73. 応力腐蝕割れ(Stress Corrosion Cracking)
金属材料は、降伏点以下の比較的低い応力が付加された場合でも、特定の腐蝕環境下で
金属材料が割れる場合がある。
破壊が主として金属の溶解(陽極反応)に基づく
場合を狭義の応力腐蝕割れといい、また主として腐蝕で発生した水素(陰極反応)に基づく場合を
水素ぜい性割れといっている。
海水中でアルミニウム合金が応力腐蝕割れを起こすことはよく知られている。応力腐蝕割れの特徴の一部は、
次のとおりである。
1)一般の全面腐蝕とはほとんど関係なく、腐蝕性が比較的弱く、表面皮膜がある程度安定な環境で
起こりやすく、腐蝕性が強くて全面腐食が激しく進行するような環境では起こりがたい。
2)応力は大きいほど割れやすいが、ごく小さい応力、たとえば20~30N/mm2程度の
負荷応力でも割れる場合がある。遅れ破壊の実験では、極めて短時間に破断する場合もあるが、実用上では
一般に破断までに長時間を経過する。過去のデータでは、使用後2~3ヶ月から1年程度の期間がもっとも
多いようである。使用応力による応力弛緩のためか、1年以後に発生する場合は比較的少ないようである。
3)一般に水溶液中よりも、その蒸気中のほうが割れやすい。アンモニア・レシーバーなどで割れる位置は
すべて気相部である。
4)一般に温度の影響が大きい。温度が高いほど割れやすい。
応力腐蝕割れを起こす応力
応力腐蝕割れは、引張り応力によってのみ起こり、圧縮応力によっては起こらない。
軟鋼の応力割れは、鋼のうち、Cが0.3%以下の低炭素鋼に応力腐蝕割れを起こす特有な環境として
かせいアルカリ、硝酸塩および無水アンモニアなどがある。
また、無水アンモニアによる割れは、アンモニアンの貯蔵タンクで1950年以降
知られており、データよるとタンクの3%が3年以内に割れを生じたと報告されている。
割れを発生したものは、冷間加工材で溶接による残留応力も影響したと考えられる。
数種の鋼についてアンモニア中での割れの試験の結果では、強い材料ほど
割れやすいが、軟鋼でも割れることを確かめている。また、割れは空気中から酸素の混入により気相部で起こり、
0.2%以上の水を添加すれば割れを防ぐことができるといわれている。
これまでに経験しているアンモニア・レシーバの応力腐蝕割れは、冷間加工の
ままで応力除去焼純を施行せずにしようした場合の鏡板であった。その使用条件としては、温度が常温から50℃
、圧力が常圧から1.3MPa程度で、使用後1ヶ月から1年以内にそのほとんどが発生している。この割れの
発生部は、気液境界面より上部の気相部においてすべて発生しており、しかも鏡板の加工度が厳しい条件の
場合が多いとされている。
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