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カーボンナノチューブ
(Carbon nanotube:略称CNT)
                             


  カーボンナノチューブは,1991 年,日本の飯島澄男氏(当時,NEC 筑波研究所:現,名城大学大学院理工学研究科 教授)によって,フラーレン注1)を作っている途中にアーク放電した炭素電極の陰極側の堆積物中から発見された.
 直径は0.4 ~ 50 nm であり,その名のとおりナノメートル単位であるため,電子顕微鏡によってようやく観察できる. 基本的には,一様な平面のグラファイト(グラフェンシート:炭素原子が6 員環形状に連続してシートになったもの) を丸めて円筒状にしたような構造をしている.閉口状態の場合,両端はフラーレンの半球のような構造で閉じられてお り,5 員環を必ず6 個ずつ持つ(サッカーボールの構成と同じ).
 構造材料としては,重量,強度特性が,それぞれアルミニウムの半分という軽さ,鋼鉄の20 倍の強度と,非常にし なやかな弾性力を持っている.これらの特長を活かして,SF 小説でも描かれていた軌道エレベータ(宇宙エレベータ) を実現させる素材としても注目度が高い.複合材として用いることでハイパービルディングや大型の橋梁用ケーブル, 自動車,航空機,宇宙船などの,従来物質では不可能な構造物への応用が考えられる.
 またエレクトロニクス利用としては,電場をかけると5 員環から電子が放出されるため,FED(Field Emission Display:電界放出ディスプレイ),平面蛍光管,冷陰極管のカソード(陰極)デバイスへの応用も研究されている.構 造によって特性などが変わるため,シリコン以後の半導体の素材としても期待されている.銅の1 000 倍以上の高電流 密度耐性,銅の10 倍の高熱伝導特性,高機械強度,細長い,などの特性がCNT の電子材料としての特長であり,集 積回路などへの応用が期待されている.導電性の高さと表面積の大きさから燃料電池としての応用も進められている. また,キャパシタ(蓄電器)に応用することで大幅な充放電特性改善と長寿命化を図ることができる.このほかにもい ろいろな性質を秘めているのではないかと期待され,さらなる利用価値を探して世界中で研究が進められている.
 しかし一方で,カーボン・ナノチューブ技術を用いた製品は,アスベストに似た健康被害を及ぼす可能性があること が2008 年5 月21 日,英科学専門誌「Nature Nanotechnology」に掲載された論文により明らかとなった.
 以上,素晴らしい特性とともに問題点も指摘されてはいるが,今後の技術革新に対して極めて重要なキーとなる素材 といえる.
 
 注1 フラーレン(fullerene):最小の構造が多数の炭素原子で構成されるクラスターの総称.
 構造の始まりが14 個のダイヤモンドおよび6 個のグラファイトと異なり,数十個の数の原子から始まる炭素元素同素体.
 参考資料:ウィキペディア http://ja.wikipedia.org
 総合科学技術会議 http://www8.cao.go.jp/cstp/

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