15.  環境ホルモン
(外因性内分泌かく乱化学物質)(1)


  従来、化学物質の摂取によるヒトに対する害は、主として発がん性が問題とされていたが、 最近、化学物質がホルモンの様に働き、生物やヒトのホルモン機能を阻害する作用が解明され始め、 将来に向けてその安全性に十分な監視が必要となってきた。この環境ホルモンとして疑わしい化学物質は、 環境庁の「環境ホルモン問題に関する研究班」によって1997年7月の中間報告において67種類が公表された。 これらの有害性、その程度を等については、今後の調査研究に待つところが多いが、既に何等かの危害の おそれが認められつつある主な化学物質を挙げると次のようなものである。
 
①ダイオキシン(Dioxines)
塩素、水素、炭素、酸素元素を含むゴミなどを燃やすと発生する。催奇形性、 発がん性などの危害が既にベトナム戦争の枯れ葉剤などで知られている。目下ゴミ焼却設備の改善が進められている。
 
②PCB(polychlorinated biphenyl)
絶縁・ノーカーボン紙などの材料に使われていたが1972年、1974年に生産中止、輸入禁止となっている。
 
③ヘキサクロロベンゼン(Hexachloro benzene)
殺虫剤に使用されたが、1979年以降生産輸入禁止となっている。
 
④ペンタクロロベンゼン(Pentachloro benzene)
除草剤・防腐剤に使われたが1990年以降生産中止となっている。
 
⑤クロルデン(chlordene)
殺虫剤、シロアリ駆除剤に使われたが、1986年に生産・輸入が禁止された。
 
⑥DDT(Dichloro diphenyl trichloro ethan)
殺虫剤に使用されたが1981年に生産輸入が禁止となった。
 
⑦TBT(Tri butyl tin)
船底塗料剤で、船や魚網に付着する各種汚物の付着防止剤に使われたが、1997年3月に国内生産が中止された。 生殖障害を伴う。
 
⑧ノニルフェノール(Nonyl phenol)
非イオン界面活性剤の原料として、潤滑油、合成洗剤などに含まれる。女性ホルモン(エストロゲン)の 動きをし、魚類などの生殖異常などが報告されている。
 
⑨ビスフェノールA(Bis phenol)
ポリカーボネート樹脂(PC)の原料で、女性ホルモンの働きをする。現状では摂取基準値 2500ppB以下に対し、調査結果は全く低い値であることも報告されている。
 
⑩フタル酸エステル(Phtalic acid ester)
塩化ビニールの可塑剤で、弱い女性ホルモンの働きをする。水道水の監視項目にあり、その基準値 60ppBに対し、現在はそれより低い値であると報告されている。
 
⑪スチレンダイマートリマー(Styrene dimer trimer)
ポリエチレン樹脂に含まれ、女性ホルモンの働きをする。
 
その他農薬として除草剤(シマジンアトラジン、アラクロール),有機塩素殺虫剤 (エンドスルファン,デルドリン等25種)また世界自然保護基金(WWF)の報告によると、 かく乱作用の疑いがある化学物質として、殺虫剤(カルバリル,ペルメトリン,フェンバレレート), 殺菌剤(ビンクロゾリン,ベノミル,アンゼブ)等40種類が挙げられてる。また専門家の間で 問題とされつつある経口避妊薬(合成ホルモン剤)ピル,DES(ジエチルスチルベストロール) などが、かく乱剤として調査されている。
     米国(FDA)では化学物質約7万5千種について、順次その内分泌かく乱作用の検査が始められて いるが、内外共にそれらの有害性の研究情報には十二分の注意を払う必要がある。
     因みに我が国では「環境ホルモン戦略計画」(環境庁環境保健部環境安全課)が示され、環境ホルモン 一般環境/野生生物の汚染状況の把握/作用メカニズムの解明/試験方法の開発/環境リスク評価 /国際ネットワークの構築などが検討課題として対策に万全を期する方向にある。
     なお、これら環境ホルモンの障害として、生殖障害、行動異常、免疫機能低下が報告されているが 、なかんずく近年の話題として精子数の減少が将来的に危惧される。