86 超臨界ガス抽出 図1に示したように,液体に圧力と温度のような分子間の距離や体積に対して 相反する力を同時に高くしていくと,液体でもない,気体でもない超臨界ガスの 状態に変化する.超臨界ガスは,密度は液体に近く,粘度が通常のガスの2~3倍で, 拡散係数は液体の100倍程度である.このため,超臨界ガスは液体の溶解力とガスの 拡散性・浸透性を合わせ持ち,抽出溶媒として優れ,表1のような対象分野での利用 の可能性が考えられている.また,圧力と温度によって密度,すなわち溶解力が大き く変化することから,回収も容易である.二酸化炭素は臨界圧力が72.8atmであり, 臨界温度が31.1 ℃と比較的常温に近く,引火性や化学反応性がなく,純度の高いも のが安価に手に入ることなどから,もっともよく利用される. (参考資料)小林 猛:(社)日本科学工学会編,食品工業における科学・技術の進歩(Ⅱ) pp.121~140,(1986). |
図1 二酸化炭素のP-T-p線図
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医 薬 品 工 業 | 酵素,ビタミンなどの精製,回収 動植物からの薬効成分の抽出(アルカロイド,トコフェロール,精油など) 医薬品原料の濃縮,精製,脱溶剤 脂質混合物の分離精製(グリセライド,脂肪酸,レシチン) 酵母,菌体生成物の抽出 |
食 品 工 業 | 植物油脂の抽出(大豆,ヒマワリ,パーム,ココア) 動物油脂の抽出(魚油,肝油,…) 食品の脱脂(ポテトチップ,フライ製品,無脂スターチ,…) ☆コーヒー,茶の脱カフェイン,ホップの抽出 ☆香辛料の抽出(コショー,ナツメグ,シナモン,クロープ,…) 植物色素の抽出(パプリカ,クチナシ,…) アルコール飲料のソフト化 脱色,脱臭 |
香料工業 化 粧 品 |
天然香料の抽出,合成香料の分離,精製 タバコの脱ニコチン 化粧品原料の抽出,精製(界面活性剤,脂肪酸エステル,モノグリセライド) |
化 学 工 業 | 炭化水素の分離(パラフィン系と芳香族系,ナフテン系の分離,α・オレフィンの分離,n・パラフィンとiso・パラフィンの分離) 有機合成原料の精製(カルボン酸,エステル,酸無水物など)アジビン酸,テレフタル酸,カプロラクタム,DMT 有機溶媒水溶液の脱水(アルコール,MEX,…) 共沸混合物の分離(H2O・EtOH,…) 希釈溶剤としての利用(重合反応,パラフィンの異性化反応) 反応薬剤(低級脂肪酸塩水溶液より脂肪酸の回収) アルミニウムアルキルの回収 高分子物質の分画(ポリカルポシラン,シリコンオイル,ハーフルオロエーテル,ハロカーボン類) |
エネルギー関係 | 石炭成分の抽出(パラフィン,クレオソート,タール,…) ☆石炭液化油の抽出および脱灰(NCBプロセス,CSDプロセス…) ☆石油残渣油の脱瀝,貴金属除去(Rose法他) ☆原油の三次回収(EOR) バイオマスアルコールの濃縮,脱水 |
その他 | 活性炭の再生 ☆使用済潤滑油の再生 ☆分析手法(超臨界クロマトグラフィー) |