最近気になる用語 154
マイクログリッド
                             


 電力は一般に大規模な発電所で作られ,送電線,変電所,配電線を経由して住宅,ビル,工場などの需要家に送られ るが,近年,技術革新や環境問題と相まって,電力を必要とする場所の近くに小型発電機を設置し発電する「分散型電 源」の導入が進められている.この分散型電源を用いてエネルギーを供給するシステムを「分散型エネルギーシステム」 と呼び,需要地内で複数の分散型電源や電力貯蔵システムを組み合わせ,分散型電源の発電量を需要状況に合わせて制 御し,電力の地域自給を可能とする小規模の電力供給網のことを「マイクログリッド」と呼んでいる.
 マイクログリッドによる分散型エネルギーシステムでは,以下のメリットが考えられる.
 
(1)設備投資
電気や熱を使う場所の近くで発電するので,送電線で長い距離を運ぶ必要がなく,送電設備投資などの大規模なイ ンフラ投資と送電損失を回避することができる.
 
(2)環境・効率
需要場所での発電のため,発電の際に発生する膨大な排熱を極力自然界へ放出せずに活用でき,エネルギー効率面 と併せて地球環境面からも望ましい.
 
(3)災害リスク
送電網が寸断されて大規模停電に繋がらないよう,災害リスク分散型のシステムとして,社会活動の機能停止に至 る災害リスクを防止する.
 
(4)安定性
 エネルギー源をできるだけ多様化することにより,特定エネルギー源への依存度を下げることが可能となり,エネ ルギー供給の安定性が向上する.
 分散型電源としては,新エネルギーの利用が進められており,風力や太陽光といった自然エネルギーは,自然環境や 季節間,昼夜間などの影響を受け出力変動が生じるため,他の新エネルギーと適切に組み合わせ,これらを制御するこ とにより,特定地域内で安定した電力・熱供給を行うことが可能となる.
 電力の需要と供給のバランスが崩れると,電圧や周波数といった電力品質も変動し電気機器に悪影響を及ぼすため, 電力系統との連携を行い,分散型電源では賄い切れない場合に電力系統の電気で補い,電気が余剰の場合は電力系統側 に電気を供給する.マイクログリッドによって,新エネルギーと他の分散型電源や電力貯蔵装置をネットワークし,電 力変動の波を極力平準化して電力品質を制御することにより,系統側の負担を軽減することが可能になる.また,電力 系統との連携により,分散型電源の故障やメンテナンス時には電力系統をバックアップとして利用でき,電力系統の停 電時には分散型電源を非常用として利用するなど,信頼性の向上が図れる.
 近年,風力発電や太陽光発電,バイオマス発電などの新エネルギーは著しい進展を見せ,コジェネレーションシステ ムの普及に加え,燃料電池など小規模向きの新技術も急速に発展してきており,こうした分散型電源の社会的なニーズ が高まっている.今後,分散型電源の普及が進めば,電力ネットワーク全体の安定性をいかに維持していくかが重要な 課題となり,マイクログリッドの展開が注目されている.

参考文献:

NEDO ホームページ 技術解説「分散型エネルギーシステム」.

「最近気になる用語」
学会誌「冷凍」への掲載巻号一覧表