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拡大生産者責任
(EPR:Extended Producer Responsibility)
                                

  EPRとは、OECDによる一般廃棄物問題を解決する経済的手法の一種で、環境保全と経済的効率の向上を目的とした 一般廃棄物処理(廃棄物の収集、分別、再利用、リサイクル、焼却、最終処分を指す)の民営化(必ずしも物理的責任ではなく、 支払い責任を地方自治体から民間に移行する)である。
 OECDではこれを更にPPP(汚染者支払い原則)の表現とし、生産者(原材料・部分製造業者、最終生産・組立業者、 卸売り・小売り業者、流通業者・輸入業者)をあたかも汚染者のごとく、最終生産者(Final Producer)に最終責任(Ultimate Responsibility) を負わせようとしているが、OECD内の議論にも多分に混乱がみられる。 また、EPRに伴う処理費用の扱いにおいても、製品価格に上乗せするかどうかなど、経済面の分析の欠落もみられる。
 我国でも既にEPR政策が部分的に採用されている。すなわち「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進に関する 法律」(容器包装リサイクル法)が施行され、本年4月からプラスチックも対象となり、更に、2001年には「特定家庭用機器再商品化法」 (家電等再商品化法)も施行されることになった。両法とも基本線は同じであるが、例えば 回収・リサイクルコストは前者では商品価格に含まれ、後者では廃棄段階で消費者より徴収となるなどの違いがある。 また、実施にあたっては、自主的から強制的まで幅広い。したがって我国で比較的遅れているEPP政策の費用対効果分析と国際貿易への 影響は大きいので、廃棄物政策立案にはEPRの研究が大いに役立つものとなる。
 参考に「廃棄物の減量化及びリサイクル推進手法としてのEPR政策の費用効果分析および国際貿易への影響」 (平成10年度厚生省厚生科学研究費)の研究結果による提言が、2000年5月のOECDワークショップへのガイダンスマニュアル作成のために なされているので簡単に紹介する。
①EPRを廃棄物政策として明確に位置づけし、その責任主体は目的に最もかなう当事者とする。
②EPRにはPPPの用語を使用されない。
③タイトルは「EPR」でなく、1999年12月ワシントンのワークショップで提案された「Extended shared responsibility for products」 の方が好ましい。
④価格の上乗せと廃棄時点での生産者・消費者の負担割合と同等とした上で、運用費用、不法投棄、消費者教育、必要情報量等、 両者の比較検討が必要。
⑤対象製品の性状による差異を十分勘案し、各国は自国の状況に最も合致する形態を選択する。
⑥民営化により住民税引下げの検討、もしくは自治体の費用効果の検討。