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マイクロチャンネル熱交換器
                             

 冷熱機器の高性能化を目的として、これまでの熱交換器における伝熱性能の向上が検討されてきた。
その内容として、フィン形状を工夫するなど空気側伝熱面の検討が主に進められてきたが、近年、伝熱性能を 向上させる有効な手法の一つして、マイクロチャネルが注目されてきている。 今回はそのマイクロチャンネルについて解説する。
1.概説
 マイクロチャンネルとは、微細加工技術などを使って加工した狭隘な流路のことを指す。
ここでの流路の大きさの定義は明らかではないが、一般に表面張力の影響が現れる 数ミリ径以下のものを呼ぶことが多い。
 なお、マイクロチャンネルの応用分野は表1に示すように広い範囲に及び、今後の冷熱機器の省エネルギー、 環境保全およびその他ナノテクノロジーの核になる技術として期待されている。
 特に冷熱機器の分野では、マイクロチャンネル化によるスケール効果と伝熱性能の向上により、熱交換器の 飛躍的な小型化、高性能化が期待されている。
表1 マイクロチャンネル応用分野
CPUなどの各種電子機器の冷却
マイクロヒートパイプ
小型冷凍空調機器
多孔質や極微小亀裂内流れ
宇宙空間での熱放射
純水製造
マイクロマシン技術
毛細血管内の血液流
トライボロジー
光通信用レーザー
マイクロ化学分析装置
マイクロ燃焼器
2.技術動向
 一般的に熱交換器の管内熱伝達率は管の流路断面寸法の逆数に 比例することが知られており、熱交換器をマイクロチャンネル化した場合、 高い熱伝達率が得られることとなる。また、狭隘なチャンネル内の流体を高速流と した場合、境界層は薄くなるが管内の温度勾配がさらに大きくなるので、管壁を通じた熱交換率 の上昇が見込める。(図1)
しかし、管径の微細化により流動抵抗が増大するため、熱伝達と圧力損失はトレードオフの 関係となり、これらを最適化することがマイクロチャンネルの応用を考える上での技術的課題と言える。

図1 配管内の温度勾配

 そこで最近では、単純な構造で単位体積あたりの伝熱面積を大きくするために フィンを持たない細い裸管を多数配列したマイクロベアチューブ熱交換器が提案され、 基礎研究がなされている。(図2)
 また、米国においてはマイクロチャンネル熱交換器はカーエアコンなどに広く 応用され、技術開発も進んでいる。これには、扁平管内をいくつかの流路に分割したものが 伝熱管として採用されているが、近年の加工技術の進展により各流路径を飛躍的に 小さく加工することが可能となっている。

図2 マイクロ・ベアチューブ熱交換器

3.マイクロチャンネル利用のメリット
マイクロチャンネルを利用した場合のメリットとしては以下の4項目が考えられる。
(1)熱交換器の小型化により、機器の配置や設計などに柔軟性が生まれ、システムとしての 最適設計が容易。
(2)熱交換器の高効率化により、空冷用ファンなどの送風機動力を削減することが可能。
(3)熱交換器としての高耐圧化が可能。
(4)熱交換器を小型化することで、冷媒充填量を低減でき、環境負荷の低減が可能。
4.自然冷媒への応用
 環境に優しい冷媒として、自然冷媒が注目されている。特に、二酸化炭素はヒートポンプ式 給湯機や次世代のカーエアコン用冷媒として有望である。しかし、二酸化炭素を用いた冷凍サイクル の作動圧力は従来のフロンを使用したものに比べ少なくできるという利点がある。 このことから細径化により高耐圧化が図れるマイクロチャンネルは二酸化炭素用 熱交換器として適しており、今後、家庭用の二酸化炭素ヒートポンプ給湯機や次世代カーエアコン用の 熱交換器として展開が期待される。

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