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リノベーション(renovation)
                             

 最近,リノベーションという言葉をよく耳にするようになっている.建物の広告でもこの言葉が使われているし,不 動産会社や建設会社の部門名称に使用されることも珍しくなくなってきた.リノベーション「renovation」を辞書で調 べると,革新,刷新,修繕,修理,元気回復といった意味となっていて,少しわかりづらく言葉の定義も曖昧である. 建物について建設業界などで解釈されている一つの考え方では,既存の建物が完成当時に持っていた価値を上回る新し い価値を創造し,建物を再生,再構築するといったこととなる.
 時間の経過とともに古くなり,新しいニーズや業務スタイルに対応ができなくなった既存の建物や設備を,時代に合 った用途や機能を持たせるために改修し,建物,設備の価値や魅力を再び高めることがリノベーションである.リニュ ーアルやリフォームは,建物を時代に合うよう新しく改修し設備を更新することを意味するが,リノベーションは,新 しい概念による建物の再構築,建物価値を高める,建物性能の向上といったことに重点を置いていることが前者との違 いである.
 建築設備分野にとって求められるリノベーションは,環境性(ecology),快適性(amenity)および信頼性(reliability) を高めていくことであろう.具体的に述べると,「環境への対応」では,今日当たり前のこととなっているCO2 の削減, 省エネルギー性能の向上を図った高効率の設備やエネルギー管理システムを導入していくことである.「快適性の向上」 では,建物自体あるいは室の用途変更(コンバージョン)や高度情報化システムの導入に対応した設備計画を実施し, 適切な空調や照明などを改善することにより居住空間の快適性を向上していくことである.「信頼性の確保」では,最 近よく聞くBCP(ビジネス継続プラン:建築物については地震や洪水などの自然災害に対する対応が今のところ主流) を目的とした設備インフラ整備や保守性を重視してシステム構築を行うことなどが必要となってくる.
 すべての建物がリノベーションの実施に向いているわけではない.建物価値を上げるために最も重要な耐震性の確保 にコストが掛かりすぎるものや,低い階高で自由なレイアウトが困難なものなど,リノベーションに不向きな建物が数 多くあることも確かである.陳腐化した建物を再生するためには,スクラップアンドビルドの手法を選択するしかない 場合もあるが,解体や新築に比べ廃棄物を少なくでき,地球環境にもやさしく比較的低コストで建物の価値を高められ る「リノベーション」の需要は,今後多くなっていくであろう.

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