64. 燃料電池 (Fuel Cell)
燃料電池とは燃料のもっている科学エネルギーを化学反応を利用して直接電気エネルギーに変換する装置である。
現在、普通に行われている火力発電は化学エネルギー ~ 熱エネルギー ~ 機械エネルギー ~ 電気エネルギーと
3段のエネルギー変換を行うに対し、燃料電池は直接電気エネルギーに変転するので、熱サイクルと異なりカルノーの効率の
制限を受けない。
着想は大変古く、1801年に英国のディヴィー卿が炭素を燃料とする燃料電池の可能性を学術誌に発表しており、1839年、
英国のグローブ卿が水素と酸素を電気化学的に反応させ、電気を作り出せることを実験で示した。これが燃料電池の始まりと
言われている。その後、長期にわたりさまざまな試みがなされたが、再び世の注目を集めたのは1960年代に米国の宇宙船の
電源として実用化されてからである。
原理は、燃料を改質して生じる水素ガスが負極で電極に電子を与え、水素は水素イオンとなって電解質の中を正極に
向かって移動する。外部回路を通った電子と電解液の中の水素イオンは、電池内の正極に供給される酸素と反応して水を
つくり出す。この一連の反応によって、外部回路に電子の流れが生じるのである。
燃料電池には各々のシステムに使われている電解質によって、リン酸型(PAFC)(第1世代)、溶融炭酸塩型
(MCFC)(第2世代)、固体酸化物型(SOFC)(第3世代)、固体高分子型(PEFC、米国ではPEMと呼ぶ)
(第4世代)の方式がある。固体高分子型はポリマーという薄い膜が電解質そのものになり、これによりコンパクトで持ち運びが
可能となる。これを自動車メーカーが着目し、開発に一気に弾みがついた。
燃料電池の一般的な特徴は、電力需要地の近くに設置することが可能であり、電気を取り出すと同時に廃熱の利用
(コジェネレーション)を行ない総合熱効率が80%と高いこと、通常のガス、石油などの燃料を燃焼して発電するシステム
と比較して、NOX、SOXの排出がほとんどないこと、騒音、振動などの問題もないことである。
燃料電池はクリーンで高効率、静かなエネルギー変換装置として自動車用のエンジン、家庭用電源と期待がかけられて
いるが、普及するには性能の向上とともに、信頼性の向上とコストの低減が今後の課題となっている。
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