111. 鉛レス
 
  鉛の水道水の水質基準は,健康に関する29 項目に含まれているが,平成15 年4 月1 日より,0.05 mg/L から0.01 mg/L に強化された.同時に“水栓その他給水装置の末端に設置されている給水用具”や“給水装置の末端以外に設置されて いる給水用具および配管”の浸出性能基準も強化されることになっている.建築設備用の配管材については,鉛管の使 用禁止だけでなく,銅合金についても鉛レス・鉛フリーの対策が必要になっている.今回は,建築設備用配管材の鉛レ ス・鉛フリー対策について解説する.
    (1)鉛の毒性
  鉛の毒性は急性中毒と慢性毒性がある.また鉛は蓄積性があり,特に乳幼児・胎児は感受性が高く,中枢神経系や末 梢神経系に影響し精神面の発達にも影響を与える.大正期には授乳の際,鉛白(塩基性炭酸鉛)の入った白粉をなめた乳 幼児に鉛毒性脳膜炎が発生したことがある.世界保健機構(WHO)の飲料水水質ガイドラインでも0.01 mg/L 以下とし ている.
    (2)鉛管
  鉛管は施工性と耐食性がよく,ローマ時代から水道用配管として利用されてきた.鉛管は柔軟で継手を使わずに曲げ ることができ,埋設するための掘削範囲も最小ですんだ.日本でも多く使われてきており,漏水や強度の問題もあり 徐々にステンレス鋼管への敷設替えが行われているものの,今なお多くの鉛管が残っている.耐食性は水中の炭酸水素 イオンやシリカなどと塩類被膜を形成することによるが,カルシウム硬度やアルカリ度が低く,pH も低い軟水では溶 出が続く.鉛管内に水が滞留しているときに蓄積されるので,昔からいわれているように朝使い始めの水は放水するの がよい.
    (3)銅合金
  弁や給水器具には黄銅や青銅が多く使われている.黄銅にも青銅にも,切削性・鋳造性をよくするために2 ~ 5 %程 度の鉛が含まれている.銅合金の鉛レス・鉛フリー対策としては,鉛を除去する方法と表面処理する方法がある.
  ① 鉛を含まない銅合金に変更する.基準を満足するための鉛の含有量は0.25 %以下といわれている.鉛の代わりにビ スマスを使っているものが多い.ただし,鉛と比べるとビスマスは高価である.
  ② 表面付近に集中している鉛および鉛化合物を除去し,鉛の溶出を押さえる.事実,従来品でも3 年程度使用すると 鉛の溶出は治る.