87   磁気冷凍   


     磁気冷凍は,磁性体に磁界をかけていくと磁性体が発熱し,磁界を取り去ると温度が下がる現象(磁気熱量効果)を利用した冷凍システムである.そのサイクルは逆カルノーサイクルであり,蒸気圧縮式冷凍サイクルと対比すると以下のようになり,理論効率はカルノー効率となる.  
    蒸気圧縮式冷凍機において冷媒が気化することにより周りから熱を奪うのと,磁気冷凍で磁界を弱めることが対応し(消磁),蒸気圧縮式冷凍機において気化した冷媒に圧力をかけて液体にすることが,磁気冷凍で磁界を強めることが対応する(磁化).さらに,蒸気圧縮式冷凍サイクルの圧力と磁気冷凍サイクルの磁界が対応し,磁化および消磁させる物質(すなわち磁性体)は動作媒体に対応される.  
    当初この磁気冷凍機は,磁性体の格子比熱が小さくなり,小さい磁場で動作できる極低温領域(液体ヘリウム温度領域)の冷凍機として,米国NASAのブラウン博士らにより開発され,超伝導磁石を利用して20~40%のカルノー効率が得られている.  
    さらに,磁気冷凍機の主要な特徴である.
1)フロンなどの冷媒を使用しないので環境負荷が極少である
2)圧縮機が不用,気体の圧縮・膨張での損失がないので省エネを図れる
 
    などを活かして,最近中部電力と東芝のグループが常温磁気冷凍機を開発し,28 ℃から-1 ℃の冷凍をCOP4.3で成功しており,今後,熱交換部分の改良などにより高効率な環境対応型の冷凍システムの実現が期待される.