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ハクレン
                             


  日本で魚といえば,まぐろ,さんま,ぶりなど海産魚を思い浮かべるが,ハクレン(silver carp)は中国原産の淡水魚 である.同じコイ目コイ科で外見の似た草魚(grass carp)に次いで,中国の養殖生産量第2 位,年間生産量300 万t を超える.この2 種で日本の平成21 年の漁獲高543 万t を超えるくらい,中国では一般的な魚である. ハクレンは農家の庭先にある池で養殖されているため,季節的な環境水温の変動にさらされる.夏は30 ℃を超え, 冬は0 ℃近くまで下がるという水温変動の中,夏はよく餌を食べ成長も速いが,冬になると池の底で静かにし,時々餌 を捕るために少し活動する.
 このハクレンの筋原線維に存在するミオシンというタンパク質の変性速度を調べたところ,夏と冬とでまったく違う ことがわかった.変性速度をアウレニウスプロットしたところ, 夏のハクレンはティラピア並みに安定で,逆に冬のハクレンは スケトウダラと似た不安定な性質を示した(図1).この違い は,ハクレンが夏と冬とではタンパク質の構造を変化させてい るためであることがわかってきた.魚では初めての発見である.
 この変化は,かまぼこのゲル化の特性にも影響しており,冬の 魚肉はスケトウダラと同じように低温でゲル化する「坐り」現 象を示すが,夏の魚肉は「坐り」は起こらない.
 ハクレンは,白身の魚で脂質が少なく低コストで養殖しやす いとの長所を持っているが,泥臭く市場価値が低いため,現在 あまり有効利用されていない.しかしミオシン変性速度などに よって,冷凍すり身の原料として利用する研究が進んでおり, 近い将来に食卓でお目にかかる日があるかもしれない.
 

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