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変流量制御
                             


 冷凍空調システムの省エネルギーを考える場合には、熱源機であるターボ冷凍機や吸収冷温水機の高効率化とともに、 水や空気の搬送動力や補機動力の削減が重量な課題となってくる。実際、オフィスビルのエネルギー消費では、 空調システムの消費が全体の40%以上を占めており、そのうちの約40%が冷温水や空気の搬送動力、冷却水系の補機動力で 占められている1)。これらの搬送動力を削減するために、従来から空調機への冷温水流量を制御するVWV(Variable Water Volume) 制御や室内への空気流量を制御するVAV(Variable Air Volume)制御が行なわれるようになってきた。
 冷凍空調負荷に関係なく一定流量でポンプを運転していた制御方式に対して、変流量制御では負荷に応じて流量を減らすことにより 搬送動力の削減を図っている。流量を削減する方法としては、インバータなどによりポンプやファンの回転数を下げる方法と、絞りや ダンパによって流路の抵抗を大きくする方法がある。流路の抵抗を大きくすると、一見、動力が増加するように思われるが、 流量が低下することで必要な動力が削減できる。
 図1のポンプ性能曲線を例に説明する2)。 横軸に流量Q、縦軸に全揚程Hをとった図において、ポンプの性能曲線 右下がりの曲線で表される。 ポンプの回転数を変化させた場合、流量は回転数に比例し、全揚程は回転数の2乗、動力は回転数の3乗に比例して変化する。 同じ図のシステムの抵抗曲線を表すと、流動抵抗が流量の約2乗に比例して増加する2次曲線となる。また、ポンプに必要な 理論動力は流量と全揚程の積に比例するので双曲線で表される。ポンプの動作点は性能曲線とシステム抵抗曲線の交点P0 に定まり、流量はQ0となる。
ここで、ポンプの回転数をN0からN1に下げると性能曲線は全揚程の小さい下方に移動し、ポンプの動作点はP1、流量はQ0から Q1に低減でき、必要な動力も削減できることがわかる。
 冷水の流量を小さくした場合は、ポンプ動力を削減できるだけでなく、熱源機の熱交換器出入り口の温度差を確保し、 熱源機自体の効率低下を防止する効果もある。
 ところで、実際の冷凍空調システムにおいては、ターボ冷凍機や吸収式冷温水機などの熱源機の運転条件により、 流量を所定の値に制御できない場合がある。たとえば、熱源機サイクルの温度、圧力が運転範囲を超えてしまうなどの理由による。 このため、熱源機周りの冷却水、冷温水流量は定流量運転が主流であったが、最近では、熱源機の運転状態信号を取り込んで、 これを基に冷却水や冷温水の変流量制御を行なうシステムが用いられるようになっている。
 また、流量が少ないために熱源機や室内などの需要側熱交換器の性能が低下し、搬送動力は低下してもトータルとしては 必ずしも省エネルギーにはならない場合もある。そこで、さらに進んで、需要側の室内機から放熱側の冷却塔までの システム全体の運転状態信号を取り込んで、送風空気や冷水、冷却水の流量、および設定温度をトータルに制御し、全体最適化を 図るようなシステムも実用化されている。
  
参考資料
1) http://www.eccj.or.jp/office_bldg/index.html
2) 高田秋一,堀川武廣:「わかる!ポンプの選び方・使い方」,オーム社,東京(2000).

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