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水産物の原料原産地のDNA判断技術
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消費者が安心して食品を選択できるようにJAS法が改正され、生鮮水産物、およびうなぎ蒲焼、かつお削り節、塩干
アジ・サバ、塩蔵ワカメなど多くの水産加工品について、「原料原産地名」などの表示が義務づけられた。しかし、国
産表示のシジミ貝に中国産が混じっていたり、表示はアマダイでも実際はキングクリップだったり、四万十ウナギと表
示されていたものが輸入品だったり、表示義務違反が後を絶たない。このような違反を証明するために、あるいは違反
が起こらないように抑止力として、科学的に判別技術の開発が進められてきた。その一例を紹介する。
(1)アジ塩干品の種判別 1)
アジ類の輸入の7割がオランダ、ノルウェー、アイスランドなどヨーロッパ諸国からであり、原料はニシマアジである。
ニシマアジと日本のマアジではミトコンドリアのある領域の塩基配列に違う部分があり、その片方の塩基配列を切断できる
制限酵素で処理し、切断の有る無しをPCR-RELP法で観察して判別する方法が開発された。サバ類、カニ類など多くの水産物でも
同じような原理で判別が可能である。
(2)マグロ類の種判別 1)
高価なクロマグロ、ミナミマグロと比較的安価なキハダマグロの名称を偽装する事件が時々ある。各種マグロのミト
コンドリアDNAの全塩基配列を解析し、クラスター分析から種の判別を可能とした。また、クラスター分析から類縁関係を見ると、
太平洋クロマグロとビンナガが、大西洋クロマグロとミナミマグロがそれぞれ近縁種であるが、太平洋クロマグロと大西洋クロマグロは
あまり近くないことがわかった。
(3)ウナギの種判別 2)
我が国では、ニホンウナギとヨーロッパウナギが流通している。蛍光発色法により、DNAの増幅結果を確認できるTaqMan MGB
プローブを加えてPCRを行った後に紫外線照射下での蛍光発色の有る無しで、ニッポンウナギとヨーロッパウナギの迅速な判別法を開発した。
(4)マガキの産地推定 3)
マガキは我が国の重要な養殖対象種であるが、世界各地に移植され、移植されたマガキが再び輸入され、産地偽装が
時々問題となっている。これに対して、マイクロサテライトDNAマーカーを使った産地推定法が開発された。
マイクロサテライトとは、核DNA中に複数の塩基が単純に反復する領域のことである。ある特定の単純塩基配列の繰り返し頻度が、
日本と韓国のマガキでは異なることを見つけて産地推定法が開発された。
文 献
1)高嶋康晴,森田貴己,山下倫明:"ミトコンドリアDNAおよび成分分析による加工食品の原料原産地判別"
,「水産物の原料・産地判別(福田裕・渡部終五・中村弘二編)」恒星社恒星閣,pp.52-61,(2006).
2)瀬崎啓次郎,糸井史朗,金子元,中谷操子,渡部終五:"ミトコンドリア分析による魚類加工種判別",
「水産物の原料・産地判別(福田裕・渡部終五・中村弘二編)」恒星社恒星閣,pp.18-27,(2006).
3)関野正志,浜田昌巳,大越健嗣:"マイクロサテライトDNAを用いたマガキの集団解析",
「水産物の原料・産地判別(福田裕・渡部終五・中村弘二編)」恒星社恒星閣,pp.85-93,(2006).
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