シックハウス症候群
シックハウス症候群

  新築や改築後の住宅やビルなどで化学物質による室内空気汚染により居住者が健康障害を起こすことと言われている が,現在一つに明確に合意された定義は未だない.健康障害の症状は様々な種類があり,頭痛,眼の痛み,鼻炎,喉の 痛み,粘膜・皮膚の乾燥感,めまい,吐き気,集中力低下,疲労などが主な症状である.住宅やビルなどを離れるとそ の症状は軽快または消えるのが一般的とされている.これら症状発生の仕組みは医学的に現在未解明であり,様々な複 合要因が考えられる.
  このシックハウス症候群は欧米ではシックビルディング症候群(sick building syndrome)と呼ばれており,1980 年代 米国で社会問題となり,日本では1990 年代中頃から注目されている.近年このシックハウス症候群が生じた原因とし て,
①住宅などに使用されている建材,接着剤や家具,日用品(防臭剤,防腐剤,化粧品など)などから様々な化学物 質が発散すること,②住宅などの気密性が高いこと,③換気が不足していることがある.
  主な対策としては,①有害な化学物質を含んだ建材,接着剤や家具,日用品などを使用しないこと,
②換気設備を設 置することなどにより換気を充分に行い室内の空気の化学物質による汚染を少なくすること,がある.
対策に関しては 政府,学会,関連業界も取組んでおり,行政的対応として,厚生労働省より平成14 年2 月8 日に「室内空気中化学物質 の室内濃度指針値」として揮発性有機化合物(VOC)の室内濃度指針値を定めている.また建築基準法が平成15 年7 月1 日に改正施行されており,建材などに使用する化学物質を規制し,機械換気設備の設置を義務付けている.
主な内容は 次の通りである.ほかに学会の研究,建材,接着剤,塗料などの業界で有害物質を発生しない材料の開発も進められて いる.
1. 室内空気中化学物質の室内濃度指針値(厚生労働省)平成14 年2 月8 日報告
2. 建築基準法改正(国土交通省)平成15 年7 月1 日施行(平成15 年7 月1日以降に着工される建築物に適用される)
(1)規制対象とする化学物質:クロルピリホス及びホルムアルデヒドとする.
(2)クロルピリホスに関する規制:居室を有する建築物には,クロルピリホスを添加した建材の使用を禁止する. (クロルピリホスはシロアリの駆除剤)
(3)ホルムアルデヒドに関する規制:次の①~③の全ての対策が必要となる.
① 内装の仕上げの制限:居室の種類及び換気回数に応じて,内装仕上げに使用するホルムアルデヒドを発散する 建材の面積制限を行う.
② 換気設備の義務付け:ホルムアルデヒドを発散する建材を使用しない場合でも,家具からの発散があるため, 原則として全ての建築物に機械換気設備の設置を義務付ける.
③ 天井裏等の制限:天井裏等は,下地材をホルムアルデヒドの発散の少ない建材とするか,機械換気設備を天井 裏等も換気できる構造とする.
④ 規制の対象となる建材:(イ)合板,(ロ)木質系フローリング,(ハ)構造用パネル,(ニ)集成材,(ホ)単板 積層材,(ヘ)ミディアムデンシティファイバーボード,(ト)パーティクルボード,(チ)その他の木質建材, (リ)ユリア樹脂板,(ヌ)壁紙,(ル)接着剤(現場施工,工場での二次加工とも),(ヲ)保温材,(ワ)緩衝 材,(カ)断熱材,(ヨ)塗料,(タ)仕上塗材,(レ)接着剤(現場施工)

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