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トランスヒートコンテナ
                             

 トランスヒートコンテナとは、潜熱蓄熱材(PCM:phase Change Material)をタンクに貯蔵し、コンテナ車などの 陸上輸送により、広範囲に熱を供給するシステムである。今まで、ごみ焼却所や発電所、工場などで再利用が困難なため 捨てられていた廃熱(200℃以下)を効率よく回収し、離れた需要先まで車や鉄道で供給するシステムである。未利用エネルギーを 効率的に活用することで、COを大幅に削減することが可能となっている。
 従来の電力やガスなど、電線や配管ラインを利用して「オンライン」によりエネルギーを供給する方式に対し、車両で 輸送する「オフライン」によるエネルギー供給は、インフラ整備コストが大幅に削減できることが大きな特徴である。 車両で輸送するため、蓄熱材は重量あたりの蓄熱量(蓄熱密度)が大きく、移動効率のよいことが条件となる。そのため、 蓄熱媒体は潜熱蓄熱材を採用している。
 トランスヒートコンテナで使用する潜熱蓄熱材は、物質の相を変化させたときの熱量を利用して蓄熱する材料である。 蓄熱材の選択にあたっては、利用温度範囲に適したものを選択する必要がある。種々の用途に対応するため、蓄熱媒体として 利用可能な温度により、複数の種類が用意されている。潜熱蓄熱材は、廃熱の発生するところで加熱され融解して液状化し、 融解潜熱として蓄熱される。これを需要側施設へ輸送し、熱交換器を通じて温熱を供給する。加熱系のみだけでなく、高温型の 蓄熱材は吸収冷凍機の熱源として、冷房にも使用可能なものもある。
 この技術はドイツ航空宇宙研究所で研究されていたもので、1999年に実用化された。2001年にはドイツのフランクフルトで 実際に熱供給事業が開始され、化学工場の廃熱を12km離れたオフィスビルまで運び、暖房の給湯の熱源として使用している。 その他にもフランス、アメリカなどで導入実績がある。日本国内においても、下水道の汚泥焼却施設の廃熱を市民体育館まで 輸送し、暖房用エネルギーとして利用する実証試験が行われている。

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