バイオディーゼル燃料
バイオディーゼル燃料
(Bio-diesel Fuel : BDF)


  バイオディーゼル燃料(Bio-diesel Fuel : BDF)は,植物油脂や動物油脂などの再生可能な資源からつくられる軽油 代替燃料であり,その主な特徴は,カーボンニュートラル,生分解性,再生可能なバイオマス燃料であること,さらに 軽油との混合によりディーゼルエンジンの排ガス規制値をクリアできることなどが挙げられる.特に,湖沼や河川の環 境汚染物質となっている台所からの廃食油を回収してBDF 化することにより,深刻化している都市の大気汚染防止に 役立てるなど,エネルギー資源枯渇,地球温暖化および大気汚染などの環境問題の解決に貢献する燃料として注目され ている.
  現在,実用化されているBDF の製法は,アルカリ触媒を用いたトリグリセリドのアルコリシスによる脂肪酸メチル エステル(Fatty Acid Methyl Ester ; FAME)の生成である.しかし,この製法では副生成物グリセリンおよび生成物の 洗浄に多額のコストを要すること,原料油の含水率および遊離脂肪酸含量が低くなければならないことなどが挙げられ, 触媒を用いることなくBDF を生産できる方法が求められている.
  無触媒反応によるBDF の生産方法として,最近研究されているのが超臨界メタノール法である.この方法は,メタ ノールを臨界点である239 ℃,8.09 MPa 以上の高温高圧にすることで反応効率を高めたものであるが,この高い圧力条 件によって装置コストが高くなることや生産プラントにおける人件費の増大などのため,実用化には不向きと考えられ る.したがって,現在,国家プロジェクトとして進められている「バイオマス・ニッポン」では,無触媒反応による BDF の作製を臨界圧よりも低い圧力条件において行う方法の開発が進められている.
  約100 年前,ディーゼルエンジンを開発したルドルフ・ディーゼルが,ピーナツ油を燃料としてエンジンを作動させ たことはよく知られている.その後1930 ~ 40 年代には,化石燃料が主要な燃料となり,植物油は主に非常時の燃料と して使用されてきたが,最近では,原油価格の高騰,化石燃料の有限性,環境問題への関心などから再びBDF に関心 が集まっている.
  現在,BDF は世界で200 万kL を上回る生産量があるとされ,その主要生産国は,フランス(約89 万kL),ドイツ (約80 万kL),イタリア(約24 万kL)である.BDF 生産をリードする欧州においては,主に菜種の新油からBDF が生 産されている.欧州では,BDF に課税を行わないことに加え,非食用の油糧作物に関して,作付け農家に補助金を支 給していることが,強力な推進力となっている.
  また,アメリカにおいては,大豆の新油を主な原料としてBDF 生産を行っているが,その生産量は約8 万kL と多く はない.しかしながら,軽油にBDF を20 %混合した燃料に対して課税を行わないとするB20 法を採用している州がい くつかある.欧州およびアメリカのいずれにおいても,BDF の生産および利用は,温暖化ガスの削減や大気汚染対策 などの環境問題への対策だけでなく,余剰農産物の食用外利用を目的としている.
  一方,食用油脂の9 割以上を輸入しているわが国では,新油によるBDF 生産は現実的でなく,廃食油を原料とした BDF 生産が行われている.日本全体で年間3 000 トンといわれるBDF 生産のうち,京都市の事業によるものが1 600 ト ンを占めており,日本におけるBDF 生産は京都市を除いては小規模である.日本国内における廃食油の発生量は年間 45 万トンであるが,このうち回収され,飼料や石鹸として利用されている量は約20 万トンである.残りの25 万トンに ついては廃棄されているが,回収してBDF 生産の原料とすることが可能と考慮すると,日本におけるBDF 生産普及の ための潜在的可能性は高いと考えられる.さらに,日本全国のディーゼルエンジンにBDF を供給するための方策とし て,東南アジアで生産されているパームオイルの加工・輸入も検討されている.

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