近年,地球環境保全の観点から,使用される冷媒の種類もR22,R134aなどの単成分冷媒やアンモニアなどから,共沸混合冷媒,非共沸混合冷媒など,その種類が多様化している.
圧縮機の特性を表わす場合は,その測定条件によって異なる.このため,各社がASHRAEやJIS B8600などの測定条件に従って圧縮機の特性評価を行っている.
一例として,現在のエアコンで代替フロンとして一般的に採用されている冷媒には,非共沸混合冷媒R407C(R32;23 %,R125;25 %,R134a;52 %)および擬似共沸混合冷媒R410A(R32;50 %,R125;50 %)があり,これらの冷媒は温度グライド
(露点と沸点の温度差)の特性を有している.そのため,圧縮機の性能は,温度グライドの中で温度条件の取り方によって特性が変化することとなる.そこで,この測定条件の設定方法として露点方式と中点方式が使用されている.
非共沸混合冷媒のモリエル線図を図1に示す.露点方式とは,この線図と表1に示す通り,凝縮温度と蒸発温度が露点にて条件決定されている.一方,中点方式とは,凝縮温度の中点(露点と沸点の中間)および蒸発温度の中点にて条件が決定されている.
図1 モリエル線図
表1 露点方式と中点方式
| 露点方式 | 中点方式 |
凝縮温度 | T1 | (T1+T2)/2 |
蒸発温度 | T6 | (T5+T6)/2 |
SC(過冷却度) | T2-T3 | T2-T3 |
吸込み温度 | T7 | T7 |
SH(過熱度) | T7-T6 | T7-T6 |
次に,R407C冷媒における条件「凝縮温度54.4 ℃,蒸発温度7.2 ℃,吸込み蒸気温度35 ℃,過冷却度8.3 deg℃」にて,露点方式と中点方式との計算例を表2に示す
(なお,非共沸混合冷媒の特性を求めるプログラムは数種類あり,計算結果は若干異なる).表2に示す通り,露点方式と中点方式では,露点方式の圧力の方が低い.冷凍能力に相当するエンタルピー差においては,計算結果が若干異なる.
表2 R407C冷媒での露点方式と中点方式の計算例
| | 露点方式 | 中点方式 |
凝縮温度(T1) | ℃ | 54.4 | 56.7 |
凝縮圧力(Pd) | MPa | 2.195 | 2.318 |
蒸発温度(T6) | ℃ | 7.2 | 9.28 |
蒸発圧力(Ps) | MPa | 0.587 | 0.628 |
吸込み温度(T7) | ℃ | 35 | 35 |
凝縮沸点温度(T2) | ℃ | 49.75 | 52.16 |
膨張弁前温度(T3) | ℃ | 41.45 | 43.86 |
SC(T2-T3) | deg | 8.3 | 8.3 |
凝縮沸点エンタルピー(iT2) | kJ・kg | 273.9 | 278.0 |
膨張弁前エンタルピー(iT3) | kJ・kg | 260.1 | 264.0 |
吸込み蒸気エンタルピー(iT7) | kJ・kg | 443.3 | 442.7 |
エンタルピー差(iT7-iT4) | kJ・kg | 183.2 | 178.7 |
*米国NIST,冷媒物性計算プログラム(REFPROP5.0)による計算値
中点方式は,R22などの従来冷媒と非共沸混合冷媒との効率比較が容易であるという利点があるが,温度・圧力条件を求めるためには繰返し計算による収束計算が必要であり,計算結果に人為的な差が生じる.これに対し,露点方式は,計算量が少なく,計算結果のずれも少ない.
現在のARI,IEC,JIS規格では,露点方式が採用されている.
なお,非共沸混合冷媒の圧力は,沸点が最も高いため,機器の設計圧力は沸点にて行うことが望ましい.