯定的である.一方で,韓国や中国などはアベ ノミクスによる円安で自国の輸出 競争力が低下することを懸念して,批判的である.

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