自励振動型ヒートパイプ
自励振動型ヒートパイプは,パイプ内の熱媒体を循環させる駆動力として,自身の振動力を用いている.この点が,
重力や毛管力を駆動力とする従来型ヒートパイプと大きく異なる.
自励振動型ヒートパイプは,受熱部(蒸発部)と放熱部(凝縮部)との間に,熱媒体を封入した1 本の細い管を何往
復もさせ,ループ状にした構造をしている.管内に封入された熱媒体は,気相部と液相部が交互に存在する状態となる.
受熱部において,液相の熱媒体は吸収した熱により温度が上昇し,沸騰して断続的に蒸気泡を発生すると同時に圧力が
上昇する.一方,放熱部においては,冷却作用により蒸気泡の収縮または凝縮により蒸気圧力の降下と熱媒体の温度降
下が生じる.受熱部と放熱部の圧力差により自励的に発生する圧力振動により,
細い管内に閉塞された気相と液相の熱媒体が,圧力の高い受熱部から圧力の低
い放熱部へ移動する.この熱媒体の移動により潜熱と顕熱の両方の熱の輸送が
同時に行われる(図1参照).
振動力で管内の熱媒体を循環させるため,従来のヒートパイプと比べ重力の
影響を受けにくいので,取り付け姿勢による熱輸送能力の変化が小さくなる.
設計の自由度が広がることで,利用方法も広がる可能性がある.たとえば,無
重力環境つまり宇宙での利用にも期待が持てる.また,潜熱と顕熱の同時輸送
ができるので熱の密度が高く,従来型より小型化が可能になる.見方を変えれ
ば大容量のヒートパイプが可能になる.同様の原理は,プレートに蛇行した細
い溝を彫ることでも得られるので,外見上はプレートのままとなり製品の加工
性が向上する.この場合,ヒートパイプの溝の増減などで熱量の制御なども容
易にできる.
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