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リチウムイオン電池
                             


 最近,新鋭航空機において焼損事故を発生し注目を集めているリチウムイオン電池だが,名称のみ有名になって,そ の中味については意外に知られていないのではないだろうか.
 今回はリチウムイオン電池の原理,課題,今後の展開などについて,一般的な知識として把握できるよう紹介してみたい.
 <電池の原理と種類> 
 電池は2 種類の金属と電解液から構成される.2 種の金属のうち一方は電解液に溶けやすく,他 方は溶けにくい.原子の集まりである金属が電解液に溶けたとき,イオンという状態になる(一般的には陽イオン).こ の状態になると同時に電子を生み出すため電気を発生する.より溶けやすい金属(陰極)と溶けにくい金属(陽極)で電 池を作れば高性能の電池になる. 電池には一度使って廃棄する「一次電池」と充電可能な「二次電池」に大別される.放電により陰極の溶けやすい金属 が溶け,この金属が全部溶けると放電できなくなる.二次電池で充電する場合は陽極で金属が溶けてイオンとなり,陰 極でイオンが金属となって析出する.
 <リチウムイオン電池について>
  リチウムは先に述べた溶けやすさ(イオン化傾向)がもっとも高い金属であり,この 特性を活かすために種々研究を重ね,実用化の道を歩んできた.
 充電反応は,放電の逆反応を起こすだけだが,実際には簡単ではない.電解液はイオンを含むので,そのイオンも反 応する.実際の二次電池の反応は,電子のやりとりに注目するのが重要である.
 ニカド,ニッケル水素電池などは電解液に水溶液を使うため,電気分解を起こさない1.2 V までの範囲でしか扱えな いが,有機溶媒系の電解液を使えばその制約を外すことができる.これが二次電池の高電圧化に大きく貢献した.
 電解質にゲル状のポリマーを使うリチウムポリマー電池が1998 年前後から市場に登場し,模型飛行機業界(電動ラジ コン)では「リポ」として急速に普及した.
 <安全性>
  リチウムイオン電池が異常発熱や発火を起こす現象は「熱暴走」と呼ばれている.熱暴走は,なんらかの きっかけにより電池内部の特定部材が発熱,その発熱がさらに他の部材の発熱を引き起こし,電池温度の上昇が続くこ とで起きる.
 熱暴走の主なきっかけには,内部短絡や電池パックの過充電,それらの複合要因などがある.内部短絡が起きた場合, 負極に一気に電気が流れることで,負極の発熱を引き起こす.発熱した負極は,正極を加熱しさらに正極の発熱反応を 引き起こす.
 一方,過充電は,正極の発熱を引き起こす.リチウムイオン電池の充電は,正極材料中からリチウムイオンを引き抜 き,負極材料中に差し込むことで行われる.ただしこのとき,リチウムイオンが引き抜かれた正極は結晶構造が不安定 になるため,充電時に正極から抜き出されるリチウムイオンは,一定範囲内になるように制御されている.しかし過充 電が起きると,過剰なリチウムイオンが抜き出され,正極材料の結晶構造が壊れる.結晶の崩壊過程で,正極の発熱反 応が起きる.また,電解液に有機溶媒を使用していることもあり,ひとたび熱暴走のようなトラブルを発生した場合の 結果は厳しいものがある.
 <今後の展開>
  現在,リチウムイオン電池は携帯電話,ノートパソコン,デジタルカメラ・ビデオ,携帯用音楽プレ イヤーをはじめ,幅広い電子・電気機器に搭載され,市場規模が2010 年には1 兆円規模に成長した. 車載用電池の増産をきっかけに,リチウムイオン電池市場は急速に拡大すると考えられ,5 年後には3 兆円を超える規模 にまで成長するという予測もある.これまでリチウムイオン電池の製造は,そのほとんどを日本や韓国,中国といったア ジア圏のメーカーが担ってきたが,新たな巨大市場の出現を目の前にして,米国や欧州の企業も製造に加わりつつある.
 今後,1 兆円レベルの投資によりリチウムイオン電池の普及は飛躍的に進み,我々の生活にもっと深く浸透していく コンポーネントになると考えるが,先にも述べたように基本リスクもあり,何よりも安全性を優先した開発を進めても らいたい.
 
 参考資料
 EDN JAPAN:知っておきたい電池のしくみ
 ウィキペディア:リチウムイオン二次電池
 日本経済新聞Web 版:車載用リチウムイオン2 次電池で今,何が起こっているのか

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