81 環境アセスメント(Environmental Assessment)
開発行為を行なう場合に,自然環境にどのような影響を与えるかを調査予測評価すること.
1997年(平9)6月環境アセスメント法が成立した.政府が環境アセスメントの推進を1972年(昭47)に決めて以来,25年目でやっと日の目を見たものだ.1984年閣議決定により国が関与するダムや高速道路,空港など11種の大規模開発についてアセスメントを実施することを決めた.しかし法的裏付けもなく,住民に開かれていない不十分なものでしかなかった.このために1977年の川崎市を皮切りに地方自治体は国に先行して独自のアセスメント制度の整備に乗り出した.1997年末現在で42都道府県9政令指定都市が制度化していて,このうち川崎市,北海道,神奈川県,東京都,埼玉県,岐阜県,(施行順)では条例となっている.(その他の自治体は要網など)
1996年橋本首相の諮問を受けた中央環境審議会は1997年2月「行政指導のみのアセスメントではなく早急な法制化が必要である」という答申を提出した.これを受けた環境庁はアセスメント法案を国会に上程し.6月には1983年の廃案から実に14年ぶりに環境庁にとって悲願ともいえるアセスメント法が成立した.
しかし,その内容を見ると自治体や住民の意見から調査項目を決める「スコーピング」や一定規模以下の事業でもその対象とするかどうかを判断できる「スクリーニング」を制度として盛り込んだり,また通産省が最後まで抵抗した発電所を対象事業としたなど,評価できる点も多いものの,アセスメント結果を許認可に反映させるのは経済産業・国土交通などの主務官庁であることを考えると,どこまで実効性があるか楽観視はできない.環境省が意見を出せる仕組みが制度化されているが,要は開発に対してきちんと口を出すことができるかである.1997年諌早湾閉切りの際に農水省との摩擦をさけて,環境庁長官の現地視察が直前に中止になったことがあった.環境アセスメント法が今後実効あるものになるよう国民は努力する必要がある.
現在,先進国の間ではもっと長い展望をもった戦略的環境アセスメント(SEA)導入の機運が盛り上っている.国のすべての計画や長期プラン全体に対してアセスメントを実施するという考え方である.SEAはカナダ,オランダ,デンマークでは導入済みで,欧州連合(EU)も検討段階に入っている.
(現代用語の基礎知識2001年版「自由国民社」より)
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