仮想水
仮想水


  現在,世界の人口は60 億人.そのうちの12 億人は安全な水が飲めず, 毎日不衛生な水にしか接触していない.また,世界の人口の約半数の30 億人は屋内に トイレのない生活をしている.これから2050 年までに世界の人口は90 億人近くになる と予想されており,世界的な水資源不足は危機的な状況になると思われる. 20 世紀は石油を巡る争いが多発したが,21 世紀は水を巡る争いが多くなると指摘されている.
   日本では,水資源問題は,まだ深刻な問題とは一般には受け止められて いない.しかし仮想水(バーチャルウォーター,間接水)という言葉に注目したいと思う.
  日本はカロリーベースでの食料自給率は40 %,さらに穀物自給率では 28 %という,主要先進国中では最低である.つまり,日本は多くの食料を輸入しており, その分,国内の水需要を低めにしている.こうした他国で生育する食料や木材などを通じ, 間接的に使用している水を仮想水と呼ぶ.1996 年のデータによると,日本全体では860 億m3 (農業用水,生活用水,工業用水)の水が使われているが,さらに,その約86 %に相当する 744 億m3 の水が,農産物・畜産物(木材は除く)として日本に輸入されているという 試算がある.
  世界的な水資源不足は,今後,このような仮想水という形で, 日本にも大きな影響をもたらすと考えられる.今までのように,お金さえ出せば, 自由に世界中から食料が輸入できるかどうか,危うい状況下にあることを日本人は 真剣に考える時期に来ている.
参考文献:
「平成16 年版日本の水資源 」国土交通省編, 「地球が危ない」 幻冬社地球危機管理委員会編 「地球の水が危ない」高橋裕著岩波新書