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エクセルギー
―エネルギーの使い方で新たに見えてくる世界―
                             


 
「エクセルギー」とは,エネルギーの価値や質を数値化して表そうとしたものである.「エクセルギー」という言葉そ のものは,「取り出せる仕事」を意味するギリシャ語で,1956 年にドイツの熱力学学者ラントがつくった言葉だとされ ている.
太陽光や風力・地熱といった自然エネルギーを中心に再生可能エネルギーの活用が進むにつれて,残量が懸念される 天然資源の化石燃料(石油・天然ガス・石炭など)は,より利用価値のある(≒質の高い)エネルギーとして活用すべ きという考えが広まっている.これに代表されるように,エネルギーに価値と質の概念を与えて,地球環境と人類に とってより有益な使い方であるかを,具体的に数値で判断できるものが「エクセルギー」の考え方ともいえる.
 
(1)エクセルギーの定義
その地域の環境温度で取り出せる最大の有効エネルギーを表す.
E=Q(1-T0/T2)=Q-T0・Q/T2=ΔH-T0ΔS
………………………………………(1)
ここに,
E:エクセルギー(J)
Q :エネルギーのエンタルピー(J)
T0 :環境温度(K)
T2 :エネルギーの温度(K)
H :エンタルピー(J)
S :エントロピー(J/K)
※式(1)の右辺T0ΔS は,サイクルのエントロピー増加量と環境温度の積で,「無効エネルギー」とも言い換えるこ とができる.したがって,環境温度が低い地区やサイクルのエントロピー増加量が少なければ,エクセルギーは大 きくなる.有効分のエネルギー量を表すことから,「エネルギーの価値」を表す指標といえる.
 
(2)エクセルギー率の定義
全エネルギーとエクセルギー(理論上取り出せる最大の有効エネルギー)の比として,次の式で定められる.
エクセルギー率=エクセルギー(有効エネルギー)(J)/ 全エネルギー(J)
… …………………(2)
特に熱エネルギーは,環境温度T0 と熱エネルギーの温度T2 が定まると一義的に定まる.
熱のエクセルギー率= 1 - {T0× lnT2 /T0)}/ (T2T0
(T2 の熱エネルギーの場合)……(3)
 エクセルギー率は,エネルギーの使われ方(エネルギー変換)により大きく変わるので,エネルギーの質を表す指標 といえる.基本的に熱を仕事(動力・電力)に変換した場合のエクセルギー率は高く,熱から熱に変換した場合のエク セルギー率は低くなる.
 
(3)エクセルギー効率の定義
エクセルギー効率=出力側のエクセルギー(J)/ 入力側のエクセルギー(J)
………………………………(4)
エネルギー効率と同様の考え方でエクセルギー効率を求めると,エネルギーの無駄な使われ方が見えてくる.
従来は,燃焼効率や発電効率などを向上させて,燃料の消費を節約することが地球環境維持や天然資源の枯渇防止に 役立つ省エネルギー対策として採られてきたが,これからは再生可能エネルギー(自然エネルギー)の活用や天然資源 の効率的活用を追求して考えることにより,仕事と熱の価値の違いや熱そのものの温度による価値の変化をきちんと捉 えて,無駄なく活用をはかることが重要であると提唱されている.
「エクセルギー」は,エネルギーの価値や質を我々に示してくれる指標であり,これをエンジニアリングに取り入れ て価値の高い省エネを図ることが求められてきている.
 
文献:アベイラブルエナジー研究会:「エネルギーの新しいものさし エクセルギー」.
   「エクセルギーシンポジウム」,(日本電気協会新聞部主催 2010 年11 月4 日).

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