バイオガスの発生プロセス 近年,下水汚泥,家畜糞尿および食物残渣などをメタン発酵させ,得られたメタンガスを気体燃料として使用し,分 散型発電や暖房・給湯用の熱エネルギー源とする試みが進められている.今回,このバイオガスの発生プロセスについ て解説する. バイオガスの処方は,図1に示すようにプロセス工学的に被処理物が固形状(乾式)か流動状(湿式)か,また被処 理物の搬入方法がバッチ式か貫流式か,さらに発酵プロセスが単式かあるいは複式かによって,いくつかの形態に分 類することができる.この中で典型的なものについて以下に述べる. 1.バッチ方式 バッチ方式は被処理物を発酵槽に一定量充填させ,設定された滞留期間が終わるまで発酵させるが,その間に被処 理物の再投入や外部に取り出しはしない方式である.このバッチ式においては,被処理物を素早く発酵槽に充填する ことや発酵槽より取り出すことが必要となるため,発酵槽に近接して発酵槽と同一容量の予備槽と貯蔵槽を設ける必 要がある.その結果,建築コストが高くなるとともにガスの発生が一定とならない欠点があり,現在研究用としてだ け採用されている方式である(図2). 2.槽交換方式 槽交換方式は予備槽,2 層の発酵槽および貯蔵槽から構成される.この方式は予備槽から被処理物を発酵槽(1)へ連 続的に充填する間に発酵槽(2)内の発酵を進行させ,発酵槽(1)が充填された段階で発酵槽(2)内で完腐したスラリー を貯蔵槽に移し,次に予備槽から発酵槽(2)へ被処理物を連続的に充填するものである.また,貯蔵槽からは逐次スラ リーが液肥として取り出せるよう,一般的に貯蔵槽の容量は発酵槽の容量よりも大きいものとなっている. この方式の特長は,非常に安定したガスの発生が得られると同時に,発酵全工程で新しい被処理物が投入されないこ とから,システムとして高い衛生効果を保つことが挙げられる.また,欠点としては前述のバッチ方式と同様に建築コ ストが高いという点にある(図3). 3.貫流方式 貫流方式は常に発酵槽が被処理物で満たされている点でほかの方式と異なっている.比較的小さな予備槽から,通常 1 ~ 2 回/日の頻度で新しい被処理物が発酵槽に送り込まれ,同時に同量の完腐したスラリーがオーバーフローし,貯 蔵槽に送り込まれる. この方式の特長は,発酵槽がフル稼働の状態で常に一定のガスを発生し続けることができ,また システムがコンパクトであることと建築コストが安価で熱の損失も少ない点にある.さらには,予備槽にフロートスイ ッチやタイマを用いてポンプを駆動させ,被処理物の充填工程を自動化できるという利点がある.一方,前述のバッチ 方式や槽交換方式に比べ劣っている点は,新しく投入した被処理物と完腐したスラリーが混合することにより,衛生面を損なうことが挙げ られる(図4). 5.貫流・貯蔵方式 貫流・貯蔵方式は前述の貫流方式と貯蔵方式を複合させたものであり,バイオガス発生のプロセス工学上,現時点 でもっとも開発が進んでいるシステムである.この方式は貫流式発酵槽と好気性発酵による窒素損失を防ぎ,かつバ イオガスを採取するため完腐スラリーを貯蔵する貯蔵槽から構成されており,貯蔵槽は発酵槽(貫流型)の後に配置 される. なお,この方式の特長としては,貯蔵期間が長い場合,全ガス発生量の20 ~ 40 %を発酵槽ではなく貯蔵槽 より採取することができ,また貯蔵槽については断熱処理,過熱機能および撹拌機能などが不要であるため,コスト的 負担が比較的少ないという点が挙げられる(図6). 文 献 浮田良則「バイオガス実用技術」,pp.41-46,オーム社,東京(2003). 「最近気になる用語」 学会誌「冷凍」への掲載巻号一覧表 |