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Vo.l40,No.3までの要旨を以下に紹介します。これ以降はJ-STAGE(早期公開)で全文PDFまで閲覧できます。 

日本冷凍空調学会論文集Vol.40,No.3 (発行日:2023/9/30)
[原著論文]
主題:リーチインショーケースからの強燃性冷媒の漏洩シミュレーション
著者名:伊藤 誠,陳 昱,党 超鋲,飛原 英治
要旨:本研究では,業務用内蔵型冷蔵冷凍機器用の次世代冷媒候補とされている強燃性冷媒R 290が室内に漏洩したときの挙動を数値流体解析した.解析モデルおよび計算手法の妥当性の検証のために,リーチインショーケースからの漏洩実験を行い,計算結果との比較を行った.実験では,R 290の物性値の近いR 744を使用した.研究の目的は,業務用内蔵型冷蔵冷凍機器から冷媒が漏洩したときの安全を確保するための凝縮器ファンによる撹拌効果を評価することである.凝縮器ファンによる気流の方向や風速をパラメータとして冷媒漏洩後の可燃ガスの拡散をシミュレートした.ショーケースが設置されている部屋面積や冷媒充填量の影響も考察した.結果的には,凝縮器ファンを適切に運転すれば,可燃ガスの生成は十分抑制されることが分かった.ショーケースの形式では,スウィング扉式のほうがスライド扉式より可燃ガス領域を多く生成することが分かった.
キーワード: 冷媒,ショーケース,漏洩,火災,数値流体力学,R 290

[原著論文]
主題:高温ヒートポンプサイクルの冷媒選択に関する熱力学的考察
著者名:甲斐田 武延,森 昌司
要旨:本研究では,ヒートポンプ供給温度が60°Cから200°Cまでの範囲で適切な冷媒を選択するための熱力学的な分析を実施した.ヒートシンクとヒートソースの温度変化が5 Kと小さい条件で,17の純冷媒を対象に,単純ヒートポンプサイクルとエコノマイザ付き二段圧縮ヒートポンプサイクルの計算を行い,熱力学的性能と経済性,安全性,環境性を考慮し,各冷媒の好適な作動領域を図示した.その結果,ヒートポンプ供給温度ごとに有望な冷媒を示すとともに,経済的に受け入れやすい温度リフトを示した.また,エコノマイザ付き二段圧縮による高効率化によって,温度リフトが10 K程度拡大することが確認された.
キーワード: ヒートポンプ, 冷媒, 成績係数, 地球温暖化係数, 温度リフト

[原著論文]
主題:光ファイバプローブを用いた微小隙間内の気液二相状態検出手法の基礎検討
著者名:飯島 遼太,千葉 紘太郎,永田 修平
要旨:多くの容積型圧縮機において,潤滑油による微小隙間のシールや潤滑は重要であるが,微小隙間に おける油膜の存在を確認するのは容易でなく,その不確実性により給油機構の効率的な設計を阻害し ていた.本研究では,気液二相状態を検出可能な光ファイバプローブを微小隙間に設けた空隙に設置 し,微小隙間内の気液二相状態を計測する手法の開発を行った.本手法では,微小隙間内の流体がプロ ーブを設置した空隙に流入するかが重要となる.そこで,空隙内への気体および液体の流入の特性に ついて気液二相流解析と可視化実験によって調べ,ウェーバー数が概ね 1 を下回ると隙間に流入した 流体が空隙を満たすことを示した.さらに,プローブ計測を模擬した二相流解析を行い,10 μm の隙間 における相状態をプローブで検出できる見通しを得た.
キーワード: 混相流,潤滑,計測,圧縮機,光ファイバプローブ

[原著論文]
主題:逆流を伴う振動流による吸着促進の実験的検証
著者名:高橋 良平,秋澤 淳
要旨: 先行研究において吸着材に音波をかけることによって吸着速度が増加することが報告された.速度 振幅が吸着促進に効果があることを受け,本研究では,音波ではなく逆流を含む振動流を加えること が吸着促進に及ぼす効果を実験的に観測することを目的とした.そのため,まず2つのブロワを用いて 位相差を持った正弦波状の振動流を発生させ,その差分としてテストセクションに逆流を伴う0.05Hz の振動流を発生できることを確認した.次いでそこに吸着材を充填した配管を接続し,一方向流の場 合と振動流の場合の実験を行い,一定時間における吸着量を計測した.その結果,音波による実験と 同様に,振動流の振幅が大きくなるほど吸着量が増加することを確認した.また,テストセクション を逆流する空気の湿度を下げると吸着促進効果が低下することを見出した.このことは吸着材充填層 の後流側の湿分を吸い込むことが吸着増進効果を与えることを示唆している.
キーワード: 吸着, 湿り空気, 除湿, 振動流, 逆流, 速度振幅

[原著論文]
主題:潜熱蓄熱材含有ゼラチンカプセルスラリーの固相と液相時の流動抵抗と熱伝達特性
著者名:春木 直人,森田 慎一
要旨:本研究では,潜熱蓄熱材含有カプセルスラリーにおいて,軟殻材であるゼラチンで作成したカプセ ルに着目した.これは,一種のスラリーである血液での赤血球(カプセル)が持つ弾力性を付与するた めである.まず,潜熱蓄熱材を含有したゼラチンカプセルを作成し,ゼラチンカプセルの形状の確認 と,ゼラチンカプセルスラリーの熱物性値の実測と推定方法について検討した.さらに,ゼラチンカプ セルスラリーの直管試験部における流動抵抗と熱伝達特性を実験的に検討した.その結果,比較的低 濃度のカプセル濃度においては,スラリーの流動抵抗は,分散媒である水の値と同じであるが,熱伝達 に関しては,水よりも増加することを確認した.さらに,含有する潜熱蓄熱材が液相の場合では,カプ セル全体が変形することにより,固相時よりも熱伝達が増加することを確認した.
キーワード: 潜熱蓄熱材,カプセルスラリー,軟殻材,熱伝達,圧力損失,熱移動

日本冷凍空調学会論文集Vol.40,No.2 (発行日:2023/6/30)
[原著論文]
主題:垂直ヘッダ型多分岐管における気液二相冷媒流の分配
-分岐管の加熱が液相分配に及ぼす影響-
著者名:小野寺 亜由美・畠田 崇史・澤原 風花・森 浩平・丸山 直樹・西村 顕・廣田 真史
要旨: 住宅用や業務用空調機に用いられるパラレルフロー型熱交換器を模擬した垂直ヘッダ/水平多分岐管内の気液二相冷媒流について,分岐管を加熱し管内の冷媒を蒸発させた状態で各分岐管への気液分配量の測定を行った.試験流路は直径22 mm,高さ84 mmの垂直ヘッダに長さ540 mmの水平分岐管(アルミ製扁平多穴管)を10 mm間隔で8本接続した多分岐管であり,全分岐管を1本当たり20~100 Wで均一に加熱した.その結果,分岐管の加熱により最下部分岐管への過大な液相分配が抑制されるとともに上部分岐管への液相分配量が増加し,液相分配の均一性が向上する傾向が明らかになった.
キーワード: 熱交換器,蒸発器,混相流,気液分配,沸騰,冷媒

[原著論文]
主題:IoT技術を用いた空調機の異常検知システムの開発
著者名:平田 俊明・吉田 健一・古井戸 邦彦・高橋 澄栄・小笠原 均郎・郷 正明
要旨:IoT技術を活用した各種機械の異常予知・診断が広く研究されている.空調機は多くの施設で一般的に使用されているが,特に小中型の空調機の異常診断に焦点を当てた研究はほとんど見当たらない.本研究では,既存の空調機にデータ収集および診断システムを導入するためのアプローチを提案する. 空調機の異常を検出および診断する際に直面する課題には,ノイズの多い環境,コストの制約,季節変化などがある.本研究では,データ収集システムと診断方法を慎重に調整し,診断モデルを季節ごとに構成し, 振動データに加えて圧力データ推定値を利用することで, 安価で精度の高い異常検出システムを実現する.
キーワード: 空調設備, IoT,異常検知,AI,データマイニング

[原著論文]
主題:アイススラリーの流動様相に及ぼす気泡と水溶液濃度の影響
著者名:松本 葵・浅岡 龍徳
要旨:水平円管内を流れるアイススラリーについて,流速やIPFによる流動様相の変化に関する検討を行った.本報ではアイススラリーの流動様相における,最適な分類方法の提案をした.また氷粒子の分散と凝集に影響する因子として,気泡と初期水溶液濃度に着目した検討を行った.観察の結果から,流動様相を3種類に区分して整理した.高流速,高IPFの条件では均質流れになりやすく,気泡を伴うアイススラリーの流動では,気泡を伴わない場合と比べて,より低流速や低IPFの条件でも均質流れに遷移することが分かった.この遷移には,不均質流れから均質流れ,またはクラスター流れから均質流れに遷移する2パターンが存在し,後者は初期水溶液濃度が低い場合にのみ現われる.前者は氷粒子に付着した気泡によって,氷粒子が分散することによるものと考えられる.後者の原因としては,気泡を伴わないときには氷粒子同士が近づきやすく付着・凝集が生じやすいが,気泡が伴うことにより前者と同様に氷粒子を分散させ,付着・凝集が生じるような状況をなくす効果があると考えている.
キーワード:混相流,アイススラリー,流動様相,蓄熱,気泡,IPF

[原著論文]
主題:マイクロ波パルス照射による溶媒和の安定性の予測
-照射中のNaCl水溶液の屈折率測定-
著者名:高井 貴宏・前田 知勇・朝熊 裕介・田上 周路・Anita Hyde・Chi Phan
要旨:以前の研究において,水の屈折率をマイクロ波照射下で測定し,その低下度合いから水素結合ネットワークの安定性を議論した.今回,電解質水溶液の水和構造の安定性を明らかにするために,NaCl水溶液の屈折率を種々のマイクロ波照射モードで測定した.水や低濃度のNaCl溶液の水素結合ネットワーク構造は,高出力のマイクロ波照射により崩壊する.一方で,NaCl濃度が高い程そのネットワーク構造が強固であるため,高出力でも安定する.また,照射間隔を変えたパルス照射時の屈折率から,照射により崩壊した水素結合ネットワークが非照射時に回復し,高濃度電解質水溶液に対するマイクロ波非熱効果は長時間持続しないことがわかった.最後に,照射中のマイクロ波効果は顕熱として蓄えられる可能性を示唆した.
キーワード:マイクロ波 溶媒和 屈折率 顕熱

[原著論文]
主題:流動するアイススラリー中の氷の凝集によるブロック状流れの発生条件
著者名:原崎 太希・浅岡 龍徳
要旨:閉塞を招く危険性が高い流動様相であるブロック状流れを回避する知見を得るため,流動するアイススラリー中の氷の凝集に着目し,流動様相の変化について検討した.重力による影響を検討するために,上昇流と水平流の実験結果を比較したが,流動様相に顕著な差はなく,重力の影響は小さいことがわかった.また,氷の粒子径の影響を検討するために初期IPFを変化させて流動様相を比較した.アイススラリー中の氷は,生成直後は不規則な形の比較的大きな氷粒子が凝集した状態であるが,融解が進むにつれて小さくなり,楕円形の氷が分散した状態になっていくことがわかった.また,0.1mm以下の細かい氷は優先的に融解して消滅していくことがわかった.初期IPFを変えて氷粒子径の影響について検討した結果,氷粒子径が小さいほど非ブロック状流れになりやすいことがわかった.その原因として,氷の融解により付着面積が小さくなること,粒子径が小さいほど流れから受ける力の影響が顕著になることが考えられる.
キーワード:混相流,アイススラリー,蓄熱,凝集,IPF

[原著論文]
主題:濃度勾配のある水溶液中の凝固挙動と膨張圧の発生に関する研究
著者名:中村 太一・小菅 紫立・川南 剛・市場 元康・堀井 克則
要旨:本研究は,純水および水溶液系の潜熱蓄熱材の凝固特性の把握を目的として,純水および水溶液が凝固した際に発生する膨張圧の大きさ,およびその発生メカニズムに及ぼす水溶液濃度の影響について実験的に検討を行ったものである.特に,縦方向にアスペクト比の大きな蓄熱容器に着目し,その形状的特性から生じる容器内の初期濃度勾配が凝固層の成長に及ぼす影響に関して,濃度成層の発達および消滅挙動の可視化観察から詳細に検討した.本研究の結果,氷層のブリッジングによる局所的な膨張圧の上昇を確認し,最大発生圧力は初期濃度が高くなると小さくなることを明らかにした.また,その圧力の大きさは,水溶液の平均濃度に強く影響される一方,容器内高さ方向の初期濃度勾配の影響は小さいことを明らかにした.
キーワード:凍結,蓄熱,過冷却,凝固点降下, 濃度勾配

[原著論文]
主題:水平円管内におけるキシリトールスラリーの流動特性
著者名:森本 崇志・柴田 悠貴生・熊野 寛之
要旨:本研究では,蓄熱,熱輸送媒体としての利用が期待される糖アルコールスラリーの1種である,キシリトールスラリーを対象とし,水平円管内における流動特性について,実験的に検討を行った.実験結果より,キシリトールスラリーの流動様相は平均流速と粒子の終端速度の比に応じて,分散質の沈降を伴った不均質流れ,分散質が均質に分散した均質流れに分類可能であることがわかった.均質流れと判断できた条件について,レオロジー特性を検討したところ,固相率5?15 wt%の範囲において,キシリトールスラリーはニュートン流体の挙動を示し,Einsteinの式,Thomasの式およびMooneyの式いずれによっても見かけの粘度を良好に予測できることがわかった.
キーワード:糖アルコール,キシリトール,懸濁液,蓄熱,レオロジー

[原著論文]
主題:多段型潜熱蓄熱式熱交換システム向け新蓄熱物質の探索と熱物性評価
-比熱と熱伝導率の同定-
著者名:稲垣 照美
要旨: 本研究は,小規模工場や家庭などから排出される低位熱エネルギーを有効利用する新たな多段型潜熱蓄熱式熱交換システム向けに新蓄熱物質を探索し,常温域に相変化特性を有するカプリン酸,ラウリン酸,ミリスチン酸の相互混合脂肪酸の液相状態における熱物性を計測・評価したものである.これらの物質は,過冷却が小さくて扱い易く,人体に影響が少ない潜熱蓄熱物質でもある.ここでは著者らが既に報告(Inagaki et al. 2019)した熱物性値(密度・粘度・融点・凝固点・過冷却度)を参照しながら,未だ同定されていない比熱・熱伝導率とその温度依存性に関する計測と評価を進めた.その結果,液相状態下の混合脂肪酸の比熱や熱伝導率に関する熱物性値を新たに提示するとともに,実使用形態に合わせた熱輸送プロセスに必要不可欠な伝熱データベースの充実を図った.
キーワード: 伝熱,相変化,蓄熱,熱物性,混合脂肪酸,熱交換器

日本冷凍空調学会論文集Vol.40,No.1 (発行日:2023/3/31)
[原著論文]
主題:エミュレーター式負荷試験装置によるエアコンディショナーの動的試験
著者名:宮岡 洋一・森 稜平・ジャンネッティ ニコロ・鄭 宗秀・富樫 英介・齋藤 潔
要旨:地球温暖化防止の観点からカーボンニュートラルの実現が世界的要請となり,需要側の主要なエネルギー消費機器の一つであるエアコンディショナーにおいては更なる大幅な性能向上が必須となっている.エアコンディショナーの性能は,JISで規定された年間性能評価指標としてのAPFをはじめとして運転データ取得を簡略化するため,圧縮機の回転数を一定とし,制御系を除外した状態で取得された数点の運転データをベースに導出される.実際の機器では当然,搭載された自動制御によって,圧縮機の回転数や膨張弁開度などを適切に変化させながら運転されるため,この方法では実運転性能と大きく乖離することが指摘されている. そこで,本研究ではエアコンディショナーの動的性能を評価可能な新しい手法を確立することを目的とし,建物や室内外環境など任意の環境を疑似的に計算可能なエミュレーターと性能試験装置から構成される「エミュレーター式負荷試験装置」を新たに開発した.この装置の健全性を確認するとともに,この装置を用いて具体的に機器の動的性能を把握することに成功した.この装置によって,エアコンディショナーの公平かつ再現性のある性能評価試験が実施可能となる.
キーワード:制御,成績係数,エアコンディショナー,APF, 性能試験装置,断続運転,エミュレーター

[原著論文]
主題:冷凍機油添加剤によるエアコンのディーゼル爆発の抑制
著者名:伊藤 誠・斎藤 静雄・党 超鋲・飛原 英治・設楽 裕治
要旨:エアコンの移設や廃棄の際,室外機へ冷媒をポンプダウンする際の誤操作により,圧縮機の破裂事故が発生する場合がある.ポンプダウン時のディーゼル燃焼の様子を,冷媒圧縮機を模型エンジンで模擬し実験により調べた.冷凍機油中に反応抑制剤を添加することによる燃焼抑制に及ぼす影響を調べた.冷凍機油としてポリオールエステル油(POE)を使用し,添加剤としてアミン系酸化防止剤,エポキシ系安定化剤など4種類を使用した.冷媒は,R 22,R 32,R 1234yf,および R 290である.アミン系酸化防止剤の燃焼抑制効果は顕著であり,R 1234yfとR 290の燃焼をほぼ抑制できることがわかった.R 22 とR 32の燃焼範囲はかなり制限されることも判明した.
キーワード:ルームエアコン,圧縮機,ポンプダウン,ディーゼル爆発,酸化抑制剤,POE

[原著論文]
主題:HFO系冷媒R1233zd(E)およびR1224yd(Z)の液相音速測定
著者名:西山 貴史・打越 流河・倉成 太郎・本田 知宏・高 雷
要旨:地球温暖化への影響が小さい新規冷媒候補が次々と提案されるに伴い,それらを評価・利用するために必要となる高精度な状態方程式(EOS)の作成が求められている.各冷媒のEOSは信頼性の高い熱物性実測値を元に作成されるが,その最適化においてはPρT関係の実測値データに加え,それらの誘導状態量にあたる音速値も重要な役割を果たす.本研究では,R1233zd(E)とR1224yd(Z)の液相音速を市販のパルス式超音波センサーで測定した.純水およびR1336mzz(Z)の既存の状態方程式を基準として,圧力および音波吸収の影響について適切に校正することにより,EOS作成に使用可能な精度の液相音速値を得ることに成功した.
キーワード: 低GWP冷媒,音速測定,液相,熱物性

[原著論文]
主題:温湿度環境が長期貯蔵での野菜の鮮度に及ぼす影響
著者名:細野隼章・川上亮英・山田徹郎
要旨:本研究では,一般的な直膨式冷蔵庫と低温高湿度環境の維持が可能なブライン式冷蔵庫に野菜を数ヶ月間貯蔵し,鮮度指標として設定した外観,水分含有量,栄養成分含有量及び味認識装置による呈味の経時的変化を評価することで,温湿度環境が長期貯蔵での野菜の鮮度に及ぼす影響を検証した.その結果,ブライン式冷蔵庫に貯蔵したニンジンにおいては,萎凋や変色等の外観劣化が著しく抑制され,貯蔵90日程度で味認識装置による苦味及び渋味が著しく増加した直膨式冷蔵庫との有意差を示した.また,キャベツにおいては,表層葉の顕著な黄化や腐敗による外観劣化が著しく抑制され,ビタミンCの経時的な減少は直膨式冷蔵庫との有意差を示した.
キーワード:ブライン,冷蔵庫,低温高湿度環境,鮮度,長期貯蔵

日本冷凍空調学会論文集Vol.39,No.4 (発行日:2022/12/31)
[原著論文]
主題:熱音響現象を利用した円筒管内複合音波の選択的増幅
著者名:経田 僚昭・多田 幸生・飯田 祐也
要旨:管内に封入された気体が振動している場合,急峻な温度勾配が形成された微細流路を有する蓄熱体 (スタック)を設置することで,振動の持つ音響エネルギーを熱音響現象で増幅できる.本研究では, 外部から入力された音波に対して,任意の周波数成分のみを熱音響効果で増幅し,同時に増幅対象外 の周波数成分はスタックによる粘性散逸で減衰することを示した.この効果を多周波数の複合音波で ある実騒音が入力された場合に適用できることを実験的に検証し,騒音と排熱で駆動する熱音響冷凍 機の開発のための基礎的知見を得た.
キーワード:省エネルギー,冷凍,熱音響冷凍機,騒音利用,音波増幅,共鳴モード

[原著論文]
主題:アンモニア流下液膜蒸発の局所熱伝達率に及ぼすフィン形状の影響
著者名:赤田 郁朗・西田 耕作・井上 順広
要旨:ステンレス製の平滑管,ローフィン管,3 次元加工管の 3 種類の伝熱管について,水平に配置した管 外のアンモニア流下液膜蒸発およびプール沸騰熱伝達に関する実験を行い,外面加工管による伝熱促 進について検討を行った.流下液膜実験において平滑管は管頂部を起点とする円周角の増加に伴い局 所熱伝達率が低下したが,外面加工管はフィンによって液膜が保持され,フィン間が液膜で覆われる 範囲において熱伝達率が低下した.平均熱伝達率は低膜レイノルズ数域では平滑管が最も高い値を示 し,3 次元加工管,ローフィン管の順に熱伝達率が低下し,フィンによる伝熱促進はみられなかった. 高膜レイノルズ数域では 3 次元加工管はフィンによって液膜に対流が生じたが,平滑管と同程度の熱 伝達率となった.平滑管のプール沸騰熱伝達率は Jung らの式と良い相関を示し,外面加工管は平滑管 より 20~30%程度低い値を示した.また,いずれの伝熱管も流下液膜蒸発はプール沸騰より高い熱伝 達率を示した.
キーワード:自然冷媒, 蒸発, 水平管, 流下液膜, 局所熱伝達率,フィン形状

[原著論文]
主題:スプリットエアコンディショナーからの強燃性冷媒の漏洩挙動
著者名:伊藤 誠・芦原 直也・党 超鋲・飛原 英治
要旨:本研究では,家庭用スプリット空調機から R 290 が室内に漏洩したときの挙動を数値流体解析した. 解析モデルおよび計算手法の妥当性の検証のために,壁掛け式室内機からの漏洩実験を行った.研究 の目的は,エアコン室内機から冷媒が漏洩したときの安全を確保するため,冷媒漏洩時の室内機ファ ンの稼働の必要性を評価することである.壁掛け式室内機または床置き式室内機からの漏洩に関して, それぞれ斜め下~下方に,また上部から 45 度程度上方に吹き出すことが有効であることが分かった. ファン風速に対する部屋面積の影響については,室内循環流を形成しやすい方向にファン気流を吹き 出す工夫をすれば,同程度のファン風速で可燃域を消滅させることができることが分かった.
キーワード:ルームエアコン, 冷媒漏洩,リスク評価,R 290, 数値流体計算

[原著論文]
主題:R23 代替冷媒に関する性能予測
著者名:粥川 洋平・赤坂 亮・坂庭 駿・齋藤 潔
要旨:超低温冷凍と呼ばれる,-70 ?C 前後の温度帯における冷凍技術は,マグロ冷凍,フリーズドライ食品,半 導体製造プロセス等で必要とされている.R23 は,この温度帯向けの 2 段冷凍サイクルの低温側で用いら ている,不燃で毒性のない唯一の冷媒であるが,地球温暖化係数(GWP)が極めて大きいことが問題と なっている.モントリオール議定書キガリ改正による規制に対応するため,これをより低 GWP の冷媒で 置き換えることは極めて重要である.本研究では,考えられる R23 代替候補物質の絞り込みと,それらの サイクル性能評価結果について報告する.20 以上の候補物質から,極端に安全性の低い物質を除き,COP および体積能力の熱力学的な限界である pareto front に近い物質として,CO2 ,R1132a,R41 および N2O を絞り込んだ.さらにこれらで構成される 2 成分系混合冷媒のサイクル性能予測結果について報告する.
キーワード:R23, R1132a, CO2, 理論サイクル性能

[原著論文]
主題:分子シミュレーションによる R1132a の低温域の熱物性予測
著者名:三浦 武大・今井 友暁・奥村 哲也・近藤 智恵子
要旨: 超低温用 R23 代替冷媒の開発は,測定が困難であることなどにより,活発に進んでいるとは言い難 い.そこで分子シミュレーションを活用し, R1132a の熱物性を三重点付近まで理論的に予測すること を試みた.量子化学計算結果から,分子内ポテンシャルと原子電荷を定めた.一方,分子間ポテンシャ ルは臨界点付近の飽和液密度測定値を参照して調整を行った.これらのポテンシャルを用いて予測し た飽和密度と飽和圧力は,測定値と良く一致し,測定値のない低温域まで外挿することが出来た.さら に,広い温度・密度域の蒸気状態を再現し,第 2,第 3 ビリアル係数を算出することが出来た.また分 子構造が類似な R1123 との比較を行い,ポテンシャルが物性へ及ぼす影響を考察した.
キーワード:冷媒, 熱物性, 産業冷凍応用装置,分子シミュレーション

[原著論文]
主題:pvT Properties of the Refrigerant Blend R 473A in the Vapor Phase
著者名:Uthpala PERERA・Kyaw THU・Naoya SAKODA・Yukihiro HIGASHI
要旨:R473A is an emerging four-component refrigerant blend for replacing high GWP and flammable refrigerants currently used for low temperature applications. Since limited prior publications on the thermodynamic properties of R473A are available, the initial investigation of its vapor phase pvT properties were carried out and are presented here. The pvT properties were measured using two separate isochoric apparatus for the temperature range of 270 K to 400 K, density range of 43 kg・m-3 to 210 kg・m-3 and at pressures below 7 MPa. The virial equation of state was used to verify the measured properties. The linearized virial equation was used to determine the second and third virial coefficients. This method provided an absolute average deviation in pressure and density of 0.29% and 0.38%, respectively. The measured properties were all within 1% deviations which signify the accuracy of the results and the potential for them to be used as preliminary data for developing a more accurate representation of R473A properties through equations of state.
キーワード:Thermophysical property, Refrigerant blend, Low GWP, Vapor phase pvT, Virial equation, R 473A, R 23 alternative

[原著論文]
主題:低 GWP 三成分混合冷媒 R744/R125/R32:35.0/32.5/32.5 mass%の凝固点測定
著者名:三好 航平・バズビーセス 龍太郎・河村 竜仁・近藤 智恵子
要旨:超低温用冷媒 R23 の代替物質の探索には,使用下限温度の目安となる凝固開始温度の情報が必要とな る.そこで,近年商用化が検討されている R469A(R744/R125/R32:35.0/32.5/32.5 mass%)の凝固開始温 度が 184.3 K ± 0.7 K であることを実験的に明らかにした.また,予測式との比較を行ったところ,理想 混合からの乖離を表す活量係数を調整する必要があることが分かり,R744 に対して 0.887 を与えると測 定値と一致した.この活量係数を用いて,R744/R125/R32 系三成分混合冷媒に対して凝固開始温度の組 成依存性を予測した.凝固開始温度-100 ℃以下となるのは,R744 質量組成が 15 mass%以下の場合であ ったが,一方で R23 と同等以上の体積能力を実現するためには 81 mass%以上である必要があり,トレ ードオフの関係にあることが確認できた.
キーワード: 冷媒,測定,凝固点降下,固液平衡,産業冷凍応用装置

日本冷凍空調学会論文集Vol.39,No.3 (発行日:2022/9/30)
[原著論文]
主題:スクロール圧縮機の吸込室と圧縮室への給油分配に関する研究
著者名:近野 雅嗣・中村 聡・長谷川 修士・中野 奏典
要旨:部分負荷運転における圧縮機の効率向上のためには,漏れ損失や吸込加熱損失を抑制する必要があり,そのためには吸込室や圧縮室への適正な給油制御が重要となる.本稿では,環油給油構造と吸込給油分配構造を組み合わせて,圧縮室への給油はスリットで,吸込室への給油は油ポケットで調整することで,軸受摺動部と吸込室と圧縮室への給油を完全に独立して制御することを可能とし,それぞれに必要な量だけの油を供給できる給油構造について検討した.圧縮室給油量や背圧を可変とした供試機にて,吸込室給油量を変化させて,これらのパラメータと効率の関係を詳細に把握した結果,各パラメータの適正値を見出すとともに,APFで0.8%の向上を確認した.
キーワード:圧縮機,エアコン,スクロール,給油分配,部分負荷運転

[原著論文]
主題:Effects of Air Temperature and Vapor Pressure Deficit on Fruit Growth of June-bearing Strawberry in a Controlled Environment with Artificial Lighting
著者名:Ryosuke YAMANAKA・Teruo WADA・Hajime FURUKAWA・Motoaki TOJO・Norio HIRAI・Yoshiaki KITAYA
要旨:The aim of this study was to determine the responses of strawberry fruit growth to environmental factors in a plant factory with artificial lighting (PFAL). June-bearing strawberry ‘Beni hoppe’ was grown in a growth chamber under a 12-h light/12-h dark photoperiod. Three temperature treatments were applied: 1) temperature decrease from 20°C to 10°C (decreased by 5°C every 4 h during the dark period); 2) temperature increase from 15°C to 25°C (increased by 5°C every 4 h during the light period); and 3) temperature decrease from 25°C to 15°C (decreased by 5°C every 4 h during the light period). The fruit diameter was measured using a contact-type digital displacement sensor and the relative rate of change in the fruit volume (R-RCFVt) was calculated as the fruit growth rate. The R-RCFVt temporarily increased or decreased in response to the rapid change in vapor pressure deficit (VPD) when the air temperature switched to a lower or higher setpoint. The R-RCFVt remained almost constant when the air temperature and VPD were kept constant. Regression analyses indicated that R-RCFVt was positively correlated with the air temperature in both dark and light periods.
キーワード: Dark period, Environmental control, Fruit volume, Light period, Plant factory

[原著論文]
主題:均質および不均質流れを伴うスラリーの流体モデル
著者名:小熊 寿弥・阿部 駿佑・浅岡 龍徳
要旨:中低温温度域の熱輸送媒体としてエリスリトールスラリーが有望である.水平円管内を流動するエリスリトールスラリーの圧力損失を測定し,圧力損失を推算するための流体モデルについて検討した.流動様相を考慮しない簡易モデルとして,ビンガムモデルが有効であることが分った.また,流動様相を考慮することで様々なスラリー熱媒体への応用が期待できる複合モデルについて検討した.複合モデルでは,低流速域で発生する管内固相率の偏りに着目し,せん断応力とせん断速度の関係に対して折れ線回帰を施すことでエリスリトールスラリーの流動様相を定量的に決定した.さらに折れ線回帰で明らかにしたエリスリトールスラリーの流動様相に対して,均質流れではべき乗則モデル,不均質流れでは分離モデルが適することを示した.
キーワード: 混相流,蓄熱,エリスリトールスラリー,固相率,管内径,流動様相,流体モデル

[原著論文]
主題:空調機の冷媒分布予測のための長・短期記憶ネットワークの実用性評価
著者名:宮脇 皓亮・山岸 鈴奈・Anna SCIAZKO・鹿園 直毅
要旨:空調機内を循環する冷媒の非定常挙動の予測手法として,深層学習モデルの一つである長・短期記憶ネットワークの実用性を評価した.空調機の運転履歴に対する予測精度を確認するため,圧縮機の立ち上がり速度および冷媒充填量に対するシステム内の冷媒分布の推移を予測した.学習データが十分である場合,冷媒分布の推移を高精度に予測できることを確認した.学習データが少ない場合は,冷媒充填量変化に伴う相状態をネットワークに入力するなど設計ノウハウを用いた改善を行うことで,予測精度の向上が可能であることを確認した.
キーワード:冷凍サイクル,混相流,冷媒分布,深層学習,長・短期記憶ネットワーク

[原著論文]
主題:機械学習を用いた冷媒漏洩遠隔監視システムの研究開発
著者名: 笠原 伸一・吉見 学・檜皮 武史・山田 祥平・木村 駿介・北出宏紀
要旨:冷凍空調機器からの冷媒漏洩を低減することは,地球温暖化問題を解決するための必須課題の一つである.そのため,大型の冷凍空調機器の所有者に対し,漏洩の定期点検と,漏洩発見時の修理を義務付ける法律が多数の国で制定されつつある.点検方法には,目視やガスセンサ等を用いる直接法と,機器の運転データから漏洩を推定する間接法があるが,大型機器では直接法による点検は,時間と労力を要し負担が大きい.また漏れ速度が小さい場合は,センサ感度等の限界で漏洩発見が難しい.一方,常時監視の漏洩検知システムを導入すれば,点検免除や点検回数の半減などのインセンティブが設けられている国も多い.そこで著者らは,機械学習技術を用いて,間接法による高精度の常時冷媒漏洩検知システムの開発を進めている.本論文では,開発した漏洩検知手法をビル用マルチエアコンとチラーに適用して評価を行い,従来手法に比べ検知性能を大幅に向上できることを明らかにした.
キーワード:冷媒,パッケージエアコン,チリングユニット,冷媒漏洩検知,機械学習

[原著論文]
主題:数値流体解析による衝突噴流型フリーザーの冷却性能評価
著者名:益田 和徳・戸張 雄太・金 まどか・河野 晋治
要旨:エアブラストフリーザーの冷却性能を評価することは,フリーザーの最適な熱設計を行う上で重要な課題となる.本研究では,衝突噴流型フリーザーについて数値流体力学(CFD)を適用し,食品が冷却される現象を模擬できるCFDモデルを提案した.まず,乱流モデルにSST k-ωモデルを選定し,衝突噴流により食品表面が冷却される際の熱伝達率をCFD解析により算出した.さらに,タイロースゲルを食品凍結モデルとして内部の熱伝導解析を行い,その中心温度履歴を得た.これを実測したタイロースゲルの凍結曲線と比較した結果,両者の凍結時間差は0.5分以内に収まり,両者は良好に一致した.したがって,本研究で提案したCFDモデルは衝突噴流による食品の冷却現象を低コストかつ高精度で再現できると結論付けられた.
キーワード:数値流体力学,食品冷凍応用装置, 熱伝達,食品凍結,衝突噴流

[原著論文]
主題:遺伝的冷媒流路生成アルゴリズムを用いた熱交換器の最適化に関する研究
著者名:ジャンネッティ ニコロ・ガルシア ジョン カルロ・ヴァレラ リチャード ジェイソン・清 雄一・榎木 光治・鄭 宗秀・齋藤 潔  
要旨:本研究では,次世代冷媒の性能評価のために,熱交換器回路の進化的最適化に基づく評価手法を提案する.フィン付き管式熱交換器を対象としたシミュレーションでは,冷媒回路の双方向の数学的表現(管-管隣接行列)と,進化的探索の際に回路の一貫性と実現性を確保するための関連する制約条件の定式化を行った.熱交換器の解析において最適配置の効率的な進化的探索のために,「遺伝的熱経路生成法」という新しい最適化アルゴリズムを開発した.この技術は,物理的に実現可能である限り,分割・合流ノードの数や位置に制約のない複雑な回路への遺伝的演算子の実装を扱うことができ,それゆえ,従来の最適化研究の探索空間を拡大し最適化することが可能となる.空調用途の36個の配管数を持つ蒸発器の最適化回路に対し,代表的なR 32,R 410A,R 454Cの3種類の冷媒を用いた場合の性能を評価した.所定の出力容量と空気出口温度において,R 454Cのような非共沸混合冷媒では,より大きなCOP向上(最大7.26%)が達成され,空気温度変化と温度グライドを適切にマッチングさせることで,必要な圧縮比をさらに低減できる可能性があることが分かった.これまでのドロップイン性能分析とは逆の成果,つまり温度差のある低 GWP非共沸混合冷媒がR 410Aよりも高い性能を,そしてR 32と同等程度の性能を達成できる見込みがついた.
キーワード:遺伝的プログラミング, フィン付き管式熱交換器, 低GWP冷媒, 性能評価, 熱力学的最適化

[原著論文]
主題:レプリカ法による霜三次元構造の再構築
著者名:高屋敷 昌弘・西村 勝彦・Anna Sciazko・岡部 貴雄・谷口 淳・鹿園 直毅
要旨:寒冷地におけるヒートポンプの普及を促すためには,霜を抑制する手法の開発が急務であり,様々な環境条件における霜の3次元構造を定量化することが求められている.本研究では,環境条件を系統的に変化させた場合でも霜の局所構造を計測することが容易なレプリカ法を用いて,冷却面上に成長する霜の3次元構造を構築する手法を開発した.顕微鏡を用いてレプリカ作製過程霜の様子を観察し,霜を破壊することなくレプリカが作製可能であることを確認した.得られたレプリカをX線μCTで観察し,機械学習による画像処理を行うことで,霜の3次元構造を再構築することが可能となった.
キーワード:熱交換器,着霜,レプリカ法, 3次元構造, X線μCT

日本冷凍空調学会論文集Vol.39,No.2 (発行日:2022/6/30)
[原著論文]
主題:沈殿を伴う流れにおける相変化スラリーの流動および熱伝達モデル
著者名:佐藤 渓太・ 阿部 駿佑・浅岡 龍徳
要旨:管内輸送を想定した熱輸送媒体として,大きな潜熱を有するエリスリトールと水を混合させたエリ スリトールスラリーが有望である.エリスリトールスラリーは低流速条件で沈殿を伴う流れになりや すいため,流動様相が与える影響は無視できないとされている.既報ではエリスリトールスラリーの 流動モデルが提案されたが,簡素化のために実際の流動とは乖離が大きい.本研究では,エリスリトー ルスラリーを水平円管に流動させ圧力損失を測定し,低流速条件における流動特性を調べた.モデル に新たな変数を加えることで沈殿部の流動を定義した.測定された圧力損失と比較すると,本モデル は,極めて固相率が低い条件を除いた広い範囲で精度よく圧力損失を見積もることができ,モデルの 有用性を示すことができた.さらに,沈殿部の流動を新たにモデル化できたため,管下部における熱伝 達についての検討へ展開することができた.
キーワード:混相流,蓄熱,エリスリトールスラリー,熱媒体,管摩擦係数,固相率,流動様相

[原著論文]
主題:サイクロン分離・蒸発器を用いた超低温 CO2冷凍システムの特性調査
著者名:山口 博司・石川 雄將・山崎 晴彦・神村 岳・服部 一裕・Petter NEKSA
要旨:CO2を用いた超低温冷凍技術の実用化に向けて,新たに開発したサイクロン分離・蒸発器をヒートポ ンプ冷凍機の実機へ導入する.実機への導入の前段階において汎用の蒸発器をモデルとした水平蒸発 器を用いた実験では,蒸発器管内におけるドライアイスの内部閉塞が熱抵抗となりシステムの性能を 低下させることが示された.そのため本研究では,ドライアイス閉塞の問題解決及びドライアイスを 蒸発器内に貯蓄することを目的として,サイクロン分離器と蒸発器を組み合わせた新しい蒸発器を導 入する.サイクロン分離・蒸発器を用いた冷凍機の特性調査を行った結果,-67℃の低温と COPsystemが 1.2 と低温域において極めて高い効率を達成し,水平蒸発器を使用したシステムと比べ性能が大きく向 上されることが見込まれる.
キーワード: 自然冷媒,冷凍システム,CO2,ドライアイス,サイクロン分離・蒸発器

[原著論文]
主題:オーバル形渦巻によるスクロール圧縮機の吸入容積拡大に関する研究
著者名:岩竹 渉・河村 雷人・鳴海 圭亮・工藤 大祐
要旨:スクロール圧縮機の小型化,高出力化にむけた上限拡大技術が求められている.スクロール圧縮機 のシェル径を大型化することなく吸入容積を増加させるには,軸方向に渦巻の歯高を高くすることが 効果的であるが,渦巻の根元にかかる応力が増大し,信頼性が低下する懸念がある.そこで,渦巻を水 平方向に拡大する新たな渦巻形状の研究を開始した.圧縮機構が収納されるシェルの水平断面は円形 である.しかし,旋回運動する渦巻の歯先摺動面は円形ではないため,シェル内には圧縮には使えない 無駄スペースが存在していた.著者らは,無駄スペースを減らすために,渦巻歯先の摺動面を円形に近 づけるオーバル(楕円)形渦巻を考案した.今回評価した条件のもとでは,オーバル形渦巻は従来の渦 巻と比較して,吸入容積を 20%増加させることができる.
キーワード:: 圧縮機,空気調和機,スクロール,渦巻,上限拡大,オーバル

[原著論文]
主題:垂直ヘッダ型多分岐管における気液二相冷媒流の分配
-液相分配の均一性向上の試み-
著者名:小野寺 亜由美・畠田 崇史・澤原 風花・丸山 直樹・西村 顕・廣田 真史
要旨:本研究では,パラレルフロー型熱交換器における気液二相冷媒流の液相分配の均一性向上を目的と して,垂直ヘッダ内部に設置した多孔管による冷媒供給方式を検討した.管の内径と細孔径を変化さ せながら気液分配量を測定して多孔内管の最適な仕様を検討するとともに,各実験パラメータが液相 分配に与える影響を実験計画法に基づき定量的に評価した.その結果,多孔内管の内径は液相の最大 到達高さに,細孔径は液相分配率の分布プロファイルに影響することが明らかになった.また,本実 験条件の範囲内では,細孔の小径化により液相分配の均一性が向上することを明らかにした.
キーワード:熱交換器,蒸発器,混相流,気液分配,多孔内管,実験計画法

[原著論文]
主題:Experimental Investigation on Condensation Heat Transfer of Refrigerant R1234yf in Horizontal Microfin Tube
著者名:Afdhal Kurniawan MAINIL・Naoki SAKAMOTO・Hakimatul UBUDIYAH・M. Khairul BASHAR・Keishi KARIYA・Akio MIYARA
要旨:In this paper, an experimental study on the condensation heat transfer coefficient of refrigerant R1234yf was obtained inside a 3.5 mm outside diameter (OD) horizontal microfin tube. Comparison of present work (3.5 mm OD) and previous research (2.5 mm OD) was reported to evaluate the effect of diameter to heat transfer coefficient. Data were obtained over a range of mass velocity from 50 to 200 kg m-2s-1, vapor quality 0 to 1, and saturation temperature from 20°C to 30°C. The effect of mass velocity, vapor quality, and saturation temperature on condensation heat transfer coefficient was clarified. The experimental results were compared with some existing correlations in the open literature. Hirose et al. (2018) correlation has good agreement with experimental data.
キーワード:Condensation, Heat transfer coefficient, R1234yf, microfin tube

日本冷凍空調学会論文集Vol.39,No.1 (発行日:2022/3/31)
[原著論文]
主題:A3冷媒を使用した内蔵ショーケースのリスクアセスメント
著者名:山下 浩司・保坂 恵子・加藤 俊匡・池田 真治・石原 茂樹・阪江 覚・小林 章・海沼 秀和・長谷川 敬春・出野 裕・永井 洋
要旨:日本では,2011年からA2L冷媒を使用した機器のリスクアセスメントを行い,安全運用の方法を確立して順次製品展開を行っているが,キガリ改正を受け,さらにGWPの小さい冷媒への転換が望まれている.GWPの小さい冷媒には,LFLが小さく燃焼性が強いA3冷媒が多い.そこで,日本冷凍空調工業会ではA3冷媒を使用した内蔵ショーケースのリスクアセスメントを行った.本論文ではA3冷媒でも着火確率を精度よく計算できる計算方法を提案し,可燃空間を定量化するために行った冷媒漏えい解析,リスクアセスメントの詳細及び作成した日本の規格について説明する.
キーワード:ショーケース,数値流体力学,冷媒,可燃空間,着火源

[原著論文]
主題:マルトビオン酸カルシウムによる冷蔵米飯の老化抑制
著者名:松本 茜・滝澤 萌子・深見 健・川井 清司
要旨: マルトビオン酸Caは溶解性の極めて高い難消化性の酸性オリゴ糖Ca塩であり,様々な食品への利用が期待されるが,食品の物性に及ぼす影響については十分に調べられていない.本研究では,マルトビオン酸Caが冷蔵米飯の老化に及ぼす影響を調べた.レオメーターを用いた圧縮試験において,冷蔵米飯は保存時間の経過によって澱粉が老化し,圧縮荷重は高くなった.しかしマルトビオン酸Caの配合によって澱粉の老化は抑制され,圧縮荷重の上昇は抑えられた.示差走査熱量計を用いた澱粉の再糊化エンタルピー測定においても同様の効果を示す結果が得られた.マルトビオン酸Caによる澱粉の老化抑制効果はマルトビオン酸イオンによる水素結合形成と,Caイオンによる静電的相互作用とによってもたらされると考えられる.
キーワード:冷蔵, 熱分析, 米飯, マルトビオン酸カルシウム, 澱粉の老化

[原著論文]
主題:Observation of Changes in Frozen Pasta during Frozen Storage Using Synchrotron Radiation X-ray Computed Tomography
著者名:Junko SHINOZAKI・Akihiro TANAKA・Takahiro HARIGAE・Kentaro IRIE・Tomoaki HAGIWARA
要旨:"Freezer burn" is a type of quality degradation that occurs in frozen foods during frozen storage, which includes drying, degeneration, and discoloration. It is considered to be a sublimation phenomenon caused by a change in water vapor pressure due to temperature variations; however, there have been no studies regarding freezer burn in frozen pasta. In this study, the development of freezer burn in frozen pasta was visually monitored using a cryo synchrotron radiation X-ray computed tomography method. Using this approach, the state of freezer burn in the pasta was successfully visualized without sample pretreatment. The study revealed that temperature changes during storage accelerated the loss of moisture in frozen pasta. This was enhanced by increasing the frequency and amplitude of the temperature change. These results strongly indicated that, in order to suppress freezer burn of frozen pasta, storage freezers must be designed to suppress temperature changes.
キーワード:Sublimation, Ice Crystal, X-ray Computed Tomography, Freezer Burn, Synchrotron Radiation, Frozen Pasta

[原著論文]
主題:希薄臭化リチウム水溶液を用いた1-3℃中低温発生吸収冷凍機の開発
-第1報:蒸発器内の希薄溶液を考慮したサイクルシミュレーション-
著者名:藤居達郎・宮内 稔・内田修 一 郎
要旨:水-臭化リチウム系の作動媒体を用いた吸収冷凍機では,出力温度を低温化するために蒸発器内の冷媒に臭化リチウムを混合して希薄溶液とし,凍結温度を0 ℃以下とする方法が用いられている.本研究では,この方法を一般的な温水焚一重効用吸収冷凍機に適用し,1~3 ℃程度の低温を発生する中低温吸収冷凍機の開発を目的とする.本論文ではその基本段階として,希薄溶液の特性を考慮したサイクルシミュレーションおよびデューリング線図によりその挙動を検討した.その結果,適正な希薄溶液濃度を設定することにより,蒸発器内の凍結温度,吸収液系統の結晶化濃度に対して十分な余裕を持つ冷凍サイクルが構築可能であることを示した.
キーワード: 吸収冷凍機, 冷凍サイクル, 冷媒, シミュレーション, デューリング線図,希薄溶液

[原著論文]
主題:希薄臭化リチウム水溶液を用いた1-3℃中低温発生吸収冷凍機の開発
-第2報:製品試作機による動作検証-
著者名:藤居達郎・宮内 稔・内田 修一郎
要旨: 排熱の有効利用を目的として,作動媒体を水-臭化リチウム系,蒸発器内を希薄臭化リチウム水溶液として1~3℃程度の低温を発生する中低温発生型吸収冷凍機を開発した.本論文ではその実用化段階として,製品規模の試作機を製作し,冷水出口温度を約1~3℃としてサイクルの性能および動作を検証した.その結果,加熱用温水温度90℃,冷却水温度28℃において成績係数(COP)は0.71~0.73程度であり,冷媒の凍結などの問題は発生せず,実用可能な信頼性を有することを確認した.また,本実験と同等の条件をシミュレーションした結果,これらは冷凍能力および入熱量について±5%,COPについて±0.005の範囲で一致した.
キーワード:排熱利用, 吸収冷凍機, 冷凍サイクル, 希薄溶液, 実験, 信頼性

[原著論文]
主題:溶液輸送・貯蔵を組み込んだ吸収冷凍機によるごみ焼却排熱の熱輸送・利用のモデル分析
著者名:秋澤 淳
要旨:本研究では,ごみ焼却排熱を離れた需要地まで輸送して利用する技術として,溶液輸送型吸収冷凍機(STA)に着目した.アンモニア吸収冷凍機の発生器・凝縮器を排熱源側に,蒸発器・吸収器を需要側に設置し,その間をアンモニア冷媒液・アンモニア水溶液を輸送することによって熱輸送を実現する.また,溶液をタンクに貯めることで蓄熱機能も実現する.この技術と従来技術を考慮したエネルギーモデルを作成し,システムコスト最小化の観点から最適な技術構成を導いた.その結果,標準的と想定されるプラントコストにおいて,輸送距離6kmまでSTAが利用されること,プラントコストが2倍でもSTAは競争力を有することが示された.排熱有効利用を推進する上で,吸収溶液輸送・貯蔵を取り入れたSTAは有効と期待される.
キーワード:吸収冷凍機, 蓄熱, 熱輸送, 排熱利用, アンモニア

[原著論文]
主題:A Parametric Study of the Dehumidification Performance of a Crossflow Desiccant Coated Heat Exchanger operated with Direct Hot Water Heating and Evaporative Cooling
著者名:Seng SUNHOR・Dendi ADI SAPUTRA・Yugo OSAKA・Takuya TSUJIGUCHI・Akio KODAMA
要旨:A crossflow desiccant coated heat exchanger (CF-DCHE) driven by temperature swing adsorption based on direct hot water heating and evaporative cooling utilizing residual hot water was experimentally investigated. The time-averaged amount of dehumidification was examined as a key performance indicator while varying the primary operating parameters, including the cooling air velocity, process air velocity and regeneration/dehumidification cycle switching time. The results indicate that the adsorption outlet air humidity was decreased while the minimum humidity at the beginning of the adsorption period was decreased as the cooling air velocity was increased. After a certain period of time, the evaporation of water proceeded at a high rate and isothermal conditions were approached as adsorption progressed. The data also show that dehumidification performance was significantly affected by both the cooling air velocity and the cycle switching time. At shorter cycle switching times, the cooling air velocity had an effect on the time-averaged amount of dehumidification, but this phenomenon disappeared at longer cycle times under the present test conditions. When using the optimal switching time, the time-averaged amount of dehumidification increased along with the process air velocity in the case that cooling air was supplied.
キーワード: Dehumidification, Desiccant, Thermal swing adsorption, Crossflow heat exchanger, Evaporative cooling.

[原著論文]
主題:Experimental Investigation on the Effect of Desorption Temperature on the Performance of Low Humidity Desorption Process
著者名:Hao YU・Sangwon SEO・Kyaw THU・Takahiko MIYAZAKI
要旨:With the increase in energy consumption, energy-saving attracts lots of attention. The desiccant dehumidification system is a potential substitute for the air-conditioning system that can achieve energy saving by decreasing the energy input for latent heat. Besides, the desiccant dehumidification system can further utilize the low-temperature heat waste in the desorption process. Thus, this study has focused on the low temperatures range between 40oC and 70oC on the desorption process with low humidity ratios of dry air as 0.005 kg/kg. The results indicate that, with the increasing desorption temperature, the water removal amount also increases, which means the ability of dry air to capture moisture from desiccant increases with higher temperature. At the desorption temperature of 68oC, the average moisture removal capacity reached the peak, 0.0081kg/kg. Conversely, the coefficient of performance (COP) of the desorption process presented a downward trend with increasing desorption temperature. At desorption temperature 41oC the COP is highest at almost 0.8, then gradually dropped to around 0.51 at desorption temperature 68oC. The optimal desorption temperature can be determined as 54oC.
キーワード:Adsorption, Desiccant air conditioning system, Coefficient of performance, Low temperature desorption, Low humidity

[原著論文]
主題:湿り空気を用いた直接熱交換式ヒートポンプの発熱性能
著者名:弘中 秀至・花木 基史・Agung Tri Wijayanta・深井 潤
要旨:13X ゼオライトの充填層を用いた吸着式ヒートポンプに飽和湿り空気を流通することで,高温水蒸気の生成を試みた.湿り空気温度を30 °C から 70 °C まで変更した条件で発生した水蒸気の最高温度を測定した結果,湿り空気を 70 ℃ まで加熱することで水蒸気の最高温度は 150 ℃ 以上となった.水蒸気の最高温度は湿り空気の空塔速度には大きく影響されなかったことから,ゼオライトと湿り空気間の熱伝達が水蒸気の最高温度に与える影響は小さいことがわかった.そこで,湿り空気とゼオライトの温度が等しいという仮定の下で,熱収支および吸着平衡から水蒸気の最高温度を推算した.その結果,湿り空気温度が高温の条件ではこれらの関係から最高温度を推算可能であることがわかった.
キーワード:吸着, ヒートポンプ, ゼオライト, 湿り空気, 蒸気生成, 充填層

[原著論文]
主題:Progress on Thermal Energy Storage Using Nanotailored Silica with Aluminium Doping
著者名:Frantisek MIKSIK・Takahiko MIYAZAKI
要旨:Nanotailored microporous silica represents one of the more recent artificially prepared advanced materials used in heat transformation and conservation field after silica gel and various zeolite and zeolite-like materials. In this work, we introduce experimental findings on the energy characteristics of water adsorption on nanotailored microporous silica with 1.5 % aluminium doping in the structure. The downscaled system in this work simulates actual working conditions in a controlled environment for both heating and cooling mode. The key properties of this material lie in the regeneration temperatures 60 to 80 ℃ and COP, which reaches values around 0.6 in case of cooling and 0.7 in case of heating. In absolute values at ΔT = 15 ℃, the system reaches storing capacities of about 90 Wh and 126 Wh per adsorbent kilogram in terms of cooling and heating potential energy, respectively. An important factor of kinetic influence on system performance is discussed on a basis of constant time experiment and time-dependent energy flow breakthrough analysis. Constraining factors are found to be in parallel through the driving force of the pressure swing as well as the heat transfer through the body of the adsorption bed.
キーワード:Adsorption, Energy Storage, Cooling, Heating, Nanotailored Silica

[原著論文]
主題:Improving Water Vapor Adsorption Capacity at Low Humidity on Activated Carbon by Introducing Active Functional Groups Through Ozone Activation
著者名:CHAIRUNNISA・Frantisek MIKSIK・Takahiko MIYAZAKI・Kyaw THU・Jin MIYAWAKI
要旨:Water vapor adsorption on activated carbon (AC) for dehumidification purposes has gained much attention due to the abundance of benefits provided by AC. The working region limited in high water vapor relative pressure (P/P0) makes this material suitable only for removing water vapor at a highly humid region. In this study, ozone oxidation was conducted to introduce more oxygen-based functional groups on AC to attract more water molecules. Based on surface characterization results, ozone oxidation increases oxygen functional groups such as carboxylic on AC but decreases their pores. The more AC exposed to ozone, the more different properties could be observed. The increment of functional groups enhances the water vapor adsorption uptake at P/P0 ? 0.6, shifting the water sorption into lower P/P0.
キーワード: Dehumidification analysis, Theoretical study, Water vapor adsorption, Desiccant material

[原著論文]
主題:Thermodynamic Analysis of Adsorption Heat Transformer Cycle using Low Heat Capacity Adsorption Reactor and a Proposal of Heat Recovery
著者名:Yoshinori HAMAMOTO
要旨:The purpose of a heat transformer cycle is to extract heat at high temperature by utilizing waste heat at low temperature level. The heat generated during the adsorption of high-pressure water vapor raises the temperature of the external fluid to be used flowing in the adsorption reactor. However, since the heat input during preheating of the reactor and the heat removal during precooling are large, therefore, the heat capacity seems to affect the performance. In this study, first, thermodynamic analysis of the equilibrium cycle was performed to predict the amount of extracted heat from a low heat capacity reactor. The heat capacity was 20% smaller than that of the conventional reactor, and as a result, the output heat was 20% higher. Therefore, it was clarified that the decrease in heat capacity directly led to an increase in output heat. In addition to reducing the heat capacity, the effect of improving performance by heat recovery was also significant. The effect was almost the same as obtaining the upper limit of the output heat achieved by zeroing the heat capacity of the reactor. Moreover, from the viewpoint of exergy, heat recovery was important to enable high temperature extraction.
キーワード:Adsorption, Coefficient of performance, Heat capacity, Heat recovery, Heat transformer, Simulation

日本冷凍空調学会論文集Vol.38,No.4 (発行日:2021/12/31)
[原著論文]
主題:ねじりテープ挿入水平円管内におけるR410Aの沸騰熱伝達と圧力損失
著者名:埋橋英夫,角田博之,河合俊幸,鳥養映子,一宮浩一
要旨: 冷媒水平蒸発管に対するねじりテープ挿入の伝熱促進効果を調べることを目的とする.冷媒には混合冷媒R410Aを使用した.試験部銅管に内径17.05 mmと7.93 mmの2種類を用意し,各管についてピッチが異なる2~3種類のねじりテープを順に挿入して実験を行った.77~613 kg/m2sの冷媒質量速度条件で,平滑管とねじりテープ挿入管のそれぞれについて,冷媒クオリティを変化させて試験部圧損と熱伝達率を測定した.また,試験部上流と下流で可視化を行った.低質量速度で冷媒が層状流動状態のとき,ねじりテープ挿入管の熱伝達率は最大で1.6倍程度増大したが,圧損増大も顕著で,テープ挿入の負の効果が上回った.一方,高質量速度の条件で噴霧流に移行する流動域において,クオリティが1に近づくにつれてテープ挿入管の熱伝達率は最大2.2倍程度まで急増し,圧損は2~3倍程度の増大を維持したため,テープ挿入による伝達促進効果が明確に表れた.
キーワード:熱伝達,沸騰,冷媒,ねじりテープ,伝熱促進,圧力損失,R410A

[原著論文]
主題:扁平多孔管を用いたフィンレス蒸発器の空気側性能に関する研究
著者名:山村修史,室伏孝彦,東朋寛,党超鋲,飛原英治
要旨:扁平多孔管を用いたコルゲートフィン熱交換器はコンパクトで高性能であるが,蒸発器に用いる場合には,排水性の問題を有している.本研究ではコルゲートフィンを排し排水性を高めた扁平多孔管を用いた蒸発器の研究を行った.冷媒流路サイズ,冷媒流路数が異なり,冷媒が流れないプレート部を有する扁平多孔管の最適形状を数値解析により検討した.この結果を参考に4種類の扁平多孔管とそれを用いた熱交換器を試作した.それらを温度,湿度,速度を制御可能な風洞に設置し,伝熱管の空気側表面が乾き面,濡れ面の2つの状態に対して,熱交換量と空気側圧力損失を測定し性能を評価した.本扁平管及びそれらを用いた熱交換器は結露水が滞留することなく流下する特長を有し,空気側圧力損失の上昇も抑えつつ,単位前面面積あたりの伝熱量を上昇させることが可能で,従来型熱交換器より高性能となることが分かった.
キーワード:扁平多孔管,蒸発器,コルゲートフィンレス熱交換器,電気自動車用エアコン,排水性

[原著論文]
主題:におい嗅ぎGC-MSを用いた冷凍枝豆のブランチング有無による香り評価
著者名:大日方麗,本田梨香子,小竹佐知子,小林史幸,李潤珠,鈴木徹
要旨:本研究では,ブランチング処理の有無が冷凍枝豆の香気に与える影響について調査した.ブランチング処理をした枝豆試料と非ブランチング試料を真空包装後に急速凍結させ,同等な食感を与える調理条件の下で茹で加熱し,官能評価とにおい嗅ぎGC-MS(GC-MS/O)による香気分析を行った.官能評価の結果より,喫食時に鼻から抜ける香りでは有意差が認められなかったが,喫食直前の莢の香りでは,非ブランチング冷解凍試料の方が有意に良好であった.また,GC-MS/Oの分析結果より,非ブランチング冷解凍試料ではグリーン様香気表現がより多く検出された.したがって,ブランチング処理の有無において枝豆香気に影響を与えるのは莢であることが示唆された.
キーワード:凍結, 凍結食品,枝豆,ブランチング, GC-MS/O

[原著論文]
主題:入浴時ヒートショックの体質的危険度評価のための 末梢血管運動性の定量評価システムの開発
副題:-第1報:装置作製と基礎的な生体機能評価実験-
著者名:髙橋大志、髙橋真悟、児玉直樹、松尾仁司
要旨:本研究では,入浴時ヒートショックの体質的な危険度を定量的に評価できるシステムの構築を目的に,冷温熱刺激装置と近赤外線を用いた末梢血管透過撮影装置を作製し性能を評価した.さらに本装置を被験者の手掌と手指に装着し,手掌を冷却・加温した際の手指血管を撮影し血管径の変動を計測した.冷温熱刺激装置の性能評価の結果,無負荷条件及び手掌に装着した状態においても冷却および加温が可能であった.さらに生体計測実験では冷却と加温によって末梢血管径に変動がみられ,同一日内でも時間帯によって温度に対する血管運動性が変化したことが観察された.本結果は,構築したシステムが局所冷温熱刺激に対する血管運動性を定量的に評価できる可能性を示唆した.
キーワード:冷却,加温,ペルチェ効果,入浴時ヒートショック,血管運動性,生体機能

[原著論文]
主題:中低温用熱媒体エリスリトールスラリーの冷却円管内における熱伝達特性
著者名:坂本歩巳、阿部駿佑、浅岡龍徳
要旨:未利用エネルギー活用を目的とした熱媒体としてエリスリトールスラリーを提案する.本研究では,熱輸送媒体として使用する上での障壁となりうる伝熱面での結晶の析出や固着を考慮した熱伝達特性について把握することを目的とした.実験では,二重円管の内管にスラリー,外管に冷却水を流し,結晶の析出が起こる条件下でスラリーの流速と固相率を変化させて熱伝達係数を測定した.乱流域では,管内壁での結晶の固着により,いずれの固相率でも水溶液の理論値よりもスラリーの熱伝達係数が低くなることがわかった.固相率5 mass%では,乱流化による熱伝達係数の急激な増加が見られた.対して固相率10,15 mass%では熱伝達係数に同様の増加は見られず,低レイノルズ数から乱流域での理論値に近い傾きで増加した.加熱条件に比べ冷却条件では潜熱放出の影響による熱伝達の促進と結晶の固着による熱伝達の阻害の両者が顕著になることがわかった.また,潜熱放出の影響による熱伝達の向上は固相率10 mass%程度で頭打ちになることがわかった.ヌセルト数比と管摩擦係数比の比較では,結晶の凝固が圧力損失に及ぼす影響よりも,潜熱の放出による熱伝達向上へ及ぼす影響の方が大きいことが示唆された.以上の結果より,冷却条件におけるエリスリトールスラリーの流動・伝熱モデルを考案し,過冷却が熱伝達特性に影響を及ぼしている可能性を示した.
キーワード:蓄熱, 混相流, エリスリトールスラリー, 冷却管, 熱伝達係数, 凝固

日本冷凍空調学会論文集Vol.38,No.3 (発行日:2021/9/30)
[原著論文]
主題:スクロール圧縮機のスクロール羽根間に生じる 転がり・滑り油膜圧力
副題 粘性を考慮した理論解析と実験による検証
著者名:阿南景子,岡本遼介,川又純也
要旨:スクロール圧縮機では,固定と旋回の羽根間の狭い隙 間に比較的高い油膜圧力が発生していることが予想され るが,その発生メカニズムや特性は明らかにされていな い.本報では第一に,スクロール羽根間の運動が転がり と滑りの重ね合わせで表されることを明らかにしている. 第二に,曲率半径の大きなスクロールに対して曲率半径 の小さなスクロールが内接転がり・滑り運動する場合に ついて,発生する油膜圧力をオイルの粘性効果だけを考 慮して理論解析する手法を示し,油膜圧力と油膜力を比 較的簡単な無次元式で導いている.第三に,スクロール 接点が相対的に内接転がり・滑り運動をする簡単な等価 円弧モデルを用いて,発生する高い油膜圧力を実験的に 計測し,理論解析の結果が実験の結果に良く一致するこ とを示している.最後に,中容量スクロール圧縮機にお いて発生すると予測される油膜圧力と油膜力を理論計算 し,特に外周部では羽根の弾性変形を引き起こすほどの 大きな油膜力が発生することを明らかにしている.
キーワード:圧縮機,スクロール圧縮機,スクロール羽根,油膜 圧力,油膜力,接触力,転がり,滑り

[原著論文]
主題: Quality Improvement of Pizza Crust for Chilled Transport and Storage:Effect of Pre-baking on the Physical Strength and Texture
著者名:Akane MATSUMOTO, Mei YOSHIDA, Kiyoshi KAWAI
要旨:Pizza dough baked at mild thermal conditions(prebaked pizza crust)can be shipped and stored under refrigerated conditions, and enables a quick serving of pizza. Pre-baked pizza crust, however, easily collapses due to loading weight during shipping and storage. In addition, the texture of re-baked pizza crust becomes essentially harder due to the further reduction of water. The purpose of this study was to improve the physical strength of pre-baked pizza crust and the texture of rebaked pizza crust. The water content decreased and initial elasticity increased with increase in pre-baking time. Samples pre-baked for 15 and 20 min tended to have a lower deformation ratio than that pre-baked for 5 min. The rounded, thicker rim of the pizza crust became flattened, but the internal porous structure was maintained in samples that were pre-baked for 15 min. To control the texture of the re-baked pizza crust, rehydration was performed before the re-baking. The water content of the rehydrated pizza crust was almost equivalent to that of conventional(not pre-baked)pizza crust dough, and the rheological and sensory softness of the re-baked pizza crust were significantly improved.
キーワード:Cold storage, Cold chain system, Pizza, Baking, Rehydration, Texture

[原著論文]
主題:ECS モデルによる冷媒の飽和物性値および理 論性能の推算精度の検証
著者名: 寺石遼馬,粥川洋平,赤坂 亮,鄭 宗秀, 齋藤 潔
要旨:環境保護の観点から,冷凍空調分野における作動流体 は地球温暖化係数(GWP)の低い冷媒への転換が求めら れている.ただし,実際に冷凍空調機器の冷媒転換を迅 速に実現するには,システムの性能計算に必要な信頼性 の高い熱力学モデルが必要となってくる.近年では拡張 対応状態原理(ECS)モデルが様々な代替冷媒の簡便な サイクル計算に用いられているものの,その推算精度は 明らかになっていない.本研究では,様々な冷媒に適用 可能となるよう,決定されたパラメータを採用した ECS モデルによる,飽和物性値および理論性能の推算精度を 評価した.飽和物性に関する平均偏差は,Tr = 0.7 にお いて,飽和蒸気圧に対して 5.7%,飽和液密度に対して 11%,蒸発潜熱に対して 2.0%であった.一方,理論冷 凍サイクル性能の計算においては,COP で 1%よりも良 い精度が得られたが,体積能力に対する予測精度はやや 劣り,6.7%程度であることがわかった.
キーワード:冷媒,熱力学性質,状態方程式,ECS モデル

[原著論文]
主題:EV 用ヒートポンプ省動力効果の検証
著者名:角田 功,佐々木 雄
要旨:本研究では電気自動車の暖房において,ヒートポンプ 搭載車が車体側で省動力対策を行った電気ヒータ搭載 車よりも消費電力が少なく,走行距離の減少を抑えられ ることを確認した.確認方法は,実験によって行った. EV 走行可能な乗用車に十分な暖房性能を持つテスト用 ヒートポンプを搭載したテスト車を製作し,その暖房能 力と消費電力の測定を行った.省電力対策を行った電 気ヒータ搭載車の消費電力は,ヒートポンプ暖房で測 定した暖房能力を使い,相当消費電力を計算で求めた. 車体側省電力対策は,換気量削減と室温を下げた暖房と した.電気ヒータ暖房,換気削減した電気ヒータ暖房, 低室温とした電気ヒータ暖房,ヒートポンプ暖房それぞ れの消費電力を比較した結果,ヒートポンプが最も消費 電力が少なかった.
キーワード:ヒートポンプ,省エネルギー,冷凍サイクル,乗物, 熱交換器,電気自動車,暖房

[原著論文]
主題:液体窒素凍結による脂肪分の多いブリ切り身の 脱油現象
著者名:竹内友里,李 潤珠,渡辺 学,鈴木 徹
要旨:本研究は液体窒素凍結によるブリの脱油現象調査を目 的とした.脱油現象を観察するため,-30℃で静置凍結および液体窒素で浸漬凍結したブリ切り身試料を作製し, 流水解凍後に紙皿に置いた状態で 25℃で 10 時間放置し た結果,液体窒素凍結の方が多く脱油された.また,解 凍後の時間経過によるドリップ流出において,-30℃凍 結や液体窒素での浸漬凍結を行い,流水解凍直後と解凍 後に 10℃または 25℃で 18 時間保存後に脱水率・脱油率 の測定を行った.解凍直後のドリップ流出率は液体窒素 凍結の方が 0.4%で低かったが,10℃や 25℃の保存後は ともに 2 倍以上の増加傾向であった.25℃保存後では, 液体窒素凍結試料の脱水率が 7.6%,脱油率は 5.5%で あり,顕著に高い結果であった.以上の結果から,解凍 後の貯蔵過程におけるドリップ量,特に脂質分の流出が 多くなることがわかった.
キーワード:冷凍,解凍,脱油,液体窒素,ブリ

[原著論文]
主題:異なる温度で解凍した冷凍マアジ臭気のにおい 識別装置による分析
著者名: 山橋純代,李 潤珠,渡辺 学,     吉江由美子,鈴木 徹
要旨:本研究では,におい識別装置を用いて解凍後の冷凍マ アジの臭気変動を分析した.市販のマアジを急速凍結さ せた後,10℃および 25℃で解凍を行い,解凍後の臭気 変動をにおい識別装置で分析した.25℃で解凍した試料 の方が,炭化水素系,芳香族系,エステル系の項目の 数値がより高い結果であった.本研究の結果より,解凍 温度による臭気の強さや質の変動を臭気寄与度や類似度 で数値化することが可能であり,におい識別装置を用い たにおい分析方法は魚肉の臭気変動の評価に有用である ことが示唆された.
キーワード:冷凍,解凍,凍結貯蔵,臭気,マアジ

[原著論文]
主題:Effects of Thawing Conditions on Physical Properties of Frozen Tempe
著者名: Chevia Nadia LAKSMISARI, Tetsuya ARAK
要旨:Tempe is soybean-based fermented food from Indonesia. In countries outside Indonesia, including in Japan, tempe is mostly purchased in a frozen form because of its short shelf life. Inappropriate thawing may result in lowering the food quality. The study aims to investigate the effect of thawing conditions such as water immersion thawing(WIT), hot steam thawing (HS), ultrasound-assisted thawing(UAT), and microwave thawing(MT)on frozen tempe. This study showed that WIT had the longest thawing time and lowest hardness value. Although HS had a short thawing time, it had a lower hardness value compared to fresh samples. Furthermore, MT had the highest color difference(ΔE)and decreased in hardness value compared to fresh samples. UAT at 150 W is considered as optimal thawing conditions because it not only significantly shortened the thawing time by 32% but also showed the best retention in the original hardness and color properties of fresh tempe compared to other thawing conditions. Thawing time had a significant negative correlation with thawing loss at the 5% level, and thawing loss had a positive correlation with yellowness(b*)(p < 0.01)and color difference(ΔE) (p < 0.01)values.
キーワード:Tempe, Frozen, Thawing, Ultrasound, Color, Hardness

[原著論文]
主題:Non-destructive Evaluation of the Ice Fraction of Frozen Pork during Thawing by Nearinfrared Spectroscopy
著者名:Hikaru IMAMURA, Shinji KONO, Takuma GENKAWA
要旨:Evaluating the thawing level of frozen ingredients in food manufacturing processes is important for ensuring quality. In the present study, a new approach for measuring the ice fraction, an indicator of the thawing level of frozen foods, was developed using near-infrared (NIR)spectroscopy. In the NIR spectra(700-1 100 nm), the OH band shifted to shorter wavelengths as the ice fraction decreased. Savitzky-Golay second-derivative treatment revealed that the peak intensity of ice decreased whereas that of water increased as the ice fraction decreased. Multiple linear regression models constructed using the second-derivative spectra provided prediction values that agreed well (determination coefficients of 0.96 for agar and 0.84 for pork)with the ice fractions determined using conventional calorimetry(0-71.6% for agar and 0.3- 67.4% for pork). Thus, this NIR technique can be applied as a non-destructive and rapid method for confirming the thawing level of frozen foods.
キーワード:Thawing, Near-infrared spectroscopy, Ice fraction, Pork, Agar, Second-derivative treatment, Multiple linear regression analysis

[原著論文]
主題:様々な温度で加熱した真空凍結乾燥ニンニクに おける抗菌活性の耐熱性に関する研究
著者名:樋口智之,木村誠也
要旨:ニンニクはアリシンのような抗菌成分を有する有機硫 黄化合物を含むが,これらは熱に対して不安定であるこ とが知られている.しかしながら,真空凍結乾燥は加熱 を伴わないので,抗菌活性が低下しにくいことが考えら れる.そこで本研究では,真空凍結乾燥ニンニクの抗菌 活性を生ニンニクと比較し,さらに加熱に対してどの程 度耐性があるかを調べた.その結果,真空凍結乾燥ニン ニクにより形成された阻止円の直径は,生ニンニクと有 意差はなかった.さらに真空凍結乾燥ニンニクの抗菌活 性は 80℃で 20 分以上加熱すると失活し,これは生ニン ニクでも同様の現象が認められた.これらのことから, 真空凍結乾燥ニンニクは生ニンニクとほぼ同等の抗菌活 性と耐熱性を有することが示唆された.
キーワード:凍結乾燥,加熱,ニンニク,抗菌,耐熱性

[原著論文]
主題: 脱血および低温熟成がマツカワ(Verasper moseri)の魚肉品質に及ぼす影響
著者名:松原 久
要旨:近年関心が高まっている魚類の熟成は,その前処理法 である活締め脱血神経抜き技術とともに一般に広がりを 見せている.しかし,その効果と安全性に関する科学的 研究報告はごく僅かである.そこで,カレイ類の高級魚 マツカワを使い,脱血神経抜きなし,従来の脱血神経抜 き法,灌水式神経抜き脱血法で処理し,0℃で 1 ヶ月熟 成させた.その結果,洗浄したマツカワセミドレスの魚 肉の一般生菌数の増加は認められなかった.一方,脱血 法に関わらず 1 ヶ月の熟成終了時にイノシン酸(IMP) は消失し,遊離アミノ酸総量は増加せず,官能試験での 濃厚な旨味は確認されなかった.同処理でのマツカワの 食べ頃は IMP の分析から熟成開始翌日~ 6 日目頃と推 定された.
キーワード:冷蔵,ドリップ,マツカワ,熟成,一般生菌数,核酸関 連物質,遊離アミノ酸

[原著論文]
主題:近赤外スペクトルによるさば類の凍結・解凍状態の評価
著者名:木村優輝,木宮 隆,関川麻美
要旨:水産加工の現場では,半解凍または解凍原料が広く用 いられるが,加工機器が要求する原料状態を現場で厳密に判断することは難しい.そこで,インラインの透過方 式で,非接触的に状態の異なるさば類の近赤外スペクト ルを取得し,多変量解析による凍結・解凍状態の評価に ついて検討した.線形判別分析の結果,判別正答率は, 凍結状態で約 98%,半解凍状態で約 85%,解凍状態で 100%であり,さば類の凍結・解凍状態を判別できるこ とが示唆された.本技術を用いた状態判別の自動化によ り,加工工程の最適化に寄与することが期待される.
キーワード:凍結,解凍,近赤外分光,水,スペクトル,主成分 分析,線形判別分析,さば

[原著論文]
主題:陸奥湾産の地まき及び養殖冷凍ホタテの水溶性・ 脂溶性栄養成分の比較
著者名: 前多隼人,最知美友,福田 覚
要旨:青森県陸奥湾産の冷凍された地まきホタテ貝柱(地ま き冷凍ホタテ)と養殖ホタテ貝柱(養殖冷凍ホタテ)の 品質の差を明らかにすることを目的とし,脂溶性成分と 水溶性成分の比較分析をおこなった.脂溶性成分の分析 の結果,地まき冷凍ホタテは養殖冷凍ホタテよりも脂質 含有量が高い傾向を示した.水溶性成分である遊離アミ ノ酸を定量した結果,旨味などに関与するアミノ酸も含 め,差が認められなかった.また,キャピラリー電気泳 動-飛行時間型質量分析計(CE-TOF/MS)を用いたメ タボローム解析にて網羅的な解析をおこなった.138 の イオン性の水溶性物が検出されたが,これらの主成分解 析の結果,両冷凍ホタテに大きな特徴の差は認められな かった.以上の結果から地まき冷凍ホタテと養殖冷凍ホ タテは脂溶性成分に食餌の影響とされる若干の違いが確 認されたが,水溶性成分には大きな差がなく,両者の違 いを区別する特徴的な成分がないことが示唆された.
キーワード:冷凍食品,凍結保存,ホタテ,多価不飽和脂肪酸, 遊離アミノ酸,メタボローム解析

[原著論文]
主題:Recrystallization of Ice Crystals in Sucrose Solution Containing Sodium Alginate and Its Relationship to Dynamic State of Freezeconcentrated Matrix Evaluated by Dielectric Relaxation Measurement
著者名:Chuandong FANG, Mario SHIBATA, Tomoaki HAGIWARA
要旨:The effect of sodium alginate addition on the recrystallization of ice crystals in 40% sucrose solution at -10 ℃ was experimentally determined. The dynamic state of the freeze-concentrated matrix was investigated by the dielectric relaxation measurements to discuss the mechanism of sodium alginate addition effect on the ice recrystallization. The recrystallization of ice crystals was significantly inhibited by the addition of 3 %, 5 %, and 10 % alginate. And the recrystallization rate constant tended to decrease with increasing alginate concentration. The dielectric relaxation behavior of all samples was well fitted by the combined equation of the two Cole-Cole relaxations indicating the existence of two relaxation process with different relaxation time: fast and slow processes. Based on the preceding research, the fast one and slow one was interpreted as relaxation of free water and that of solute-coupled water, respectively. Increasing sodium alginate concentration, both the fast and slow relaxation time tended to become larger, indicating that slower water mobility in freeze-concentrated phase. This result suggested that the slower water mobility by addition of sodium alginate contributed to the ice recrystallization suppression.
キーワード:Ice crystal, Free water, Recrystallization, Dielectric relaxation, Water mobility, Freeze-concentrated matrix

日本冷凍空調学会論文集Vol.38,No.2 (発行日:2021/6/30)
[原著論文]
主題:Combining Computational Fluid Dynamics Analysis with Fluid Flow Visualization and Heat Transfer Measurements for Evaluating the Thermal Performance of an Industrial Spiral-Belt Food Freezer
著者名:Kazunori MASUDA・Yuta TOBARI・Shinji KONO・Kazuo MAENO
要旨:The evaluation of the thermal performance of a spiral-belt food freezer is important for optimizing its thermal design for industrial use. However, it is difficult to understand the behavior inside industrial freezers owing to their large volumes and complicated structures. In this study, computational fluid dynamics (CFD) was applied together with a wind tunnel test model to estimate the thermo-fluid behavior inside a spiral-belt freezer. First, the heat transfer coefficient on the surface of the food cooling model was calculated through two-dimensional CFD simulations by using the AKN k-ε turbulence model. Then, the heat conduction equations for a stainless-steel block (ANSI 304) were evaluated. In addition, the stainless-steel block was cooled in wind-tunnel experiments under the same boundary conditions as the CFD simulations. The cooling time of the stainless-steel block predicted through CFD showed good agreement with the experimental cooling time. Thus, the combination of CFD and such experiments can be useful for elucidating the complicated thermo-fluid behavior inside freezers with high accuracy and relatively low calculation costs.
キーワード: computational fluid dynamics (CFD), food freezer, thermo-fluid analysis, heat transfer, refrigerating application, food processing

[原著論文]
主題:強制対流条件下での着霜現象への冷却面温度及び主流絶対湿度の影響
著者名:服部皓大・倉田琢巳・十川悟・森永裕大・植田晃弘・佐藤哲也
要旨:極超音速旅客機に搭載される空気予冷器における着霜問題を解決するために,強制対流条件下において平板冷却面上に生じる着霜現象を対象に,冷却面温度を-10,-20,-30℃の3通り,主流絶対湿度を8,12,16 g?m^(-3) の3通りにそれぞれ変化させ,着霜開始後600 s以内での霜厚さ及び霜質量への影響を調査した.1次元霜層成長モデルを用いて,霜層表面温度の時間変化と霜層成長挙動との関連についても調査した.霜質量の増加率は時間によらず一定で,主流絶対湿度と冷却平板上での飽和水蒸気量との差Δρ_vに比例し,霜厚さは着霜開始直後に急速に増加するが,その増加率は着霜開始後急速に減少した.霜層の二次元的な形状の変化についても計測し,着霜初期には前端で急激に成長し,時間経過とともに後端側が成長していく様子が確認された.
キーワード:予冷 湿り空気 着霜 平板 強制対流

[原著論文]
主題:水平三角形細管内凝縮熱流動特性に関する研究
著者名:秋山亮仁・浅野友徳・浅野 等・丸山和久・江田秋人
要旨:ヒートポンプ給湯機の水加熱器において入口水温の上昇を想定する場合,臨界点が高い冷媒の使用が有効である.その場合,水加熱器は凝縮器として動作する.本研究では,市販給湯機で用いられている四葉伝熱管の一部の流路形状を模擬した水力等価直径 1.44 mmの三角形細管を対象として凝縮熱流動特性に及ぼす流路断面形状の影響を実験的に評価した.冷媒にはHFC-245faを用い,水平配置として重力に対する配置の方向,すなわち頂点上向きの正立配置,下向きの倒立配置の凝縮熱伝達率に及ぼす影響を評価した.さらに,凝縮試験部出口で流動挙動と断面平均ボイド率を同時計測した.実験結果から,正立配置高乾き度条件においても頂部の隅に液膜が保持されること,流動様式の環状流遷移条件,平均ボイド率,凝縮熱伝達特性に及ぼす管配置の影響が小さいことが明らかとされた.
キーワード:凝縮流, 熱伝達, 細径三角形流路, 二重管式熱交換器, HFC-245fa, ボイド率

[原著論文]
主題:4 mm細径溝付管内の流動様相に基づく凝縮熱伝達率の予測
著者名:広瀬正尚・井上順広
要旨:本報では,R1234ze(E),R410A,R32およびR152aの凝縮熱伝達率の実験値を用いて,流動様相の変化に基づき,強制対流凝縮が支配的な領域である環状流域と自由対流凝縮が支配的な領域である波状‐スラグ流域に分類した. それらを基に細径管の環状流域における質量速度毎の影響や,波状-スラグ流域で細径化にともなう表面張力の影響について詳細な考察を行い,細径溝付管の凝縮熱伝達率の予測式の最適化を行った.最適化した予測式は,各種冷媒の溝形状の異なる細径溝付管の凝縮熱伝達率を予測することが可能であり,実験値を±30%で相関するとともに,他の研究者の実験値の傾向もほぼ予測できることを示した.
キーワード:凝縮,熱伝達,溝付管,細径,流動様相,予測式

[原著論文]
主題:垂直ヘッダ型多分岐管における気液二相冷媒流の分配
副題:-R410AとR134aにおける気液分配と圧力損失の比較-
著者名:小野寺亜由美・澤原風花・畠田崇史・荒木勇人・丸山直樹・西村顕・廣田真史
要旨:本研究では,住宅用や業務用空調機に用いられるパラレルフロー型熱交換器を模擬した垂直ヘッダ/水平多分岐管内の気液二相流について,動作圧力の異なる2種類の冷媒R410AとR134aを用いて実験を行い,冷媒物性とくに蒸気密度の違いが気液分配と圧力損失の特性に及ぼす影響を検討した.流入側ヘッダ内の流動や分岐管への気液分配特性には冷媒の違いによる顕著な差は認められず,高クオリティ時に液相分配が最下部の分岐管に偏る傾向が観察された.一方,圧力損失には冷媒の影響が明確に現れ,R134aにおける流路圧力損失はR410Aにおける値の1.2~1.8倍に達し,クオリティの増加に伴い両者の差は増大した.
キーワード:熱交換器,蒸発器,混相流,冷媒,気液分配,圧力損失

[原著論文]
主題:二並列ミニチャンネル内沸騰流の流量振動発生限界
著者名:黒瀬 築・登立 航・松澤 遼・宮田一司・濱本芳徳
要旨: ヘッダを共有する並列流路の沸騰流では,流量が周期的に変動する流量振動が生じやすい.流量振動は熱伝達特性の予測を困難にし,周期的なドライアウトを誘発するため,振動の発生限界を把握することが重要である.本研究では,2並列ミニチャンネルを対象に,入口クオリティ,平均流量および熱流束が振動の発生限界に与える影響を実験により検討した.その結果,流量振動は出口クオリティが高くなると発生し,入口クオリティが小さいほど低い出口クオリティから振動が生じやすいことを明らかにした.さらに,流路出口の流動様相がスラグ流である場合に流量振動が生じやすかったため,シミュレーションを用いてそのメカニズムを検討した.
キーワード: 圧力損失,流動様式,並列ミニチャンネル,沸騰流,流量振動

[原著論文]
主題:水平ミニチャンネル内の冷媒流量減少過程における過渡沸騰熱伝達特性
著者名:坂井祥平・黒瀬 築・宮田一司・濱本芳徳
要旨:近年,空調機用熱交換器やヒートパイプの高性能化・コンパクト化を目的として,冷媒流路の細径化が進められており,内径1 mm程度のミニチャンネルにおける相変化熱伝達特性の解明が求められている.ミニチャンネル熱交換器の一部条件や自励振動ヒートパイプでは冷媒の流量振動が発生するため,熱伝達性能を予測するためには流量変動を伴う冷媒の過渡相変化熱伝達特性を把握しておく必要がある.本研究では,流量変動時の過渡沸騰熱伝達特性解明の基礎として,内径1.0 mmの水平ミニチャンネルを流れる冷媒の質量速度が過渡的に減少する際の沸騰熱伝達率を測定し,定常熱伝達の実験結果および微細流路内定常熱伝達予測式と比較することで特性の検討を行った.
キーワード:沸騰流,熱伝達,過渡特性,ミニチャンネル,流量減少,冷媒

[原著論文]
主題:波状形状を有する微細管内における 垂直上昇気液二相流の沸騰熱流動特性に関する研究
著者名:小林哲也・御手洗遥輝・榎木光治・西田耕作・赤田郁朗
要旨:微細管の流れ方向の形状が変化した場合の流動特性への影響を明らかにするために,その一例として内径が約1mmの微細管を波型の形状に加工した管(波形管)と一般的な微細円形管(直線管)を用い,気液二相垂直上昇流の流動様相の観察と摩擦圧力損失および沸騰熱伝達率の測定を行った.流動様相の観察実験では,波形管は,従来の直線管の研究で報告されてきた一般的な流動様式とは一部異なる特徴的な流動様相がみられた.また,波形管の摩擦圧力損失は,直線管の摩擦圧力損失よりも特徴的な流動様相が観察される領域において約2倍程度高い値を示すことがわかった.さらに,沸騰熱伝達実験では,波形管は直線管と比べて,低熱流束ほど熱伝達率に差異が確認され最大で2.5倍程度向上したが,高熱流束になるほど波形管の熱伝達率は直線管のそれに漸近することがわかった.
キーワード:流動様式,圧力損失,流動沸騰,微細管,伝熱促進,熱交換器

[原著論文]
主題:溶射被膜を有するローフィン管のR 134aおよびR 1233zd(E)における 水平管外流下液膜蒸発熱伝達
著者名:乳原 励・澤渡一哉・杉本勝美・浅野 等
要旨: 環境保護のため,冷媒使用量の削減が求められており,満液式熱交換器に対して流下液膜式熱交換器への置換が期待されている.本研究では,単純な伝熱面積拡大管であるローフィン管を対象に,核沸騰促進と液膜の保持が期待できる溶射被膜を伝熱面上に付与し,その流下液膜蒸発熱伝達特性をR 134aとR 1233zd(E)を用いて実験的に評価した.さらに,プール沸騰熱伝達実験から核沸騰熱伝達特性を評価した.伝熱管は,フィン頂部の外径19.05 mm,長さ50 mmの銅製ローフィン管であり,溶射加工を施したものと無処理のものを用いた.液膜流量を0.033 kg・m-1・s-1 一定のもと,ヒーターによって熱流束を10 ~ 85 kW・m-2の範囲で変化させた.実験結果から,ローフィン管への溶射加工によって伝熱促進が得られることが示された.伝熱促進率は低熱流束ほど高くなり,R 134aでは最大2.7倍,R 1233zd(E)では最大2.0倍であった.
キーワード: 熱伝達,蒸発,流下液膜,溶射加工,R 134a,R 1233zd(E)

[原著論文]
主題:赤外線による可視透明ヒータ越しの沸騰熱伝達変動測定の試み
著者名:吉田雅輝・山田俊輔・船見祐揮・中村 元
要旨:微細流路における流動沸騰など,高速かつ微細な熱伝達変動を赤外線カメラで計測する技術を確立するために,可視透明ヒータ上の沸騰熱伝達変動測定を試みた.赤外線透過窓材(CaF2)上に厚さ700 nmのITO膜を成膜した可視透明ヒータを伝熱面として使用し,落下液滴の沸騰熱伝達を測定した.その結果,100-200 Hz以上の熱伝達変動と0.5 mm程度までの熱伝達分布を検出することができた.本実験結果および伝熱面の熱伝導解析から得られた予測式によると,より熱伝導率の低い窓材と時間・空間分解能の高い赤外線カメラを使用すれば,微細流路の流動沸騰熱伝達の非定常性を把握する上で必要となる時間・空間的変動(1 kHz程度かつ0.1 mm程度)を定量的に測定できる可能性が示された.
キーワード:熱伝達,沸騰,計測,時空間分解能,可視透明ヒータ,赤外線カメラ,落下液滴

[原著論文]
主題:透過率と管摩擦係数を用いた焼結型繊維状多孔質管に関する 圧力損失特性の整理
著者名:小林拓都・渡邊 廉・大友優甫・上田祐樹・秋澤 淳・榎木光治
要旨:本研究では焼結型繊維状多孔質体を充填した管内流の摩擦圧力損失性の特性を実験的に解明して整理式の提案をしている.焼結型繊維状多孔質体に対する摩擦圧力損失は,形状係数および透過率を用いることで,管摩擦係数とレイノルズ数を導出し,また,多孔質体ならではの特徴であるパラメータの多さ,つまり空隙率,内径,繊維径,および多孔質体充填長さについて整理できることを確認した.さらに,本研究で提案した新たな整理法は,空隙率によって変化する管内の流速を考慮することで,実験値との平均偏差5.1 %と,より高い精度で摩擦圧力損失を見積もることが可能である.
キーワード:熱交換器,圧力損失,繊維状多孔質体,管内流,摩擦係数,透過率,形状係数

[原著論文]
主題:吸着剤塗布平板上の着霜特性に関する実験的検討
著者名:大西 元・沈 浩・中野紘佑・春木将司・多田幸生
要旨:熱交換器への着霜の低減は大きな課題となっている.著者らはこれまでに,着霜の原因である水蒸気の直接除去法に着目し,吸着剤が塗布された熱交換器を直接蒸発器として利用することを提案してきた.本研究では,着霜環境下における吸着剤への詳細な物質移動メカニズムの解明を目指し,吸着剤が塗布された水平平板における着霜特性を,吸着剤が塗布されていない平板と比較し実験的に検討した.その結果,吸着剤塗布面では水蒸気吸着による無着霜時間が見られ,着霜遅延効果が現れることがわかった.さらに,吸着剤塗布面の平均霜質量流束は低くなり,着霜抑制効果が現れることもわかった.それゆえ,吸着剤は着霜低減の観点で有効であることが明らかとなった.
キーワード: 物質移動,吸着,吸着剤塗布平板,着霜,蒸発器,実験

日本冷凍空調学会論文集Vol.38,No.1 (発行日:2021/3/31)
[原著論文]
主題:冷媒溶解と発熱を考慮した圧縮機の軸受特性に関する研究
- 第2報:解析モデルの実験検証 -
著者名:佐々木 辰也・佐々木 信也
要旨:空調冷熱用圧縮機では運転範囲の上限拡大が求められている.上限拡大によって圧縮機の回転軸を支持するすべり軸受で荷重もしくは回転数が増加する.一方,冷凍機油には冷媒が溶解しており,温度と圧力条件によって冷媒溶解度と溶解粘度が変化する.また,冷媒溶解度の変化に伴って熱が発生する.高負荷,高回転数領域では摩擦熱や冷媒溶解による粘度変化の影響が無視できず軸受特性が変化すると考える.筆者らはこれまでに摩擦による発熱とそれによる冷媒溶解度,溶解粘度変化が軸受特性に及ぼす影響を解析的に明らかにした.本報告では冷媒環境下ですべり軸受の特性評価を行い,解析モデルの妥当性を実験的に検証した.その結果,解析モデルに導入した冷媒溶解度変化に起因した熱の発生を裏付ける実験結果を得た.
キーワード:潤滑,圧縮機,冷媒,軸受,計測

[原著論文]
主題:高鮮度魚肉のインピーダンスと凍結-解凍後の品質の関係
著者名:戸枝 優花・鈴木 徹・渡辺 学
要旨:死後数時間以内の高鮮度状態での,魚肉の即殺から凍結までの冷蔵保存時間の差異が凍結-解凍後の品質に及ぼす影響を調べるため,凍結前インピーダンスと凍結-解凍後のドリップ率の関係を調べた.初めに,凍結後の保管は行わずに凍結速度(緩慢,急速)の影響を検証し,次いで実際の流通を想定した3ヶ月の凍結保管実験を行った.その結果,凍結保管なし, 凍結保管3ヶ月の両方において,凍結前インピーダンスと解凍後のドリップ率が相関するという結果が得られた.また,死後数時間以内の非常に高鮮度な状態においては,凍結速度よりも凍結前インピーダンスの方が,凍結-解凍後のドリップ率とより強く相関していることが示唆された.
キーワード:凍結,鮮度,品質,魚,ドリップ,インピーダンス

[原著論文]
主題:Aerodynamic Excitation Forces Generated by Rotating Propeller Fan
-Aerodynamic Pressure Pulsation on Cabinet and Motor Reaction Forces-
著者名:Hiroki OTA・Taichi SATO・Aki KOYAMA・Shusaku NIITA
要旨:Many air conditioners use fan systems for heat exchange. Vibratory motion and noise in the air conditioner occur when the aerodynamic pressure pulsation by the rotating fan blades act on the cabinet of the air conditioner. On the other hand, reaction force corresponding to the cabinet pressure pulsation occurs, and then the cabinet pressure pulsation transmitted to the motor-feet. Finally, these transmitted forces excite support-structure of the motor. We calculated the cabinet pressure pulsation and pressure fluctuation on fan blades by CFD software “PHOENICS” and we also calculated the reaction force, using the results of CFD analysis. Calculation results of the cabinet pressure pulsation and reaction force were compared with the measured value by the testing system. We found that the calculation result agrees with experimental result.
キーワード:Packaged air conditioner, Fan, Vibration response prediction, Motor reaction force, Computational fluid dynamics (CFD)

[原著論文]
主題:超音波による冷媒ガスの高速濃度測定
著者名:松田 昭信・川邊 武俊・加藤 喜峰
要旨:温室効果ガスまたはオゾン層破壊ガスに属する冷媒ガス等の濃度測定においては,ガスタンクやパイプからガスを抽出せずに濃度を測定することが望まれている.そこで,外部から測定が可能な超音波による濃度測定法が最も適している.本研究では従来算術的計算が容易でない多原子ガス(例えば冷媒ガスの一つであるハイドロフルオロカーボンなど)と二原子ガスの混合ガス濃度を音速の測定結果から,モデルベース設計手法による非線形解析により瞬時に求めることに成功した.各種ガスの音速は固有値であるため,音波の伝搬時間の違いから混合ガス濃度が計算できる.また,多原子ガスの比熱比は,水素,酸素,窒素などの二原子ガスのそれらとは異なるため,従来のガス濃度算術的計算を適用できないことが課題となっていた.本論文では,異なる比熱比を持つ二原子ガスと多原子ガスの混合ガス濃度をμs単位で高速に計算できる新しいアルゴリズムとして,モデルベース設計手法を用いて多原子ガスと二原子ガスとの混合ガス濃度計算における非線形方程式の数値解析の計算法を実現した.
キーワード:冷媒,超音波,ガスセンサ,多原子ガス,ガス濃度, モデルベース設計

[原著論文]
主題:アイススラリーの流動様相に与える気泡の影響
著者名:金子 柊太・松本 葵・中﨑 涼太・浅岡 龍徳
要旨: アイススラリーに気泡が混入した気液固三相流の流動特性を把握するため,水平円管内を流動するアイススラリーに気泡を混入させ,流速,IPF,管内径をパラメータとして,気泡がアイススラリーの流動様相に与える影響について検討した.観察の結果,気泡の有無に関わらず,アイススラリーの流動様相は,流速とIPFが高い条件では管全体に氷粒子が一様に存在する均質流れとなり,流速やIPFが低下すると,管上部でIPFが高く管下部でIPFが低い不均質流れとなること,さらに流速やIPFが低下すると,氷粒子同士が凝集して流れる間欠的な流れとなることがわかった.気泡を伴うアイススラリーの流動では,気泡を伴わない場合に比べて,均質流れや不均質流れへの遷移が,流速やIPFが低い条件で生じやすくなることがわかった.これは氷粒子に付着した気泡による影響だと考えられる.IPFが高いほど気泡の効果が大きく,アイススラリーは均質流れになりやすいといえる.また,管内径が大きいほどアイススラリーの流動に与える気泡の影響は小さい.
キーワード:混相流,アイススラリー,流動様相,蓄熱,気泡,IPF

日本冷凍空調学会論文集Vol.37,No.4 (発行日:2020/12/31)
[原著論文]
主題:エリスリトールスラリーの管閉塞に対する撥水コーティングの影響
著者名:稲垣裕之・阿部駿佑・浅岡龍徳
要旨:エリスリトールスラリーの流動中の管閉塞を抑制するため,管内壁に施した撥水コーティングが管内壁面への結晶の固着を抑制する効果について検討した.外側から冷却された円管内にエリストールスラリーを流動させ,管内壁面への結晶の固着の様子を観察した.管内の結晶の固着の様子を観察するために観察部として透明なアクリル管を選定し,コーティングを施していない裸管と2種類の異なる撥水コーティングを施した管について結晶の固着傾向を比較した.実験の結果,固着の発生条件(固着が発生する冷却量と流速の関係)は裸管とコーティングを施した管とでほぼ同様であり,固着の発生条件は変わらなかった.しかしながら,エリスリトールスラリーの流れが不均質流れ,均質流れになる流動条件においては,撥水コーティングにより固着する結晶の量を減少させる効果があることがわかった.
キーワード:蓄熱,混相流,エリスリトールスラリー,管閉塞,接触角,表面性状,流動様相

[原著論文]
主題:垂直加熱冷却系における分散質の相変化を伴った懸濁液の自然対流の数値解析
著者名:森本崇志・木村正人・浅岡龍徳・熊野寛之
要旨:本研究では,微細な分散質を有する懸濁液を対象とし,垂直加熱冷却壁を有する矩形容器内において,分散質の固液相変化を伴った場合における懸濁液の自然対流について解析的に検討を行った.本解析では微細な粒子を有する懸濁液を単相流体として取り扱い,分散質の融解・凝固を,固相率を導入することで取り扱った.解析と実験結果の比較より,分散質の相変化を伴った場合において,伝熱特性を良好に再現することはできなかったものの,固相率の導入により,矩形容器内での対流は良好に再現することができた.また,解析より,分散質の相変化を伴った場合における,懸濁液中に形成される複数の温度層は,懸濁液内で形成される層状の固相率分布の影響であることが示唆された.
キーワード:自然対流,融解,凝固,懸濁液,蓄熱

[原著論文]
主題:脂質成分の相互作用が脂質の過冷却解消と平衡凝固点降下に及ぼす影響
著者名:玉置亮・李潤珠・鈴木徹
要旨:n-Hexadecane(HD)の結晶化に与えるn-Dacane(DCA)およびn-Octane(OCT)の影響を調べた.これにより,脂質成分どうしの相互作用が脂質の過冷却解消に及ぼす影響を体系的にとらえることを目的とした.HD-DCA系, HD-OCT系それぞれについて平衡凝固点に対して結晶核生成温度をプロットしたところ,一次の相関が見られた.しかしながらその傾きから評価すると,HDは水溶液系ほど過冷却が進行しなかった.n-Alkane類は極性を持たず,水溶液系ほど分子間の相互作用が強くないため,過冷却解消の障壁が高くないことがひとつの要因として推察された.また,HD-OCT系よりHD-DCA系の方が相対的に過冷却が進行する結果となり,共存物質によって過冷却の進行度合いが異なることも明らかとなった.
キーワード:脂質, 凍結, 結晶化, 乳濁液, 凝固点, 過冷却

[原著論文]
主題:熱交換器着霜時のEVヒートポンプ性能
著者名:角田 功
要旨:電気自動車では,走行用として蓄えている電力の一部が,暖房用としても使われる.暖房システムとしては,構造の簡単さからCOP1以下である電気ヒータが使われるが,消費電力が大きいため,暖房運転が走行距離を短縮するという問題が生じる.その対策として暖房効率の高いヒートポンプが検討されているが,様々な課題を有している.室外熱交換器着霜による性能低下はその中でも解決が難しい課題である.建物用のヒートポンプでは,定期的な除霜運転を行う.しかし自動車の場合には走行することと,暖房空間の狭さから一時的に暖房を停止するのは難しいため,着霜したまま運転を続ける.本稿では自動車のヒートポンプにおいて,室外熱交換器に着霜させたまま連続で暖房運転した場合に,その性能と効率の変化を確認したため,その内容を報告する.
キーワード:ヒートポンプ,除霜,熱交換器,冷凍サイクル,乗物,電気自動車, 着霜

[原著論文]
主題:エアコン暖房運転環境下における霜層の熱物性測定
著者名:福冨翔・松浦裕真・田中三郎・佐々木直栄
要旨:本研究では,エアコンの暖房運転時の温湿度環境を再現して,強制対流下で霜層を60分間生成し,その有効熱伝導率(以下,熱伝導率)および密度を15分ごとに測定した.実験時の環境条件は,空間の温度を1.3~1.8℃,絶対湿度を0.0033~0.0036 kg/kg(DA),基板付近の風速を2.0~2.3 m/s,基板の表面温度を-17.7~-17.2℃とした.熱伝導率は3ω法を用いて測定し,霜層の成長過程はデジタルマイクロスコープを用いて観察した.霜層の熱伝導率および密度は,生成時間の経過に伴い増加傾向を示し,熱伝導率は0.05~0.14 W/(m・K)の範囲であり,密度は55~115 kg/m3の範囲であった.それらの増加率は,生成時間が15~30 minのときに顕著であり,30 min以降は緩やかな傾向に変化した.また,熱伝導率は密度の増加に伴って上昇する傾向を示した.
キーワード:ルームエアコン,熱物性,着霜,有効熱伝導率,密度,3ω法

[原著論文]
主題:霜層微細構造に及ぼす冷却面性状の影響
著者名:松本亮介・西浦雄人・塩川貴大・槇原拓郎・小田豊・清水智弘・依岡拓也・荒木拓人
要旨: 本研究では,霜層の微細構造をX線μCTを用いて測定し,冷却面の表面性状が霜層の微細構造に及ぼす影響について調べた.霜は冷却面上に凝縮した微小液滴を起源として成長する.液滴が合体成長の後に凍結し,その氷滴の頂部より柱状結晶が成長し,霜層が形成される.冷却面の表面性状は,この霜形成初期段階の滴状凝縮の液滴形状に影響をおよぼすと考えられる.本研究では,接触角が15 °以下の親水性と接触角96.2 °のはっ水性の2種類のシリコンチップの冷却面上に霜層を形成した.はっ水性の冷却面では親水面に比べ小さい氷滴が冷却面上に形成され,平板状の氷結晶が氷滴上部を覆い,その上部では霜密度が小さい箇所の存在が確認された.
キーワード:着霜,微細構造,氷結晶,表面性状,X線μCT,凝縮

[原著論文]
主題:微細加工面を利用した霜結晶の生成抑制に関する研究
著者名:田岸未来子・大久保英敏
要旨: 冷凍空調分野で長年問題となっている熱交換器への着霜は,熱交換量の低下と通風抵抗の増大の原因となり,除霜運転が不可欠である.近年,低温機器の成績係数(COP)の向上を目的として,融解を伴わない機械的除霜が提案されている.この機械的除霜を実現するために,霜結晶の冷却面への付着力低減が大きな課題となっている.本研究では,霜層の掻き取り力を低減することを目的として,冷却面表面の微細加工形状として,単純な矩形凹凸面の凸部にR形状を設けたM字型凹凸面形状を提案する.この提案に基づき,数値解析および霜結晶の生成・成長の観察実験を行った.その結果,霜結晶が生成・成長する冷却面面積の低減と,霜結晶同士のブリッジングを抑制する効果について,M字型凹凸面形状の優位性を確認できた.
キーワード:霜結晶,過冷却,除霜,微細加工,数値解析

[原著論文]
主題:微細凹凸面が着霜現象に及ぼす影響に関する研究
著者名:横山翔一・大久保英敏・関光雄・安喰春華
要旨:着霜現象は,熱移動および物質移動の同時移動現象であり,霜層を形成する氷結晶が冷却面表面上から生成・成長する非定常現象である.この着霜現象を系統的に理解し,低温機器の熱交換器で問題となっている人工霜の生成・成長を防止または抑制することは,低温機器の消費エネルギーを削減する効果があり,革新的な省エネルギー技術となる.本研究では,微細凹凸面が凹凸面の凹部(溝部)の着霜を抑制し,凸部表面から霜結晶を生成・成長させる方法に関する基礎的研究を行った.結果として,着霜曲線の領域I(-40.1℃≦tw<0℃,tw : 冷却面表面温度)における着霜低減化の可能性を明らかにした.
キーワード:物質移動 , 対流 , 氷,着霜,除霜,境界層

[原著論文]
主題:吸着剤塗布熱交換器の着霜特性に関する実験的研究
著者名:大西元・中野紘佑・春木将司・多田幸生
要旨: 低温環境下で使用する空気-冷媒熱交換器で生じる霜の形成は,空気流路を徐々に閉塞しながら熱抵抗を増大させるため,伝熱性能の低下を招く.本研究では,着霜の原因となる空気中の水蒸気の直接除去法に着目し,水蒸気吸着剤を塗布した熱交換器を蒸発器として利用することを提案する.そして,吸着剤の有効性を検討するために,吸着剤塗布熱交換器と一般的なフィンアンドチューブ熱交換器を用いて,一定の温度および湿度の空気が連続的に流入する条件下で低温に保たれた熱交換器に対し,風速をパラメータに,吸着剤の塗布が着霜様相,熱・物質移動特性に与える影響について比較検討した.その結果,着霜条件において吸着剤の水蒸気吸着効果により無着霜時間が見られた.すなわち,吸着剤は着霜抑制効果があることがわかった.
キーワード: 熱交換器,熱伝達,着霜,吸着剤塗布,物質伝達,圧力損失,実験

日本冷凍空調学会論文集Vol.37,No.3 (発行日:2020/9/30)
[原著論文]
主題:人工光下におけるイチゴの果実肥大特性の解析と果梗部切断面からの糖浸出量の評価
著者名:山中良祐・和田光生・古川 一・東條元昭・平井規央・北宅善昭
要旨:光源に蛍光灯を用い,日長を12時間,気温を22/10℃(明/暗期)に設定した人工気象室内で一季成りイチゴ‘紅ほっぺ’を栽培した.果実および果梗の直径変化を接触式デジタル変位センサにより計測した.また,EDTA法により果梗部切断面からの糖浸出量の評価を試みた.イチゴ果実の肥大量は暗期よりも明期の方が多かった.果実肥大速度は明期開始時に最も速く,暗期開始時には一時的な果実の収縮が観察された.果実直径の変化は果梗直径の変化と同期していた.飽差が短時間に大きく変動する時間帯では,これら果実および果梗の直径変化は,空調の稼働に伴う飽差の変化と密接に関係していた.果梗を経由した果実への水の移動は明期には負の値を,暗期には正の値を示した.1日の水の全移動量(木部+師部経由)に占める割合は,明期,暗期ともに木部経由(それぞれ43.1%,40.6%)よりも師部経由(それぞれ,56.9%,59.4%)の方が大きいと推定された.果梗部切断面からの糖浸出量は明期よりも暗期の方が顕著に多かった.果梗部切断面からの糖の1日の総浸出量のうち,20.2%が明期に,79.8%が暗期に浸出していた.
キーワード: EDTA法,ヒートリング法,飽差,植物工場,転流

[原著論文]
主題:気液分離サイクルにおけるインジェクション流量の制御手法
著者名:関谷禎夫・久保田 淳・野中正之・台坂 恒
要旨:気液分離器を用いた二段圧縮インジェクションサイクルでは,インジェクションされる冷媒が常に飽和状態にあり温度が変化しない.このため,分離器内のガス冷媒がどの程度インジェクションされたのか検知することが困難であり,流量の適正化手法の確立が課題とされてきた.そこで本研究では,インジェクション流量を適正化するための制御指標を構築することを目的として,一段目圧縮室からの吐出冷媒を用いて積極的に加熱することで過熱度を作り出し,制御指標とすることを提案し,その有効性を実験により評価した.この結果,過熱度はインジェクション流量により変化し,COPを最大化するための制御指標として有効であることを明らかにした.
キーワード:冷凍サイクル,成績係数,インジェクションサイクル,気液分離器,制御

[原著論文]
主題:ケミカル式冷凍機における蒸発器性能向上に関する検討
-水溶液成分および物質移動の影響-
著者名:小林英資・廣瀬裕二・小倉裕直
要旨:廃熱等を駆動エネルギー源とした未利用熱駆動ケミカル系ヒートポンプを用いることで,ほぼその熱エネルギーのみでケミカル式冷凍機が駆動可能となる.本報では,水溶液成分および物質移動に着目した蒸発器性能向上を目的として実験的および理論的検討を行った結果,以下のことが明らかとなった.蒸発水溶液としてEG 30 wt% - NaCl 10 wt%水溶液を用いることにより,EG 40 wt%水溶液と同様に258 K以下の冷熱生成が可能である.蒸発抵抗の違いによって冷熱生成特性に違いがあり,無機塩を加えた水溶液はより低温での使用や長時間保冷に適している.また,攪拌機使用および蒸発器位置変更により,反応初期における蒸発促進効果が得られ冷熱出力増加が可能となる.
キーワード:蒸発, 冷凍, ケミカルヒートポンプ,熱駆動,化学蓄熱,平衡

[原著論文]
主題:静電植毛したクロスフィンチューブ熱交換器におけるフィン上液膜の観察および蒸発熱伝達特性
著者名:山下 優・濱本芳徳・宮田一司・矢嶌健史
要旨:蒸発伝熱面の冷媒濡れ性を向上・維持して薄液膜からの蒸発熱伝達を向上させるために,著者らはレーヨン短繊維をクロスフィンチューブ熱交換器表面に静電植毛した伝熱面(植毛面)に着目した.本研究では,植毛面に形成される液膜形状や蒸発熱伝達特性を明らかにすることを目的とし,まず本熱交換器を水冷媒に浸してフィン上の液膜を観察した.その結果,フィン間にブリッジされる厚い液膜とフィン面上の繊維間に保持される薄い液膜の2種類を確認した.そして両液膜の厚さの推算方法を提案し,その妥当性を確認した.次に植毛面が伝熱を阻害しないことを無植毛面との比較実験で確認した.さらにフィン面が繊維間液膜で覆われる場合,蒸発熱抵抗が無植毛面のそれよりも約半分に低下することを明らかにした.最後に繊維間液膜部の熱抵抗の予測モデルを作成し,適用可能な範囲を明らかにした.
キーワード:静電植毛,クロスフィンチューブ熱交換器,液膜,蒸発,熱抵抗,毛管力

[原著論文]
主題:X線ラジオグラフィを用いた除霜時の融解水挙動の評価
著者名:松本亮介・塩川貴大・西浦雄人・小田 豊・伊藤大介・齊藤泰司
要旨: 除霜時における融解水の分布や排水挙動の評価は,除霜時間の決定や残留する融解水の排除を考える上で重要である.本研究では,X線ラジオグラフィを用いて単一鉛直平板上の除霜時の水分布を10秒ごとに測定し,除霜前の着霜分布との差を求めることで,平板内で移動した融解水の挙動を観察した.周囲空気から加熱を行い除霜を行った.平板温度が0℃以上になった箇所から霜層が融解を始め,融解水が平板面方向の残っている霜層内へ毛管力により浸透する.浸透により融解水は冷却面上に残留しない.浸透距離は霜層の融解の進行とともに増加した.霜層が残る平板端にまで融解水が移動した後,融解水は平板から排出される.
キーワード:除霜, 融解水, X線ラジオグラフィ,着霜,熱交換器

[原著論文]
主題:塩害地域における熱交換器腐食の伝熱性能影響評価
著者名:古谷野 赳弘
要旨:臨海部などでは空調機室外機の熱交換器が腐食することがある.熱交換器の腐食は熱交換器の伝熱性能を低下させ,空調機の性能を低下させるだけでなく,腐食により冷媒配管が損傷し,冷媒漏れの原因となることもある.本研究では,塩水噴霧による腐食加速試験でフィンチューブ熱交換器上に塩害地3~15年相当の腐食を再現した.作成した腐食熱交換器の冷媒配管に温水を流し,空気との熱交換量を評価したところ,塩害地15年相当の腐食で伝熱性能が48%低下した.
キーワード:熱交換器,熱伝達,腐食,塩害,省エネ

[原著論文]
主題:小形空調用冷凍サイクルにおけるゴムホースの活用
-圧縮機吸込み管のゴムホース採用による短尺化と省エネ性の検証-
著者名:長澤敦氏・太田 諭・田中 誠
要旨:空調機の省エネ性向上策として,これまで積極的な改善がされていなかった配管系の損失に注目した.空調用冷凍サイクルは銅管を用いて部品間を接続しているが,圧縮機での振動が発生するため,振動伝播を抑制する機能も求められる.特に圧縮機吸込み管は管径が大きい傾向にあるので,小形空調機では1000~1500mmの長さで2~3箇所のU字形状で形成され,圧縮機の振動による応力集中を防いでいるのが現状である.しかし,冷媒は吸込み管内では低圧ガス状態であるので,圧力損失が大きく,できる限り短尺化することが性能向上につながり,望ましい.そこで,吸込み管の材料を一部銅管からゴムホース管に変更することで,配管全体の応力集中排除と配管長短縮による圧力損失低減の両立を試みた.この空調システムの省エネ性向上効果の試算と配管系の応力や振動の比較解析を行ない,良好な結果を得た.さらに,実試作機を用いた振動テストや5000時間の耐久テストの評価を実施し,問題なきことを確認できた.
キーワード:冷凍サイクル,省エネルギー,圧縮機,吸込み管,ゴムホース,振動

[原著論文]
主題:空気熱源+地中熱源ハイブリッド空調システムに関する研究
-第1報:ハイブリッドシステムのフィールド試験-
著者名:仮屋圭史・宮良明男
要旨:本研究では,市販の空気熱源蒸気圧縮式空調機に地中熱交換器を直列に接続したハイブリッドシステムを提案する.このシステムは掘削量の削減ばかりでなく,市販の空気熱源空調機をそのまま用いるため開発費の削減も見込めるが,地中熱源のみを用いたシステムより性能が低いことが予想されるため,性能評価が必要である.そこで本研究では,ハイブリッドシステムに関するフィールド試験および数値解析を行い,その性能を評価するとともに,システムの導入費用を見積り,地中熱源のみで構成されたシステムに対する費用対効果に関する一連の検討を行った.本報はその第一報として,フィールド試験結果について報告する.フィールド試験により,ハイブリッドシステムは標準的な地中熱交換井の30%程度の掘削量でも運転可能であるものの,市販の空調機の制御システムをそのまま用いると,ハイブリッドシステム性能を発揮させることが困難であることが明らかになった.
キーワード:地中熱源空調システム,ハイブリッドシステム,フィールド試験,性能評価

[原著論文]
主題:住宅用鋼管杭を用いた地中熱ヒートポンプの空調性能
著者名:武田哲明・依田 修・渡邊弘美
要旨:本研究では,主に地盤の軟弱な地域で建築物を支持するために使用される住宅用鋼管杭内に地中熱交換器を挿入した直接膨張方式地中熱ヒートポンプを用いて,室内機側で熱量計測を行うことにより,冷暖房運転時の性能を求めた.その結果,冷暖房運転ともに安定した取得熱量が得られ,COP値は冷房運転では約4.4~4.7,暖房運転では4.8~5.0となった.また,5日間の間欠運転では冷暖房運転ともに各日の平均COP値は同程度となり,性能の低下は見られなかった.一方,5日間の連続運転では,時間とともにCOP値は低下するが,冷房で約12%,暖房で約6%,COP値は低下した.
キーワード:地中熱ヒートポンプ,直接膨張方式,地中熱交換器,鋼管杭,成績係数

[原著論文]
主題:直接膨張方式地中熱ヒートポンプの性能評価
-3分岐型地中熱交換器を用いた場合-
著者名:三瓶大地・武田哲明・守屋 大
要旨:本論文は地中熱交換器の採放熱部分に3分岐銅管を用いた直接膨張方式地中熱ヒートポンプの冷暖房性能を調べた結果をまとめたものである.地中熱ヒートポンプの出力は,冷房6.8 kW、暖房8.9 kWである.深さ30 mの3本のボアホール内にそれぞれ片側銅管長30 mのU字型地中熱交換器を挿入した.3分岐式の地中熱交換器を並列に接続し,室外機内の圧縮機等を含む冷媒回路に接続している.実験の結果,冷房運転期間の平均値としての取得熱量は1.9 kW,消費電力は0.3 kW,COPは6.8となり,暖房運転期間の平均値としての取得熱量は3.9 kW,消費電力は0.48 kW,COPは8.1であった.
キーワード:地中熱ヒートポンプ,直接膨張方式,地中熱交換器,空調性能,クローズド型

[原著論文]
主題:地中表層熱を利用したヒートポンプシステム
-複数の施策による改善効果-
著者名:村山知嶺・宮崎達也・勝田正文・裵相哲
要旨:日本の寒冷地において,暖房と給湯に必要なエネルギーは高い割合を占めており,この削減は高い省エネルギー効果が期待できる.しかし、寒冷地では外気温が低くヒートポンプの効率の低下により、普及が進まず,主に灯油が用いられている.本研究では,CO2を作動液としたサーモサイフォン型ヒートパイプを熱回収に適用し,地中表層熱を蒸発器の熱源することで効率低下を防ぐ地中表層熱採熱にCO2サーモサイフォンを用いる場合に考えられる性能向上への試み,例えばヒートパイプコンテナの形状,凝縮部温度の変更及び蒸発部下部への補助加熱が性能に与える影響の評価,さらに得られたデータを組み込んだシミュレーションを実施した. 凝縮部設定温度0℃の場合,コルゲート管のヒータ無し,封入率45%で最大の凝縮部熱交換量を得た.凝縮部設定温度3℃では,平滑管のヒータ無し,封入率40%で最大の凝縮部熱交換量を示した.補助ヒータを設置すると,蒸発部下部の壁面温度の上昇を抑制する効果を確認した.実測値から求めた熱伝達率整理式を用いて平滑管は長さ10mで8本,長さ15mで5本,コルゲート管においても同様に10mで7本,15mは5本でCOP=2.8を達成した.
キーワード:伝熱, 地中熱, ヒートパイプ, サーモサイフォン, CO2, 熱輸送促進

[原著論文]
主題:地中熱交換器周囲温度場計算における畳み込みのGPGPUを用いた高速化
著者名:小司 優陸・葛 隆生・阪田 義隆・長野 克則
要旨:地中熱利用システムはその高効率性の一方で導入コストが高額となるため,ライフサイクルコストの評価によるシステムの最適設計が必要とされる.このライフサイクルコストの評価を行うため地中熱利用システムの設計段階においては長期間のシステムシミュレーションが不可欠であり,高速なシミュレーション手法の開発が課題となっている.この課題に関して,地中熱利用システムにおいて肝要である地中熱交換器周囲温度場のシミュレーションは,非定常採放熱量変化と一定採放熱条件下での温度応答関数の畳み込みによって計算される.この畳み込み計算はGPUを用いた高速フーリエ変換によって計算が可能であり,この手法によって畳み込み計算における計算負荷が削減される.本研究ではGPUを用いた高速フーリエ変換による畳み込み計算の高速化を行い,この効果を定量的に評価した.本手法によって1分刻み25年間のシミュレーションにおける畳み込みが22.8秒で計算され,GPUを用いない計算と比較して2.5倍の計算速度を示した.
キーワード:自然エネルギー利用,地中熱,地中熱交換器,シミュレーション,畳み込み,GPGPU

[原著論文]
主題:浅層における地中熱物性に関する研究
-有効熱拡散率に及ぼす諸因子の影響-
著者名:田中三郎・福冨 翔・松浦裕真・佐々木直栄
要旨:本研究では,既報で得られた深度10 m以浅の浅層における深度1 m毎の地中の有効熱拡散率に及ぼす諸因子の影響について調査した.諸因子として,2015~2018年の期間における平均降水量および地中温度を取り上げて,各深度における有効熱拡散率と平均降水量および地中温度との依存度および相関係数を回帰分析により求めた.平均降水量は1.9~3.3 mm,地中温度は4.6~23.9℃の範囲にあり,回帰分析の結果,深度5 m以深の有効熱拡散率に及ぼす諸因子の依存度が比較的高く,平均降水量との相関係数の絶対値の平均値は0.63,地中温度の場合は0.38であり,有効熱拡散率に及ぼす平均降水量の影響が大きいことを明らかにした.
キーワード:地中熱,熱物性,有効熱拡散率,浅層

[原著論文]
主題:福島県浅部地中熱実証住宅における地中熱ヒートポンプシステムの特性
著者名:伊藤 耕祐・荒井 優佑・矢代 光・影山 千秋・阿部 眞也
要旨:長さ10 mの鋼管杭型熱交換井10本を有する浅部地中熱ヒートポンプシステムが日本大学工学部により開発され ,2013年に建設された福島県浅部地中熱実証住宅(延床面積80.6 m2)に実装された .本報では,この実験住宅で2014年1月?2020年3月に行われた暖房実験の結果を報告する. 地中熱ヒートポンプ1次側入口温度は,採熱量が220 MJ/day (2.5 kW) 未満の場合,冬期間を通じて3℃以上であり, 採熱継続による温度低下は見られなかった.地中熱ヒートポンプシステムのエネルギー効率は運転条件により異なり, 2.5~3.7であった.高さ方向の室温分布は,床暖房時は±1℃,温風暖房時は6?10℃で,床暖房が優れていた. 室内外温度差20℃とするために必要な暖房能力は3.5 kWであり,実験住宅の外皮平均熱貫流率は0.78 W/(m2・K)と算出された.
キーワード:ヒートポンプ,暖房設備,成績係数,地中熱

[原著論文]
主題:準寒冷地における水蓄熱を用いた可変熱容量システムに関する研究
-第1報:冬期の室内温熱環境に及ぼす影響-
著者名:宮岡 大・伊藤耕祐
要旨:本報では,日本大学工学部郡山キャンパスに建設された実験棟「ロハスの家3号」を対象建物にして,熱容量の大小(水の有無)による冬期の室内温熱環境への影響を明らかにした.次に,熱容量をより大きくした場合における冬期の室内温熱環境への影響と改善方法について明らかにした.準寒冷地においては,集熱・断熱性能を上げることで,大きな熱容量による室内温熱環境の向上と年間暖冷房負荷削減の効果が期待できた.最後に,実験棟ロハスの家3号の「可変熱容量システム」を用いて蓄熱体の温度及び外気温が室温に及ぼす影響を明らかにした.集熱が期待できない場合においても可変熱容量システムをうまく活用することで,大きな熱容量を活用できることが確認された.
キーワード:地中熱利用, 熱容量, 日射熱, 室内温熱環境, 暖房負荷

[原著論文]
主題:準寒冷地における水蓄熱を用いた可変熱容量システムに関する研究
-第2報:夏期の室内温熱環境に及ぼす影響-
著者名:宮岡 大・伊藤耕祐
要旨:前報では,日本大学工学部郡山キャンパスに建設された実験棟「ロハスの家3号」を対象建物にして,冬期において熱容量をより大きくした場合における室内環境への影響と改善方法について明らかし,「可変熱容量システム」を用いて蓄熱体の温度及び外気温が室温に及ぼす影響を明らかにした.本報では,夏期における熱容量の違いによる影響と「可変熱容量システム」を用いて蓄熱体の温度及び外気温が室温に及ぼす影響を明らかにした.年間の冷房負荷は,熱容量を確保し夜間外気導入をすることで0 となった.さらに,実測結果によっても熱容量の増加による室温低下がみられた.また,可変熱容量システムを使用することで日中は蓄冷効果による室温低下,夜間は熱容量が小さいことによる外気導入効果の室温低下が期待できる.
キーワード:地中熱利用, 熱容量, 外気導入, 室内温熱環境, 冷房負荷

[原著論文]
主題:再エネ先駆けの地・福島での地中熱利用キャンパス改修計画
-第1報:事業概要と施設の現状,簡易ポテンシャルマップ作成等-
著者名:赤井仁志・池田俊幸・阿部良道・五十嵐 勝裕・藤沼伸幸・須藤明徳・佐藤秀樹・渡部一徳
要旨:福島県が公募した「福島県スマートコミュニティ構築支援事業」に対して,福島大学は「福島大学での再生可能エネルギー熱利用を中心とした事業検討」で応募して,採択を受けた.福島大学は,大学構内の利用可能なエネルギーのポテンシャルを調査することより,将来に向けた効率的な再生可能エネルギー熱を中心に,導入を目指す計画を策定した.  本事業で,熱・電気エネルギー需要量推定や電力需要特性の把握をした.太陽光発電や風力発電の再生可能エネルギーの導入の計画をまとめた.また,地質情報や既存建物の柱状図(地質ボーリングデータ),TCP試験の実施により,地中熱利用ポテンシャルマップを作成した.次報では,空調・給湯・道路融雪設備や熱源水ネットワークに対して,地中熱利用の導入計画を行った.
キーワード:教育施設, 地域冷暖房, 自然エネルギー利用, 地中熱,導入計画手法,エネルギー需要量推定,太陽光・風力発電,地中熱利用ポテンシャルマップ

[原著論文]
主題:再エネ先駆けの地・福島での地中熱利用キャンパス改修計画
-第2報:空調・給湯・道路融雪設備への地中熱利用と熱源水ネットワーク計画-
著者名:赤井仁志・田中雅人・舘野正之・谷藤浩二・勝又雅浩・加藤龍宏・佐藤秀樹・渡部一徳
要旨: 地中熱利用ヒートポンプ空調システムを3つの建物への導入する計画立案にあたり,空調システムや空調熱負荷の設定から,地中熱交換器の総延長と必要面積の算出の手法を記した.学生寮への地下水熱利用ヒートポンプの給湯システムの導入計画では,給湯加熱負荷の設定とヒートポンプや貯湯槽容量の選定の手順を示した.この他,未利用熱(温度差熱)利用として排水処理設備の熱を使ったフリーヒーティングによる融雪設備についても述べた.  本キャンパスには当初から共同溝が張り巡らされている.この共同溝に熱源水配管を通して,地中熱を有効に利用する熱源水ネットワーク計画を策定した.昼夜の時間帯間の電力需要の隔たりが大きい.昼夜の電力需要差の解消を目的に,蓄熱槽を設ける計画を立てた.近い将来,蓄熱槽は,太陽光発電の余剰電力を利用してヒートポンプを稼働させて蓄熱する目的にも利用される可能性が高い.
キーワード:教育施設,自然エネルギー利用,地中熱,空調設備,給湯設備,融雪設備,熱源水ネットワーク

日本冷凍空調学会論文集Vol.37,No.2 (発行日:2020/6/30)
[研究レビュー]
主題:スクロール圧縮機における技術開発と今後の展望
著者名:東條健司
要旨:スクロール圧縮機を対象として,開発からこれまでに至る技術の変遷を概観しその動向を取りまと めた.製品化から40 年近く経て,環境負荷軽減に向けた冷媒の転換や一層の省エネルギ化に対応すべ く,新たなスクロール歯形や機構の開発,漏れの抑制や機械損失の低減,高速・高精度スクロール加 工技術の採用,解析技術や測定技術の高度化などによりスクロール圧縮機の性能や信頼性は大きく向 上し,広く世界で活用されている.今後も世界を牽引し,社会生活の向上や環境負荷軽減に貢献する 精力的な研究開発が期待される.
キーワード:圧縮機,スクロール,冷媒,省エネルギ,シミュレーション,計測

[原著論文]
主題:往復動圧縮機における小端部軸受の摩擦分析
著者名:永田修平・鈴木啓愛
要旨:往復動圧縮機の小端部軸受は揺動摺動面であり,摺動速度がゼロとなる瞬間を有するため,クラン クシャフト等の回転摺動面に比して,潤滑状況が悪化しやすい状況にある.圧縮機の高効率化,信頼性 確保のためには,こうした潤滑状況の悪い摺動面の特性分析,改良が重要となる.本研究では,冷蔵庫 用往復動圧縮機に用いられる小端部軸受を対象に,その摩擦特性および油膜形成状態の分析を要素試 験で実施し,軸受構造,形状と摩擦特性との関係を明らかにした.また,新規の低摩擦化構造を要素試 験において効果検証を行い,その有用性を示した.
キーワード:圧縮機,潤滑,冷蔵庫,摩擦損失,小端部軸受

[原著論文]
主題:スクロール圧縮機のチップシールにおける漏れと摩擦の同時測定
著者名:福田 充宏・曽谷 健・本澤 政明
要旨:チップシールはスクロール圧縮機のスクロール歯先に設置され,ベースプレートとスクロール歯先 間における半径方向漏れを低減する役割を持つ.スクロール圧縮機の効率向上には漏れと同時に摺動 部での摩擦低減が望まれる.しかし漏れや摩擦に影響を与えるパラメータは非常に多く,その影響の 大きさは明らかではない.本研究ではチップシール摺動面における漏れと摩擦を同時に測定可能な試 験装置を設計,製作し,チップシール摺動面性状や材質が,漏れや摩擦に与える影響について検討し た.その結果,チップシール摺動面の局所的なくぼみにより漏れは増加するが,実機ではチップシー ルが均一に押し付けられていると推定され,また,シール部材のヤング率が小さい場合には摩擦が増 加することが示された.
キーワード:圧縮機,潤滑,スクロール圧縮機,チップシール,漏れ,摩擦

[原著論文]
主題:三次元スクロール圧縮機の漏れ低減に関する研究
著者名:佐藤 創・堀田 陽平・木全 央幸・伊藤 隆英・山下 拓馬
要旨:三次元スクロール圧縮機のさらなる高効率化を目的に,従来の三次元スクロールの課題であったラ ップ勘合部の漏れ損失を低減できる新たな三次元スクロールの形状を検討し,スクロール端板と歯先 をスロープ状に傾斜させることでラップ高さを連続的に変更できる新たな構造を提案した.新三次元 スクロールは従来の三次元スクロールの特徴であったであった高圧縮比,高強度,小型大容量の利点 を維持しつつ,ステップ勘合部からの漏れ経路をなくしたことで,高効率を実現した.試作機の性能 計測および筒内圧力計測の結果,新三次元スクロールには高効率を維持するのに必要なスロープ角度 範囲が存在すること,および従来の三次元スクロールに対して,漏れ損失の低減により全断熱効率が 最大4.8%向上することを確認した.
キーワード:圧縮機, 省エネルギー, 三次元スクロール圧縮機,漏れ低減,チップシール

[原著論文]
主題:スクロール圧縮機のオルダムリングで生じるスラップ現象
著者名:阿南 景子・岡本 遼介・大西 琢也
要旨:スクロール圧縮機で使用されているオルダムリングでは,高速運転時にキーとキー溝との間でスラッ プを引き起し,激しい打撃音を発生する場合がある.オルダムリング自体が破損する場合もある.本論 文では,オルダムリング・キーとキー溝との間に必ず存在する嵌合隙間を考慮して,オルダムリングの 往復運動によって生じるスラップ現象について検討した.オルダムリング・キーとキー溝との間に作用 する力の関係を力学的に解析し,スラップの動的挙動とそれの発生限界速度を明らかにした.さらに, 簡単なモデル実験を行い,スラップ現象の発生とその動的挙動について定性的な検証を行った.
キーワード:圧縮機,機械力学,スクロール圧縮機, オルダムリング,スラップ

[原著論文]
主題:レシプロ圧縮機の漏れ低減に関する実験的研究
著者名:澤井 清・峯本 篤志・石井 徳章
要旨:家庭用冷蔵庫の省エネルギー化を目的とし,レシプロ圧縮機の高効率化を目指して主要損失の1つ である漏れ損失に着目した.圧縮機動作中の圧縮室からの漏れを計測した報告例が少ないことから, まず動作中の漏れの計測方法を検討し,ピストン直径隙間と漏れの関係およびオイル粘度と漏れの関 係を調べた.その後,ピストン表面に設けたオイル溝について,溝仕様と漏れの関係を実験的に調べ た.その結果,オイル溝は漏れ低減に効果があり,漏れを低減するオイル溝仕様が明らかになった. キーワード: レシプロ圧縮機,漏れ損失,漏れ計測,オイルシール,省エネルギー
キーワード:キーワード: レシプロ圧縮機,漏れ損失,漏れ計測,オイルシール,省エネルギー

[原著論文]
主題:デシカントモジュールの除加湿性能の実験検討
著者名:張 莉・東 朋寛・齋川 路之・長谷川 浩巳・飛原 英治・党 超鋲
要旨:省エネ性と快適性から見る従来空調の問題点として,夏季の過冷却除湿による効率低下と冬季の無 加湿による部屋空気の乾燥が挙げられる.デシカントによる空気の除加湿方式が解決方法の1つとし て期待されている.本検討では,デシカントを熱交換器の表面に塗布したデシカント塗布熱交換器と, コンパクトなスライド式空気流路切り替え部を備えたデシカントモジュールの研究開発を行った.床 面積90 m2,換気0.7 times・hour-1 の住宅を対象に,寸法が1100_Length ×500_Height ×700_Width mm の デンシカントモジュールを試作し,実験により,夏季と冬季定格条件の目標除加湿能力(1020 g・hour-1_summer, 750 g・hour-1_winter)の9 割以上を達成できることを確認した.
キーワード:空調,除湿, 加湿, デシカント,吸着

[原著論文]
主題:垂直ヘッダ型多分岐管における気液二相冷媒流の分配
-気液分配量と圧力損失の測定-
著者名:小野寺 亜由美・畠田 崇史・荒木勇人・廣田 真史
要旨:本研究では,パラレルフロー型熱交換器を模擬した垂直ヘッダ/水平多分岐管内の気液二相冷媒流 について,ヘッダ内への分岐管の突き出しが気液分配と流路内の圧力損失に及ぼす影響を実験的に検 討した.冷媒流量が大きい条件では,突き出しを設けることで液相分配の均一性は突き出しの無い場 合に比べ若干向上するが,高クオリティ時に液相分配が最下部の分岐管に偏る傾向は改善されなかっ た.一方,流路の圧力損失は突き出しを設けた場合に20~40%程度増加した.また,突き出しの有無 にかかわらず,流路内の圧力分布は高クオリティ条件で上下方向に均一化することが明らかになった.
キーワード:熱交換器,蒸発器,混相流,冷媒,気液分配,圧力損失

日本冷凍空調学会論文集Vol.37,No.1 (発行日:2020/3/31)
[研究レビュー]
主題:オレフィン系低GWP冷媒の熱物性に関する研究動向
著者名:粥川洋平,迫田直也,赤坂 亮
要旨:2000年代後半以降,地球温暖化抑止の観点から,従来 のHFC系冷媒と比較して温室効果がきわめて小さい低 GWP冷媒の開発が活発に進められている.オレフィン系 低GWP冷媒であるR 1234yf,R 1234ze(E),R 1234ze(Z), HFO-1243zf,R 1224yd(Z),R 1233zd(E),R 1336mzz(E), R 1336mzz(Z)およびHFO-1123 の9 物質は特に重点的に 熱物性値の測定が実施されており,熱力学性質を計算可 能な状態方程式も冷媒物性計算ソフトウェアREFPROP (ver. 10.0)に搭載されている.これらの状態方程式を参 照値として,9 物質に関する熱物性値の実測値情報を比 較検討した.また,これら9 物質を含む混合冷媒に関す る実測値情報も合わせてレビューする.
キーワード:低GWP冷媒,ハイドロクロロフルオロオレフィン,熱物性,状態方程式

[原著論文]
主題 The Physico-chemical Properties of Biodegradable Films from Lizardfish(Saurida wanieso)Viscera(Stomach and Intestines)
著者名 Ha Thi Nhu NGUYEN, Sheik Md. MONIRUZZAMAN, Kigen TAKAHASHI, Emiko OKAZAKI, Kazufumi OSAKO
要旨: The effects of pH on the protein solubility filmforming ability of lizardfish viscera(stomach and intestines)and physico-chemical properties of the biodegradable films were investigated. The new approach could successfully yield protein-based films from lizardfish viscera at a narrow pH range(2 ? 4, and 13)without the need for a protein extraction process. All films were observed to completely block UV light transmission. Films at pH 13 were hydrophilic, exhibited the lowest mechanical strength, highest deformability, and greatest yellowish color, while films at pH 4 were mechanically stronger, slightly deformable and showed superior light transmission barrier properties compared to other film samples. The substantial contribution of disulfide bonds to the formation of the three-dimensional network of films at pH 4 was confirmed by SDS-PAGE. Thus, films from lizardfish viscera can be utilized as a renewable packaging material in food systems.
キーワード:Packaging material, Drying, Protein-based films, Lizardfish(Saurida wanieso)viscera, Effects of pH, Mechanical properties, Protein solubility

[原著論文]
主題 調理モヤシの凍結条件と力学物性について
著者名 常門加奈,宮脇長人,李 潤珠,鈴木 徹
要旨: 食品中の水分が凍結するとその氷結晶の大きさによる ダメージが発生する.既往研究において,凍結過程で偶 発的に顕著な過冷却が生じる場合,微細かつ均質な構造 を持った特徴的な氷結晶が生成したとの報告がある.本 研究では試料のリョクトウモヤシをブランチング後の緩 慢凍結で意図的に過冷却凍結させ,解凍後の復元性,氷 結晶の大きさが及ぼす影響を調べた.その結果,ブラン チング後雰囲気温度-10 ℃での凍結は過冷却が起こりや すく,テクスチャーは未凍結と類似の傾向が得られた.
キーワード:過冷却,氷結晶,凍結保存,過冷却解消温度,テクスチャー,モヤシ

[原著論文]
主題 相溶油を適用したHFC/HFO 混合冷媒のトライボロジー特性
著者名 佐々木辰也,井戸慎一郎,小山修平,佐々木信也
要旨: 空調冷熱機器に適用する冷媒の地球温暖化係数削減に 向けて,従来のHFC 冷媒にHFO 冷媒を混合した新た な低GWP 冷媒が複数提案されている.低GWP 冷媒を 空調冷熱機器に適用する上で圧縮機しゅう動部の信頼性 確保が課題の1 つである.しゅう動部は冷媒,冷凍機 油,さらには冷凍機油に含まれる極圧添加剤が同時に存 在する環境であり,これらがトライボロジー特性に及ぼ す影響を明らかにすることで,しゅう動部の設計に反映 できる.そこで,R 32,R 1234yfおよび数種のHFC/HFO 混合冷媒に関して,液冷媒と冷凍機油の混合環境におけ る耐焼付き性能評価,しゅう動面の境界潤滑膜の分析, および液冷媒が溶解した冷凍機油の粘度評価を行い,ト ライボロジー特性を明らかにした.
キーワード:潤滑,圧縮機,冷媒,冷凍機油,粘度

[原著論文]
主題 HFO-1234ze(Z)の臨界定数の測定
著者名 田中勝之
要旨: 高温出力型ヒートポンプ用冷媒あるいはオーガニック ランキンサイクル用作動流体の候補となりうる,cis- 1,3,3,3-tetrafluoropropene(HFO-1234ze(Z))の臨界定数 (臨界密度,臨界温度,臨界圧力)を目視法により測定 した.はじめに,臨界密度を決定するために,複数の任 意の密度で超臨界域から降温したときに現れるメニスカ スの挙動を観察し,メニスカスの位置が変わらない密度 を臨界密度とし,459±3 kg・m-3 と決定した.次に,臨 界密度で昇温させた際のメニスカス挙動を観察し,メニ スカスが消滅した温度から臨界温度を423.34±0.03 K, そのときの臨界圧力を3 521±6 kPa と決定した.
キーワード:冷媒,熱物性,臨界定数,HFO-1234ze(Z)

[原著論文]
主題 新規低GWP単一冷媒の表面張力およびParachorの温度依存性確認と相関式評価
著者名 岩崎 俊,近藤智恵子,東 之弘
要旨: HCFO 系およびHFO 系低GWP 単一冷媒9 種を対象 とし,示差毛管上昇法を用いて表面張力を実測し, REFPROP 10.0 の計算値と比較を行った.R 1224yd(Z) とR 1336mzz(Z)については,測定値とREFPROP 10.0 の計算値との間に無視できない乖離が認められたため, REFPROP 10.0で計算される表面張力については,一部の 冷媒で,改善の余地があることが示唆された.また,表 面張力の測定値と状態方程式で計算されたモル飽和密度 からParachorの値を算出した.その結果,R 1336mzz(E) のParachor が,温度に依存せず一定値を示さなかった ことから,表面張力の測定値,あるいは密度の再検証が 必要であることが示唆された.
キーワード:熱物性,表面張力,Parachor法,冷媒,HCFO,HFO

[原著論文]
主題 分子軌道―分子動力学計算によるHFO1123 の飽和密度および表面張力計算
著者名 奥村哲也,近藤智恵子,干野浩平,岩崎 俊
要旨: 低GWP 冷媒HFO1123 と基本構造を同じくするエチ レンを取り上げ,分子動力学計算によって気液平衡系を 再現し,飽和密度と表面張力の予測を試みた.エチレン の力場にはOPLS-AA をHFO1123 の力場にはOPLSAA/ L とGAFF を併用した.ただしHFO1123 は極性分 子であるため,分子軌道計算によりあらかじめ電荷の値 を求めることとした.飽和液密度の計算結果は,大きく 電荷の値によって変化し,B3LYP/6-31G** レベルの計算 で求まる電荷を用いる場合に,もっとも測定値と一致す ることがわかった.エチレンは高温域で気液密度差と表 面張力をともに過少評価することがわかった.一方 HFO1123 は,飽和密度は測定値と良く一致するものの, 低温で表面張力が幾分過大に計算されることがわかっ た.HFO1123 の解析精度を向上させるためには,分子配 置と応力の両者を的確にするポテンシャルの修正方法を 見出す必要がある.
キーワード:冷媒,熱物性,分子動力学,分子軌道,気液界面

[原著論文]
主題 R 32 の正方形微細流路内でのボイド率の画像 解析による測定
著者名 菊池省吾,地下大輔,井上順広
要旨: 本研究では,扁平多孔管を模して加工した1 辺が 1.0 mm の正方形微細流路を複数有する水平流路内を流 れる冷媒の流動様相の観察を行い,流動様相の画像解析 からボイド率の算出を行った.実験にはR 32 を用いて,飽 和温度40 ℃の断熱条件で,質量速度30 ~ 400 kgm -2s -1, クオリティ0.1 ~ 0.9 の範囲で,ハイスピードカメラを用 いて流動様相を撮影した.ボイド率は,撮影した流動様 相を画像解析することにより,気相および液相の画素数 の比率から算出した.時間平均ボイド率は,質量速度 50 kgm-2s -1 以下では質量速度の影響がみられ,質量速 度の減少にともない低下した.本実験で得られたボイド 率は,分離流モデルにより平均絶対偏差0.04 以内で予 測された.
キーワード:ボイド率,画像解析,R 32,正方形微細流路,扁平多 孔管

[原著論文]
主題 水平管外3 次元微細溝付管の凝縮熱伝達率の 予測
著者名 松野友暢,高橋宏行,地下大輔,井上順広
要旨: 本研究では,外径約19 mmの水平管外3次元微細溝付 管において,R 134a,R 245fa,R 1234ze(E)およびR 1234yf を用いて,単一管外の凝縮熱伝達実験,および給液管を 用いたイナンデーションの影響を模擬した実験を行い, 基本的な凝縮熱伝達特性を明らかにするとともに,熱伝 達率の予測式について検討した.単管実験では,面積拡 大率に加え,冷媒の表面張力と液密度の比σ/ρliq および 液熱伝導率の影響が大きいことを明らかにした.イナン デーション模擬実験では,微細溝付管の凝縮熱伝達は層 流域での対流凝縮熱伝達が支配的であり,熱伝達特性に 及ぼす膜レイノルズ数の影響は小さいことを明らかにし た.また,実験結果に基づき,水平管外3 次元微細溝付 管の凝縮熱伝達率を-17 ~+23 %で予測可能な熱伝達 率の予測式を提案した.
キーワード:凝縮,熱伝達,R 1234ze(E),R 1234yf,R 245fa,R 134a, 3 次元,微細溝付管

[原著論文]
主題 低圧冷媒の水平平滑管内における沸騰熱伝達
著者名 劉 宇飛,渡邊和英,地下大輔,井上順広
要旨: 本研究では,高温ヒートポンプ機器やオーガニックラ ンキンサイクルを利用したバイナリー発電装置などに利 用されるR 245fa の代替冷媒として期待されている低 GWP 冷媒R 1224yd(Z),R 1233zd(E),R 1336mzz(E) およびR 1336mzz(Z)の水平平滑管内の沸騰熱伝達特性 を実験的に明らかにした. 使用した平滑管は外径 9.52 mm,内径8.40 mm であり,熱流束2 ~ 15 Wm-2, 質量速度50 ~ 300 kgm-2s -1,飽和温度40 ℃において沸 騰熱伝達率を測定するとともに,先行研究で提案されて いる整理式の適用性について検証した.従来の整理式は 高質量速度条件で熱伝達率を過小に予測する傾向がみら れた.本研究では,R 245fa,R 1224yd(Z),R 1233zd(E), R 1336mzz(E)およびR 1336mzz(Z)の実験値に基づい て,新たな沸騰熱伝達率の整理式を提案した.提案した 整理式は,本実験結果に限らず,他の研究者によって報 告されているR 114 やR 123 などの低圧冷媒の実験値に 対しても高い予測精度を示した.
キーワード:沸騰,熱伝達率,R 245fa,R 1224yd(Z),R 1233zd(E), R 1336mzz(E),R 1336mzz(Z),整理式

日本冷凍空調学会論文集Vol.36,No.4 (発行日:2019/12/31)
[原著論文]
主題 吸入室インジェクション機構搭載スクロール圧縮機に関する研究
著者名 岩竹 渉・河村雷人・関屋 慎 佐々木 圭・髙村祐司
要旨: スクロール圧縮機では,寒冷地における暖房運転のような高圧縮比運転時に冷媒の温度上昇によって運転範囲が制限される場合がある.その対策として,圧縮室の途中に液または二相冷媒を強制注入するインジェクション機構が一般に知られている.しかし,インジェクション配管による無効圧縮損失の増大と,圧力脈動の増大などが課題であった.そこで,著者らは圧縮室直前に液または二相冷媒を強制注入する吸入室インジェクション方式を考案した.本機構を搭載したスクロール圧縮機の試作,評価により,以下の知見を得た.(1) 冷媒の温度上昇を低減しながら,油溜め部の冷凍機油の希釈を抑制できる.(2) 圧縮室インジェクション方式と比べて,インジェクション配管の圧力脈動を77%低減できる.(3) 圧縮室インジェクション方式で生じていた無効圧縮損失を抑制することで,負荷率25%で13%,負荷率50%で8%,負荷率75%で5%,負荷率100%で2%の性能改善が可能である.
キーワード:圧縮機,空気調和機,省エネルギー,インジェクション,冷凍機油, 圧力脈動

[原著論文]
主題 水平単一矩形ミニチャンネルにおけるHFCおよびHFO冷媒の凝縮熱伝達特性
著者名 松本 崇・荒田洋平・沓屋 魁・宮田一司・濱本芳徳・森 英夫
要旨: 本研究では,低質量速度条件40 kg/(m2・s)を含んだ,水平矩形ミニチャンネル内凝縮熱伝達の基礎特性を明らかにするために,水力直径1.02 mmの単一矩形ミニチャンネルを用いて凝縮熱伝達率の測定を行い,得られたデータから熱伝達特性を検討した.試験冷媒にはHFC134a, HFC32, HFO1234ze(E)を用いた.質量速度の範囲は40-400 kg/(m2・s),熱流束は2-8 kW/m2である.実験結果から,凝縮熱伝達率は質量速度100 kg/(m2・s)以下の低質量速度で高い値を示すことが明らかになった.また,このような傾向は,扁平多孔管を用いた実験や扁平多孔管対象の熱伝達率予測式を低質量速度域まで拡張適用して予測される傾向とは異なることが確認された.
キーワード:凝縮,熱伝達,水平単一矩形ミニチャンネル,低質量速度,HFC134a,HFC32,HFO1234ze(E)

[再録論文]
主題 Study on Bearing Characteristics of Compressor Considering Refrigerant Dissolution and Friction Heat
-1st Report: Analysis Modeling and Theory Construction-
[Original: Trans. JSRAE, Vol.36, No.2, pp.65-75, (2019)]
著者名 Tatsuya SASAKI・Yoshimi IKEDA・Fumihiko ISHIZONO・Katsunori SATO・Shinya SASAKI
要旨: There is a growing need to expand the upper limit of the operating range of compressors for air-conditioning and refrigeration systems. There are two design approaches to expand the upper limit. One is expansion of the stroke volume, but this increases the load of the sliding bearing as the compressive load of the refrigerant. The other is increasing maximum rotation speed, which increases the shear heat of the oil film; viscosity of the oil then decreases, and the load capacity of the sliding bearing decreases. Incidentally, the refrigerant is dissolved in the oil that lubricates the journal bearing, and the solubility and the dissolving viscosity change depending on the temperature and pressure conditions. The viscosity change of oil due to friction heat and refrigerant dissolving at high rotation speed and high load range cannot be ignored. So, we constructed a thermal elastrohydrodynamic lubrication analysis model that captures changes in viscosity due to oil film temperature and solubility, and clarified the influence of frictional heat generation, solubility and viscosity change on journal bearing characteristics.
キーワード:Lubrication, Compressor, Refrigerant, Sliding bearing, Computational fluid dynamics

[原著論文]
主題 氷スラリーを用いた水産物の冷却,解凍における熱伝達率の測定
著者名 前川龍之介・中島裕人・POUDYAL Lochan Rajib・鈴木 徹・渡辺 学
要旨:近年,水産物の冷却に氷スラリーを用いることで品質が向上した,という報告が良く聞かれるが,科学的なデータによる検証例は少ない.そこで,氷スラリーによる鮮魚の冷却と凍結魚の解凍を想定し,金属球を用いて熱伝達率の測定を行った.その結果,冷却,解凍時とも,最初の5秒間は非常に大きな熱伝達率を示したが,10秒以降は液体の強制対流程度の値となった.一方,氷スラリーを強制的に流動させた場合,冷却では10秒以降も5秒までの極めて大きな熱伝達率を維持したが,加熱の10秒以降では強制対流の流速が増加した程度の伝熱促進に留まった.以上より,流動の効果を含めて,氷スラリーによる冷却,加熱の基本的な伝熱特性を把握することができた.
キーワード:氷スラリー,伝熱,熱伝達率,冷却,解凍,魚

[原著論文]
主題 蓄冷材用カプセル型過冷却解消装置に関する研究
-伸縮性膜の厚さ,膜に施す細孔の位置と角度が性能に与える影響-
著者名 大河誠司・村田 匠・蜂谷卓之・寳積 勉
要旨:  水溶液を主成分とした蓄冷材の問題の一つに過冷却現象が挙げられる.その解決策として,細孔を開けたスチレンエラストマー膜を有し,その内部に水が封入されたカプセル型過冷却解消装置の挿入が提案されている.水の凝固点は蓄冷材より高いので,蓄冷材が融点に達する前にカプセル内の水が凝固する.凝固に伴う体積膨張によって膜が膨張すると,カプセルの面に設けられた膜の細孔が開き,露出したカプセル内の氷が蓄冷材内部と接触し,蓄冷材の温度が融点以下に達したときに凝固が伝播する.ただし,露出面が大きすぎるとカプセル内の水が融解する際,蓄冷材からの水溶液が混入しカプセル内の水の濃度が上昇してしまう.本研究では,膜の厚さ,細孔の位置と向きの違いが過冷却解消性能に及ぼす影響について検討した.
キーワード:凝固,過冷却,濃度,スチレンエラストマー膜,細孔

[原著論文]
主題 吸着式アイススラリー生成機に関する研究
-シリカゲルのエタノール水溶液吸着特性-
著者名 遠藤真斗・浅岡龍徳・横水郁哉
要旨:低温の未利用熱の活用を目的とした吸着式アイススラリー生成機を提案し,その性能評価を行った.この装置では,エタノール水溶液を冷媒とする吸着冷凍サイクルにより,蒸発器内にアイススラリーを生成する.はじめに,水,エタノール,10,30,50 mass%エタノール水溶液を冷媒として,シリカゲルの吸着特性を測定した.さらに,その結果を用いて吸着冷凍サイクルの理論COPを試算し,それぞれの冷媒の特徴を比較した.エタノール水溶液を用いた場合,水やエタノールを用いた場合よりもCOPが高く,脱着温度も70℃以下と低いことから,低温の未利用熱の利用を目的とする本装置の冷媒としてエタノール水溶液が適していることがわかった.エクセルギー効率の観点から見てもエタノール水溶液は有用であることを確認した.また,10 mass%エタノール水溶液を用いた場合,蒸発温度0℃と凝固点におけるエクセルギー効率がほぼ等しいことから,10 mass%エタノール水溶液はアイススラリーの生成機の冷媒に適していると評価できる.
キーワード:省エネルギー,アイススラリー,冷凍サイクル,吸着式冷凍機,氷蓄熱

[原著論文]
主題 MPS法による蓄熱槽内の相変化物質融解過程の数値シミュレーション
著者名 平野繁樹・川南 剛
要旨:  太陽熱や工場排熱等を利用した温熱供給技術は,化石燃料のような枯渇性のエネルギー資源にかわる熱供給源として注目されており,それらのエネルギー資源を効率よく利用するための潜熱蓄熱システムの開発が急がれている.本研究では,潜熱蓄熱槽内における非定常的な融解現象を再現し,特性を評価するための効果的な数値解法を確立することを目的として,蓄熱槽内における相変化物質の配置と熱交換媒体の流動条件が,熱輸送挙動に及ぼす影響について数値解析的に検討を行った.数値解析モデルの構築には,粒子法の一種であるMPS(Moving Particle Semi-implicit)法に基づくアルゴリズムを採用した.本研究の結果,MPS法に基づく融解計算モデルにて,蓄熱槽内における融解挙動を破綻なく計算することができ,相変化物質の融解挙動には周囲流体の流速条件の影響が小さいこと明らかにした.
キーワード: 融解,蓄熱,混相流,潜熱,MPS法

[原著論文]
主題 脱水操作を施した氷スラリーの含水率
著者名 小山寿恵・輪嶋 史・吉岡武也・永石博志・稲田孝明
要旨:海水から製造した氷スラリーを脱水した氷(脱水氷)は,漁獲物の鮮度保持に有効であり,特に漁獲物輸送時の冷却媒体として期待されている.しかし,脱水氷融解時の温度履歴を制御するためには,初期含水率の制御が必要であり,脱水氷の含水率に関する知見が求められる.本研究では,NaCl水溶液から生成した氷スラリーを用いて,重力によって脱水氷を製造し,脱水氷の含水率の測定を行った.その結果,脱水氷の含水率は,氷粒子径の増加に伴って単調に減少することがわかった.また,脱水氷の含水率は,高さ方向に特徴的な空間分布を持つこともわかった.さらに,脱水氷と積雪では氷粒子径や液相の種類は異なるものの,氷スラリーの脱水を積雪の透水と同じ物理現象として扱えることが確認できた.
キーワード:氷,低温流通,氷スラリー,脱水氷,含水率,海水,透水,鮮度

[原著論文]
主題 アニオン性界面活性剤-純水混合液から生成される氷の電圧印加された 銅表面への付着力特性の検討
著者名 松本浩二・江原昂平・前澤一臣・佐藤 翔・ 梅原友理・綾谷陸人 
要旨:  金属表面への氷の付着力は非常に強いことは良く知られている.そのため,従来の付着力に関する大半の研究は,付着力を抑制することが目的であった.本研究では従来の多くの研究とは異なり,強力な氷の付着力の有効利用のために,被工作物を工作台に固定するために氷をチャックとして利用する“冷凍チャック”に着目した.そして,より強力な氷の付着力を達成するために,コンデンサーを構成する銅板表面に直流電圧を印加した状態で,臨界ミセル濃度のアニオン系界面活性剤―純水混合液を銅試験板上で凍結させた後に生成された氷を剥離することで,氷の付着力を測定した.なお,氷の付着力は,氷の付着面積で除した”せん断応力“で評価した.同様の測定を印加電圧やその極性を変化させながら行った.また,電圧印加した金属への界面活性剤分子の吸着量と剥離した氷の表面エネルギーの測定により,測定された氷のせん断応力の妥当性を検討した.
キーワード:氷,凍結,銅への氷の付着力,冷凍チャック,アニオン性界面活性剤,DCコンデンサー,吸着量,表面エネルギー

[原著論文]
主題 表面被覆層を用いた飽和沸騰熱伝達の促進
著者名 大久保 英敏・廣谷俊樹・諸隈崇幸・安喰春華
要旨:本研究では, 大気圧下での飽和液体窒素へのプール沸騰熱伝達に及ぼす表面被覆層の影響を実験的に検討した.被冷却物体として,直径25 mmの銅球を用いた.銅球表面の被覆層として,氷層および霜層を用い,これらの厚さを変化させた.得られた結果として,冷却曲線と沸騰熱伝達特性に対する氷層の影響が顕著であることが確認できた.また,霜層を被覆層として用いた場合,遷移沸騰領域の熱流束が著しく増加し,核沸騰領域および限界熱流束も増加した.
キーワード:沸騰,氷, 霜,結晶成長,自然対流,熱移動

[原著論文]
主題 塩化ナトリウム水溶液の凝固過程と超音波挙動との連関
-音響相図の構築-
著者名 義岡秀晃・経田僚昭・八賀正司
要旨:  相変化スラリーの相変化量と熱流動を音速情報に基づき“視える化“することを目標に,水溶液の相変化過程と音響特性との連関について追究した.まず,超音波の簡易計測システムを構築し,塩化ナトリウム水溶液を供試して初期組成を変化させた凝固実験を行った.次いで,液相域・マッシュ域・固相域の各領域における音速変化を相変化過程と関連づけて特徴づけ,従来の温度と濃度を示強性状態変数とした相平衡状態図に対して,さらに示強性の音速情報を加えた相平衡状態図を創案した.その相図に基づき,種々の状態量が超音波により非侵襲検知可能であることが示され,最終的には相変化スラリーの氷充填率と音速の関係が明らかとされた.
キーワード:氷蓄熱,計測,凝固,水溶液,アイススラリー,超音波, 音速,状態図

[原著論文]
主題 矩形管内を流れるアイススラリーの凍結挙動の観察
著者名 加藤 諒・森本崇志・熊野寛之
要旨: アイススラリーを配管輸送する際,流動条件や周囲の環境によっては管内での閉塞が生じることが懸念される.その原因の一つにアイススラリーが外部から冷却されることで生じる凍結があるが,その際の挙動は十分に解明されていない.本研究では,エタノール水溶液から生成したアイススラリーを矩形管に流し,上下から冷却を行うことでアイススラリーの凍結挙動の観察を行った. IPF,レイノルズ数,温度差をパラメータとして実験を行い,凍結問題の近似解であるStefan解との比較を行った結果,凍結層の厚さはStefan解をやや上回る傾向にあり,特に,氷粒子を有する場合や,レイノルズ数が比較的低い場合,矩形流路流路上部において,凍結層の成長速度がやや早くなることがわかった.
キーワード: アイススラリー,凍結,矩形管,Stefan解,強制対流

[原著論文]
主題 マイクロチャンネル内におけるエマルション型蓄熱材の流動・伝熱特性
著者名 森本崇志・池田季基・田中裕人・熊野寛之
要旨:  本研究では,相変化物質を乳化することで液中に分散させた蓄熱熱輸送媒体である,エマルション型蓄熱材を対象とし,マイクロチャンネル内における流動および伝熱特性について,実験的,解析的に検討を行った.実験より,分散質の含有率および状態がエマルション型蓄熱材のレオロジー特性に影響を及ぼし,条件によって擬塑性流体の挙動を示すことがわかった.また,分散質が固相または液相の状態を維持しながら流動する場合において,ヌセルト数は単相流体とほぼ同等となること,分散質の融解を伴う場合には,見かけの比熱の増大により,ヌセルト数が増加することが明らかとなった.一方,分散質粒子の存在が伝熱に及ぼす影響は比較的小さいことがわかった.
キーワード:潜熱蓄熱,固液相変化, エマルション, マイクロチャンネル,熱伝達

[原著論文]
主題 中低温用熱媒体エリスリトールスラリーの水平円管内における熱伝達特性
-流動様相と固相率が局所熱伝達係数に及ぼす影響-
著者名 水本裕士・阿部駿佑・稲垣裕之・浅岡龍徳
要旨: 工場排熱や太陽熱等の中低温(200°C以下)の熱利用を対象としたスラリー熱媒体として,エリスリトール水溶液の固液共存状態であるエリスリトールスラリーを提案する.熱媒体として使用するために,熱伝達特性について把握することを目的とする.実験は周囲から一様の熱流束で加熱されたステンレス管にエリスリトールスラリーを流し,固相率とレイノルズ数をパラメータとして局所熱伝達係数を測定する.層流では,管断面の局所熱伝達係数に関して,管側部と管下部の局所熱伝達係数が高くなることがわかった.乱流では,管断面で熱伝達係数の差は小さく,固相率の影響も少ないことがわかった.結果より,層流域において固相率と流動様相の変化が局所熱伝達係数に大きな影響を及ぼすことを確認し,システムの設計においては流動様相を考慮する必要があることを示した.
キーワード:混相流,蓄熱,エリスリトールスラリー,熱媒体,熱伝達特性,固相率,流動様相

[原著論文]
主題 中低温用熱媒体エリスリトールスラリーの水平円管内における流動特性
-流動様相と固相率が流動特性に及ぼす影響-
著者名 稲津健太・阿部駿佑・浅岡龍徳
要旨:  中低温の未利用熱利用に適した熱媒体として,潜熱蓄熱材であるエリスリトールとその水溶液からなるエリスリトールスラリーを提案する.流動様相や固相率が流動特性に及ぼす影響について実験的に検討を行った.実験では,水平に設置されたステンレス管にエリスリトールスラリーを流し,圧力損失を測定した.管摩擦係数の実験値はすべてのレイノルズ数でポアズイユ流の理論式やブラジウスの式と比較すると大きく,特に層流での差異が大きいことが確認された.この差異について,レオロジーモデルを用いて検討したが,明確な原因を示すことはできなかった.また,層流域において分離流れになることを考慮した新たな管断面モデルを適用したところ,管摩擦係数と理論値との差異が小さくなった.流動様相がエリスリトールスラリーの流動特性に及ぼす影響は無視できないことが示唆され,分離流れを考慮したモデルを適用した流動特性評価が有効であることがわかった.
キーワード:混相流,蓄熱,エリスリトールスラリー,熱媒体,管摩擦係数,固相率,流動様相

日本冷凍空調学会論文集Vol.36,No.3 (発行日:2019/9/30)
[原著論文]
主題 分離性イオン液体と逆浸透を用いた吸収冷凍サイクルの性能解析
著者名 唐津健志,中山政行,秋澤 淳,大野弘幸
要旨: 本研究では55℃において水と分離する性質がある分離性イオン液体を用いた熱源温度60℃で駆動す る吸収冷凍サイクルの性能予測を目的とする.サイクルシミュレーションと感度分析によって,冷凍能 力を与えた場合の成績係数COPと半透膜の面積や吸収剤の流量などの条件との関係,物質移動係数な どのパラメータが性能に与える影響について解析した.サイクル計算と感度分析の結果,60℃の熱源 温度でサイクルが成立すること,ある吸収剤の質量流量に対して冷凍能力を最大にするイオン液体の質 量流量が存在することが示された.成績係数COPは0.46~0.56が予測された.ただし,逆浸透のため 加圧が33MPaとなる点に課題がある.
キーワード:吸収冷凍機,再生機,イオン液体,下限臨界共溶温度型相分離挙動,逆浸透膜

[原著論文]
主題 潜熱顕熱の完全分離処理を目指したデシカントシステムの実証試験
著者名 鍋島佑基,外川純也,長野克則
要旨:著者らは高効率な低温再生デシカントシステムの構築を目的に,全熱交換素子と稚内層珪質頁岩(WSS)ローターの組み合わせたデシカントユニットの開発を行ってきた.本研究ではデシカントユニットを中小規模の建物に対応させ,夏期実測を行い,省エネルギー性の実証試験を行った.本報ではまず,エアコンを改造し,蒸発温度が15 °Cまで上昇可能な顕熱専用化を行った.デシカントユニットとの併用時の省エネルギー性を確認した結果,1日あたりの積算消費電力を21.9 kWh低減できることを確認した.この時の室内の露点温度は14 °C程度であり,室内機による潜熱除去は殆ど生じていないことが明らかとなった.次に,期間全体の消費電力削減効果を明らかにするために,回帰分析による性能予測を行った.その結果,エアコンの蒸発温度を15 °C一定にすることで,従来の空調に比べて冷房消費電力を39.7 % 削減可能であることが示された.
キーワード:デシカント空調,省エネルギー, 稚内層珪質頁岩,蒸発温度制御,実測

[原著論文]
主題 全熱交換素子および稚内層珪質頁岩ローターの臭気移行特性
著者名 外川純也,青木智恵美,長野克則
要旨:著者等は静置型の全熱交換素子(THEX)と稚内層珪質頁岩(WSS)ローターを組み合わせた,家庭用 デシカント換気空調システムの開発を進めてきた.本研究では臭気物質として,トルエン,アンモニ ア,ホルムアルデヒドを用い,THEX およびWSS ローターのRA から導入した臭気移行について,ガ ス検知管やガスセンサを用いて評価を行った.トルエンの臭気移行はTHEX, WSS ローターのいずれも 検知されず,移行は確認出来なかった.THEX のアンモニア移行率は高湿度条件で50%の高い移行率 を示した.WSS ローターはアンモニアで33%,ホルムアルデヒドで46%の移行率となった.THEX の アンモニア移行率は素子中の水分量に依存した.WSS ローターでは,RA へのアンモニア導入中は, 大部分がローターへ吸着保持された.
キーワード:デシカントローター, 稚内層珪質頁岩,全熱交換素子,臭気移行, アンモニア,ホルムアルデヒド,トルエン

[原著論文]
主題 4分割型吸着材デシカントロータの流路構成と除湿性能
著者名 児玉昭雄,辻口拓也,大坂侑吾
要旨:1ロータで2段除湿を可能とする4分割型吸着材デシカントロータには複数の流路構成が考えられ る.今回,2つの吸着ゾーンあるいは再生ゾーンを隣接配置した流路構成Aと吸着ゾーンと再生ゾー ンを交互配置した流路構成Bについて,除湿挙動を調べるとともに除湿量と除湿効率を比較した.流 路構成Aでは,ロータと空気流が疑似的に対向接触するよう回転方向後半を第1吸着ゾーンおよび第 1再生ゾーンとした.流路構成Aでは2 回目再生温度が除湿量に大きく影響するため,再生空気量を 増加させるか,1 回目再生出口と2回目再生入口の間に再生空気の再加熱を施すことで除湿量は増加し, 再加熱操作が最も高い除湿効率を示した.また,ロータ内の温度測定結果より,従来の単純2分割型 ロータでは,吸着ゾーン初期の急激な吸着熱発生によってゾーン後半でもロータ温度が高く保たれ, 吸着に不利な状態が継続する.一方,流路構成Aでは,第1再生ゾーンに続く第2吸着ゾーンにおけ る除湿量は,除湿対象空気の湿度が減少していることから従来型ほど多くはなく,急激な吸着熱発生 を抑制することができている.吸着と再生ゾーンを交互配置した流路構成Bではロータの加熱冷却が 1回転で2回繰り返され,除湿ゾーン初期に冷却遅れによる吸着能の回復遅れとロータ熱容量分の熱 損失が生じるため,除湿量と除湿効率ともに隣接配置型の流路構成Aに及ばない.
キーワード:デシカント空調システム,デシカントロータ,除湿, 吸着, 実験

[原著論文]
主題 イオン液体を用いたリキッドデシカント空調ステムのためフィンチューブ型気液接触器の熱・物質移動特性
著者名 山口誠一,齋藤 潔,中 山 浩,王 新 明
要旨:本論文では,イオン液体を 吸収剤 として用いた リキッドデシカント 空調システム に着目し,その主 要素である気液接触器として, 新たにフィンチューブ型を提案その熱・物質移動特 性を 明らかにすることを目的. 具体的には,この フィンチューブ型気液接触器を再生として 用いた場合の,空気レイノルズ数と溶液膜が側熱伝達率物質気側摩擦係数に与える影響を,実験と値計算用いたデータ整理より調べ. 結果として, これ らの相関係を定量的に明か にし ,さらに ,本実験条件の多く領域において,溶液 側物質移動が 空気側物質移動よりも全体のに対して支配的で ある こと など を明らかにすることができた. 以上により,気液接触器の複雑な移動現象解明向けた 知見が得られ以上により,気液接触器の複雑な移動現象解明向けた 知見が得られ以上により,気液接触器の複雑な移動現象解明向けた 知見が得られ以上により,気液接触器の複雑な移動現象解明向けた 知見が得られ以上により,気液接触器の複雑な移動現象解明向けた 知見が得られ以上により,気液接触器の複雑な移動現象解明向けた 知見が得られ以上により,気液接触器の複雑な移動現象解明向けた 知見が得られ以上により,気液接触器の複雑な移動現象解明向けた 知見が得られ以上により,気液接触器の複雑な移動現象解明向けた 知見が得られ以上により,気液接触器の複雑な移動現象解明向けた 知見が得られ以上により,気液接触器の複雑な移動現象解明向けた 知見が得られ以上により,気液接触器の複雑な移動現象解明向けた 知見が得られと言える. と言える.
キーワード:熱・物質移動,イオン液体,リキッドデシカント,調湿,空調

[原著論文]
主題 粒状収着剤を用いた気流式二槽循環流動層による気流間水分移動
-第1 報:システムの試作と基礎的水分移動特性-
著者名 堀部明彦,山田 寛
要旨:本研究では粒状収着剤を気流により循環させる二槽循環式流動層を試作して,収脱着により連続的 に二系統の空気間での湿度移動が可能なことを確認し,その基礎的挙動について示した.さらに,本 機器における粒状収着剤による連続的な水分移動特性を解明するため,流入空気の空塔流速や湿度条 件などを変化させた場合の影響に関して,収着側空気の除湿量と脱着側空気の加湿量すなわち両空気 間の水分移動量を検討した.実験の結果,除加湿量は粒状収着剤の循環量に影響を受け,循環量には 最適値が存在することが判明した.流入空気の空塔流速を増加させると,収着剤の循環量が増加して 除加湿量も増加し,一方,循環量が多すぎると低下した.また,流入空気湿度を変化させても粒状収 着剤の循環量に大きな違いはみられず,収脱着空気の相対湿度差が大きいほど,除加湿量は増加する ことが明らかになった.
キーワード:デシカント空調,物質移動,収着剤,循環流動層,湿度制御

[原著論文]
主題 音波による吸着促進現象の周波数依存性に関する一考察
著者名 秋澤 淳,大久保賢一,上田祐樹,藤木淳平
要旨:本研究では音波が吸着促進を引き起こす現象について,音波の周波数が与える影響について実験的に 測定するとともに,吸着促進を起こす条件について考察した.3種類の共振モードで音波を印加した結 果,速度振幅に対する吸着促進効果の勾配および効果が発生する下限値(臨界速度振幅)に周波数の 影響が表れることを見出した.一様流に音波による振動流が合わさった脈動流の実質的な変位振幅が ある値以上になると吸着促進効果を生じるとの仮説に基づいて考察した結果,臨界速振幅は周波数の 一次式で表されることを導いた.また,その理論式は実験結果とも整合していることから,この仮説が 吸着促進現象に有効であることを明らかにした.
キーワード:吸着,湿り空気,物質移動,除湿,音波,周波数,速度振幅

[原著論文]
主題 Measurement of Adsorption/Desorption Rate of Water Vapor to a Silica gel Thin Film Coated on a Surface of a Cross-fin Tube Heat Exchanger
著者名 Takafumi OUCHI,Yoshinori HAMAMOTO,Hideo MORI
要旨:Adsorption/desorption rate of vapor to adsorbent on an adsorption heat exchanger is one of the important characteristics in order to design and improve the performance of adsorption chillers and dehumidifying/humidifying desiccant systems effectively. In the present study, for a silica gel thin film adsorbent coated on an aluminum plate in a cross-fin tube heat exchanger, measurement of equilibrium adsorption of water vapor by TGA and measurement of adsorption/desorption rate by gravimetric method under different flow velocities of moist air were performed. The equilibrium adsorption was formulated with function of relative humidity. In addition, the overall mass transfer resistance related to both the mass diffusion in the film and the mass transfer in the boundary layer on the film was investigated. It was clarified that the influence of the resistance on the reaction rate appeared only at the beginning of reaction, and the resistance decreased with the increase of the velocity, especially in adsorption. Furthermore, the resistance in desorption was less than half in adsorption. Consequently, the resistance in the boundary layer was a negligible quantity for desorption when the flow rate was above 0.1 m・s-1. Finally, correlations were proposed to predict these resistances.
キーワード:Mass transfer, Adsorption, Moist air, Resistance, Thin film silica gel, Cross fin tube heat exchanger

[原著論文]
主題 Visualization and Analysis of Adsorption Kinetics by Using Image Processing Algorithm
著者名 Indri YANINGSIH,Koji ENOKI,Agung Tri WIJAYANTA,Kyaw THU,Takahiko MIYAZAKI
要旨:This paper provides an analysis of the adsorption kinetics by using image processing algorithm. Rapid adsorption kinetics is increasingly important because it offers a good mass transfer hence improves the efficiency of the sorption system. For adsorption kinetics, it is required to determine the first stage of the measurement precisely. Therefore, selecting the proper method becomes essential. Simple experimental setup was developed for evaluating adsorption equilibrium and adsorption kinetics of Silica gel/water pair. The test apparatus comprises of adsorption cell, evaporator/condenser, piping line, and measurement devices for temperature and pressure. Silica gel types A was employed in the present study as the adsorbent material. A new method is proposed to calculate the adsorption kinetics by using the digital image analyzing. Algorithm for image analysis could semantically segment the adsorption process by creating images which represented the dataset for water level changes inside the evaporator.
キーワード:Adsorption kinetics, Adsorption equilibrium, Silica gel, Water vapor, Digital image analysis, Image processing algorithm

[原著論文]
主題 シリカゲルハニカムブロックを用いた電気自動車向け防曇・暖房支援システムに関する基礎検討
著者名 児玉昭雄,沼波伸伍
要旨:電気自動車の暖房には電気ヒーターが用いられることが多く,さらに窓の防曇のために外気導入モ ードが基本となることからバッテリーの消耗が夏季以上に激しい.そこで本研究では,シリカゲルハ ニカムブロックによる除湿暖房効果の利用を検討した.これは,バッテリー充電中にシリカゲルハニ カムブロックを加熱再生し,走行中に車内空気を循環除湿して窓内面の結露を防止しようとするもの である.除湿(水蒸気吸着)に伴い発生する吸着熱は,暖房補助になる.市販のシリカゲルハニカム ブロックを用いた基礎実験において,水蒸気脱着(シリカゲルハニカムブロックの再生)は吸着に比 べて迅速で,10 分程度の再生時間で30 分程度の除湿暖房時間が得られることを示した.実車搭載を想 定した循環除湿実験では,成人男性2名が乗車した場合,容積4L のシリカゲルハニカムブロック搭載 で約30 分の防曇効果を確認した.このとき,空気加熱に要するエネルギーは従来方式(外気導入+温 水ヒーター)の約60%であった.
キーワード:自動車暖房,電気自動車,デシカント,シリカゲルハニカム,除湿, 吸着

日本冷凍空調学会論文集Vol.36,No.2 (発行日:2019/6/30)
[原著論文]
主題 漁獲後の冷却条件がマサバ Scomber japonicus肉のATP比率とpHに及ぼす影響
著者名 中澤奈穂・前田俊道・福島英登・和田律子・田中竜介・岡﨑惠美子
要旨:ATP含量とpHが高い高品質な冷凍マサバを製造するための適切な冷却条件を明らかにすることを目的として,活締め直後のマサバを,-30~0°Cの冷媒中で冷却したときの魚肉の温度,冷却時間,ATP関連化合物量に対するATP含量の割合(ATP比率)およびpHの変化を調べた.その結果,魚肉の温度が-10°C以下の場合は冷却開始後4~24 時間まで,-15°C以下の場合は300 時間以降まで,ATP比率80%以上を維持した.一方,pHは,冷却開始から2時間後に魚肉の温度が-15°C以下となった場合は,pH 6.5以上を300 時間以上維持した.なお,0°C付近においては,冷却開始から約2~4 時間までATP比率とpHの低下が抑制された一方で,-4~-1°Cでは,ATP比率とpHの低下が促進された.
キーワード:凍結食品,冷却,冷凍サバ,ATP,pH,冷却温度,冷却時間

[原著論文]
主題 多分岐な垂直ヘッダ型分配器における気液二相冷媒分配
副題 -液冷媒上部不到達条件を含む分配特性予測手法の検討-
著者名 松本 崇・尾中洋次・山下浩司
要旨:   著者らが実験した30分岐超の垂直ヘッダ型分配器の分流特性に対して,渡辺と勝田による5分岐ヘッダの1次元計算モデルを適用し,精度と計算時間を検証した.さらに機器設計に重要なヘッダ上部への液冷媒不到達時の分流特性予測のために,新たにフラッディングの整理式を用いたLBL (Liquid Branch Limit) モデルを検討した.結果,30分岐超のヘッダにおいて,渡辺モデルの適用により液冷媒の分流特性を示す平均二乗差偏差を0から-0.6の範囲で予測でき,計算時間も10分未満となり産業上の有用性を確認できた.LBLモデル適用により液冷媒の到達高さ比を ±20ポイント,偏差 ±0.2以内で予測でき,ヘッダ上部への液冷媒不到達条件における冷媒分流予測精度をさらに向上できた.
キーワード:気液二相流,垂直T分岐,分配,垂直ヘッダ,蒸発器,R 410A

[原著論文]
主題 冷媒溶解と発熱を考慮した圧縮機の軸受特性に関する研究
副題 -第1報:解析モデルと理論構築-
著者名 佐々木辰也・池田叔美・石園文彦・佐藤勝紀・佐々木信也
要旨: 空調冷熱用圧縮機では運転範囲の上限拡大が求められている.上限拡大の設計には2通りあり,行程容積の拡大では冷媒の圧縮荷重増大に伴ってすべり軸受の荷重が増大する.一方,高速化では油膜のせん断発熱による冷凍機油の粘度低下に起因してすべり軸受の負荷容量が減少する.ところで,すべり軸受を潤滑する冷凍機油には冷媒が溶解しており,温度と圧力条件によって冷媒溶解度と溶解粘度が変化する.高負荷,高回転数領域では摩擦熱や冷媒溶解による粘度変化が無視できなくなる.そこで,軸受油膜の温度および冷媒溶解度に起因する溶解粘度の変化を捉えた熱流体潤滑解析モデルを構築し,冷媒溶解度・溶解粘度の変化が軸受特性に及ぼす影響を明らかにした.
キーワード: 潤滑,圧縮機,冷媒,すべり軸受,数値流体力学

[原著論文]
主題 分子挙動的視点による過冷却状態下にある水の結晶成長と結晶軸の関係
著者名 大河誠司・矢古宇潤・内山 聡・寳積 勉
要旨: 今日,氷蓄熱システムなど水の凝固・融解を利用した技術が広く求められている.しかしながら,過冷却現象がシステム制御を困難にし,冷凍負荷を増大させている.また,冷凍食品分野では,品質低下を防ぐために,逆に過冷却を利用した冷却方法が模索されている.本研究は,固液界面上における凝固促進と過冷度,結晶の向きとの関係を明らかにすることを目的とし,MD 法を用いた計算機実験を行い,過冷却状態下にある水分子の挙動とポテンシャル変化の関係を検討した.その結果,過冷却状態下にあり自由度の拘束された分子が固液界面に近づいていくと,凝固潜熱に伴うエネルギーが運動エネルギーへと移行し,分子の自由度が増加することで結晶成長の促進に繋がることが分かった.さらに,凝固時の氷結晶の形へ及ぼす影響,凍結濃縮の軸の違いによる影響などを明らかにすることができた.
キーワード:凝固,分子動力学法,水,固液界面,分子挙動,氷,過冷却,結晶軸

日本冷凍空調学会論文集Vol.36,No.1 (発行日:2019/3/31)
[原著論文]
主題 Development and Validation of Tandem Capillary Tubes Method to Measure Viscosity of Fluids
著者名 Akio MIYARA・Md. Jahangir Alam・Kotaro YAMAGUCHI・Keishi KARIYA
要旨:The viscosity of working fluids is an essential thermophysical property to design heat exchanger, efficient processes, equipment, and simulation. Different types of conventional methods are used to measure the viscosity of fluids. The capillary tube method is based on the theoretical principle, and it is a reliable method. Nevertheless, it is tough to measure viscosity precisely because of problems involved in an equipment. In the present study, the tandem capillary tube method is proposed, and reliability of this method is explained. In this method, the pressure changes at the ends of the tube can be canceled, and the viscosity can be easily obtained from the Hagen-Poiseuille equation. A way to eliminate an effect of diameter difference between tubes is also proposed. The reliability and accuracy have been verified by comparing the measured viscosities of R134a to the reference values calculated by REFPROP ver.9.1. Most of the data agreed well within ±1.5 % deviation. These results show the validity of the proposed equation in the present viscosity measurement system. The expanded uncertainty of viscosity measurement was estimated as 2.2 %.
キーワード: Viscosity, Refrigerant, Tandem capillary tubes method, R-134a, Validation

[原著論文]
主題 配管搬送を想定した中低温用熱媒体エリスリトールスラリーの流動特性
副題 -水平冷却管内壁面への結晶固着と剥離条件-
著者名 水本裕士・阿部駿佑・浅岡龍徳
要旨:  エリスリトールスラリーの安定的な配管搬送技術を確立するため,冷却管内における管閉塞に関する検討を行った.管内壁面での結晶の固着が生じる際の,スラリーの流速と冷却量の関係について検討した.本報では,冷却により管内壁面に固着する固体の影響について詳しく検討するため,壁面性状と冷却量に注目した検討を行い,過去の研究の結果と比較した.実験の結果,流れの様子は,4種類の流動様相に区分できることがわかった.流速が小さく,固相と液相が分離した流れになる条件のとき,管底面と管上面にエリスリトール結晶が固着する.不均質流れになる条件のときは,流動する結晶が生成した結晶を剥離させる効果により,管底面には結晶が固着せず,管上面のみに結晶が固着する.均質流れでは,流動する結晶が生成した結晶を剥離させる効果が,管内壁面に一様に発生するため,管上面だけに固着が発生することがなくなる.シリコンチューブとアクリル管を比較すると,流速と冷却量の関係の傾向は同じであったものの,シリコンチューブよりアクリル管の方が固着が発生しやすいことがわかった.このことから,冷却量や流動様相以外の要因が考えられ,固着には壁面性状の影響が大きいと考えられる.
キーワード:混相流,蓄熱,エリスリトールスラリー,熱媒体,壁面性状,管閉塞,流動様相

[原著論文]
主題 横置き冷媒圧縮機の起動時における油吐出特性の研究
副題 -第2報:油循環量の低減-
著者名 森山貴司・村上泰城
要旨: 冷媒用圧縮機では,起動時に内部の潤滑油に溶解していた冷媒液が急激に気化して発泡することで,油が多量に吐出して枯渇しやすくなる.本研究では,特に油吐出量が多い横置き圧縮機の油枯渇を抑制するために油分離器またはアキュムレータを接続した場合において,起動時の過渡的な油と冷媒の流動を冷媒-油環境下の実験で評価した.本実験では非定常油流量の測定と圧縮機内部の液面挙動の可視化により,起動時の過渡的な油と冷媒の挙動を評価し,油分離器とアキュムレータを用いた場合に圧縮機内部の油量減少を抑制できるメカニズムを明らかにした.
キーワード:圧縮機, 冷凍サイクル, 冷凍機油, 油分離器, アキュムレータ

[原著論文]
主題 氷中の大腸菌殺菌に及ぼす直流高電界印加の効果
著者名 佐藤拓直・村上祐一・村本裕二
要旨:本報告では,凍結させた菌液に直流電界500 V/mmを印加し,凍結殺菌と電界殺菌の相乗効果について調査した.実験試料は,大腸菌を含む1.0×10-3 および5.0×10-3mol/Lの塩化ナトリウム水溶液である.-20 ℃で凍結させた実験試料に直流電界500 V/mmを印加した.1.0×10-3mol/Lの塩化ナトリウム水溶液試料では,電界印加による氷中の大腸菌殺菌は認められなかった.一方,5.0×10-3mol/L塩化ナトリウム水溶液試料では,電界印加による氷中の大腸菌殺菌は認められた.また1.0×10-3 mol/Lおよび5.0×10-3 mol/Lの塩化ナトリウム水溶液において,直流電界印加時間が大腸菌の生菌率に及ぼす影響は確認できなかった.
キーワード:氷, 凍結障害, 大腸菌, 冷凍,殺菌

[再録論文]
主題 The Safety Factor for the Refrigerant Charge in VRF System with Mildly Flammable Refrigerants
著者名 Ryuzaburo YAJIMA・Yukio KIGUCHI・Takashi SEKINE・Shunji SASAKI・Shuntaro ITO・Koji YAMASHITA・Toyotaka HIRAO
要旨:The safety factor for the refrigerant charge not requiring safety measures is examined. Even if the safety factor is set to 2, for mildly flammable refrigerants with a molecular weight of R 32 or higher, it is found that a flammable space with sig-nificant size that could cause an ignition accident was not formed for indoor units not equipped with a compressor and not of a floor mounted type, within the range of influence factors studied in this paper.
キーワード: Mildly flammable; Refrigerant; A2L; R32; VRF; Refrigerant charge amount; Safety factor

日本冷凍空調学会論文集Vol.35,No.4 (発行日:2018/12/31)
[原著論文]
主題 SPM による表面温度一定条件下での様々な金属表面への氷の付着力のナノスケール測定
著者名 松本浩二,南谷和行,坂本純樹,江原昂平,上田 純,梅原友理
要旨: 固体表面の不均一性のために,従来のマクロスケール での測定では固体表面,特に金属表面への氷の付着力を 正しく測定することができない.そこで,著者らの一人 は,走査型プローブ顕微鏡(SPM)を使用して,ナノサ イズの氷を銅表面上に作ることによってその氷に対する 表面の十分な相対的平坦度を実現した後,様々な銅表面 温度での正確な氷の付着力を測定してきた.さらに,界 面活性剤の添加により,-5 ℃での銅表面への氷の付着 力の著しい低減を実現した.本研究では,銅以外の4 種 類の金属表面上で,界面活性剤を添加した純水を凍結さ せた場合の氷の付着力をSPM で測定し,界面活性剤を 添加しない場合の結果と比較した.そして,界面活性剤 分子の各々の金属表面への吸着量,界面活性剤を添加し た場合としない場合の氷の表面エネルギーと4 種類の金 属の表面エネルギーの結果から,測定された4 種類の金 属表面への氷の付着力の妥当性を明らかにした.
キーワード: 氷,凍結,付着力,金属,界面活性剤,走査型プロー ブ顕微鏡,吸着量,表面エネルギー

[原著論文]
主題 連続製氷システムによって製造されたオゾンマ イクロバブル含有氷の特性の検討
著者名 松本浩二,関根幸輝,綾谷陸人,上田 純, 坂本純樹,江原昂平
要旨:オゾンマイロバブル含有氷はその優れた冷蔵効果の他 に優れた殺菌・消臭機能を有するため,生鮮食品の冷蔵 輸送での利用が有望である.著者らの従来の研究では, バッチ式装置により生成された氷中に含有されるオゾン マイクロバブル濃度の結果から,-18 ℃で1 週間保持 された氷でも,十分な殺菌力を保持していることがわ かった.そこで,今後のマイクロバブル含有氷製造の実 用化に向けた第一段階として,著者らの研究グループ は,まったく新しい機構を有する連続製氷システムを開 発した.本研究では,開発したシステムによって連続製 氷されたオゾンマイクロバブル含有氷を-18 ℃で1 週間 保持した後の氷中のオゾンマイクロバブル濃度とその氷 の融解によって放出されたオゾンガス濃度を測定し,そ れらの濃度の相関式を明らかにした.さらに,氷スラ リーの効果的冷却特性を利用するために,製造された氷 を砕いた氷粒と純水を混合して生成した“疑似氷スラ リー(氷充填率30 mass%)”の融解時間とオゾン水濃度 との関係を明らかにした.
キーワード: 氷,低温流通システム,鮮度保持,連続製氷,マイ クロバブル,オゾン濃度,疑似氷スラリー

[原著論文]
主題 植物工場の空調環境下における光合成速度と成 長曲線とを連成させた葉菜類の生育予測モデル
著者名 森内浩史,上田保司,吉田篤正,木下進一
要旨: 植物工場における野菜生産を計画・運営するには,栽 培条件に応じた収穫量の予測手法が必要である.本報で は,小松ら(2014)が開発した空調シミュレーション ツールを拡張して植物生理に則った生育予測手法を提案 した.一定値として用いられていた葉面積の生育量を成 長曲線としてモデル化し,光合成速度式と連成させた. また,光合成速度式もCO2 濃度および風速依存性を取 り込んで拡張した.含水率が光強度および風速による影 響を受けることがわかったため,このことを乾重量と含 水率から生重量を算出する際に適用した.解析結果と栽 培実験結果との比較より,本予測手法は実用に供しうる 精度であることが確認できた.
キーワード: 空調設備,植物工場,栽培実験,光合成,収穫量, 葉面積,成長曲線,含水率

[原著論文]
主題 少水量対応地中熱ヒートポンプビルマルチシステム  設計・性能予測ツールの開発とその応用
著者名 葛 隆生,中村 靖,長野克則,阪田義隆
要旨:本論文では,地中熱ヒートポンプ(GSHP)システムに おいて,一次側の循環ポンプに変流量制御を,二次側に ビルマルチシステムを採用した,少水量対応地中熱ヒー トポンプ(LF-GSHP)ビルマルチシステムの搬送動力削 減効果を予測できるシミュレーションツールを開発し た.まず,システムを構成する水冷ビルマルチヒートポ ンプの計算モデルと,変流量制御に対応した循環ポンプ の計算モデルについて示した.次に,開発した性能予測 ツールをフィールド試験結果によって検証した.さらに は,負荷変動の大きい中規模の病院建物を対象として, LF-GSHP ビルマルチシステムと従来のGSHP システム の年間の運転シミュレーションを行った.一次側・二次 側ともに定流量の循環ポンプを導入した従来のGSHP シ ステムと比較した場合の,LF-GSHP システムの循環ポ ンプの消費電力量削減効果は,暖房期間で約91 %,冷 房期間で約92 %となり,これにより搬送動力低減効果 を確認することができた.
キーワード: 熱源方式,ヒートポンプ,地中熱利用,変流量制御, 設計・性能予測ツール

[原著論文]
主題 Development of Dry-preservation Technology for Biological Protein at Room Temperature
副題 Measurements of Glass Transition Temperature and Residual Activity of Lactate Dehydrogenase
著者名 Kiyoshi TAKANO, Ryo SHIRAKASHI
要旨:The glass transition temperatures of the several kinds of materials which are considered to be effective as protective agents were measured before dry preservation experiment. The following four types of protective agents were selected to assess the dryprotective ability with Lactate Dehydrogenase(LDH); trehalose, trehalose with ε-Poly-L-Lysine(PLL)and trehalose with boron. The sample solutions of LDH with the various combinations of protective agents were rapidly vacuum-dried at the room temperature, followed by measuring their moisture content. After that, the dried samples were rehydration to measure the enzymatic activity by biochemical assay. The residual activity of LDH sample with trehalose was about 50 % when its moisture content was 11 to 60% . This driedsample, however, suddenly lost its residual activity down to about 20% when the moisture content decreased to 11 wt% or less. On the other hands, LDH samples with PLL alone and with trehalose+PLL kept their residual activities around 75 to 80 % in the wide range of moisture content. LDH samples with boron+trehalose kept their average residual activity from 69 to 74 % .
キーワード: Dry-preservation, Room temperature, Glass transition temperature, LDH, Residual activity

[原著論文]
主題 Influence of Wettability on Slug Flow in Micro Channels
著者名 Jingren XU, Chaobin DANG, Eiji HIHARA
要旨:Two phase flow in micro channel has been of research interest recently due to its high heat and mass transfer rate, and in this study, experimental investigation is performed on the influence of wettability of the tube in slug flow. The liquid film thickness and flow behavior of water-air slug flow are investigated by using laser focus displacement meter (LFDM) and high-speed camera, respectively. Circular glass tubes with inner diameters of 0.76 mm and 1mm are prepared to be hydrophilic or hydrophobic by applying surface chemical treatment(using chemical surfactant:piranha solution and toluene). The experimental results are compared and discussed to obtain the influence of wettability, and as a result, the liquid film thickness is found to be similar in hydrophobic and hydrophilic micro channels, which is compatible with theoretical analysis. However, the flow characteristics is influenced by wettability at low capillary number region, at which no liquid film exists. The critical capillary number for film deposition on the wall is influenced by the hydrophobicity of the tube, consequently, the critical capillary number is higher in a hydrophobic tube than that in hydrophilic one.
キーワード: Heat transfer, Liquid film thickness, Wettability, Slug flow, Critical capillary number, Contact angle

[原著論文]
主題 Thermo-economic Review of Micro-scale Organic Rankine Cycle Integrated into Vehicle Engines for Waste Heat Recovery
著者名 Jingye YANG, Binbin YU, Bingqing LU, Jiangping CHEN
要旨:Heavy-duty diesel engines have been widely applied in commercial vehicles. However, escalating consumption of fossil fuels and stringent legislation of CO2 emission have raised the concern about searching for viable technologies to improve the fuel energy efficiency recently. Generally, optimization technology of engines can be categorized into two types: enginepowertrain- applied and engine-bottoming cycles. The bottoming organic Rankine cycle is an applicable combined heat and power(CHP)technology with great potential for engine waste heat recovery. The aim is to increase the fuel energy efficiency without additional fuel consumption. In this paper, a thermo-economic overview of organic Rankine cycle system integrated into engines especially for on-the-road vehicle is presented. First of all, characteristics of various engine waste heat(e.g. exhaust gas, EGR, CAC, jacket cooling water, oil circuit)are briefly analyzed;Afterwards, special attention is paid to the screening criteria of appropriate expansion machine and working fluid selection;Subsequently, an overview of various layout of organic Rankine cycle was presented;Eventually, cost-orient economic evaluation of the synthesis cycle is overviewed, which is meant for characterizing the optimum system design.
キーワード: Review, Organic Rankine Cycle, Engine, Waste heat recovery

[原著論文]
主題 Research Concerning the Amount of Energy Consumption of Heat Source Systems at University Facilities
著者名 Yuki NAITO, Ryoichi KUWAHARA, Makoto KOGANEI
要旨:We investigated the energy consumption of heat source equipment in the university research facility building. The purpose is to clarify the current operation state of the heat source facility and propose a more efficient heat source facility system at the time of renewal. The survey method used BEMS data to calculate every hour of COP used by the heat pump of electric energy, inlet and outlet temperature and primary pump flow rate. As a result, the heat source efficiency of the heat pump had an the average COP= 1.98 during cooling in 2016 and COP=1.98 during heating in 2016.The heat source efficiency at the time of designing the heat pump was COP=2.38 during cooling and COP=1.95 during heating. Therefore, it was revealed that the heat source efficiency average in 2016 was lower than the heat source efficiency at the time of designing the heat pump. Also, energy simulation of the target building was carried out and the energy consumption was estimated. As a result, we grasped the detailed energy consumption of the target building.
キーワード: Energy consumption, University, Heat source system, COP, The BEST program

[原著論文]
主題 Evaluation of Solid Desiccant based Drying System for Energy-Efficient Drying of Agricultural Products
著者名 Shazia HANIF, Muhammad SULTAN, Takahiko MIYAZAKI, Shigeru KOYAMA
要旨:Drying air conditions of agricultural produce including the temperature and humidity affect the quality and appearance of the dried product. High temperature and higher humidity cause to loss of nutrient and color. Control of the latent load of drying air prior to use for drying seems more effective approach for the preservation of delicate and temperature sensitive nutrient present in agricultural produce. Desiccant drying system( DDS) removes the moisture from the drying air and makes it possible to dry at low temperature and low humidity. In present study the pertinence of DDS with two desiccant materials LiCl and Silica gel were analyzed in order to find the optimum drying conditions for wheat and rice. Results showed that in case of desiccant material LiCl, process air temperature found higher and humidity lowers, thus provided more pressure deficit and speedup drying as compared to the silica gel. The value of drying potential per watt also showed that desiccant material LiCl found more economical to use as compared to silica gel for all range of regeneration temperature. However for different type of grains, optimum ranges of regeneration temperatures is different i.e. 55.60 ℃ for wheat and 60.65 ℃ for rice.
キーワード: Desiccant, Evaporation, Drying, Performance evaluation, Agriculture

[原著論文]
主題 Integrated Energy Management System in Supermarket Assuming Utilization of Exhaust Heat for Subcooling by PCM to Achieve Sustainable Cities and Communities
著者名 Toshiyasu WATANABE, Tatsutoshi NAKAMURA, Sangchul BAE, Masafumi KATSUTA
要旨:In this study, we focused on the way of waste heat utilization to subcooling into refrigerated cabinets by cold heat of PCM(Phase Change Material)in the case of supermarket fields. On this experiment, we installed a heat exchanger into after the condenser of the refrigerated cabinet to control the subcooling degree using the PCM cold storage tank. The cold heat capacity of PCM tank water for subcooling was set assuming that it was supplied by adsorption refrigerator which was driven by the exhaust heat from gas engine and solar energy absorber. As a result, we confirmed that the power consumption decreased in the case of the refrigerated cabinet with subcooling contributed to CO2 emission reduction. Result of this experiment, the utilization of exhaust heat for subcooling by PCM was effective for energy conservation on the summer and the intermediate season. We confirmed, on the other hand, that the effect of subcooling by PCM could be disappeared when it was below 16 degree Celsius of the outside temperature.
キーワード: Exhaust heat utilization, Refrigerated cabinet, Supermarket, Subcooling, PCM

[原著論文]
主題 Study on Ground Source Heat Pump That Use Direct Expansion Method Using Foundation Pile
著者名 Shuhei ISHIGURO, Tetsuaki TAKEDA, Yuichi MURATA, Tomoya AOKI, Osamu YODA, Hiroji OKUBO
要旨:This paper describes ground source heat pump (GSHP) that use direct expansion method. An underground heat exchanger consists of a copper pipe which is inserted directly into a foundation pile. We have carried out an experiment using the underground heat exchanger which inserted into the steel pipe pile. This paper describes the performance of the GSHP that use 15 sets of the foundation pile. Experimental apparatus is composed of a compressor, a four-way valve, an expansion valve, five indoor units and the underground heat exchanger. The underground heat exchanger is composed of steel pipe piles and copper pipes, and the foundation pile is filled with water. The heat exchanger is U-shaped with one and two pipes connected at the bottom part and is inserted into the foundation pile. The performance of GSHP system was evaluated by coefficient of performance(COP), which is determined by the ratio of the amount of exchanged heat to the power consumption of the compressor. From the experimental result obtained, the average COP exceeded 7 in the cooling mode. On the other hand, the average COP exceeded 5 in the heating mode. It was found that GSHP using direct expansion method which used the underground heat exchanger inserted in the foundation pile have high energy saving properties.
キーワード: Ground source heat pump, Direct expansion method, Heat exchanger, Foundation pile, COP

[原著論文]
主題 Importance of Groundwater Flow on Life Cycle Costs of a Household Ground Heat Pump System in Japan
著者名 Yoshitaka SAKATA, Takao KATSURA, Katsunori NAGANO
要旨:This paper analyzed life cycle costs of a ground source heat pump system used in a residence of Japan considering an advection effect of groundwater flow of eight different Darcy velocity. The required length of a single borehole heat exchanger was determined in each seven area of different heating/cooling loads to minimize the life cycle cost during 20 years through heat pump simulations. This study revealed that the effect of groundwater flow appeared when the velocity was more than 10 m/y and was almost converged when the velocity reached at 200 m/y. The cost decreased almost linearly according to the logarithms of the velocity. The velocity range was possible in steep valleys and alluvial fans of Japan. This study also showed that the costs were related mainly to the total loads, and secondarily to the groundwater flow conditions for the household system. Among seven areas, the household system was economically suitable relative to conventional air source heat pump systems in the cold areas 1 and 2 without initial cost reduction. The moderately warm areas 3 to 5 also became suitable when the initial costs would be reduced by 20 % as a common target of current R&D projects.
キーワード: Ground source heat pump system, Groundwater, Life cycle cost, Sensitivity analysis

[原著論文]
主題 Evaluation of Control Method of VRF (Variable Refrigerant Flow)System by Experimental Study and Simulation Analysis
著者名 Kuniyasu MATSUMOTO, Keisuke OHNO, Seiichi YAMAGUCHI, Kiyoshi SAITO
要旨:Recently, the installation of VRF(Variable Refrigerant Flow)heat pump systems in offices . regardless of their size and shape . has become popular in Japan. This system consists of a packaged outdoor unit and multiple indoor units connected by a refrigerant pipe. It has the advantage of fitting in easily with the any building plans because of its standardized system. Moreover, this system is energy saving and enhances user comfort, as it can be easily operated as an indoor unit. On the other hand, as there are infinite combination of indoor units of VRF systems available for the users to be chosen freely within the range of outdoor capacity, and since the indoor units can be turned on and off independently, operation conditions are not predictable. So it is very difficult to find adequate control parameters under wider load conditions. For this reason, the purpose of this paper is s e t t o o r g a n i z e t h e c o n t r o l c h a r a c t e r i s t i c s systematically. In order to evaluate VRF system, we develop a numerical simulation model based on the laws of physics. This model can easily add and delete indoor unit’s elements. Therefore, we hope that this model is adequate for VRF system’s analysis. In this report we reproduce machine’s operation conditions precisely;for example, for unstable condition, we reproduce the hunting phenomenon of expansion valve and evaluate the effects of different control constants under different loads.
キーワード: VRF, Heat pump, Expansion valve, Simulation, Hunting

[原著論文]
主題 Aluminium Based Zeolites and MOFs for Adsorption Cooling
著者名 How Wei Benjamin TEO, Anutosh CHAKRABORTY
要旨:In this paper, AQSOA-Z01, AQSOA-Z02, AQSOA-Z05 zeolites, CAU-10 and Aluminium Fumarate metal organic frameworks undergo N2 and water adsorption experiments to observe how variations of the material properties affect the water adsorption performances. The experimentally measured N2 isotherms data are used to calculate the BET surface area, pore volume and, most importantly, the pore size distribution of these adsorbent materials. The amount of water uptakes under static and dynamic conditions are measured by a thermo-gravimetric analyser, and these data are fitted with adsorption isotherms and kinetics models within acceptable uncertainties. Based on isotherms and kinetics data, the performances of adsorption cooling in terms of SCP(specific cooling capacity)and COP(coefficient of performances)are evaluated. It is shown the CAU-10 provides the highest SCP and COP as it has higher water uptake . offtake differences with fast kinetics.
キーワード: Water adsorption, Metal organic framework, AQSOA typed zeolites, Microporous materials

[原著論文]
主題 Effect of Chevron Angle on Condensation Heat Transfer of Refrigerants at High Pressures in Plate Heat Exchangers
著者名 Kazushi MIYATA, Shuntaro YANAGIHARA, Naoto WATANABE, Hideo MORI, Yoshinori H A M A M O T O , S h u i c h i U M E Z A W A , Katsuhiko SUGITA
要旨:In industrial fields, heat source over 130℃ are widely needed, and for this development of industrial hightemperature heat pump systems has been promoted. For the heat release process in such the heat pump systems, the authors have studied on cooling heat transfer at supercritical pressures and condensation heat transfer at high subcritical pressures of refrigerants flowing in chevron-type plate heat exchangers(PHEs). In this study, to examine the effect of chevron angle on condensation heat transfer of refrigerants at high subcritical pressures, experiments were conducted using chevron PHEs with respective chevron angles 30 °, 47.5 ° and 65 °. In the experiments, condensation heat transfer coefficients were obtained in wide range of bulk fluid enthalpy comprising whole the saturated region, at pressures of reduced pressures from 0.65 to 0.80, and mass flow rates of 7 and 11 kg/ min. The measured condensation heat transfer coefficient increased with the chevron angle. The increase rate of the condensation heat transfer coefficient against the chevron angle was compared with that of condensation heat transfer coefficient from a conventional correlation developed based on low subcritical pressures data and that of cooling heat transfer coefficient at a supercritical pressure from a previous experiment.
キーワード: Plate heat exchanger, Condensation, Chevron angle, High pressure, Refrigerant

[原著論文]
主題 A Perforated Enhanced Fin to Improve Heat Transfer Performance of a Heat Pump Type Air Conditioner
著者名 Guoming WU, Tao REN, Guoliang DING, Bo YU
To achieve a good heat transfer performance for heat pump type air conditioners, the outdoor units of the air conditioners need to perform well under both the frosting and the non-frosting conditions. This paper proposes a perforated fin whose perforated structure is capable to enhance the heat transfer and to avoid the frost blockage. The perforate position on the fin surface is figured out by analyzing the positions of the frost blockage zone and the water exclusion zone. The optimal perforated geometries are designed to enhance the heat transfer coefficient. The new designed perforated fin has two parallels of rectangle multiperforated holes. The experimental results show that the heat transfer capacities under the non-frosting condition and the frosting condition of the designed perforated fin are 4.6 % and 1.1 % higher than these of wavy fins, respectively. The perforated structure has the capability to avoid the frost blockage around the enhanced structure on the fin surface.
キーワード: Heat pump type air conditioner, Heat exchanger, Heat transfer, Perforated fin, Frost

[原著論文]
主題 Dynamic Simulation of Active Magnetic Bearing Supporting Rotor Centrifugal Compressor During Drop On Touchdown Bearings
著者名 Aindri YULIANE, Yean-Der KUAN, Chao- Yun CHEN, Chung-Che LIU, Kuo-Shu HUNG
The active magnetic bearing(AMB)has many advantages compared with the conventional bearing. It is the most widely used bearing in many machine applications;such as centrifugal compressor, air blower, and turbo molecular pump. AMB applications must be equipped with auxiliary bearings system to prevent the damage to the impellers and motor in case of system failure. The auxiliary bearing is referred to as the touchdown bearing in this study. When a failure is occurred, the active magnetic bearing cannot support the rotor stably. Touchdown bearings serve as a backup for the active magnetic bearings to support the rotor during a drop-down failure event. Therefore, a properly designed touchdown bearing system is necessary to protect the active magnetic bearing assembly and other critical machine components from direct contact with the rotor during AMB loss in power outage events. This system uses a ball bearing as a type of touchdown bearing. A finite element based 2-DOF(two-degree of freedom)flexible rotor model is used to indicate the rotor behavior. The rotor model also considers the contact force between the shaft-inner race and ball bearing force based on Un-lubricated Hertzian contact models. This study presents a dynamic rotor simulation during a drop event applied in a magnetic centrifugal compressor. This simulation is built using MATLAB with rotor speed effect and touchdown bearing design to predict the rotor behavior based on the rotor orbit and response.
キーワード: Active magnetic bearing, Rotor drop event simulation, Touchdown bearing, Centrifugal compressor, Finite element method

[原著論文]
主題 Surface Tension Measurement for a New Low-GWP Refrigerant HFO-1123 by a Differential Capillary Rise Method
著者名 Chieko KONDOU, Yukihiro HIGASHI
要旨:By a differential capillary rise method, the surface tension was measured for a new candidate of low GWP refrigerant HFO-1123. 16 points of surface tension data with a propagated uncertainty of approximately ±0.22 mN m-1 are presented in this paper. Based on the measured data, a Van der Waals type empirical correlation was proposed for HFO-1123:σ= 61.02(1- T/Tcrit)1.3[0 mN m-1], where Tcrit is a critical temperature of 331.7 K measured by Higashi and Akasaka. This empirical correlation agrees with the measured surface tension data at temperatures from 267 K to 304 K.
キーワード: S u r f a c e t e n s i o n , R e f r i g e r a n t , H F O - 1 1 2 3 , Thermophysical property

[原著論文]
主題 Performance Enhancement Research of a CO2 Air Conditioning System with Propane Mechanical Subcooling for Electric Vehicle
著者名 Binbin YU, Jingye YANG, Dandong WANG, Junye SHI, Jiangping CHEN
要旨:The driving range of electric vehicle can be significantly reduced if using CO2 as a refrigerant in hot climates. This paper aims to improve the performance of CO2 electric vehicle air conditioning system by using a dedicated propane mechanical subcooling, the interference between internal heat exchanger(IHX)and mechanical subcooling(MS)was discussed, since both improvements compete towards reducing the throttling losses, optimization possibilities were theoretically analyzed on several integrated system for various subcooling degrees from 3 ℃ to 15 ℃ and ambient temperatures from 25 ℃ to 40 ℃ , results show that the presence of mechanical subcooling after IHX reduces its efficiency, the use of mechanical subcooling simultaneously before IHX rather yields a more efficient air conditioning system. It has been shown that compared with CO2 prototype system, the new best integrated system can improve the COP(coefficient of performance)up to a maximum of 25.72 % despite the extra compression work in mechanical subcooling cycle, and the cooling capacity up to a maximum of 46.24 % during the research range, thus, the driving range of EVs can be significantly extended. Furthermore, the suitable cooling capacity and propane compressor displacement required in the MS cycle are predicted. Finally, experiments were carried out to see the actual improvements achieved by MS and IHX cycle based on the theoretical results.
キーワード: Alternative refrigerant, CO2, Automobile air conditioning, Propane, Mechanical subcooling

[原著論文]
主題 Study of Thermodynamic Properties on Maximum Densities and Vapor-Liquid Equilibria of Aqueous Solution of Ammonia 著者名 Kosei OGUCHI Experimental studies on the pVTx properties of the aqueous solution of ammonia were precisely conducted m a i n l y i n t h e l i q u i d r e g i o n . B a s e d o n t h e s e experimental results, it was experimentally confirmed that the existing range of the maximum densities was clarified in the dilute region of ammonia. Furthermore, in the vapor-liquid equilibrium states of the aqueous solution of ammonia, there exist large differences between the saturated vapor pressures, namely dew point line, and the saturated liquid pressures, namely bubble point line, and their discrepancies were thereof discussed including the influence of hydrogen bonding as same as in solid. キーワード: Aqueous solution of ammonia, Maximum densities, Vapor-Liquid equilibria, Bubble and dew point pressures

[原著論文]
主題 Development of Miscibility Improved Oil for R 32
著者名 Yuya MIZUTANI, Takeshi OKIDO, Yohei SHONO, Kiyomi SAKAMOTO
要旨:R 32 is a refrigerant that excels in various applications and has seen wide use in recent years. However, R 32 is known to have lower miscibility with refrigeration oils than do other refrigerants such as HFCs and HFOs. Moreover, when R 32 is dissolved in refrigeration oils, the kinematic viscosity of the oil drops sharply. This has made it difficult to develop oils with improved miscibility with R 32 that do not suffer from these drops in kinematic viscosity. Our work has shown that the addition of a new base material to POE improves miscibility with R 32 while reducing the drop in kinematic viscosity that occurs when R 32 is dissolved in it. Using this technology, we have developed new refrigeration oils whose critical solution temperatures were -20 ℃ or below under R 32 atmosphere. The kinematic viscosities of the new oils when R 32 is dissolved in them were equal to or greater than those of POE oils currently used for R 410A. In addition, the new oils have not only expanded the range of choices for POEs for R 32, but also shown the possibilities for use with HFOs. In this study, we report our test methods and various characteristics of the oils under R 32 and HFOs.
キーワード: Refrigeration oil, R 32, Miscibility, HFO, R 452B, R 454B

日本冷凍空調学会論文集Vol.35,No.3 (発行日:2018/9/30)
[原著論文]
主題 潜熱蓄熱材エリスリトールの水溶液中での結晶成長
著者名 阿部駿佑,浅岡龍徳,久保木健介
要 旨:配管輸送を想定する新しい熱媒体として,熱容量と伝 熱性能に優れるスラリー状の蓄熱材を用いるのが有効で ある.本研究では,熱媒体として有望であるエリスリ トールスラリーの管内閉塞の防止を目的としてエリスリ トールの水溶液中での結晶成長に関する検討を行う.実 験では,水溶液の初期濃度や固相率を変化させて,スラ リーに含まれるエリスリトールの結晶形状の観察を行っ た.その結果,初期濃度が増加すると結晶は大きくな り,初期濃度80 wt%以上では凝集が促進されることが わかった.固相率が増加すると,結晶の大きさはわずか に大きくなるもののその変化は小さく,凝集の影響も小 さいことがわかった.また,結晶を大きさによって3 段 階に分類し,質量分率を測定した.初期濃度が大きくな るほど大きい粒子の割合が大きくなり,固相率が増加す るとその傾向が顕著になる.固相率が30 wt%を超える とその割合の変化は小さくなる.また,スラリー作製時 の撹拌速度を高くしたり,少量のマンニトールを添加す ることで,スラリーに含まれるエリスリトールの結晶が 小さくなることがわかった.
キーワード: 混相流,蓄熱,省エネルギー,エリスリトール,結晶 成長,未利用熱利用,熱媒体

[原著論文]
主題 配管搬送を想定した中低温用熱媒体エリスリ トールスラリーの流動特性
副題 流動様相と冷却温度が管閉塞に及ぼす影響
著者名 水本裕士,阿部駿佑,浅岡龍徳
要 旨:本研究では潜熱蓄熱材を用いた熱媒体の候補としてエ リスリトールスラリーを提案し,安定的な配管搬送技 術を確立するため,冷却管内における管閉塞に関する検 討を行った.固相率5 ~ 20 wt%のエリスリトールスラ リーを円管内に流し,冷却部で壁面にエリスリトール結 晶が付着する条件を検討した.冷却温度およびレイノル ズ数をパラメータとした実験により以下の傾向を明らか にした.レイノルズ数1100 以下で固相と液相が分離し た流れになる条件のとき,底部にエリスリトール結晶が 堆積し付着を引き起こすため非常に閉塞しやすい.レイ ノルズ数1100 以上で不均一な流れになる条件のときは, 管内上壁面にエリスリトール結晶の付着が生じ,一度付 着し始めると,時間経過とともに付着量が増加し,やが て管閉塞に至る.さらにレイノルズ数が高く均一な流れ になる条件では,付着が発生しても,付着量は増加しに くく,長時間安定して流動可能である.また,不均一な 流れから均一な流れに遷移するレイノルズ数は,固相率 による影響が非常に大きい.以上の結果より,エリスリ トールスラリーの管閉塞には,流速,冷却温度だけでな く流動様相の影響が大きいと考えられる.
キーワード: 混相流,蓄熱,エリスリトールスラリー,熱媒体, 結晶付着,固相率,管閉塞,流動様相

[原著論文]
主題 低GWP 冷媒の高温下における酸化分解
著者名 伊藤 誠,党 超鋲,飛原英治
要 旨:ヒートポンプからの温室効果ガスの排出を削減するた めに,現在の冷媒の使用を禁止し,より低い地球温暖化 係数(低GWP)の冷媒に置き換えることが予定されてい る.しかし,GWP の小さいフロン系冷媒の多くは化学 的に不安定であり,弱い可燃性を有する.既存の研究 は,湿度がその可燃性限界に影響を及ぼすことを示唆し ているが,漏洩時の冷媒の酸化分解に与える湿度影響に 関しては明らかにされていない.本研究では,酸化分解 の下限温度を測定して,低い燃焼性を有する低GWP 冷 媒を使用するときのリスクを評価した.加熱管を高温表 面として用いて,低GWP および従来の冷媒の分解開始 温度およびフッ化水素の発生を測定した.さらに,分解 に対する温度,湿度,冷媒の種類,および壁面材料の影 響を検証した.
キーワード: 地球温暖化係数,低GWP 冷媒,酸化分解,フッ化水 素,リスク評価

[原著論文]
主題 低GWP冷媒を用いたビル用マルチエアコンの性能評価
著者名 岩田育弘,熊倉英二,古庄和宏
要 旨:近年,地球温暖化防止のため,温室効果ガス抑制や省 エネ化が求められている.家庭用ルームエアコンでは GWP がR 410A の1/3 と低く,安全性,経済性で優位 なR 32 への転換が進められている.一方で,HFO 系混 合冷媒においてGWP の低さや省エネ性で優れたものも 提案されている.そこで,我々は今後,低GWP 化への 転換が必要となる業務用エアコン(ビル用マルチエアコン) を対象にR 32 と新たに提案されているHFO 系混合冷媒 について,ドロップイン試験およびシステムシミュレー ションにより性能比較評価を実施した.
キーワード: 冷媒,パッケージエアコン,低GWP,ビル用マルチ, システムシミュレーション,R 32,R 452B

[原著論文]
主題 回転するローター内部の温湿度挙動測定手法に関する研究
著者名 鍋島佑基,松浦大介,木村竜士,長野克則
要 旨:本研究では稚内層珪質頁岩(WSS)デシカントロー ターの最適化を目的に,IoT 用無線式小型センサーによ るローター内温湿度測定を試みた.小型センサーを用い て間断なく回転するデシカントローター内部で生じてい る熱・物質移動現象を測定するため,本報ではまず,温 湿度変化に伴うセンサー応答遅れの補正を行った.次に 直径350 mmφ,厚み60 mm のデシカントローターの各 表面から5 mm の地点にセンサーを埋設して通風試験を 行った結果,ローター表面付近の除湿再生量の推移を 可視化することができた.さらに実験結果から,再生温 度50 ℃において除湿のピークは吸着ゾーン初期に確認 できたが,ローター回転数が7 rph から30 rph に増加す ることで再生量のピークは250 °から330 °近傍まで移動 する傾向が確認された.回転数の低い7 rph のケースで は吸着より早く脱着が完了しており,脱着速度の方が早 いことが確認された.
キーワード: デシカント空調,計測,稚内層形質頁岩,温湿度分布, 吸着

[原著論文]
主題 鶏唐揚げの品質特性におよぼす保存温湿度の影響
著者名 上野茂昭,大川博美,市原史基,山田哲也,島田玲子
要 旨:本研究では鶏唐揚げの保存性を向上するために,種々 の条件で保存した鶏唐揚げの衣の食感,肉のやわらか さ,ジューシーさ等を測定し,揚げたての品質を保つた めの保存条件の検討を行った.破断圧縮試験では25 ℃ 40 % RH 条件が揚げたてに近い結果となった一方,高温 度または高湿度条件では試料の脱液の進行に伴い硬化が 認められた.40 ℃や40 % RH 程度で保存することによ り,他の条件に比べて鶏唐揚げは歩留まりよく,サクサ クでジューシーな状態を保持可能であることがわかった.
キーワード: 鶏唐揚げ,調理,保存,温度,湿度

[原著論文]
主題 Hardening of Salmon Egg Products Made from Fresh and Frozen Eggs
著者名 Tomohiro UEDA, Yukiko SAITOH, Kazufumi OSAKO, Emiko OKAZAKI
要 旨:“Ikura,” a seasoned salmon roe product in Japan, is produced mainly from eggs of the chum salmon caught during spawning migration. Owing to the high volumes of salmon caught during peak season, appropriate storage and processing methods are essential to maintaining egg quality. We investigated the processing properties of fresh or frozen-thawed salmon eggs at different maturity levels, focusing on hardening during storage. Our results confirmed that little hardening during storage occurred in eggs in the skein state in the abdominal cavity with a low maturity level, whereas substantial hardening occurred in the individual egg grains in the peritoneal cavity. Similar results were obtained using fresh and frozen salmon eggs, and the hardening of matured salmon eggs depended on the storage time and temperature. Based on SDS-solubility and SDS-PAGE analyses, the macromolecularization of egg membrane proteins occurred during egg hardening. The frozen eggs tended to harden faster than fresh eggs, and the hardening pattern was slightly different between these eggs; these differences may be explained by various factors, such as protein polymerization and degradation. The hardening of the egg membrane progressed after salting, and this phenomenon is likely to occur during salting and aging in industrial manufacturing.
キーワード: Freezing, Refrigeration, Mature, Storage, Salting, Salmon egg, Physical property, Egg membrane

[原著論文]
主題 Quality Changes of Commercial Surimi-based Products after Frozen Storage
著者名 Ru JIA, Mami EGUCHI, Wei DING, Naho NAKAZAWA, Kazufumi OSAKO, Emiko OKAZAKI
要 旨:In a preliminary study to clarify the factors affecting the quality deterioration of surimi-based products, the physical properties and drip loss of five different types of commercial surimi-based products(Itatsuki-kamaboko, Chikuwa, Satsuma-age, Datemaki, and Hanpen)at different freezing conditions were evaluated. After frozen storage, the breaking strength and breaking strain of Itatsuki-kamaboko, which is a two-step.heated surimi gel without starch, decreased with frozen storage, while for the other products, which are directheated gels containing starch, the breaking strength and breaking strain increased. Drip loss increased after frozen storage, and the thawing drip was higher with Itatsuki-kamaboko than with other products. These changes were notable in samples subjected to slow freezing than subjected to quick freezing. Moreover, the results of physical properties and drip loss corresponded to the change in sensory characteristics. Thus, the quality change in frozen surimi-based products might be correlated to not only the freezing conditions but also the heating methods and ingredients used. キーワード: Surimi-based product, Frozen storage, Freezing speed, Heating method, Physical property, Drip loss, Sensory evaluation

[原著論文]
主題 数値流体力学(CFD)を用いた二温度帯コンテ ナ設計指針の検討
著者名 關屋まどか,田中良奈,田中史彦,内野敏剛, 藤田 明,加藤信治,谷口雅巳
要 旨:青果物の海外輸出では,鮮度保持のため航空による輸 送が主であったが,近年は輸送コスト削減の点で有利な 海上輸送も注目されている.輸送に見合った積載量を確 保するため,青果物の多品目混載輸送は避けられない が,最適貯蔵温度は品目ごとに異なることから,新たな 輸送システムの開発が求められている.そこで本研究で は,一コンテナ内に0 ℃および10 ℃の二温度帯を有す るリーファーコンテナの開発を目的に,数値流体力学を 用いて空調設計・制御について検討した.庫内温度の実 測値と予測値を比較することで予測モデルの妥当性の検 証を行い,38 ℃および0 ℃の外気温の下,種々の条件下 で庫内空気の風速・温度分布を可視化した.これらの結 果は混載コンテナ内の最適な空調設計指針の提供に寄 与すると考える.
キーワード: 流体力学,コンテナ,二温度帯,低温流通,青果物

[原著論文]
主題 凍結解凍がキンメダイ体表色に与える影響
著者名 金まどか,河野晋治
要 旨:凍結および解凍工程は,キンメダイをはじめとする赤 色魚類の体表色の色彩変化を引き起こすことが知られて いるが,この色彩変化は,これらの魚の商業的価値を低 下させる.本研究では,凍結解凍工程における体表色変 化の原因を調べるために,キンメダイ鱗内のアスタキサ ンチン含量と赤色素胞の分散を測定した.凍結解凍前後 の体表色をComputer Vision System を用いて数値化す ることにより,体表色変化は,-30 ℃下では凍結保管期 間の影響を受けないことが明らかとなった.また,アス タキサンチン量は凍結解凍前後でほとんど変化しなかっ た.鱗内の赤色素胞の凝集と虹色素胞の損傷が,顕微 鏡での観察により認められた.これらの結果より,凍結 保管工程における色彩変化は,アスタキサンチンの酸 化・分解だけではなく,鱗内の色素胞構造の変化にも原 因があることが明らかとなった.
キーワード: 冷凍,解凍,チルド,キンメダイ,体表色,色素胞

[原著論文]
主題 脂質含量の異なるサバの品質特性におよぼす凍 結条件の影響
著者名 上野茂昭,髙橋 玲,劉 修銘,島田玲子,都 甲洙
要 旨:サバ類は冷凍によって肉質が著しく劣化することか ら,貯蔵中の肉質劣化を防止する高品質な冷解凍技術を 開発する必要がある.本研究では脂質含量の異なるサバ を-20 ℃,-40 ℃および-80 ℃の冷凍庫または-196 ℃ の液体窒素で凍結し,K 値,pH,氷結晶サイズ等の品質 項目について分析した.サバの品質を決定する重要な評 価指標の一つである脂質含量は,魚肉のK 値,ドリッ プ率および氷結晶サイズに影響を及ぼすことが示唆され た.脂質含量の異なる魚介類に対して適した凍結条件を 選択することで,鮮度低下抑制やドリップ抑制,氷結晶 サイズの制御が可能となることが期待される.
キーワード: サバ,冷凍,保存,品質,脂質含量

[原著論文]
主題 Effects of Frozen Storage and Thawing Conditions on Physical Properties of Glutinous Rice:(Part 1) Ice Crystal and Color Measurement
著者名 Tetsuya ARAKI, Keren DU, Shigeaki UENO, Shinji KONO, Gabsoo DO, Tatsuro MAEDA
要 旨:The effect of the freezing process and frozen storage periods on the microstructure of cooked glutinous rice has been investigated. Cooked glutinous rice(cv. Koganemochi)was frozen and stored in a household freezer(about -22 ℃)during 1, 5, 10, 30 and 60-day storage periods. Its microstructure was observed by using fluorescence staining method and the morphology of ice crystals including equivalent diameter and number was analyzed. Colorimetric measurements were conducted after natural and steaming thawing on samples of each storage period. It was found that average equivalent diameter and number of ice crystals increased with storage period from 5 days, and recrystallization occurred in temperature fluctuation during freezing process and storage affected microstructure of glutinous rice. Moreover, by analyzing the distribution of ice crystals, it was found that most of them are under 10μm in each storage period. Frozen stored glutinous rice after 60 days showed darker and more unpleasant color than freshly cooked one by both thawing methods. Since the tendency of color change during the whole frozen storage was unstable, it could be assumed that the control of thawing process should not be neglected.
キーワード: Freezing, Frozen storage, Glutinous Rice, Ice crystal, Thawing

[原著論文]
主題 Effects of Frozen Storage and Thawing Conditions on Physical Properties of Glutinous Rice:(Part 2) Rheological Measurement
著者名 Tetsuya ARAKI, Keren DU, Shigeaki UENO, Shinji KONO, Gabsoo DO, Tatsuro MAEDA
要 旨:The effects of the freezing process and frozen storage periods on rheological parameters of freshly cooked and freeze-thawed glutinous rice have been investigated. Cooked glutinous rice(cv. Koganemochi) was frozen and stored in a household freezer at -20 ℃ for 1, 5, 10, 30 and 60 days. After steaming and natural thawing processes, creep-recovery test(0.1 N, small deformation), texture profile analysis(TPA)test(50 % deformation)and the tensile testing(20 N, 100 % deformation)were performed on one-grain and blockshaped glutinous rice respectively by a rheometer, to measure the rheological parameters of the samples. One-grain samples showed more significant differences with freshly cooked rice in tensile testing, while blockshaped ones showed more in creep recovery tests. There were few significant differences in any fracture characteristics and viscoelastic properties between steaming and natural thawing methods for both blockshaped and one-grain samples in each storage period. The TPA results demonstrated that natural thawing method would produce softer as well as less sticky glutinous rice products during 60-day frozen storage.
キーワード: Freezing, Frozen storage, Glutinous rice, Texture, Thawing

[原著論文]
主題 Baking and Coloring Characteristics for Frozen Pizza Dough in a Hot-air and Superheated Steam Oven
著者名 Tetsuya ARAKI, Lingke MENG, Shinji KONO, Hikaru IMAMURA, Shigeaki UENO, Gabsoo DO, Tatsuro MAEDA
要 旨:Pizza dough samples were frozen and stored at different temperature(-5 ℃, -15 ℃, -25 ℃, -35 ℃ and -45 ℃)and for different storage periods(1 day, 15 days, 25 days and 35 days)to measure the baking characteristics of the samples in a hot air(HA)and superheated steam(SHS)oven. Baked samples were employed for the measurement of surface color and moisture content. The moisture content of the samples frozen at -5 ℃ significantly decreased after 15 days of frozen storage. The surface color of the SHS-dried samples changed more drastically than that of HAdried samples. Compared with HA, the SHS baking showed the potential to give the frozen pizza dough higher thawing rate, less baking time, and faster browning ability. The combined effect of initial condensation, crust thickness and water redistribution from crumbs to crusts might have played important roles in differentiating the HA- and SHS-baked samples. Different freezing temperatures from -5 ℃ to -45 ℃ did not cause any significant difference in color.
キーワード: Baking, Frozen pizza dough, Hot-air, Superheated steam, Surface color

[原著論文]
主題 冷凍米飯の長期保存における氷結晶の計測
著者名 都 甲洙,山本怜人,宋 珉錫,姜 起文, 佐瀬勘紀,裵 英煥,上野茂昭,荒木徹也
要 旨:本研究では,冷凍米飯の長期保存における氷結晶サイ ズを計測するために,一定の計測範囲内(540μm× 432μm)における氷結晶の単一分光画像による計測,炊 飯前の米粒の浸漬時における胴割れと水分浸透の計測, および胴割れ箇所における氷結晶の連続分光画像による 計測を行った.氷結晶の相当円直径の平均値は,凍結 直後が22.7μm,12 ヶ月間保存後が36.6μm(凍結直後 の約1.6 倍)であった.保存期間が長くなるにつれて,小 さな氷結晶が減少し,大きな氷結晶が増加した.米粒の 吸水開始から4 分後に胴割れ箇所に水が浸透し,26 分後 に全体に浸透した.氷結晶の連続分光画像計測では,統 合画像の大きさが3850μm × 420μm で,氷結晶短軸の 最小1.4μm,長軸の最大692.6μm で,相当円直径の最 小4.0μm から最大440.7μm であった.また,単一分光 画像の計測範囲より大きな氷結晶および胴割れ箇所の氷 結晶が計測された.
キーワード: 冷凍米飯,氷結晶,連続分光画像計測,胴割れ,水 分浸透

[原著論文]
主題 Sensory Evaluation of Frozen-thawed Indigenous Philippine Durian Cultivars and its Association to Measured Quality Attributes
著者名 Jackie Lou TAGUBASE, Zarryn PALANGGA, Hsiuming LIU, Tetsuya ARAKI, Shigeaki UENO, Yumiko YOSHIE
要 旨:Five Philippine durian cultivars . Puyat, Duyaya, GD69, Native, Arancillo, were subjected to consumer intensity-ranking test with 50 durian consumers as panelists to determine the correlation between the experimental measured values and the consumers’ perceived intensity of the different durian quality attributes: color, texture, physicochemical properties, sugars, and organic acids content. Preference ranking test was also performed to identify the most preferred cultivar based on the five quality attributes evaluated. Results of the intensity ranking showed a good correlation between the experimental values and sensory perception on the color, texture, sweetness and overall flavor. Same trends in the degree of intensity were observed in the measurements, objective and sensory analysis. In the preference-ranking test, results revealed that Duyaya was the most preferred cultivars in terms of the color, while Arancillo was rated most preferred for the texture. In reference to the taste/ flavor, the top choices were Arancillo, Duyaya, and Native. On the other hand, Puyat, GD69, and Arancillo registered the highest consumer preference in regard to aroma, although the mean rank of the former did not seem to differ with the two former cultivars. Finally, upon consideration of the overall preference, our findings suggested that Duyaya, Arancillo, and Native were more favored cultivars over Puyat and GD69.
キーワード: Sensory evaluation, Consumer preference, Philippine durian cultivars

[原著論文]
主題 Property Changes during Frozen Storage in Frozen Soy Bean Curds Prepared by Freezing Accompanied with Supercooling
著者名 Rika KOBAYASHI, Norihito KIMIZUKA, Manabu WATANABE, Fumio TAKENAGA, Toru SUZUKI
要 旨:Ice crystals play an important role in the degradation of frozen food quality. Quality degradation occurs even in the frozen storage process owing to recrystallization. On the other hand, it is assumed that ice crystals formed with higher nucleation have the potential to be resistant to ice recrystallization since they have homogenous size distribution of ice crystals when considering the mechanism of ice recrystallization. In this study, recrystallization behavior and quality degradation in soy bean curds prepared by freezing accompanied with supercooling(SCF)were investigated. As a result, ice crystals in SCF maintained the initial character of small particle size and homogenous ice structure after 28 day storage at -5 ℃, even though the characteristics of ice crystals in Conventional rapid freezing(CRF)and Conventional slow freezing(CSF)were changed dramatically during storage. Additionally it was observed soy bean curds prepared by SCF maintained their softness rather than those prepared by CRF and CSF;furthermore, SCF samples prepared with relative lower resolving temperatures of supercooling maintained the softness rather than the SCF samples prepared with relatively higher resolving temperature of supercooling. The results indicated that the homogenous ice structure determined by SCF is an effective factor in preventing quality degradation as well as recrystallization, even though the storage temperature is higher.
キーワード: Frozen food, Supercooling, Ice crystals, Frozen storage, Recrystallization

日本冷凍空調学会論文集Vol.35,No.2 (発行日:2018/6/30)
[原著論文]
主 題:R32の水平扁平多孔管内沸騰熱伝達に及ぼす潤滑油の影響
著者名:榎田 晃・菊池省吾・地下大輔・井上順広・小山 繁
要 旨:本研究では,水力直径0.81 mmの円形微細流路を有する水平扁平多孔管内でのR32と潤滑油の混合物の沸騰熱伝達率および圧力損失の測定を行い,それらに及ぼす潤滑油の影響について実験的に明らかにした.熱伝達率および圧力損失は,飽和温度15 °C,質量速度50-400 kgm-2s-1,熱流束5-40 kWm-2の範囲で,純冷媒および油濃度3.7 wt%の冷媒と潤滑油の混合物を用いて測定した.油の混入により,核沸騰が支配的な低クオリティ域では純冷媒に比して熱伝達率が高くなる傾向がみられたが,高クオリティ域および薄液膜での伝熱が支配的な低気相速度・低熱流束条件では熱伝達率の低下がみられた.油濃度3.7 wt%での圧力損失は純冷媒に比べて30-80%程度増大し,高質量速度かつ低クオリティ域では熱流束の増大にともなう圧力損失の増大がみられた.
キーワード:沸騰,熱伝達,圧力損失,R32,潤滑油,扁平多孔管,円形微細流路

[原著論文]
主 題:横置き冷媒圧縮機の起動時における油吐出特性の研究
-第1報:起動時の非定常油吐出量測定-
著者名:森山貴司・村上泰城
要 旨: 冷媒用圧縮機は,起動直後に圧縮機内部が減圧し,油に溶解していた冷媒液が,急激に気化して発泡するため,定常運転時に比べて油吐出量が多くなる.さらに横置きの圧縮機は,モーター回転子による撹拌や冷媒ガスによる油面の巻き上げで油吐出量が大幅に増加する.本研究では,油分離器を用いた油吐出量測定システムを構築するとともに,圧縮機内部の油面挙動を可視化することで,起動直後の過渡的な油吐出の特性を評価した.さらに本評価技術を用いて,圧縮機吸入側の圧力が異なる起動条件で,油吐出量と油面挙動を比較評価し,過渡的な特性の差異を明らかにした.
キーワード:圧縮機, 冷凍サイクル, 冷凍機油, フォーミング, 起動

[原著論文]
主 題:二層構造ハニカム多孔質体による流動沸騰限界熱流束の向上
著者名:牟田明・森 昌司・榊原史起・奥山邦人
要 旨:原子炉事故時に, 原子炉容器を冠水させ容器壁外部から自然循環により緊急冷却する手法においては,高熱流束除熱技術が必須である. 一方, 飽和プール沸騰において上向き伝熱面上にハニカム多孔質体を設置することで, 限界熱流束を裸面の2倍以上に向上させる手法が報告されているが, 実機条件, すなわち強制流動かつ下向き伝熱面においてハニカム多孔質体の効果は不明である. 特に下向き伝熱面では, 伝熱面上に大気泡が滞留しやすく限界熱流束は上向き面と比して大きく低下する. このような状況においても,限界熱流束を向上させる手法として二層構造ハニカム多孔質体による冷却手法が提案されている.以上を踏まえ本論文では, 下向き伝熱面の強制流動場において二層構造化させたハニカム多孔質体が限界熱流束に与える影響について実験的に検討を行った結果について述べる. 結果として,ハニカム多孔質体を単層構造から二層構造化させることで,下向き伝熱面の強制流動場においても限界熱流束を向上できることが明らかとなった.
キーワード:沸騰,熱伝達, 強制流動, ハニカム多孔質体, 限界熱流束

[原著論文]
主 題:不均一熱負荷並列ミニチャンネル内沸騰流の熱伝達特性
著者名:黒瀬 築・宮田一司・濱本芳徳・森 英夫
要 旨:近年,空調機の分野では,冷媒流路に並列ミニチャンネルを用いて,高性能化・コンパクト化を図っている.しかしながら,並列流路内沸騰流の場合,各流路の熱負荷が異なることによって,各流路に流量が不均一に分配されやすく,熱伝達性能を正確に予測することが困難である.本研究では,並列流路の流量分配・熱伝達特性の解明の基礎として,不均一な熱負荷を与えた場合の2並列流路の平均熱伝達率を実験により検討した.不均一な熱負荷を与えた場合,熱負荷の大きい流路の比較的広い範囲でドライアウトが生じることを確認し,同じ平均熱流束の均一熱負荷時と比べて,2流路の平均熱伝達率が低下する傾向を示すことを明らかにした.
キーワード:並列ミニチャンネル,沸騰流,不均一熱負荷,熱伝達,流量分配

[原著論文]
主 題:冷蔵庫用レシプロ圧縮機の給油機構に関するロバストパラメータ設計
著者名:永田修平・加納奨一・鈴木啓愛
要 旨:冷蔵庫用レシプロ圧縮機においては,冷蔵庫での運転実態に合わせた低負荷領域での効率向上が重要となると共に,能力のワイドレンジ化が望まれている.現在,多くの圧縮機は摺動部潤滑のための給油機構として,シャフトの回転運動を利用したものが採用されている.そのため,低速運転時では給油能力不足による性能低下が懸念される.本研究では,レシプロ圧縮機における給油機構に関する基礎検討およびその評価をロバストパラメータ設計の観点から実施した.その結果,潤滑油粘度に対してロバストとなる粘性給油機構の手法を示し,圧縮機運転範囲を低速側に拡大する上で提案した手法が有用であることを示した.
キーワード:圧縮機,潤滑,給油機構,給油量,ロバスト設計

[原著論文]
主 題:円管内層流強制対流におけるAl2O3-水ナノフルードの熱伝達特性
著者名:赤松正人・小林雄大・伊澤大輝・金子尚輝・安原 薫・岩本光生
要 旨:Al2O3-水ナノフルードの円管内層流強制対流熱伝達特性を非定常二次元数値解析により検討した.直径の50倍の長さを有する水平円管は入口から中央部まで断熱され,残りの部分は一定温度で冷却されている.円管に流入する高温のAl2O3-水ナノフルードはハーゲン・ポアズイユ流れを想定し,その熱物性はKhanafer and Vafaiによって報告された実験相関式を用いて算出した.異なる粒子径(dp = 25, 50, 100 nm),体積分率(φp = 0.01~0.04),参照温度( = 20, 30, 40 ℃)下で計算した結果,dp = 25 nm,φp = 0.04, = 40 ℃のとき,ナノフルードと水の平均熱伝達率比は最大値1.136を示した.なお,ナノフルードの局所Nu数を水の熱物性を用いて算出されたPe数で評価するとGraetz解と差異が生じたが,実験相関式に基づくナノフルードの熱物性を用いて算出されたPe数で評価するとGraetz解とほぼ一致した.
キーワード:熱伝達,対流,数値流体力学, 熱物性,ナノフルード

[原著論文]
主 題:Biological Metabolism of Frozen Whale Meat at Subzero Temperatures in Relation to Thaw Rigor
著者名:Hideto FUKUSHIMA・Naho NAKAZAWA・Koki YAMADA・Masahiro MATSUMIYA・Ritsuko WADA・Toshimichi MAEDA
要 旨:In many cases, frozen whale meat in the Japanese market is prepared before rigor mortis (pre-rigor). A serious problem for frozen whale meat is the occurrence of thaw rigor, which is the strong development of rigor mortis during thawing. To prepare frozen whale meat without thaw rigor and maintain a high meat pH, the temporal changes in adenosine triphosphate (ATP) and nicotinamide adenine dinucleotide (NAD) contents of frozen meat stored at -2.5, -5.0, -7.5, and -10°C were investigated. The rate of decrease of ATP was higher than that of NAD at all storage temperatures. ATP nearly disappeared after holding the meat at -2.5°C for a few days; however, NAD existed yet, so pH decreased thereafter. ATP levels were maintained for a long period at a temperature of -5.0 to -10°C, resulting in the occurrence of thaw rigor. Compared to the muscles of fish such as tuna, the rates of decrease of ATP and NAD were extremely slow in whale meat.
キーワード:ATP, Thawing drip, Frozen meat, Mink whale, NAD, pH, subzero temperature

日本冷凍空調学会論文集Vol.35,No.1 (発行日:2018/3/31)
[原著論文]
主題:ボラMugil cephalus卵脂質中のワックスエステルが脂質酸化に及ぼす影響
著者名:伊藤大輔・髙橋希・渋谷 緑・岡﨑惠美子・齊藤洋昭・大迫一史
要旨: オーストラリア産の冷凍ボラ卵を用い,卵脂質中のワックスエステル(WE)がそれ以外の脂質の酸化に及ぼす影響について検討した.ボラ卵の総脂質およびこれからWEを除去した脂質を酸化させた結果,総脂質の過酸化物価およびチオバルビツール酸反応物質はWEを除去した脂質と比較して顕著に抑制された.また,WEを除去した脂質の脂肪酸組成では酸化に伴い飽和脂肪酸の増加およびn-3系高度不飽和脂肪酸の減少が見られた.一方,WEの2, 2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジルラジカル消去活性を測定した結果,消去活性は0.04%と低かった.以上より,からすみの脂質が酸化に対し安定な理由の1つとして,ボラ卵脂質中のWEが,物理的な外気からの遮断により他の脂質の酸化を防ぐことが示唆された.
キーワード:脂質酸化,酸化防止剤,魚卵,ボラ,ワックスエステル

[原著論文]
主題:稚内層珪質頁岩を用いたデシカント空調の開発
-第8報:全熱交換素子と組み合せたユニットの検討-
著者名:鍋島佑基・長野克則・外川純也・都築和代
要旨: 本研究の目的は,安価で高効率な稚内層珪質頁岩(WSS)デシカントユニットの構築であり,本報は第8報である.本報では再生温度低下を目的に,全熱交換素子とWSSローターの組み合わせた方式を計画した.まず,再生温度の低減を達成するため全熱交換素子の仕様について数値計算と通風試験によって検討した.その結果,素子内の通風速度を0.8 m/secにすることで潜熱交換効率を80 %以上に保つことが可能であることが示された.次に本システム構成におけるデシカントローターの最適回転数について数値計算によって検討を行なった結果,再生温度が変化しても吸着量が維持できる回転数は10 rphであった.また,本システムは再生温度50.5 ℃で,9.4 g/kgDAの潜熱負荷を非結露で処理可能であることが示された.既存の2枚ローター方式と比較した結果,全熱交換素子と組合せることで再生温度は8 °C低減し,さらに予冷投入熱量は最大61%低減可能であることが示された.
キーワード:デシカント空調,稚内層珪質頁岩, 全熱交換素子, 数値解析, システムシミュレーション

[原著論文]
主題:スクロール圧縮機の複雑なバイパス漏れの等価簡単モデル
著者名:阿南景子・石井徳・辻琢 磨
要旨:バイパス漏れの複雑な流路が,チップシールに沿って漏れる流路とスクロールラップ先端上を接線方向に漏れる流路から構成される並列矩形断面流路モデルによって等価的に表せることを明らかにしている.前者に対しては流路等価長さを理論的に導き,流路有効幅という考えを導入し,後者に対しては流路有効長さという考えを導入し,それらを漏れによる圧力降下特性を計測する簡単な実験によって決定している.流路有効幅と流路有効長さの実験値を用いて圧力降下を理論計算し,その結果が計測結果と良く一致することを示している.さらに,流路有効幅と流路有効長さを無次元化し,実験値が表す物理的な意味について検討し,最後に,漏れ流速と漏れ質量流量を示している.
キーワード:圧縮機,冷媒,流体力学,スクロール圧縮機,チップシール,漏れ,バイパス漏れ,等価モデル

[原著論文]
主題:CO2ヒートポンプ飲料自動販売機における潜熱蓄熱槽の利用
著者名:藤井秀俊・佐藤秀昭・粕谷潤一郎・小坂梨奈・中曽浩一・深井 潤
要旨:未利用熱の蓄熱による熱の最適利用は,各種のヒートポンプシステムの高効率化・省エネルギー化の方法の一つである.飲料自動販売機は圧縮機によるヒートポンプによって加温・冷却を行っており,その消費電力量の約6割を加温が占めていることから,加温の消費電力の改善が求められている.本研究では,CO2ヒートポンプ飲料自動販売機の省電力化を目的に,2種類の潜熱蓄熱槽の設計指針を明らかにした.ヒートポンプのCO2冷媒の熱を蓄熱する2種類の蓄熱槽の伝熱を検討した結果,ヒートポンプ停止時の加温庫室における空気の加熱に用いる第一の蓄熱槽では,蓄熱材側の熱伝導促進の効果と空気側の熱伝達促進の必要性を明らかにした.また,圧縮前のCO2冷媒の加熱・蒸発に用いる第二の蓄熱槽では,蓄熱槽における各パラメータの寄与度を示した.
キーワード:蓄熱, 熱伝導, 熱伝達, 加熱・加温, 冷凍サイクル, 省エネルギー, 飲料自動販売機

[原著論文]
主題:稚内層珪質頁岩を用いたデシカント空調の開発
-第9報:パージゾーン導入による給気温度低減の検討-
著者名:鍋島佑基・長野克則・外川純也・都築和代
要旨:本研究では家庭用の稚内層珪質頁岩(WSS)デシカントユニットのSA温度低下を目的に,室内還気の一部を利用したパージゾーン導入検討を行なった.パージ導入に伴って全熱交換素子の風量バランスが崩れるため,通風量差が効率低下に及ぼす影響を調べた結果,処理風量と還気風量の比は1:0.8まで顕著な性能劣化が生じないことを確認した.そこで,パージ風量の上限を30 m3/hとして,通風試験と数値計算を実施した.実験の結果,パージ導入によって除湿量が0.1 g/kgDA程度微増し,SA温度は1.0 °C以上低減可能であることが示された.さらに数値解析によるローター回転数とパージ風量の最適化検討を行なった結果,ローター回転数10 rphの低回転のケースが最も除湿量が多く,SA温度は1.2-2.6℃低減可能であることが明らかとなった.この時の最適パージ風量は再生温度40-60℃において30-18 m3/hであった.
キーワード:デシカント空調, 稚内層珪質頁岩, 全熱交換素子, パージゾーン

[原著論文]
主題:冷房空調負荷広域におけるR 452Bを用いた空調機の性能評価
著者名:平良繁治・南田知厚・配川知之
要旨:冷媒の選定においては,ODPやGWPだけでなく,地球温暖化への影響を様々な面から考慮する必要がある.従って,CO2換算での気候への影響を最小限にするためのより良い冷媒の探索を継続することは不可欠である.最近,新しい冷媒R 452Bは高効率冷媒として報告された.空調機の使用負荷によっては優れた性能を発揮する可能性がある. R 452BとR 32で広範囲の空調温度で冷房性能の比較を行った.その結果,高外気環境および高熱負荷環境にて性能差が大きくなることがわかった.また,その原因の分析を行ったので報告する.
キーワード:Coefficient of performance, R 410A, R 452B, R 32, 非共沸, 高外気

[原著論文]
主題:Mn系化合物階層充填磁気再生器の冷凍性能
著者名:谷口朋宏・大久保達也・岡村哲至・裵 相哲
要旨:ガドリニウム系化合物よりも大きな磁気エントロピー変化量を示すが,それを示す温度範囲が狭いという特性を持つマンガン系化合物を階層充填した際のAMR(磁気再生器,Active Magnetic Regenerator)の性能を1次元伝熱数値解析によって調べた.階層充填では,AMRダクト長さが同じ場合,隣り合う材料のキュリー温度間隔が広くなると,温度スパンはほとんど変わらないが,冷凍能力が低下することが示された.また,好ましいキュリー温度間隔で充填されたAMRダクトでは,低温側に充填された磁性材料によって冷凍能力が発揮され,その他の材料はAMRダクトの温度スパンを拡大することに寄与することが示唆された.
キーワード:冷凍, 空気調和機, 磁気冷凍, 磁気熱量効果, 冷凍性能, マンガン(Mn)系化合物

日本冷凍空調学会論文集Vol.34,No.4 (発行日:2017/12/31)
[原著論文]
主題 ビル用マルチエアコンにおける微燃性冷媒充填量の安全係数
著者名 矢嶋龍三郎,木口行雄,関根 卓,佐々木 俊治,伊藤俊太郎,山下浩司,平尾豊隆
安全対策を必要としない冷媒充?量の安全係数の検討を 行った.建築図面上の誤差, 内装品体積による漏えい空間 体積の減少,漏えい時濃度解析により求めた冷媒濃度分布 における 濃度偏在などの影響要因を詳細に検討した.その 結果,床置機以外であって圧縮機を搭載しない 室内機にお いて,分子量がR?32以上の微燃性冷媒の場合,本論文にて 検討した影響因子の範囲内に おいては,安全係数を2とし て冷媒充填量を決めた場合でも,着火事故の原因となり得るほどの有意な 大きさを有する可燃域は形成されなかった.
キーワード 微燃性,冷媒,ビル用マルチエアコン,R32,冷媒充填量,安全係数

[原著論文]
主題 水平矩形微細流路内気液二相流の流動様相に及ぼす振動の影響
著者名 大野正晴,長山国弘,榎木光治,秋澤 淳, 大川富雄,森 英夫
本研究では,矩形管の水力直径が0.84mmの水平微 細流路ガラス管内を流れるR134aの流動様相の観察を 高速度カメラを用いて行った.観察はまず無振動かつ断 熱条件で行い,既存研究で提案された流動様式線図の適 用性を検証した結果,観察結果と良好な一致を示した. さらに,観察部を一様加熱した状態で鉛直方向の振動を 印加して,管内の液膜の状態が振動によって大きく変化 すると考えられるスラグ流と層状流に対し,流動様相に 及ぼす振動の影響を検討した.スラグ流域では矩形管の 角部から管内壁面中央部の乾き面へ,層状流域では液が 流れている管底部以外の管内のほぼ全面に形成される乾 き面へ,それぞれ液を供給する様子が確認できた.さら に,層状流域ではある一定の振動条件下で,流動様式が 環状流に遷移する様子が観察された.このため,振動は CHFやドライアウトクオリティの向上に良い影響を与 えていることがわかった.また,乾き面への液の供給現 象を定量的に評価するため,振動の最大加速度を用いて 整理した.
キーワード 冷媒,微細流路,流動様式,流動様相,気液二相流,振動

[原著論文]
主題 階層構造化磁気再生器の材料構成の最適化に関する検討
著者名 川南 剛,大西孝之,副島 慧,平野繁樹, 和田裕文,岡村哲至,裵 相哲,平野直樹 磁気ヒートポンプの冷媒となる磁気熱量効果材料には,磁気相転移時に潜熱を持たない2次相転移材料が使 われてきたが,システム特性向上の観点から,磁気相転 移時に潜熱を持ち大きな吸発熱が見込める1次相転移材 料を利用することが期待されている.1次相転移材料は 単独では動作温度範囲が狭いため,複数の材料を階層構 造化することにより温度差拡大をねらう方法が検討され ている.本研究では,1次相転移材料を磁気冷媒とした 磁気ヒートポンプシステムの特性について,材料階層化 の最適化に関し検討を行った.磁気熱量効果材料には, 筆者らの研究グループで新たに開発した,キュリー温度 が数ケルビン刻みで制御されたマンガン系化合物を用 い,それらを階層構造化した磁気再生器(Active? Magnetic?Regenerator;AMR)を構築した.これらの AMR特性を評価した結果,階層化の材料の数によって 冷凍特性は変化し,最大温度スパンを生成するのに最適 な階層数が存在することが示唆された.
キーワード 冷凍サイクル,ヒートポンプ,磁気熱量効果,固体 冷媒,充填層

[原著論文]
主題 矩形流路におけるマイクロカプセルスラリーの上面・下面加熱時の熱伝達特性
著者名 堀部明彦,Hyungsup IM,山田 寛,春木直人
本研究では,潜熱蓄熱物質を内包したマイクロカプセルと水を混合させたマイクロカプセルスラリーを用いて,強制対流と自然対流が共存する複合対流の熱伝達特性を検討した.矩形断面流路の上面加熱条件の場合,相変化による潜熱の影響により平均熱伝達率がやや増加した.一方,下面加熱条件の場合,相変化により上流側の局所熱伝達率が増加した.また,下面加熱条件では修正 レイノルズ数の増加にかかわらず平均ヌセルト数はほぼ 一定値を示し,本実験条件での複合対流では自然対流に よる影響が強いことが示された.さらに,相変化によって密度が低下したことでレイリー数が増加し,それに伴い平均ヌセルト数がやや増加しており,相変化による潜熱の影響と比べて,マイクロカプセルスラリーの密度差によって自然対流熱伝達が促進されることが明らかになった.
キーワード 熱伝達,複合対流,マイクロカプセルスラリー, 相変化,矩形流路

特集:熱交換器に関わる最新技術(その3)
[原著論文]
主題 界面捕捉法を用いた微細流路内スラグ流液膜厚さの数値解析
著者名 松田和也,遠藤和広 微細流路内の伝熱特性把握を目的として,気液二相流 数値解析を行った.数値解析は主に低乾き度域での流動 様式であるスラグ流を対象とし,水-空気および冷媒 R?32を作動流体とした.さらに本研究では,微細流路内 の沸騰伝熱で支配的な管壁と気体プラグ間の液膜蒸発 熱伝達の解析に向けて,界面捕捉法のひとつである VOF法を用いて気体プラグと流路壁面との間の液膜厚 さを解析し,文献および実験結果と比較した.その結 果,スラグ流において数値解析により求めた液膜は良好 に実験結果を再現した.また,解析により求めた液膜厚 さと既存の沸騰熱伝達の整理式を組み合わせることによ り,複雑な相変化現象を直接解析することなく,熱伝達 率を予測できる見通しを得た.
キーワード 熱交換器,数値流体力学,微細流路,スラグ流, VOF法

[原著論文]
主題 R1234ze(E)を作動流体とする高熱負荷電子 機器除熱用銅製沸騰面のLISS加工による高性 能化
著者名 近藤智恵子,梅本翔平,中尾 了,水戸岡 豊,小山 繁 電子機器除熱用サーモサイフォンの性能向上には,面 積が限られる沸騰伝熱面の高性能化が重要な設計因子で ある.本実験では,フィン加工,ならびにLISS加工 (レーザーによる表面性状制御)を施した銅製沸騰伝熱面 を用いた場合の,R1234ze(E)を作動流体とするサーモ サイフォンの除熱性能を測定し,その効果を評価した. これらの加工を施した沸騰面を用いることで,1.4?mm角の CPUからの投入熱流束約1350?kWm-2まで,CPU表面温 度を80℃以下に抑えられることを示した.また,R?1234z(e E) の有効キャビティ径が数μmのオーダーであることか ら,LISS加工面が特に核沸騰発達域で高い熱流束を達 成し得るが,加熱履歴の影響が顕れることを確認した.
キーワード サーモサイフォン,R1234ze(E),沸騰促進,レーザー加工

[原著論文]
主題 低温強制対流下における昇華を利用した霜層の 剥離現象
著者名 加藤雅士,松下 将,西田耕作,大久保 英敏 熱交換器の着霜対策は,冷凍空調機器の効率改善のた めの重要な課題となっている.本研究では,主流空気温 度が-45~-5℃の強制対流下において,平板の冷却面 に着霜を生じさせた後,空気を流しながら,融点未満の 温度で霜の付着面である冷却面をステップ状に昇温させ ると,昇華現象を利用して冷却面近傍の霜を表面に移動 させることができ,付着力の低減により霜を剥離させる ことが可能であることを見出した.また,空気温度と湿 度,着霜時間により,霜層の剥離が起こる場合と昇華だ けが起こる場合があり,その境界条件を実験により明ら かにした.本現象は,冷凍庫などのエアクーラーの着霜 を,効率良く除去できる新たなデフロスト方式として応 用が期待できる技術である.
キーワード 除霜,昇華,着霜,剥離,熱交換器

[原著論文]
主題 コンパクト熱交換器に関する性能評価
副題 第1報:流動性能と凝縮性能
著者名 王 凱建,高橋俊彦,奥山 亮
本研究では,コンパクト性を極めた熱交換器('Innovative Smart Channel' Heat Exchanger (ISC_HEX) )の流動性能と凝縮性能を調べ,その特性を明らかにするとともに,Air To Water Heat Pump (ATW)用水-冷媒用ISC_HEXを開発した.ISC_HEXの水側の圧力損失は,その出入口間の圧力損失の計測結果から推測した形状損失の占める割合が支配的であり,チャンネルの形状を工夫することにより0.65m/sの流速条件においてその出入口間の圧力損失を従来熱交換器より大幅に減少させることが十分に可能である.冷媒R 410Aを使用して熱交換能力を3.5kW一定とした実験条件において最大出湯温度75°Cが得られた.このときの単位体積あたりの熱交換量はプレート式熱交換器の3.3W/cm3に対して69.4W/cm3に達した.熱交換能力を変化させる実験条件において最大熱交換量5.8kWを実現し, 最大出湯温度58°Cが得られた.また,今回の実験でISC_HEX は5500~8500W/(m2・K)の熱通過率を実現した. 
キーワード: 熱交換器 圧力損失 冷媒 凝縮 熱通過率

[原著論文]
主題 多分岐な垂直ヘッダ型分配器における気液二相 冷媒分配
副題 実験による分配特性計測および偏流様相と液冷 媒上部不到達条件の整理
著者名 松本 崇,尾中洋次,山下浩司
本研究では,30分岐を超える垂直ヘッダ型分配器の分 配特性について,主管径と枝管径の異なる複数の流路形 状にて冷媒流量と乾き度を変化させた実験により明らか にし,冷媒状態や入口径に対する分配特性を整理した. 実験により,特性は液冷媒が下部に偏流し上部へ不達, 上部へ偏流,ほぼ均一に流動の3つに分類できることを 示した.また,分配均一化が期待される乾き度の低減は, 条件によっては冷媒がヘッダ上部に到達せず,偏流を顕 著にすることを確認した.また新たに,ヘッダ上部への 到達度を液冷媒の到達高さ比HとWallisの無次元数C との関係式を作成し予測可能にすることで,冷媒の流量 と乾き度に対応したヘッダ径を見積もることを可能とした.
キーワード 気液二相流,分配,垂直ヘッダ,蒸発器,R410A

[原著論文]
主題 並列多穴微細流路を用いた蒸発熱交換器内の流動様相観察と偏流メカニズムの解明および対策
著者名 大野正晴,榎木光治,冠者慧祐,中村太一, 大川富雄,西田耕作,加藤雅士
本研究では,微細流路を用いたプレート熱交換器の偏流メカニズムを実験的研究から明らかにして, その対策法について提案している.まず,蒸発熱交換器内の可視化実験では,流路1 本の水力直径が 0.93 mm の並列に接続された複数本の微細流路(並列多穴微細流路)内を流れるHFE-7000 の気液二相 垂直上昇流の流動様相観察を,高速度カメラを用いて行った.微細流路部は背面からヒーターを埋め 込んだ銅板によって加熱して観察を行った.飽和温度は30 °C である.流動様相の変化に対する入口ヘ ッダー部の気液分布の影響を調査するため,質量流量がW = 0.0022 kg・s-1 のもと,出口クオリティを xout = 0.9 に保ち,入口クオリティをxin = 0,0.2,0.7 に変化させて観察した.その結果,偏流は試験部 入口ヘッダー部に気液分布の偏りが生じることで引き起こされることが確認された.そして,熱交換 器性能を低下させると考えられる逆流も同様に観察され,この原因は気体プラグが加熱によって急拡 大することで生じていることが確かめられた.これら実験から得た知見により,入口ヘッダー部を,流 動様式線図を基に設計し直して,試験部入口から離れるほど流路面積が小さくなる形状にしたところ, 偏流及び逆流が抑制されていることを高速度カメラによる撮影から確認した.このため,赤外線カメ ラを用いて熱交換器の温度計測を実施し,定量的に偏流と逆流の抑制による効果を確認した.この結 果,入口ヘッダー部に気液の偏りがあると,試験部入口付近の流路の下流側ではドライアウトによる 温度上昇が恒常的に生じているのに対して,試験部入口ヘッダー部を改良することで,偏流による下 流側のドライアウトは抑制され,かつ温度分布が均一になっていることを確認し,偏流対策の有効性 を実証した.
キーワード: 蒸発器,冷媒,並列多穴流路,微細流路,気液二相流,流動様相,偏流,逆流

[原著論文]
主題 R 32の三角形微細流路を有する水平扁平多孔 管内蒸発熱伝達および圧力損失
著者名 榎田 晃,地下大輔,井上順広,小山 繁
本研究では,水力直径0.83 mmの三角形微細流路を有する水平扁平多孔管内でのR32の蒸発実験を行い,蒸発熱伝達および圧力損失特性を実験的に明らかにした.熱伝達率は飽和温度15 °C,質量速度50-400 kgm-2s-1,熱流束2.5-20 kWm-2,クオリティ0.05-0.95の範囲で測定し,圧力損失は飽和温度15 °Cの非加熱条件下で,質量速度50-400 kgm-2s-1,クオリティ0.1-0.9の範囲で測定した.熱伝達特性は高質量速度の高クオリティ域では強制対流蒸発熱伝達が支配的であり,低気相みかけ速度のスラグ流域では蒸気プラグ周りの薄液膜部での熱伝達が支配的であった.本実験においては核沸騰熱伝達の影響は小さく,低質量速度条件では熱流束の増大にともない熱伝達率は低下した.また,三角形微細流路で得られた結果と円形微細流路を有する扁平多孔管の結果とを比較し,蒸発熱伝達および圧力損失特性に及ぼす流路形状の影響について検討した.
キーワード: 蒸発, 熱伝達, 圧力損失, 扁平多孔管, 三角形流路, R32

[原著論文]
主題 金属系3Dプリンティングにより造形した格子 構造を有するヒートシンクの伝熱性能
著者名 四宮徳章,中本貴之,木村貴広,三木隆生
金属系3Dプリンティング(積層造形法)は,複雑な任 意形状を造形できるため,高性能なヒートシンクの加工 法として期待されている.本研究では,格子構造を有す るヒートシンクの伝熱性能を,数値解析および実験によ り調べた.また,造形物の三次元形状と表面積をX線 CTにより測定し,得られた形状モデルを用いて造形特 有の表面の微細な凹凸を考慮した数値解析を行った.そ れらの結果,格子構造を有するヒートシンクは,フィン 型ヒートシンクよりも有効熱伝達率が高いことがわかっ た.また,造形物は表面の微細な凹凸により,表面積は 設計値より増加するが,伝熱性能は低下することが明ら かになった.
キーワード 熱交換器,熱伝達,積層造形法,格子構造体,アルミニウム,数値解析

[原著論文]
主題 プレート式熱交換器における臨界圧近傍高圧冷 媒の凝縮熱伝達
著者名 宮田一司,柳原俊太郎,谷口隆寛,森 英夫, 濱本芳徳,梅沢修一,杉田勝彦
高温熱を供給する産業用ヒートポンプの開発を目的として,臨界圧近傍を含む高圧亜臨界圧(換算圧力0.54~ 0.97)におけるシェブロン形プレート式熱交換器(PHE) 内の冷媒HFO1234ze(E)の凝縮熱伝達に関する実験を 行った.得られた熱伝達率のデータに基づいて,圧力お よび流量の影響を含め,PHE内の高亜臨界圧における凝 縮熱伝達の特性を明らかにした.さらに,本測定値と比 較して,従来の熱伝達整理式の適用性を調べた.
キーワード 熱伝達,凝縮,冷媒,プレート式熱交換器,臨界圧 近傍

[原著論文]
主題 単流路プレートフィン熱交換器内垂直上昇沸騰 熱伝達に及ぼす加熱媒体流動方向の影響
著者名 式地千明,上野貴之,箕浦健二,浅野 等
R134aを冷媒としたプレートフィン熱交換器における, 垂直上昇沸騰熱伝達特性に及ぼす加熱媒体の流れ方向の 影響を実験的に考察した.冷媒側は単流路とし,2つの 水路によって挟まれており,温水を上向きまたは下向き に流すことで,それぞれ並流型または向流型熱交換を形 成した.このプレートフィン熱交換器において,伝熱性 能,冷媒側圧力損失に及ぼす冷媒流量および温水温度, 流量の影響を評価した.さらに,熱流束分布を把握する ために,水路外壁の温度分布をIRカメラで可視化した. その結果,熱交換温度差とそれによる熱交換量が大きい 場合は,熱交換量に及ぼす温水流動方向の影響は小さい が,冷媒圧力損失は並流型の方が大きかった.並流型の 壁温分布は熱交換器左右で大きな差が見られたことか ら,圧力損失の増加は,冷媒流における不均質な相分布 によって引き起こされたと推定された.
キーワード プレートフィン熱交換器,蒸発熱伝達,加熱媒体流動方向,壁面温度分布

[原著論文]
主題 並列ミニチャンネル内沸騰流の流量分配及び 非定常流動現象に関するシミュレーション
著者名 川裾拓也,黒瀬 築,宮田一司,濱本芳徳, 森 英夫
近年,空気調和システムの性能を向上させるために, 冷媒流路に並列ミニチャンネルを用いた新型熱交換器が 開発されている.しかしながら,並列流路における沸騰 流の場合,各流路に流量が不均一に分配されやすく,さ らに各流路で流量振動が発生することがあるため,熱伝 達性能を正確に予測することが困難である.筆者らは, 流量が不均一になった場合や振動流の場合も含めて熱伝 達性能を予測できるシミュレーションモデルの開発を 行っている.本論文では,本モデルの妥当性を確認する ため,2並列ミニチャンネルにおける流量振動現象に関 して,実験を行ってシミュレーションと比較した.シ ミュレーションは,実験によって得られた振動特性をよ く再現した.さらに,不均一熱負荷場における2並列ミニチャンネル各流路の入口流量と出口クオリティを, シミュレーションによって予測した.
キーワード 並列ミニチャンネル,沸騰流,流量分配,非定常現象, シミュレーション

[原著論文]
主題 Analysis of Optimum Slinky Loop Arrangement for Horizontal Ground Heat Exchanger
著者名 Md. Hasan ALI, Akio MIYARA
This paper presents the numerical investigation of optimum analysis of slinky horizontal ground heat exchanger (GHE) consists of copper tube loops. The loops were placed in a horizontal plane. Copper tube of which inner diameter is 14.6 mm and outer surface is protected with a thin coating of low density polyethylene was selected as GHE material. Aiming to improve the thermal performance of slinky GHE, the uniform distribution of slinky loops were modified by a geometric sequence such that gradually decreasing the loop pitch interval from starting loop to end loop. A comprehensive experimental investigation was carried out to validate the present numerical model. The numerical simulations were carried out with the CFD ANSYS FLUENT software package. In this study, diameter of slinky loop, number of loop and trench length was fixed as 1 m, 7 and 7 m respectively. The thermal performance improvements were investigated on the basis of effect of different loop pitch arrangement of slinky GHE. The comparative temperature distribution around GHE also being discussed to illustrate the heat exchange improvement mechanisms. The operating water flow rate was 4 L/min and entering water temperature was 27 °C. The computational results indicate that the modified arrangement of slinky GHE loops is a promising for the performance improvement. Under the present operating conditions and geometric parameters considered, the modified arrangement of slinky GHE loops offers maximum 22.2% higher heat exchange compared with uniform distribution of loops of slinky GHE within 7 days of continuous operation.
Keywords: Heat exchanger, Thermal analysis, Ground source heat pump, Slinky horizontal ground heat exchanger, Heat exchange rate, Numerical simulation

日本冷凍空調学会論文集Vol.34,No.3 (発行日:2017/9/30)
[原著論文]
主題 室温磁気冷凍における最適冷凍サイクル探索
著者名 新井亮祐,田村 亮,馬場浩司,福田英史, 中込秀樹,沼澤健則
室温磁気冷凍技術は高効率な次世代ノンフロン型空 調冷凍技術として注目されているが,一部の用途を除き 実用に耐えうる冷凍能力の実現には至っていない.本研 究では磁気冷凍機の冷凍能力向上を目指し,Active Magnetic Regenerator に則った冷凍サイクルの改良に 着目した.数値計算から得られる冷凍能力を目的変数と し,山登り法を用いて室温磁気冷凍機における最適な冷 凍サイクルを,冷凍温度幅とAMR 寸法が異なる複数の 場合について探索した.その結果,磁気冷凍機で一般的 に用いられることが多いブレイトンサイクルとエリクソ ンサイクルを複合した冷凍サイクルを用いた場合に,高 い冷凍能力が得られることがわかった.
キーワード
冷凍サイクル,省エネルギー,磁気冷凍,AMR,最 適化

[原著論文]
主題 オボアルブミンがスケトウダラすり身のゲル形成能に及ぼす影響
著者名 武縄俊彦,髙橋希元,岡﨑惠美子,渋谷 緑, 大迫一史
卵白中の主要タンパク質オボアルブミンおよびその誘 導体が,スケトウダラ冷凍すり身から調製した加熱ゲル に及ぼす効果を検討した.各種オボアルブミンを添加し て加熱ゲルを調製した結果,40 ℃加熱では物性が低下, 60 ℃および90 ℃加熱では向上する傾向を示した.また, オボアルブミンがトリプシンに及ぼす影響を確認したと ころ,阻害効果は見られなかった.オボアルブミンは 60 ℃および90 ℃加熱ゲルの物性を向上させたが,すり 身中のプロテアーゼを阻害したためではなく,オボアルブ ミン自体がゲル化に直接寄与した可能性が示唆された.
キーワード
食品添加物,冷凍すり身,オボアルブミン,かまぼこ, ゲル形成能,プロテアーゼ,卵白

[原著論文]
主題 Al2O3-水ナノフルードの円管内層流強制対流 熱伝達に関する数値解析
著者名 赤松正人,小林雄大,蕪木 武,安原 薫, 岩本光生
Al2O3 -水ナノフルードの円管内層流強制対流熱伝達 特性を数値解析により検討した.直径の50 倍の長さを 有する水平円管は,入口から中央部までは断熱し,残り の部分は一定温度で冷却した.円管に流入する高温のナ ノフルードはハーゲン・ポアズイユ流れを想定し,その 熱物性はKhanafer and Vafai によって報告された実験 相関式または従来から使用されている固液分散系の推算 式を用いて算出した.実験相関式および推算式に基づく 熱物性を用いて数値解析されたナノフルードの平均Nu 数と水のそれとの比は共に1 以下を示した.一方,平均 熱伝達率の比は共に1 以上を示した.ナノフルードの平 均熱伝達率の増加特性は,ナノフルードの有効熱伝導率 の増加特性によるものと考えられた.具体的には,実験 相関式に基づいて算出された直径50 nm のAl2O3 粒子を 分散させたナノフルードと水の平均熱伝達率の比は体積 分率が0.03 のとき最大値1.041 をとり,直径100 nm の Al2O3 粒子を分散させたナノフルードと水のそれは体積 分率が0.01 のとき最大値1.016 をとった.一方,推算式 に基づいて算出されたAl2O3 -水ナノフルードと水のそ れは体積分率が0.04 のとき最大値1.071 をとった.
キーワード
熱伝達,対流,数値流体力学,熱物性,ナノフルード

[原著論文]
主題 エアコンポンプダウン時の圧縮機の爆発事故 における潤滑油の影響
著者名 東 朋寛,玉井 翔,斎藤静雄,党 超鋲, 飛原英治
ルームエアコンのポンプダウン時における圧縮機の爆 発事故を想定して,微燃性を持つ低GWP 冷媒の安全性 評価を行った.冷媒,空気,圧縮機に用いられる潤滑油 混合気を断熱圧縮することで,ポンプダウン時の冷媒配 管への空気混入を再現した.微燃性冷媒であるR 1234yf, R 32 と従来の不燃性冷媒であるR 410A,R 22 を用いて 実験し,冷媒の燃焼性が与える影響を比較した.潤滑油 としてPAG オイルとPOE オイルを用い,異なる潤滑油 量や種類を比較することで燃焼への潤滑油の影響を調べ た.本実験範囲において,潤滑油量が多いほど冷媒の燃 焼濃度範囲が広くなり,燃焼時の圧力も大きくなった. また,PAG オイルと比較しPOE オイルを用いた実験で は,冷媒の燃焼範囲が小さくなり,ポンプダウン時の事 故では冷媒だけでなく潤滑油の燃焼特性が大きく影響し ていることが示された.
キーワード
冷媒,ルームエアコン,微燃性冷媒,R 1234yf,R 32, ポンプダウン,潤滑油

[原著論文]
主題 Effect of Pre-treatment at Subzero Temperature on the Grinding Characteristics of Grains
著者名 YounJu LEE, Toru SUZUKI, Manabu WATANABE
The effect of pre-treatment at subzero temperature of grains on the grinding process was investigated in respect of physical properties of particle. The average particle size of ground soybean and black soybean powders decreased as pre-treatment temperature decreased. The theoretical model that described grinding characteristics revealed that the freezing as pre-treatment is effective on grinding process. In all grain samples, the Bond’s constant and work index showed lower values as the pre-treatment temperature decreased. The scanning electron microscopy was used for observation of surface damages on the particles by grinding process. Some cracks were seen on the surface of particles of soybean powder ground with freezing pre-treatment. On the other hand, the particles of black soybean powder showed no fractures. The freezing as pre-treatment of grains prior to grinding process is effective to controlling their grinding characteristics and microstructure damages.
キーワード
Freezing, Frozen food, Grinding, Grains, Particle size, Energy consumption

[原著論文]
主題 ヒートポンプ給湯機用スパイラル管ガスクーラの性能向上
著者名 高山啓輔,畑中謙作,小出 徹,宮川幸大
CO2 ヒートポンプ給湯機のガスクーラの高性能化を目 的として,従来の3 条スパイラル管に対して4 条スパイ ラル管を開発し,スパイラル管形状改良による水側熱伝 達率向上を数値流体解析と実験で検証した結果,以下の 知見を得た.(1)山の高さが低く,面積拡大率が小さい 4 条スパイラル管は,3 条スパイラル管に対して山の部 分を流れる水のよどみが改善され,数値流体解析では3 条に対して伝熱性能が12 %向上し,実験では3 条に対 して伝熱性能が18 %向上した.(2)面積拡大率,山ピッ チと内径の比をパラメータとした数値流体解析結果よ り,新たに熱伝達係数の相関式を作成した.さらに,実 験結果を用いて補正することで,伝熱性能を±20 %の範 囲で整理できる相関式を得た.
キーワード
ヒートポンプ,熱伝達,給湯機,ガスクーラ

[原著論文]
主題 非共沸混合冷媒R 32/R 152aの内面溝付細管内の凝縮特性
著者名 広瀬正尚,地下大輔,井上順広
本研究では,外径4.0 mm,等価直径3.48 mm の水平 内面溝付細管内で,HFC 系冷媒で低GWP 化を図れる非 共沸混合冷媒R 32/R 152a の摩擦圧力損失および凝縮熱 伝達特性を実験的に検証した.実験は,質量速度100 ~ 400 kg/(m2s),飽和温度35 ℃の条件下で行い,同様の 実験条件で内径3.48 mm の平滑管でも検証を行った. 非共沸混合冷媒R 32/R 152a の摩擦圧力損失および凝縮 熱伝達特性を明確にするとともに,細径化および内面溝 による伝熱促進効果について検討した.その結果,溝付 細管の摩擦圧力損失は非共沸性の大きな影響はなく,こ れまでに提案されている純冷媒の予測式で予測できるこ とを示した.また,R 32/R 152a の熱伝達率はR 32 および R 152a に比して最も低い質量速度で大きく低下すること を示した.加えて,内面溝による伝熱促進効果は低湿り 度域で大きく,湿り度の増加にともない減少することを 明らかにした.
キーワード
凝縮熱伝達,圧力損失,溝付管,細径,R 32,R 152a, 非共沸,混合冷媒

[原著論文]
主題 二段圧縮インジェクションサイクルでの圧力脈動によるCOP への影響評価
著者名 関谷禎夫,久保田 淳,野中正之,台坂 恒
二段圧縮インジェクションサイクルの高効率化を目的 として,インジェクション配管内の圧力脈動によるサイ クル性能への影響を実験的に評価した.二段圧縮機では, 二つの圧縮室で吸込む冷媒量と吐出する冷媒量の差異に よって圧力脈動が生じる.従来から,このような圧力脈 動がインジェクション配管出入口の圧力差や流量に影響 を与えると考えられてきたが,圧力脈動がサイクル性能 にどのような影響を与えるのかについては明確にはわ かっていなかった.本論文では,インジェクション配管 の長さに応じてCOP が周期的に変化すること,COP の 変動周期は圧力波の波長に依存することを明らかにした.
キーワード
冷凍サイクル,空気調和機,成績係数,共振,イン ジェクションサイクル

[原著論文]
主題 高効率ウィングベーン圧縮機に関する研究
副題 第1 報:基本構造と力学モデル
著者名 河村雷人,関屋 慎,佐々木辰也,前山英明,高橋真一,杉浦幹一朗
近年,地球温暖化防止の観点から,空調機器において はHFO 冷媒などの低GWP 冷媒への転換が要求されて いる.しかし,これらの冷媒は一般的に低密度であるた め,吸入容積が増加することにより圧縮機が大型化する という課題がある.このため筆者らは,小型化に適した ベーン形圧縮機を対象に,ベーン先端を非接触とする新 たな機構を適用したウィングベーン圧縮機を提案した. 本論文では,提案したウィングベーン圧縮機の構造と動 作原理,および力学モデルによる基本特性の計算解析に ついて検討した.得られた知見を以下に示す.(1)本圧 縮機の最大の特長は,ベーン先端摺動損失を低減できる ことである.(2)トルク特性,ロータ荷重特性は,スラ イディングベーン形と同様にしてベーン枚数と同数の ピークを有しながら変動する.
キーワード
圧縮機,ルームエアコン,低GWP 冷媒,ベーン形圧 縮機,摺動損失,小型化

[原著論文]
主題 高効率ウィングベーン圧縮機に関する研究
副題 第2報:円弧形状ベーンガイドの潤滑特性及び安定性
著者名 佐々木辰也,関屋 慎,河村雷人,前山英明,高橋真一,杉浦幹一朗
近年,地球温暖化係数の低いR 1234yfの空調冷熱機器 への適用が求められている.筆者らは,低密度のR 1234yf を用いて従来のR 410A やR 32 と同等性能,同等サイ ズを確保することを目的に,ウィングベーン圧縮機を考 案した.ウィングベーン圧縮機は,ベーンの上下端に取 付けられた円弧形状のベーンガイドで径方向の荷重を支 持して,ベーン先端を非接触とする構造である.ベーン ガイドとガイド軸受を流体潤滑でしゅう動させること で,従来のベーン型圧縮機で課題であったベーン先端の 摩擦損失を低減できる.新構造であるベーンガイドの設 計指標確立および仕様決定のため,ベーンガイドとガイ ド軸受の潤滑解析とベーンガイドの運動解析を行った.
キーワード
圧縮機,潤滑,低GWP冷媒,部分軸受,流体潤滑解析,ベーン

[原著論文]
主題 高効率ウィングベーン圧縮機に関する研究
副題 第3 報:試作評価結果
著者名 河村雷人,関屋 慎,佐々木辰也,前山英明,高橋真一,杉浦幹一朗
近年,地球温暖化防止の観点から,空調機器において はHFO 冷媒などの低GWP 冷媒への転換が要求されて いる.しかし,これらの冷媒は一般的に低密度であるた め,吸入容積が増加することにより圧縮機が大型化する という課題がある.このため筆者らは,小型化に適した ベーン形圧縮機を対象に,ベーン先端を非接触とする新 たな機構を適用したウィングベーン圧縮機を提案した. 本論文では,提案したウィングベーン圧縮機の試作機を 製作し,信頼性評価と性能評価を実施した.得られた知 見を以下に示す.(1)ベーンの枚数を適正化し,かつ, 新たな吐出方式を適用することで,ツインロータリ形に 対してAPF 比率で100.2 %の性能を実証した.(2)圧縮 室の圧力波形を実測し,吸入から吐出に至る全圧縮過程 における安定動作を確認した.(3)重負荷条件で100 hr 運転後の摺動状態を評価し,大きな摩耗や摺動痕が無い ことを確認した.(4)ベーンがもっとも安定しにくい軽 負荷条件においても,ベーンガイドの円弧角度が60 deg 以上であれば安定して動作することを確認した.
キーワード
圧縮機,ルームエアコン,低GWP 冷媒,ベーン形圧 縮機,摺動損失,小型化

[原著論文]
主題 ロータリ圧縮機の大容量高効率化に関する研究
著者名 平山卓也,青木俊公,志田勝吾,畑山昌宏, ジャフェット フェルディ モナスリ,岡田成浩
冷凍空調システムの省エネ・省資源・軽量化のため, ロータリ圧縮機において,大容量かつ高効率化を実現す る要素技術の検討を行った.そして,シリンダディメン ジョンの最適化,仕切板に吐出ポートを設ける新吐出構 造の開発,軸およびベーン摺動部の設計最適化による摺 動損失低減と信頼性確保の両立,新開発モータとPWM コンバータ採用による効率向上などにより,当社におけ る従来の大容量機種に対し,最大冷凍能力を約1.7 倍に 拡大し,全能力域でCOP 比約6 %向上したモデルを開 発し商品化した.開発モデルは,希土類磁石使用量の削 減,PWR(Power Weight Ratio)の向上にも取り組み, 大容量化による省資源,軽量化の効果も得られた.
キーワード
圧縮機,大容量,高効率,ロータリ,省エネルギー, 省資源,PWR

[原著論文]
主題 冷媒圧縮機用オイル粘性ポンプの流量特性
著者名 澤井 清,土井 学,石井徳章,飯田 登,金城賢治
冷蔵庫などに使用される冷媒圧縮機の性能と信頼性は, 機構部における潤滑状態の影響を受ける.家庭用冷蔵庫 ではレシプロ圧縮機が使用されているが,その潤滑油は 主にオイル粘性ポンプによって機構部に供給される.筆 者らは,シャフト表面にらせん状のオイル溝を設けたオ イル粘性ポンプの流量特性について,理論と実験の両面 から検討した.理論検討では,オイル溝内の流れが十分 に発達した層流であり,かつ一様な2 次元流れであると 仮定すると,オイル粘性ポンプのヘッドとポンプ流量の 関係は1 次関数で表されることがわかった.また,流量 特性評価装置を用いた実験により,オイル溝長さが一定 値以上あれば,流量特性の実験値と理論値の相対誤差は 小さいことがわかった.
キーワード
冷媒圧縮機,潤滑用オイル,オイル粘性ポンプ,流量特性,層流

[原著論文]
主題 レシプロ圧縮機のクランクシャフトに用いる低 摩擦テクスチャリングに関する研究
著者名 永田修平,関山伸哉
冷凍空調機の高効率化を考える上で,キーコンポーネ ントである圧縮機の損失低減は重要課題である.本研究 では,テクスチャリングを用いた摩擦損失低減に着目し, レシプロ圧縮機のクランクシャフトの摺動面に,微細加 工により動圧を発生させる周期構造を設けた場合の軸受 特性を計算により検討するとともに,実機評価を行った. その結果,クランクシャフトの摺動面に微細溝を設ける ことで摩擦係数が減少し,損失低減に効果があることを 計算を用いて明らかにした.また,実機においても摩擦 損失が低減することを示し,冷凍サイクル組込み試験に おいて圧縮機成績係数が向上することを明らかにした.
キーワード
圧縮機,潤滑,テクスチャリング,摩擦,省エネルギー

[原著論文]
主題 ベーン型圧縮機における起動時のトルクとその伝達特性
著者名 福田充宏,林 佑樹,竹内柊之,本澤政明,山田竜介,山村聡史
ベーン型圧縮機はカーエアコン用圧縮機として幅広く 使われているが,電磁クラッチを介してエンジンにより 駆動されるタイプの圧縮機では,起動時に大きなトルク ピークを生じ,この現象はドライブフィーリングの悪化 や騒音の発生につながっている.そのため,起動時のト ルクピークの発生原因や,駆動側に伝達されるトルク挙 動を明らかにする必要がある.本研究では,ベーン型圧 縮機の起動トルク解析モデルを構築し,起動時のトルク 発生およびその伝達特性について検討した.その結果, 起動時の軸トルクのピーク発生原因は,圧縮機の急激な 加速による圧縮機内の過圧縮およびクラッチのトルク伝 達特性によるものであり,起動トルクによって発生する ねじり振動によりエンジン側のトルク変動が発生するこ とが明らかになった.
キーワード
圧縮機,カーエアコン,ベーン型圧縮機,起動トルク,電磁クラッチ

[原著論文]
主題 リニア圧縮機における機械損失測定
著者名 福田充宏,木野恭兵,本澤政明
リニア圧縮機は,ピストンが直接リニアモータ(リニ ア振動アクチュエータ)により往復駆動されるため,機 械損失が小さいことが特徴とされている.しかし,圧縮 機が小型になると相対的に機械損失が増加するため,機 械損失の大きさを正確に把握する必要がある.本研究で は,ピストンの両側を単一ばねで支持するタイプのリニ ア圧縮機において,これまでに報告例がみられない機械 損失の測定を試みた.その結果,下死点付近において, ピストンを支持する巻きばねが縮んだ際に,特定の方向 にピストンが傾いてピストンとシリンダが接触すること がわかった.また,ピストンとシリンダの接触による クーロン摩擦力は粘性摩擦力より小さく,本実験で用い たリニア圧縮機においては,粘性摩擦力が機械損失の要 因となることがわかった.
キーワード
圧縮機,機械損失,計測,リニア圧縮機,リニアモータ

日本冷凍空調学会論文集Vol.34,No.2 (発行日:2017/6/30)
[研究レビュー]
主題 着霜・除霜研究に関する動向(2010~2015年)
著者名 吹場活佳
近年世界中で盛んになりつつある着霜・除霜研究につ いて,2010 ~ 2015 年の間に主要国際誌で発表された論 文を調査し,分類・分析を行うとともにそれぞれの研究 を紹介する.第一著者の所属の国籍に関して,着霜・除 霜の研究については特に中国の存在感が強い.研究対象 としては,霜層の成長を予測するもの,デフロストに関 するものなどに加え,マイクロチャンネルや冷却面表面 のぬれ性に着目した研究が増えている.また,超音波を 用いて霜の成長を抑制する研究や,冷却面表面に微細な 溝を加工することでデフロスト時の排水性能を改善する 研究など,新しいアイデアを用いた試みが報告されてお り,これらについても紹介する.
キーワード 熱交換器,除霜,着霜,レビュー,ヒートポンプ

[原著論文]
主題 フィールドにおけるエアコン室外熱交換器の着霜に関する研究
副題 着霜と室外環境条件および冷媒条件との関係
著者名 田中三郎,三沼卓也,真鍋 優,佐々木直栄
本研究では,実際のフィールド環境下におけるエアコ ン室外熱交換器フィン表面の着霜状態をデジタルマイク ロスコープを用いて観察し,霜の成長と室外の温度およ び湿度や冷媒の温度および圧力との関係について調査し た.エアコン室外熱交換器のフィン表面の着霜から除霜 までの時間帯を分割し,フィン間が霜で満たされるまで の時間と室外温度および湿度や冷媒の温度および圧力と の関係を明らかにし,室外湿度および冷媒温度が霜の成 長時間に大きく影響していることを確認した.
キーワード 着霜,ルームエアコン,熱交換器,フィールド,冷媒

[原著論文]
主題 空調用フィンレスフラットチューブ熱交換器の
着霜下の伝熱性能に関する研究
著者名 大西 元,島本貴裕,多田幸生
低温環境で使用されている空調用熱交換器において は,気相側伝熱面への着霜が熱抵抗の増大や空気流路閉 塞による空気流量の減少を招き,熱交換効率が低下して しまう問題がある.本研究では,冬場のエアコン用室外 機での利用を想定したフィンレスフラットチューブ熱交 換器の着霜特性の把握を目的とする.具体的には,一定 の温度および湿度の空気が連続的に流入する条件下で低 温に保たれたフラットチューブ熱交換器に対し,チュー ブ配列,風速が伝熱性能に及ぼす影響を実験的に評価し た.その結果,配列の違いが着霜下の伝熱特性に与える 影響は小さいことがわかった.また,霜層は時間の経過 に伴い厚くなり,圧力損失は急激に増大し,伝熱量も増 大することがわかった.
キーワード 熱伝達,圧力損失,熱交換器,フラットチューブ, フィンレス,着霜

[原著論文]
主題 着霜時のフィン仕様評価に関する研究
著者名 下村信雄
拡大伝熱面としてのフィンを無着霜と着霜時で伝熱性 能を評価し,得られた着霜伝熱特性を基に,除霜運転に よる熱ロスを考慮した着霜・除霜サイクルでの評価を行 い,着霜時の最良フィン仕様と無着霜時の仕様との差異 を把握した.その結果以下を得た.着霜初期急激に伝熱 性能は低下し,その後,緩やかな減少を示し,フィン間の 閉塞状態で急激な性能低下を示す.また,フィン間閉塞 は単純にフィン間断面積が小さいほど早く,フィン間流 速の急激な低下は一定の霜層間隔(本研究の場合3 mm) で発現する.さらに,着霜時の伝熱性能を着霜・除霜サイ クルでの評価を行うことにより,実効熱量が最大になる 最良フィン仕様が無着霜時の仕様と異なることを示した.
キーワード 着霜,除霜,フィン効率,フィン間閉塞,熱伝達, 着除霜サイクル

[原著論文]
主題 自然対流下における着霜現象を伴う熱伝達に及 ぼす冷却面側因子の影響
著者名 大久保英敏,松下 将,中島 駿,安喰春華
自然対流下における着霜現象を伴う熱伝達を評価する 場合,熱流束の測定精度を向上させることが課題であ り,信頼できる既存測定値が少ないのが現状である.本 研究は,冷却面表面温度が時間とともに変化する条件下 で熱流束を測定することを目的とし,測定装置を製作す るとともに,着霜時の熱移動量を評価する計算方法を提 案した.さらに,熱移動に及ぼす冷却面側因子の影響を 検討した.結果として,着霜を伴う熱伝達に及ぼす前縁 からの距離の影響,冷却面表面のぬれ性の影響,および 冷却面表面微細加工形状の影響を明らかにするととも に,実験値と計算値との対応は比較的良好であることを 示した.
キーワード 熱伝達,物質移動,氷結晶,結晶成長,着霜,熱交換器

[原著論文]
主題 不均質流れを伴うアイススラリーの流動特性
著者名 熊野寛之,北村進太郎,牧野裕樹,小林拓矢
微細な氷結晶と水溶液の混合物であるアイススラリー に対して,浮力などの影響により不均質流れを伴うよう な,低レイノルズ数領域における流動特性について実験 的に検討を行った.レイノルズ数,IPF,流動方向をパラ メータとして,流動挙動の観察,圧力損失の測定を行い, これらの特性を関連づけて整理を行った.その結果,水 平方向への流動では,高IPF,高レイノルズ条件では均 質流れ,IPF およびレイノルズ数が低下するに従って, 不均質浮遊流れ,氷粒子が凝集して間欠的に流動する間 欠流れに遷移していくことがわかった.一方,上昇およ び下降方向への流動では,均質流れ,間欠流れになるこ とがわかった.また,流動状態が変化しても,圧力損失 に顕著な変化は見られず,IPF の増加とともに圧力損失 は増加する傾向を示すことがわかった.
キーワード 蓄熱,圧力損失,アイススラリー,IPF,管摩擦係数, 不均質流れ

[原著論文]
主題 分岐管におけるアイススラリーの流動・分配特性
著者名 牧野裕樹,熊野寛之,浅岡龍徳
本研究では,主管から水平方向に直角に分岐する分岐 円管において,アイススラリーを層流条件で流動させ, 分岐部におけるエネルギー損失と氷粒子の分配量に及ぼ す影響を明らかとすることを目的として,実験的に検討 を行った.流入レイノルズ数および流入IPF をパラ メータとして,分岐部の圧力損失および分岐後のIPF を 計測した.その結果,分岐圧力損失は単相流に比べ,ア イススラリーの方が大幅に大きくなり,流量比の増加と ともに主管圧力損失は減少し,枝管圧力損失は増加する ことがわかった.また,枝管へ分配されるIPF は,常に 流入IPF より小さくなるのに対し,主管へ分配される IPF は常に流入IPF より大きくなり,流量比0.7 付近で 最大となることがわかった.さらに,分岐損失係数を求 め,アイススラリーの特性について整理した.
キーワード 蓄熱,圧力損失,アイススラリー,IPF,分岐損失

[原著論文]
主題 1,1,1,2,2,4,5,5,5-nonafluoro-4(- trifluoromethyl) -3-pentanoneの飽和状態における熱物性値
著者名 田中勝之
中低温熱源を有効利用する高温出力型ヒートポンプ用 の作動流体として期待できる1,1,1,2,2,4,5,5,5-nonafluoro-4- (trifluoromethyl)-3-pentanone の飽和蒸気圧力および飽 和液体密度を抽出法により測定した.測定は,300 ~ 400 K において10 K おきに行った.飽和蒸気圧力は,42 ~ 825 kPa の範囲で11 点を得た.飽和液体密度は,1210 ~ 1598 kg・m-3の範囲で11点を得た.得られた結果を用 いて,300 K ~臨界温度までの相関式を作成した.相関式 は,飽和蒸気圧力の測定結果を最大偏差0.8 kPaで,飽 和液体密度の測定結果を最大偏差0.4 kg・m-3 で再現す る.また,得られた相関式を用いて,標準沸点と偏心係 数をそれぞれ321.95 K,0.465 と決定した.さらに蒸発潜 熱を計算し,飽和状態の熱物性値として表にまとめた.
キーワード 冷媒,熱物性,飽和蒸気圧力,飽和液体密度,ヒー トポンプ

日本冷凍空調学会論文集Vol.34,No.1 (発行日:2017/3/31)
[原著論文]
主題 パッケージエアコンディショナの予熱運転に関 する考察
著者名 吉田康孝,長野克則,戸草健治
蓄熱負荷を持つ空調場の予熱運転において,予熱時間 中の省エネルギー予熱運転が可能であるかを検討した. その結果,以下の結論を得た. (ⅰ)蓄熱負荷が空調機起動からの時間に従って減少す る時,有限時間最適制御を用いることで,PID 制御に 比べて,予熱運転の消費電力量と必要暖房能力を低減 することができる. (ⅱ)5馬力パッケージエアコンを適用した静岡の計算 例では,暖房期間において有限時間最適制御は,PID 制御に比べて,予熱消費電力量,必要暖房能力ともに 42 %低減することができる.
キーワード パッケージエアコン,蓄熱負荷,有限時間最適制御, 予熱運転,暖房期間

[原著論文]
主題 オフセットフィンを内蔵したプレートフィン熱 交換器内気液二相流の流動特性に関する研究
著者名 式地千明,富永悠揮,浅野 等
オフセットフィンを内蔵したプレートフィン熱交換器 内気液二相流の流動特性を明らかにするため,外壁が透 明アクリル樹脂製の単一の模擬流路を製作し,空気― 水二成分系断熱気液二相流実験を行い,流動様式と圧 力損失特性を評価した.流路幅と長さはそれぞれ90 mm と435 mm とし,流路高さが3.2 mm と2.0 mm の2 種 類のアルミニウム製オフセットフィンを使用した.試験 部は鉛直面に配置し,上昇流と下降流とした.液単相流 の実験結果から,管摩擦係数はオフセットフィンの従来 の整理式と同様に整理できることが確認された.一方, 水―空気二相流では二相倍増係数がL-M 法に基づく近 似式から大きく乖離する条件が見られた.この乖離の理 由は,流れの脈動や偏流によるものであり,フィンピッ チが大きい場合に顕著であった.乖離した条件を除け ば,Martinelli パラメータの関数とした相関式で±15 % で予測できた.
キーワード プレートフィン熱交換器,圧力損失,オフセットフィン,空気―水二相流,流動様式

[原著論文]
主題 過冷却を利用した食品凍結時における氷結晶サ イズ拡大の抑制
著者名 大河誠司,森 義樹,小山内泰亮,寳積 勉
凍結による食品組織の損傷を抑制する方法として,過 冷却現象が注目されている.そこで本研究では,凍結実 験と温度場解析を通して冷却条件と氷結晶成長の関係を 明らかにし,氷結晶サイズ拡大を抑制するための冷却条 件を示すことを目的としている.その結果,冷却開始か ら凝固開始時までの温度分布の経時変化を解析により求 め,X 線CT スキャン画像と比較することにより,氷結 晶サイズと凝固時の温度分布の関係について明らかにし た.さらに,前報で示した過冷却解消確率の計算モデル により得られる凝固確率の導入により,様々な大きさや 形状,冷却速度における食品の凝固のタイミングとその 時の温度分布を求めることで,食品の組織破壊を抑えて 凍結させることが期待される冷却条件の検討が可能であ ることを示した.
キーワード 食品凍結,過冷却,冷却条件,氷結晶サイズ,温度 分布

[原著論文]
主題 無着霜ヒートポンプ給湯システムに関する検討
著者名 張 莉,齋川路之
吸着剤塗布熱交換器(DCHE)を用いた無着霜ヒートポ ンプ給湯システムを提案し,その理論および実験検討を 行った.理論検討の結果,従来ヒートポンプ給湯シス テムと比べ,考案システムは1 ~ 3 割程度の効率向上が 期待でき,特に,外気温度が低いほど,その効果は大き い.考案システムの構成要素のうち,DCHE と蒸発器を 中心に実験検討を行い,DCHE の吸着による蒸発器の無 着霜運転時間や,DCHE の脱着温度と脱着消費熱量,考 案システムの省エネ性を明らかにした.さらに,試設計 を行い,考案システムは従来システムと同等サイズにな ることがわかった.
キーワード ヒートポンプ,給湯器,無着霜,吸着,脱着,省エネ ルギー

[原著論文]
主題 Visualization of Two-phase Flow Shock Wave in an Ejector
副題 Velocity Measurement of Droplets in an Ejector
著者名 Haruyuki NISHIJIMA, Kyohei TSUCHII, Yosuke KAWAMURA, Masafumi NAKAGAWA
To meet the growing demands for energy saving, ejectors are increasingly being considered in refrigeration cycles. The two-phase internal flow of these ejectors, which has slower sound velocity than the single gas phase, easily becomes supersonic and generates a shock wave. As this shock wave greatly contributes to the pressure increase in the ejector, elucidating its characteristics is essential for increasing the efficiency of the ejector. In this study, we experimentally visualized the internal flow in a twodimensional ejector using hot-water as coolant and observed the form changes in the two-dimensional shock wave occurring in the nozzle. We also measured the speed changes in the two-phase flow induced by the shock wave. The experimental results showed that, within the area of its formation, the shock wave altered from oblique to near-normal. Furthermore, the temporal changes in luminance distribution were captured in a video and those in the droplet velocity were measured using a luminance cross-correlation method. The droplet velocity behind the shock waves of two-phase flow is found to decease gently. And this phenomenon is characteristic for the shock wave of two-phase flow.
キーワード Multi-phase flow, Refrigeration cycle, Shock waves, Visualization, Ejector

[再録論文]
主題 A study on Growing of Ice Crystal after Breaking of Super Cooling Condition by Numerical Simulations and MRI Measurements
[Original: Trans. JSRAE, Vol.33, No.3, pp.261- 266,(2016)]
著者名 Rika KOBAYASHI, Arlyn Dublin MACASERO, Shingo MATSUKAWA
Numerical simulations and magnetic resonance imaging(MRI)measurements have been carried out for a better understanding of the behavior in ice crystal growing after breaking of super cooling condition in aqueous solutions. The numerical simulations showed that a fast cooling from outside caused ice nucleation from the outer edge and the expansion of bulky ice crystal, on the other hand, a slow cooling showed ice nucleation from inside and expansion of fibrous ice crystal. Temperature measurements and MRI measurements for a phantom test sample with cylindrical double layer structure showed that frisky ice crystals were broken out throughout the outer layer inducing the temperature increase up to 0 degree after the breaking of super cooling condition and the inner layer stayed as a liquid at the lower temperature, and after that, bulk ice crystals were expanded from the surface of the inner part in outer layer causing the increase of temperature of inner part.
キーワード Ice crystallization, Super cooling condition, Numerical simulation, MRI



日本冷凍空調学会論文集Vol.33,No.4 (発行日:2016/12/31)
研究レビュー
主題 アイススラリーの流動と熱伝達特性
著者名 熊野寛之,浅岡龍徳
本論文では,アイススラリーの流動特性および熱伝達 特性に関する研究動向を,2000 年代後半以降の,詳細な 特性の把握を試みた研究や,応用的な研究に関する報告 を中心に,最近の展開について整理した.1990 年代に始 まったアイススラリーの基礎的特性の把握を踏まえ,近 年では,さらに詳細な物理現象の把握に繋がる試みがな されているとともに,汎用の熱交換器を対象としたより 実機に近い研究へと展開されている.これらの成果に基 づき,アイススラリーの特徴について概説した.さら に,アイススラリーを空調用途だけでなく,食品の冷 蔵・冷凍や医療分野などで幅広く活用するために必要な 検討項目など,今後の研究の展望についても言及した. キーワード 蓄熱,混相流,アイススラリー,流動特性,熱伝達 特性

原著論文
主題 SPMによるナノスケールで測定された銅板上で破壊を伴わない氷の付着力の温度依存性
著者名 松本浩二,南谷和行,関根幸輝
冷却固体面への氷の付着は様々な状況で発生し,重大 な事故の原因にもなる.よって,氷の付着現象,特に金 属面への氷の付着力を解明することは非常に重要であ る.従来の金属表面への氷の付着力は,マクロスケール において金属表面-氷界面にせん断力を加えることで測 定されたが,この場合,測定される氷の付着力は氷を破 壊する力を含む見かけの値となってしまう.そこで,筆 者らは破壊を伴わない正確な氷の付着力を測定するため に,走査型プローブ顕微鏡を用いたナノスケールでの氷 の付着力の測定方法を開発した.本研究では,これまで の銅の表面エネルギーの温度依存性の結果とマクロス ケールでの従来の方法によるせん断応力の測定結果との 比較により,本測定方法により得られた銅板表面への破壊 を伴わない氷の付着力の温度依存性の妥当性を検討した. キーワード 氷,凍結,氷の付着力,銅,SPM,ナノスケール, 表面温度,表面エネルギー

原著論文
主題 円管内における相変化エマルションの層流熱伝 達特性
著者名 森本崇志,熊野寛之,富樫憲一
本研究では,高機能蓄熱熱輸送媒体として期待される 相変化エマルションの実用化を念頭におき,円管内流動 時の熱伝達特性についての調査を行った.相変化エマル ションの層流域における熱伝達特性に影響を及ぼす因子と して,壁面熱流束,相変化物質の質量割合および粒子の 状態を選び,それぞれの因子と熱伝達率の関係を明らかに することを目的とした.相変化物質にはn-hexadecane お よびn-octadecane の2 種類を用いた.相変化物質の融 解を伴った場合のヌセルト数は単相流体のヌセルト数経 験式より算出される値に比べ増加し,約1.3 ~ 1.8倍と なった.加えて,相変化物質を20 mass%含有した相変 化エマルションのヌセルト数は数値解析より算出された 値と良好な一致を示した. キーワード 融解,熱伝達,対流,蓄熱,エマルション

原著論文
主題 TBAB 水溶液への電圧印加による過冷却解消 効果に関する研究
著者名 熊野寛之,後藤陽紀
本研究では,常温のTBAB 水溶液に金属電極を用い て電圧印加を行い,電圧印加後の試料を凝固点以下の 所定の温度で冷却することにより,TBAB 水溶液の過冷 却解消に対する電圧印加の影響を明らかとすることを目 的として,実験的に検討を行った.水溶液濃度,電圧を 印加する時間,電極の材質などを変化させ,過冷却解消 確率を求めた.その結果,銅電極を用いた試料では,電 圧を印加していない試料と比較すると,顕著な過冷却解 消効果が見られることがわかった.この効果は,生成す るTBAB 水和物の種類によらず有効であることがわかっ た.また,銅電極のほか,亜鉛,銀を電極とした場合に も,同様な効果が得られることがわかった.一方,アル ミニウム,炭素を電極とした場合には,高い過冷却解消 効果は見られなかった. キーワード 過冷却,凍結,蓄熱,TBAB 水和物,電圧印加,電極 材質

原著論文
主題 未利用エネルギー利用を目的とした吸収式氷ス ラリー生成機に関する研究
副題 臭化リチウム・水・エタノール系吸収式冷凍機 の性能評価
著者名 浅岡龍徳,藤村克己,舩山 蔵
低温の未利用熱の活用を目的とした吸収式氷スラリー 生成機を提案し,その性能評価を行った.この装置で は,冷媒をエタノール水溶液,吸収剤を臭化リチウム・ 水・エタノールの3 成分混合物とする吸収冷凍サイクル により,蒸発器内に氷スラリーを生成する.本報ではま ず,性能評価に必要な物性値であり,過去に報告のない 3 成分混合物の飽和蒸気圧の測定を行い,任意の組成・ 温度における値を近似的に求める推算式を得た.それを 用いて性能評価を行い,この装置の理論吸収冷凍サイク ルのCOP が一般的な吸収式冷凍機と同等であること, ダブルリフト型のサイクルを用いることで製氷温度 -15 ℃以下の用途まで適用可能であることを示した.ま た,必要な入熱温度が比較的低いことから,低温の未利 用熱活用の用途に適することを示した. キーワード 省エネルギー,氷スラリー,冷凍サイクル,吸収冷 凍機,氷蓄熱

原著論文
主題 氷スラリーによる高温平板の急速冷却に関する 研究

著者名 麓 耕二,高田信哉,川南 剛
本研究は,水平に置かれた加熱平板に対して,氷スラ リーの衝突噴流による急速冷却効果を明らかにすること を目的としている.特に実験では,氷スラリーの融解潜 熱の影響を明らかにするため,氷スラリーと同様の流動 様相を有し,相変化が生じない物質を混濁した擬似スラ リーを用いて同様の実験を実施し,結果を比較検討して いる.また,氷スラリーおよび擬似スラリーと比較する ため,固体物質を含まない単相液体による衝突噴流試験 を行っており,噴流量および氷充填率を含む各種実験条 件の下,熱伝達特性の検討を行った.実験結果より,氷 スラリーによる冷却効果が,他の試験流体よりも高いこ とが示された.また,流量と氷充填率を変化させ,平板 表面における氷スラリーの流動様相と熱伝達特性の関係 を明らかにした.特に氷充填率の比較では,氷充填率が 高く,かつ流速が低い場合,氷粒子が加熱平板面に停滞 し堆積することにより,流動は抑制されるが,融解潜熱 の影響により高い冷却効果が得られることがわかった. キーワード 氷スラリー,急速冷却,衝突噴流,熱伝達

原著論文
主題 樹脂製微小矩形管を用いた氷結晶方向制御
著者名 寺岡喜和,小泉公彦,榎本啓士,稗田 登

樹脂製矩形管内の過冷却水中を成長する氷単結晶がど のような結晶方向へ変化するかについて実験を実施し, 矩形管断面の長辺を含む内壁面に対してc 軸が垂直とな る結晶の出現頻度が高くなることを明らかにした.ま た,内壁面垂直方向と氷結晶c 軸のなす角度が15 度未 満となる確率について調べ,ステンレス製曲げ細管と比 較して,その確率が高く,低温度域においても結晶方向 の制御が可能であることを確認した.さらに,矩形管に 90 度のねじり加工を施したツイスト管で実験を行い, 高温度域での確率の低下があるものの,低温度域で大幅 に向上することがわかった.これらの結果から結晶方向 変化について議論し,使用温度に適したツイスト管を製 作することによって,高温度域においても高精度な結晶 方向制御の可能性を示唆した. キーワード 凍結,氷結晶成長,過冷却,結晶方向制御,結晶異方性


原著論文
主題 流動性を有する高温用潜熱蓄熱材の基礎特性
副題 エリスリトールスラリーの流動特性と蓄熱性能

著者名 阿部駿佑,浅岡龍徳,小笠原和貴
太陽熱や未利用熱の集熱・蓄熱に利用可能な,中低温 温度域に適する高性能な熱媒体として,エリスリトール をスラリー状にした高温用潜熱蓄熱材を提案する.実験 では,初期濃度50 ~ 80 wt%のエリスリトールスラリー について,その流動特性と蓄熱性能について検討した. 流動特性について,エリスリトールスラリーは,適切な 固相率の範囲において,高い蓄熱性能をもちつつ流動性を 維持できることを確認した.蓄熱性能について,エリスリ トールスラリーは,純水やエリスリトール水溶液よりもみ かけの比熱が大きく高い蓄熱性能が得られることを確認し た.以上の検討の結果より,エリスリトールスラリーは高 い蓄熱性能をもちつつ液体と同じように配管輸送が可能で あり,熱媒体として有望であることが確認できた. キーワード スラリー,固液相変化,エリスリトール,圧力損失, 比熱,太陽熱,蓄熱


原著論文
主題 水平管内における混合冷媒R 245fa/R 134a の蒸発および凝縮特性

著者名 渡邊和英,地下大輔,井上順広
本研究は,高温ヒートポンプ機器やオーガニックラン キンサイクルを利用したバイナリー発電装置の作動媒体 として期待されている混合冷媒R 245fa/R 134a の水平管 内における蒸発および凝縮特性に関する実験的研究であ る. 混合冷媒R 245fa/R 134a は90/10,80/20,65/35, 55/45 mass%の4 組成を用いて,質量速度100 および 200 kg/(m2s),蒸発実験は平均飽和温度40 ℃,凝縮実 験は平均飽和温度60 ℃となる圧力条件下で実験を行っ た.混合冷媒の蒸発および凝縮熱伝達率は純冷媒に比し て低く,本実験の組成比範囲内においてR 134a の質量 分率の増大とともに低下した.同様に,混合冷媒の摩擦 圧力損失も純冷媒に比して小さく,R 134a の質量分率の 増大とともに減少した.混合冷媒の摩擦圧力損失は純冷 媒に対する従来の予測式で予測可能であった.溝付管内 における混合冷媒の熱伝達率は,純冷媒に比して溝形状 による伝熱促進効果は蒸発流では小さいが,凝縮流では 伝熱促進効果が認められた.また,冷媒組成比および質 量速度が変化した場合でも常に平滑管よりも高い値を示 した. キーワード 蒸発,凝縮,熱伝達,圧力損失,非共沸混合冷媒, R 245fa/R 134a,平滑管,溝付管


原著論文
主題 ハイブリット二重効用吸着冷凍サイクルの静的 解析

著者名 渡辺 史,秋澤 淳
本研究では,吸着熱回収型二重効用サイクルの80 degC 以下の性能を向上するために,圧縮機を組み込むことを 提案する.圧縮機が吸着冷凍サイクルの性能に及ぼす影 響を明らかにすることを目的とし,平衡状態に基づいた 静的解析により,脱着圧力がサイクル性能に及ぼす影響 を算出した.脱着圧力を調整できるため,熱源や冷却水 の外部温度によらず,吸着剤の吸脱着変化量が大きい部 分で稼働することができた.よって,ハイブリット吸着 冷凍サイクルは,効率のよい吸着冷凍サイクルを実現で き性能を向上させる.脱着圧力を調整することで,COP やSCE やエクセルギー効率を向上することができ,熱 源温度60 ~ 80 degC において,COP が約1.2 得られる. キーワード 吸着冷凍機,圧縮機,ハイブリットサイクル,二重 効用,吸着熱回収,静的解析


原著論文
主題 Effects of pH on the Fluorescence Fingerprint of ATP

著者名 Md. Mizanur Rahman, Mario SHIBATA, Naho NAKAZAWA, Tomoaki HAGIWARA, Kazufumi OSAKO, Emiko OKAZAKI
Nowadays, fluorescence spectroscopy has been used as a potential method for nondestructive quality measurement of food materials. Fluorescence fingerprint(FF)of adenosine 5’-triphosphate(ATP)has been observed during the quality assessment of different raw food materials. Although the fluorescence spectra of ATP can be affected by various factors including pH, the details are not clarified yet. Thus, the study attempts to demonstrate the effects of pH(5.0. 8.0)on the FF data of ATP standard solutions(10, 5 and 1μmol/mL for both frozen and non-frozen states). The results of the present study revealed that the strength of the fluorescence signal was influenced by not only the concentration of ATP but also by the pH of samples. The highest fluorescence intensities were observed from the non-frozen ATP solutions at pH 5.0 for each concentration which declined drastically with increasing pH. The majority of frozen ATP samples showed the similar trends of wavelength conditions to get highest fluorescence intensity. Small pH changes affected the intensity and spectral characteristics of FF and it even shifted the peak wavelength conditions. The implementation of this method would be a help to ensure the validity of FF and optimize it as a technique that can be used to verify the effects of pH on many constituents of food. キーワード Frozen food, Instrumentation, Fluorescence fingerprint, Nondestructive, ATP, pH

日本冷凍空調学会論文集Vol.33,No.3 (発行日:2016/9/30)
[原著論文]
主題 冷凍メバチ肉の解凍前温度制御によるpH 維持 効果と解凍肉の品質

著者名 中澤奈穂,福島英登,和田律子,福田 裕, 岡﨑惠美子
解凍収縮(チヂレ)を起こす高鮮度の冷凍魚肉を解凍 する方法として,保管温度を-10 ~-2 ℃付近まで一旦 上昇させ,一定期間経過後に解凍する温度制御方法を筆 者らは検討している.本方法は解凍収縮の緩和ならび に解凍ドリップの抑制に有効であるが,さらに肉pH の 低下を抑制し,高pH を維持する可能性が示唆されてい る.そこで本研究では,高鮮度の冷凍メバチ肉を-10 ℃ 下で0 ~ 10 日間保管してから解凍し,解凍前後のNAD およびATP 含量の変化から,pH を維持する条件を調 べた.その結果,-10 ℃下で2 日間以上保管すると, NAD 含量が0.2μmol/g 未満に減少し,解凍後も高pH (6.5 以上)を維持することが確認された.NAD が減少し たことで嫌気的解糖反応が停止し,ATP 分解および乳酸 生成が抑制されたことがその一因と推測された.なお, 官能評価の結果より,解凍メバチ肉は高pH 維持によっ て刺身としての食感が向上することが示唆された.
キーワード
解凍,凍結食品,メバチ,pH,解凍前保管,NAD, ATP,テクスチャー

[原著論文]
主題 CO2冷媒用フィンチューブ型蒸発器の冷媒温度 分布に関する研究

著者名 渡部道治,石﨑 聡,北村哲也
CO2 ヒートポンプ給湯器の高効率化を目的として伝熱 管を細径化した蒸発器を開発し,圧力損失の抑制のため に冷媒流路を従来の3 パスから6 パスに増やした.これ に伴い,隣接する伝熱管の間のフィンを介した熱伝導と 風速分布が,冷媒パスの温度分布のばらつきと,蒸発器 性能に与える影響を評価した.その結果,両者の影響を 抑制するパス構成によって,冷媒パスの温度分布のばら つきを低減できることを明らかにした.また,冷媒温度 分布が均一化したパス構成は,本稿で定義する過熱率が 0.6 以上の領域で蒸発器出口圧力を維持する特性を有し, 従来仕様に比べてサイクル動作点の蒸発器出口圧力を 40 kPa,過熱率を0.7 ポイント向上できることを示した.
キーワード
ヒートポンプ,給湯器,熱交換器,蒸発器,自然冷媒, 冷媒分配

[原著論文]
主題 Effect of Freezing and Immersion in Agro- Product Homogenate Treatment on the Quality of Octopus(Octopus vulgaris)

著者名 Haruka AOYAMA, Mami NAGAI, Kimie ATSUZAWA, Yasuko KANEKO, Shigeaki UENO
Effects of immersion in agro-products(kiwifruit, Japanese radish, Maitake mushroom and pineapple) homogenates and freezing on the qualities of raw octopus were investigated. Octopus muscle fibers observed under TEM were significantly destroyed after freezing at -20 ℃. Immersion of octopus in homogenates also destroyed octopus muscle fibers. The initial modulus of the octopus samples, as measured with creep meter, decreased significantly after immersion in homogenates of agro-products and freezing. However, the individual initial modulus of the samples did not show significant difference among each other. Taurine and glutamic acid concentrations were measured by HPLC and dabsylation method. The estimated taurine concentrations of the samples in all tested octopus were similar, while the glutamic acid concentrations in selected samples increased after the application of the immersion in agro-product homogenates and freezethawing treatment.
キーワード
Octopus, Softening, Agro-product, Freezing, Taurine, Glutamic acid

[原著論文]
主題 着霜環境下におけるスプリッタープレートによ る円管の伝熱性能向上

著者名 吉村祐亮,吹場活佳,佐藤颯大
着霜環境下における円管の熱伝達性能を向上させるた め,円管下流にスプリッタープレートを付加する手法を 提案し,この手法を評価するための基礎実験を行った. 比較対象となる単円管に加え,プレート長さが円管径の 1.0/2.0 倍のスプリッタープレート付き円管,ならびに同 じ伝熱面積をもつクロスフィンチューブを用意し,伝熱 性能および圧力損失を評価した.-20 ℃および-196 ℃ の冷媒を用いて実験を行った結果,スプリッタープレー ト付き円管は,同じ伝熱面積をもつクロスフィンチュー ブと比較し圧力損失の増加を抑えることが可能であり, 結果として単位圧力損失当たりの熱交換量を増大させる ことがわかった.
キーワード
熱伝達,湿り空気,圧力損失,着霜,円管

[原著論文]
主題 冷媒R 245fa の水平平滑管内蒸発・凝縮流に 関する実験

著者名 渡邊和英,地下大輔,井上順広
本研究では,内径8.32 mm の銅製平滑管を用いて, 冷媒R 245fa の水平平滑管内の蒸発および凝縮流におけ る熱伝達と圧力損失特性に関する実験を行った.蒸発実 験は飽和温度30 ~ 40 ℃,凝縮実験は飽和温度40 およ び60 ℃の条件下で,質量速度50 ~ 300 kg/(m2s)の範 囲で変化させて行った.飽和温度40 ℃において,摩擦 圧力損失は蒸発および凝縮流における差異は小さく,質 量速度およびクオリティの増加,飽和温度の低下とと もに増加した.熱伝達率も同様に質量速度およびクオリ ティの増加,飽和温度の低下に伴い増加するが,管内の 流動様相によって熱伝達特性が大きく異なることを確認 した.また,蒸発・凝縮流の摩擦圧力損失および熱伝達 率の実験値と従来の予測式との比較を行ったところ,冷 媒R 245fa の蒸発・凝縮流の摩擦圧力損失および蒸発熱 伝達率は従来の予測式でよく相関した.しかし,凝縮熱 伝達率は比較したいずれの予測式も強制対流凝縮が支配 的な低飽和温度,高質量速度および高クオリティ域では 過小に予測する傾向を示した.そのため,気液密度比お よび流動様相を考慮し,強制対流凝縮項を修正した冷媒 R 245fa に適用できる新たな予測式を提案した.
キーワード 蒸発,凝縮,R 245fa,圧力損失,熱伝達,高温用, ヒートポンプ,相関式

[原著論文]
主題 複数のMn系磁性材料を用いた室温磁気冷凍機 の作動温度範囲

著者名 岡村哲至,有田照平,大久保達也,裵 相哲, 平野直樹,川南 剛,山下敬一朗,大西孝之, 副島 慧
室温磁気冷凍機で用いる磁性材料の候補として近年, マンガン系化合物が開発された.この材料は単位体積あ たりの磁気エントロピー変化量が大きい一方で,大きな 磁気熱量効果を発揮する温度範囲が比較的狭いという特 性を持つ.本研究では,キュリー点温度の異なる複数の マンガン系材料を配列したときの,磁性材料充填ダクト 両端での温度差(温度スパン)について,実験によって 明らかにした.その結果,複数の材料を配列したほうが, 単一材料を用いた場合より大きな温度スパンが得られ, 磁性材料充填ダクト内の温度分布が,各材料の磁気エ ントロピー変化量が最大となる温度付近に対応している ことがわかった.
キーワード 磁気冷凍,磁気熱量効果,磁性材料,マンガン系化 合物,ノンフロン

[原著論文]
主題 III 型不凍タンパク質の低濃度水溶液中で成長す る氷結晶ベーサル面上のピット形成過程の観察

著者名 小山寿恵,稲田孝明
寒冷地の生物が保有する不凍タンパク質(AFP)は, 水の凍結を抑制する機能を持つことで知られ,最近では その応用技術に期待が集まっている.魚由来のAFP 水 溶液中で単結晶氷を成長させると,氷結晶のベーサル面 上にピラミッド状のピットが形成される.本研究では, 0.5 mg/mL の魚由来III 型AFP 水溶液中でピット形成 過程を観察し,分子的にラフな状態のベーサル面では ピット形成がほとんど見られないなど,5 mg/mL の条件 で確認できなかったいくつかの現象を見出した.AFP 分 子の氷表面への吸着速度や吸着密度がAFP 濃度に依存 するため,濃度によって異なる結果が得られたと考えら れる.
キーワード 氷結晶,凍結,吸着,不凍タンパク質,結晶成長

[原著論文]
主題 数値シミュレーションとMRI 測定による過冷却 解消後の氷結晶の成長に関する考察

著者名 小林りか,Arlyn Dublin MACASERO, 松川真吾
食品の高品位冷凍技術として有望な過冷却現象を利用 した凍結法における氷結晶の生成と成長挙動を理解す るために,数値シミュレーションとMRI(核磁気共鳴イ メージング)測定を行った.過冷却解消後の氷核の発生 および氷結晶の成長についての数値シミュレーションで は,外部温度の低下が速い場合には,試料外縁部に氷核 が発生し,そこから氷結晶がバルク状に成長した.一 方,外部温度の低下が遅い場合には,試料内部にも氷核 が発生し,それらがファイバー状に伸びて試料内部に広 がったのち,外縁部からバルク状の氷結晶が広がった. 2 重円筒状構造を持ったテスト試料のMRI の測定結果 からは,外層の過冷却が解消してファイバー状の氷結晶 が広がると,内層は液体状態のまま徐々に温度が上昇 し,この時,外層の内層に接している部分から氷結晶が バルク状に成長することが観察された.
キーワード 氷結晶,過冷却,数値シミュレーション,MRI

[原著論文]
主題 Effect of Freezing and Thawing on the Quality of Durian(Durio zibethinus Murray) Pulp

著者名 Jackie Lou TAGUBASE, Shigeaki UENO, Yumiko YOSHIE, Tetsuya ARAKI
The effect of freezing, and iced and hot water thawing on the quality of durian pulp was investigated. Mature durian pulp was removed with seeds, vacuum-packed, and frozen at -20 ℃. Thawing in iced water(~0 ℃) and hot water(~90℃)was then applied and the quality of the pulp was assessed based on physicochemical properties(pH, moisture content, soluble solids concentration(SSC), color, sugar content(sucrose, glucose, and fructose), and organic acid conten(t succinic acid and citric acid)), texture and smell profile. Overall, the freezing and thawing conditions, particularly the hot water thawing, posed an effect to the moisture content, color, and smell profile of the durian pulp. A significant increase in the moisture content, as well as a decrease in the color brightness was observed. Furthermore, the hot water-thawing process also induced slight variation to the smell attribute and strength of the entirety of smell. Although the sugar content significantly decreased after freezing and thawing, it was only affected by the freezing process but not by the thawing conditions. No significant variations were noted in the pH, SSC, organic acids and texture of the frozen durian pulp.
キーワード
Freezing, Thawing, Durian, Texture profile analysis, Smell analysis, E-nose

[原著論文]
主題 Effect of Freezing Storage and High Hydrostatic Pressure on Microbial Viability in Liquid Whole Egg-Sucrose Mixture

著者名 Shigeaki UENO, Mayumi HAYASHI, Norihito KIMIZUKA, Toru SHIGEMATSU
Effects of freezing storage and high hydrostatic pressure on microbial(Escherichia coli)viability in liquid whole egg(LWE)-sucrose mixture were investigated. Liquid whole egg with different sucrose concentration (0, 20 or 50 wt%) was pressurized at 400 MPa and then frozen at -20 ℃ for a week. The viable cell count was estimated by monitoring the changes in absorbance values during cultivation at 660 nm with 30-min interval. Survival curves obeyed the first-order inactivation kinetics. The viable cell counts in frozen-thawed LWE-sucrose mixture was lesser than those of unfrozen samples. Effect of sucrose content on high-pressure-mediated inactivation varied at 20 wt%. Thermal analysis of LWE-sucrose mixture showed that the thermal denaturation enthalpy of LWE-sucrose content of 20 wt% was highest in all tested conditions, which also showed protective effect against thermal denaturation. LWE-sucrose(20 wt%)mixture has protective effects on pressure inactivation of E. coli, while LWE-sucrose(50 wt%)showed inactivation effect based on the strong dehydration ability on E. coli and LWE mixture by osmotic pressure.
Liquid whole egg, Sucrose, Freezing, Denaturation, Inactivation

[原著論文]
主題 凍結解凍後保存した大豆におけるGABA 生成 反応の速度論的解析

著者名 上野茂昭,笹尾翔士,荒木徹也,厚沢季美江, 金子康子,猪龍夏子
本研究では,食品加工または前処理として非熱技術を 用いて細胞構造に損傷を与え,大豆内部におけるグルタ ミン酸からγ-アミノ酪酸(GABA)への酵素反応を促 進し,GABA 生成反応の速度論的解析を行うことによ り,GABA 生成の要因を明らかにすることを目的とし た.水に予備浸漬した大豆を種々の凍結雰囲気温度にお いて凍結し解凍後,保存中のGABA 生成挙動を分析し た.凍結雰囲気温度が低いほど組織が破壊され,保存中 にGABA 濃度は増大した.GABA 生成反応は,大豆内 部のpH 低下に伴うみかけのグルタミン酸脱炭酸酵素活 性の上昇により促進されたと考えられた.
キーワード
大豆,凍結,γ-アミノ酪酸,pH,速度論的解析

[原著論文]
主題 咽頭冷却による脳低温療法のための工学的検討
副題 咽頭冷却用カフ内の流れと冷却性能について

著者名 麓 耕二,武田吉正,橋本裕志
本研究は,重症脳損傷患者を対象とした,患者の脳温 を33 ℃程度に保持することにより脳の2 次的損傷を防 ぎ,かつ神経学的予後が良好な治療方法の一つとされて いる脳低温療法のための医療器具開発を目的としてい る.特に脳低温療法のために開発された咽頭冷却用カフ に対し,工学的な見地に基づき諸特性の検討を行った. なお,カフは咽頭の約10 mm 外側に位置する総頸動脈 を冷却でき,脳温を選択的に低下させることができる. 本論文では,カフ内部における灌流液の流動様相および 温度分布を明らかにするため,3 次元熱流動シミュレー ションを実施した.結果より,数値シミュレーションは 実際の流動様相を良く再現できることを確認した.さら にカフ形状の違いによる,カフの局所的な冷却効果を明 らかにした.
キーワード
脳低温療法,咽頭冷却,医療工学,数値シミュレー ション,熱伝達

日本冷凍空調学会論文集Vol.33,No.2 (発行日:2016/6/30)
[原著論文]
主 題:揺動ピストン型ロータリ圧縮機の機械力学解析 

著 者:澤井 清・土井 学・石井徳章・中井啓晶・森本 敬
要 約:
エアコンで多く使用されているローリングピストン型ロータリ圧縮機は,シンプルな構造で高い効率を有する.最近,筆者らは,ベーンとピストンを回り対偶で組み合わせ,ピストンの自転を拘束する揺動ピストン型ロータリ圧縮機を提案している.ピストンの自転を拘束すると,ピストンによる熱輸送が抑制されて吸入冷媒の加熱が減少し,体積効率向上の可能性があると考えられる.本研究では,揺動ピストン型ロータリ圧縮機の機械力学解析を行い,部品間に作用する力,ベーンとピストンの挙動および機械効率を調べた.その結果,揺動ピストン型ロータリ圧縮機はローリングピストン型ロータリ圧縮機と比較し,定格条件において少し高い機械効率を有することが明らかになった.
キーワード:省エネルギー,ロータリ圧縮機,揺動ピストン,機械力学解析,機械効率

[原著論文]
主 題: HCFO-1233zd(E)とHCFO-1233xfの飽和蒸気圧力および飽和液体密度の測定 

著 者:田中勝之 
要 約:
 HCFO-1233zd(E) [tans-1-Chloro-3,3,3-trifluoropropene]とHCFO-1233xf [2-Chloro-3,3,3-trifluoropropene]の飽和蒸気圧力と飽和液体密度を300 K~400 Kにおいて10 K間隔で抽出法により測定した.得られた飽和蒸気圧力の範囲は,HCFO-1233zd(E)について136~1793 kPa,HCFO-1233xfについて167~1981 kPa,また飽和液体密度の範囲は,HCFO-1233zd(E)について942~1258 kg?m-3,HCFO-1233xfについて914~1242 kg?m-3であった.測定不確かさは,温度0.028 K,圧力0.4~3.1 kPa,密度0.9~1.4 kg?m-3と見積もった.測定結果を用いて,飽和蒸気圧力と飽和液体密度の相関式をそれぞれ作成したところ,飽和蒸気圧力測定値の標準偏差はHCFO-1233zd(E)については0.3 kPa以内,HCFO-1233xfについては0.9 kPa以内,また飽和液体密度測定値の標準偏差はHCFO-1233zd(E)については0.4 kg?m-3以内,HCFO-1233xfについては0.2 kg?m-3以内であった.
キーワード:冷媒,熱物性,HCFO-1233zd(E),HCFO-1233xf,飽和蒸気圧力,飽和液体密度,相関式

[原著論文]
主 題: 冷媒R32の水平平滑細径管内の流動様相および 流動沸騰特性に及ぼす管径の影響 

著 者:地下大輔・佐川賢太郎・井上順広 
要 約:
 本研究では,内径2.2および3.5 mmの水平平滑細径管内での冷媒R32の沸騰熱伝達特性,圧力損失特性および流動様相を実験的に明らかにするとともに,それらに及ぼす管径の影響について検討した.熱伝達率の測定は質量速度50~400 kg/(m2s),熱流束5~20 kW/m2の条件で,摩擦圧力損失の測定は質量速度100~400 kg/(m2s),クオリティ0.1~0.9の非加熱条件下で行った.また,非加熱条件下で伝熱管出口での流動様相の観察も行った.流動様相はプラグ流,波状流および環状流が観察され,管径が小さいほど,より広いクオリティでプラグ流が観察された.熱伝達特性に及ぼす管径の影響は高質量速度条件に比べて低質量速度条件で大きいこと,また,細径化にともなう摩擦圧力損失の増加割合は高質量速度条件に比べて低質量速度条件でわずかに大きいことを明らかにした.
キーワード:沸騰,熱伝達,圧力損失,流動様相,細径管,R32

[原著論文]
主 題: LED照明が業務用建物の空調負荷とエネルギー消費に与える影響
-第1報:室内方向への放熱量の計測と空調負荷の推定- 

著 者:宮岡洋一・中山 浩・寺西勇太・吉澤 望・廣田真史 
要 約:
本研究では,近年急速に普及しているLED 照明が業務用建物の空調負荷やエネルギー消費に及ぼす影響を,従来型照明との比較の下に明らかにすることを目的とする.本報では,業務用建物に多く利用される各種の従来型照明とLED照明に対し,室内方向への放熱量を計測するとともに,計測結果を用いてBESTにより建物内の空調負荷を求めた.その結果,LED照明における室内方向への放熱割合は蛍光灯と同程度であり,ダウンライトで消費電力の18 ~ 28 %,直管型照明で約50 %であった.また,家電量販店舗において蛍光灯をLEDに交換することにより,通年冷房負荷は減少する一方で暖房負荷は増加し,年間の冷房負荷と暖房負荷の割合が逆転する可能性のあることを見出した.
キーワード:負荷計算,商業建築,空調設備,省エネルギー,LED照明,BEST

[原著論文]
主 題:室内空間における冷媒漏洩濃度実測と数値解析手法の確立  

著 者:服部敬太・福岡基彦・富岡計次・村田勝則・平良繁治 
要 約:
 HFC32冷媒(以下,R32)は先進国における空調機の現行冷媒R410A(50wt%R32+50wt%R125) に対し,地球温暖化係数が約1/3と環境負荷の少ない冷媒である. しかしながら,R32は微燃性である故,空調機への採用にあたり,各種実験や解析による検証を通じて安全性をしっかりと評価しなければならない. 本報では,ハウジングエアコンのうちリスクが大きいとされる家庭用床置き室内機を対象として,室内機からのR32漏洩時における可燃リスクの評価をする為に,室内空間における冷媒漏洩濃度分布について実機システムを用いた実験的検証とそれに対応するシミュレーション手法の確立した. 本手法により,空調機内の詳細構造を再現せずに漏洩冷媒の機内での希釈効果を考慮すると共に,解析時間を大幅に短縮しつつ,実現象を捉えることが可能となった.
キーワード:数値流体力学, 冷媒, 空気調和機, R32, 漏洩, リスクアセスメント

[原著論文]
主 題:数値流体解析による食品用大型フリーザー庫内冷気流れの解明と設計へのフィードバック   

著 者:益田和徳・佐藤 浩・津幡行一・前野一夫
要 約:
 エアブラスト式の食品用フリーザーは,強制的に冷風を対象物に当てることで食品の急速凍結を可能としているが,産業用の大型フリーザーでは庫内が広くかつ構造が複雑であり,エアフローの制御が非常に難しい.また,最適な庫内構造設計のためにエアフローの制御方法の検証を実機にて行うには膨大な時間と費用が掛かるため,主として経験則に基づいた機械設計がなされている現状がある.そこで本研究では,汎用ソフトを流れ要素実験と相補的に用いた数値流体解析モデルを作成して風の流れを解析し,短時間でフリーザーの最適設計の検証を可能とするCFDモデルを提案した.さらに実機試験機による実測データと比較検証することで,同モデルの妥当性を証明した.
キーワード:数値流体力学, 食品冷凍応用装置,3次元流れ場,シミュレーション,可視化

[原著論文]
主 題: VRF型圧縮式ヒートポンプ空調機の非定常特性解析
-VRF型に固有な非定常特性の解明-  

著 者: 松本邦康・大野慶祐・齋藤 潔
要 約:
 近年,ビルや商業施設等の業務用の施設では,冷媒の相変化を利用した圧縮式ヒートポンプ空調機の導入が進んでいる.特に複数台の室内機を有するVRF(Variable Refrigerant Flow:冷媒流量可変)型空調機(以下VRF型)は,個別に制御が可能なこと等の理由により,大規模の建物等でも導入が進んでいる.しかし,既報1)で述べたように室内機の運転状態変化が他の室内機に影響を与えるため,時々刻々と変化する運転条件に対応した最適な運転条件を判別することが非常に困難となる.また,冷媒流量が大きく変化するために,冷媒の分布がシステムに大きく影響することとなる.そこで,本稿では,数理モデルにより非定常特性が評価可能なモデル構築し,実験による評価試験でモデルの妥当性を検証するとともに,本モデルを用いて非定常特性の評価を行う.室内機の運転台数変化というVRF型空調機に特有な事象について,計算により運転を再現できることを確認し,システムへの影響を評価した.
キーワード:測定,冷凍サイクル,非定常解析,冷媒エンタルピー法,ヒートポンプ

[原著論文]
主 題: 吸着材デシカントロータ内温度分布の測定とその考察  

著 者: 児玉昭雄・辻口拓也・大坂侑吾
要 約:
デシカントロータ内で生じる熱・物質同時移動現象を可視化する一手段として,ロータ内の空気温度分布を測定し,その解釈を試みた.まず,最適回転数では,ロータの空気流れ方向の全域が再生温度に達しているわけではなく,空気流れ方向位置によって温度スイングの温度域と幅が異なることを確認した.また,パージ空気は,吸着空気と同じ方向で供給する必要があり,逆方向すなわち再生空気入口側からパージした場合には,ロータ内部で不都合な熱移動が生じ,パージによる吸着材冷却効果が消失する.さらにS字形の吸着等温線を示す吸着材ロータでは,条件によって再生ゾーンで他と異なる傾向の温度変化が観察される.これは再生空気の相対湿度が,その流れにおいて吸着量が急変する相対湿度域に到達した際に生じる現象として理解される.以上,ロータ内温度分布は水蒸気吸脱着現象を色濃く反映し,デシカントロータ内の熱・物質同時移動現象の可視化手段として有用である.
キーワード:デシカント空調, 吸着,吸着材ロータ, 温度分布, 熱・物質移動

[原著論文]
主 題: 活性炭?高圧冷媒系吸着過程における熱物質移動解析シミュレーション  

著 者: 中本大志朗・宮崎隆彦・Bidut Baran Saha・小山 繁
要 約:
 吸着冷凍機の小型化と性能向上を目指した基礎的研究として,活性炭による高圧冷媒ガスの吸着 速度を実験及びシミュレーションによって解析した.吸着速度は吸着に伴う圧力変化と吸着発熱に よる吸着材温度の上昇の影響を受ける.そこで円筒状吸着器内の熱物質移動解析シミュレーション モデルを構築し,温度,圧力の変化を考慮した吸着速度解析を行った.吸着量が圧力,温度変化の 影響を受ける場合に,本シミュレーションモデルは線形推進力近似のみによる解析モデルよりも実 験値を精度よく再現することができた.また,円筒の半径方向温度分布の影響について考察した結 果,数値解析において半径方向の分割数を減らしても吸着量の体積平均値については実験値の再現 性に大きな影響を与えないことが分かった.
キーワード:吸着,吸着冷凍機,物質移動,活性炭,シミュレーション

[原著論文]
主 題: 低露点環境向けデシカント空調の制御に関する研究
-第2報:数値計算による運転変数のパラメータスタディ-  

著 者: 伊藤 卓・大曲康仁・山口誠一・齋藤 潔
要 約:
 本研究は,低露点環境向けデシカント空調を対象に給気露点温度制御を構築することが目的である.特に省エネルギーを実現できるような制御を検討する.省エネルギーとなる制御を検討するためにはまず, 給気露点温度制御を行わない場合でのシステムの消費エネルギーの特性を調査する必要がある.そこで本論文では,数値シミュレーションによりデシカント空調の運転変数に対するシステムの消費エネルギーを評価する. 運転変数をロータ回転数,再生外気取込量,再生温度,パージ風量,処理外気冷却温度の5つとして,各運転変数と消費エネルギーである冷却熱量と加熱熱量の関係を評価した.その結果, 再生外気取込量と再生温度を下げることでエネルギー消費が抑えられることや,ロータ回転数は給気露点温度には大きく影響するが省エネルギーには寄与しないなど,基本的なシステムの消費エネルギーの特性を把握した.
キーワード:デシカント空調, 除湿, 制御, 省エネルギー, 数値シミュレーション

日本冷凍空調学会論文集Vol.33,No.1 (発行日:2016/3/31)
[研究レビュー]
主題 微燃性冷媒の安全性評価
著者名 藤本 悟・平良 繁治・滝澤 賢二・今村 友彦・党 超鋲

要 約:
地球温暖化の防止のために,冷凍空調用機器に使用されている冷媒の低GWP 化が求め られている.低GWP 冷媒として,R1234yf,R1234ze(E),R32 等の冷媒や,それらの 混合冷媒が候補として考えられているが,これらの冷媒は微燃性を有している.微燃 性冷媒の幅広い実用化のためには,燃焼性に関する基礎データを集積し,安全性の評 価手法を確立することが不可欠である.本レビュー論文は,国内外における温暖化防 止のためのHFC 冷媒規制の動向を解説するとともに,冷凍空調機器の微燃性冷媒を使 用時の安全性評価を行う際に必要な冷媒の着火と消炎に関する基礎燃焼特性および冷 媒漏洩時の着火可能性についての研究成果を解説した.
キーワード:冷媒, 環境負荷, 低GWP 冷媒, 安全性, 冷媒規制, 燃焼特性, 着火特性

[原著論文]
主題 微燃性冷媒使用の家庭用エアコンリスク評価手法と結果
著者名 高市 健二・平良 繁治

2011 年から開始した家庭用エアコンの燃焼性ハザードに対するリスク評価は対象製 品の全てで評価を終了した.本レポートではそのリスクアセスメントの評価手法につ いて概括し,冷媒リークシミュレーション,着火源評価,FTA の評価などを通して, 壁掛けエアコンでの各微燃性冷媒によるリスク評価結果が得られた過程を示す.また 家庭用エアコンでリスクが高い1 対1 接続の床置き形エアコンのFTA 結果から見直し やリスク低減策により着火確率が許容値以下になった経緯も記述する.
キーワード: ルームエアコン, 冷媒, リスクアセスメント, 微燃性冷媒, R32, R1234yf

[原著論文]
主題 微燃性冷媒を用いたビル用マルチエアコンのリスクアセスメント
著者名 矢嶋 龍三郎・木口 行雄・関根 卓・佐々木 俊二・伊藤 俊太郎・山下 浩司・観音 立三

地球温暖化影響の低い微燃性冷媒R32 を使用したビル用マルチエアコンのリスクア セスメントを行い,室内・室外の使用時や保管・据付・修理・廃棄時における,最も 厳しい各設置ケースにおける着火確率を求めた.冷媒の漏洩速度や急速漏洩の発生確 率は,市場で漏洩事故を起こした製品の穴径調査や急速漏洩に伴う顧客やサービスマ ンの申告数から求めた.未対策の事故確率が許容値を超えた場合には,事故の発生確 率を100 年に1 回以下とする安全対策を提案した.これらの安全対策により,着火事 故の発生を許容レベル以下のリスクに低減出来ることを明らかにした.今後は,これ らの安全要件を技術基準としてまとめ,業界として確立していくことが望まれる.
キーワード: 冷媒, 微燃性, ビル用マルチエアコン, R32, リスクアセスメント, 温 暖化, GWP, 安全
[原著論文]
主題 微燃性冷媒を使用したチラーのリスクアセスメント
-許容可能な火災・火傷事故発生確率に抑えるための安全対策-
著者名 上田 憲治

僅かな燃焼性を有する冷媒R1234ze(E),R1234yf,R32 は地球温暖化係数が低く, ヒートポンプへの採用が期待されている.これら冷媒を機械室に設置される水冷チ ラーと屋外に設置される空冷ヒートポンプに使用した場合の火災・火傷等の事故確率 を算定した. 算定には同一構造となる従来機器の漏洩事故統計データを分析し,急速 漏れ,噴出漏れ事故を対象とした.着火源の抽出では同時期に報告された微燃性冷媒 の燃焼特性を用いた.その結果,適切な機械換気を備えることで事故確率は3.89× 10-12 件/台・年となり安全とされる値より十分小さいことが判った.
キーワード: リスク評価, 低GWP 冷媒, 微燃性, チリングユニット, ターボ冷凍機, ヒートポンプ

[原著論文]
主題 Experimental Investigation on Characteristics of Shock Wave Inside Ejectors
著者名 Zuozhou CHEN・Akihiko SHIMIZU・Eiji HIHARA・Chaobin DANG

The positions where shock waves happen inside ejectors vary based on working conditions and dimension of ejectors, and the influence from shock waves occur would finally affect the overall performance of ejectors. In this research Schlieren photography method is adapted to visualize the characteristics of shock waves inside the ejector. Comparison of driving flow characteristics between converging nozzle and de Laval nozzle are conducted in the free-jet condition, and the converging nozzle is applied into the ejector to investigate driving flow expansion inside mixing section. By combining visualization experiment and numerical simulation results, the characteristics of shock waves occur in the driving flow are concluded, and the relationship between driving flow expansion and ejector`s performance is also discussed in this research.
キーワード: Ejector, Visualization, Schlieren photography, CFD, Shock wave

[原著論文]
主題 ゴマサバおよびマサバ筋肉の硬さと凍結時の氷結晶生成との関係
著者名 橋本 加奈子・小林 正三・山下 倫明

凍結貯蔵したゴマサバとマサバの肉質の違いを明らかにするため,両種の筋肉のpH および硬さを測定し,凍結肉における氷結晶生成を観察した.未凍結肉においてpH は両魚種間で差違は認められなかったが,普通筋横断面に対する破断強度はマサバ筋 肉に比べてゴマサバ筋肉の方が低かった.凍結中の普通筋における氷結晶サイズはマ サバ筋肉に比べてゴマサバ筋肉の方が大きかった.凍結貯蔵した筋肉を解凍し,普通 筋横断面に対する破断強度を測定した結果,マサバ筋肉に比べてゴマサバ筋肉の破断 強度は低かった.以上の結果から,凍結中の普通筋の氷結晶サイズは,マサバ筋肉に 比べて,ゴマサバ筋肉の方が大きかったことから,ゴマサバ筋肉の組織構造はマサバ のそれと比べて脆弱であり,凍結貯蔵中に比較的大型の氷結晶が形成されることが推 定された.また,未凍結の鮮魚および凍結解凍後のいずれの筋肉においても,マサバ 筋肉に比べて,ゴマサバ筋肉の方が柔らかかったことから,凍結前の筋肉の組織構造 が凍結解凍後の品質にも影響を及ぼすと考えられた.
キーワード: 氷結晶, 冷凍, 破断強度, ゴマサバ, マサバ

[原著論文]
主題 2成分系混合作動流体 R 245fa + R 134a 系の熱力学的性質の測定
-第1報:気液共存曲線および臨界軌跡の測定-
著者名 東 之弘

オーガニックランキンサイクル用作動媒体として期待されている2成分系混合作動流 体R 245fa +R 134a 系の熱力学的性質である気液共存曲線および臨界点を,90.00, 70.00, 50.00, 30.00, 20.00 mass%R 245fa の5組成について測定した.気液共存曲 線は,密封された圧力容器内の試料のメニスカスの消滅を,直接肉眼で観察すること により決定した.また,メニスカスの消滅位置および臨界タンパク光による着色の様 子を注意深く観察することにより,臨界温度および臨界密度を決定した.さらに決定 した5組成の臨界定数を使って,R 245fa + R 134a 系混合作動流体の臨界定数の組 成依存性を表す臨界軌跡を決定し,その相関式も作成した.
キーワード: 熱物性, 冷媒, R 245fa + R 134a 混合作動流体, 気液共存曲線, 臨界 軌跡

[原著論文]
主題 2成分系混合作動流体 R 245fa + R 134a 系の熱力学的性質の測定
-第2報:PρTx 性質および臨界圧力の測定-
著者名 東 之弘・赤坂 亮

オーガニックランキンサイクル用作動媒体として期待されている2成分系混合作動流 体R 245fa + R 134a 系のPρTx 性質を,90, 70, 50, 30, 20 mass% R 245fa の5組成について, 等容法を利用した測定 装置を使って測定した.また,PρTx 性質の測定においては,メニスカスの消滅の観 察で決定した臨界 密度近傍での等容線に沿った測定も行い,同じくメニスカスの消滅の観察により決定 した臨界温度に 対応する圧力として臨界圧力を決定した.さらに決定した臨界圧力の組成依存性を表 す臨界軌跡の相 関式を作成した.
キーワード: 熱物性,冷媒,R 245fa + R 134a 混合作動流体,PρTx 性質,臨界圧 力

日本冷凍空調学会論文集Vol.32,No.4 (発行日:2015/12/31)
[原著論文]
主題 CMC添加が水の凝固速度に及ぼす影響
著者名 大河誠司・遠藤恵介・寳積 勉

要 約:
保冷材は現在,おもに食品分野などで物質を低温に保持し鮮度を保つ目的で広く用いられている.溶媒は主に水や食塩水であり,その中にゲル化剤を2%ほど加えることにより,溶媒の分離と破損に伴う溶媒の散乱を防ぐことができる一方,凝固速度を抑制してしまう.本研究では数種類のナトリウムCMCを保冷材に添加するゲル化剤として用い,ゲル化剤の濃度,エーテル化度,重合度,動粘性係数などが凝固速度に及ぼす影響について検討した.その結果,重合度が高いほど,またエーテル化度が高いほど同じ動粘性係数でありながら凝固速度が高くなることを明らかにした.また,一般的にはCMCの濃度が高いほど凝固速度は低くなることが知られているが,高エーテル化度のCMCにおいては,低濃度域では凝固速度が純水より高くなる場合のあることを明らかにし,その原因について考察している.
キーワード:水,ゲル化剤,凝固速度,重合度,エーテル化度,動粘性係数,濃度

[原著論文]
主題 中性子ラジオグラフィを用いた除霜時の融解水挙動の評価
著者名 松本亮介・吉村智也・梅川尚嗣・網 健行・伊藤大介・齊藤泰司

要 約: フィンチューブ熱交換器の強制対流下の除霜において,霜および融解水から構成される霜層の水分 分布を中性子ラジオグラフィにより測定した.10 分間の除霜間の5 秒ごとの水分分布を定量評価した. さらに除霜開始時における水分分布との差を求めることで,融解水のフィン面方向の挙動を観察した. 除霜初期の状態は,融解水が霜層厚み方向に浸透する融解進行期間であり,融解水の熱交換器のフィ ンの面方向の移動は観察されなかった.フィン前端部やチューブ周囲の融解が始まると,水分浸透層 が飽和するためフィン面方向に融解水が浸透する様子が観察された.フィンの面方向の融解水移動は 全着霜量の約30%であった.
キーワード: 除霜,フィンチューブ熱交換器,融解水,中性子ラジオグラフィ,着霜量,熱伝達

[原著論文]
主題 異種吸着材を用いた二段式吸着ヒートポンプのサイクル特性評価
著者名 江﨑丈裕,小林敬幸

要 約:
本研究では,吸着ヒートポンプの低温駆動特性に特化 した二段式システムについて検討した.一段目にゼオラ イト吸着材FAM-Z05,二段目に活性炭吸着材を用いる ことで,50 ℃以下の低温廃熱でも15 ℃の冷熱生成可能 なシステムを提案する.吸着材と熱交換器を一体とした 吸着コアを用いた実験検討により,本システムでは,50, 45 ℃の低温廃熱条件において,冷熱出力密度は単段式 システムより高い値が得られ,各過程での吸着速度もほ ぼ等しく冷凍サイクルを構成できることがわかった.ま た,二段式システムのCOP は,廃熱を二回投入するた め,単段式システムより低い.本システムでは吸着コア の投入顕熱量の差が生じるため,得られるCOP は45 ℃ の条件の方が高いことがわかった.
キーワード: 吸着ヒートポンプ,二段式システム,冷熱出力密度, COP

[原著論文]
主題 Effect of Dehydrofreezing on the Quality of Frozen Walleye Pollock Ovaries Used as a Raw Material for Preparing Tarako Products
著者名 Yu UCHIUMI, Toru SUZUKI

要 約:Eating pickled roes of various fishes is a popular custom in Japan. Tarako is a salted or salt-seasoned product prepared from walleye pollock and/or cod ovary, and accounts for the majority of pickled roe products in the Japanese market. These products are prepared using 90 % or more frozen ovaries as the raw material. Freezing damage, however, is a serious issue in tarako production. To prevent freezing damage of roes, cryoprotectants such as sugars are added before freezing. Further, it has recently been demonstrated that dehydrofreezing effectively prevents freezing damage in many foods. In this study, the use of high concentrations of NaCl solution in the dehydrofreezing process during tarako production was assessed. Walleye pollock ovaries were dehydrated using 3 %, 10 %, 17 % and saturated NaCl solution before freezing and storage. The ovaries were evaluated after thawing by drip loss, alteration in color and microscopic observation. The results revealed that the freezing damage decreased with increase in the concentration of NaCl solution.
キーワード: Dehydration, Freezing, Ice crystal, Microscopic observation, NaCl concentration, Tarako, Walleye pollock ovary

[原著論文]
主題 枝管付きダブルループ管型熱音響冷凍機における音場特性と冷却性能
著者名 経田僚昭,多田幸生,飯田祐也

要 約:構造の簡単さや有害冷媒を使用しないことから環境調 和型冷凍機として注目されている熱音響冷凍機を対象 に,流路形状の観点からの高性能化について検討した. 枝管付きループ管型熱音響冷凍機を基礎形状(シングル 型)として,新規にループ管とスタックを追加したダブ ルループ管形状を提案し,FDTD 法を用いた管内音場の 数値計算と実験装置を用いた冷却性能の測定を行った. ループ管を付設すると共鳴周波数が低下するとともに, 管内の速度振幅および位相差の分布が変化する結果,ス タック部の流動損失が減少することがわかった.また, 音波を供給するスピーカーの駆動電力一定の条件で比較 すると,ダブルループ管形状の冷却性能はシングル型を 上回る結果が得られた.
キーワード: 冷凍,冷却,熱音響冷凍機,ダブルループ管,スタック構造,FDTD 法

[原著論文]
主題 熱音響デバイス用熱交換器の性能評価
著者名 小清水孝夫,琵琶哲志

要 約: これまで,熱音響デバイスの設計やその内部現象の 理解に熱音響理論が広く用いられてきた.しかしなが ら,吸放熱を行う熱交換器に対して熱音響理論は適用で きず,その性能に関する理解が進んでいない.本研究で は,熱音響デバイス用熱交換器の吸放熱量に対する性能 を評価するために,熱音響理論を使用しない数値解析を 実施した.熱交換器の性能評価の指標として熱伝達率を 導入し,性能に対する運転周波数の影響を調査した結 果,運転周波数が高いほど熱伝達率の値は大きくなり, 熱交換器としての性能が高くなることがわかった.さら に,運転周波数が高いほど熱交換に寄与する半径方向の 範囲が狭くなり,管壁近傍の作動ガスの温度勾配が大き くなるため,管壁への放熱量が大きくなることがわかった.
キーワード:
熱交換器,熱伝達,熱音響現象,音波,数値解析
[原著論文]
主題 太陽駆動熱音響原動機に適したスタックに関する研究
著者名  松本航平,中村好翔,小林健一

要 約:
熱音響現象とは,熱エネルギーと音響エネルギーが相 互に変換される現象である.熱音響デバイスは外燃機関 の一種であり,熱源を選ばないという特徴がある一方, 機関内への入熱方法が効率を大きく左右する.本研究で は,熱音響原動機のための効率的な入熱方法として,太 陽光のふく射伝熱による入熱に注目した.原動機を石英 ガラスで製作し,パラボラ反射鏡を用いてスタック端面 へ太陽光を集光することで直接加熱を実現している.今 回は,材質と流路形状が異なるスタックを準備し,ス タック両端の温度差やスタック内部の温度勾配,発生音 波の圧力を測定した.ふく射による入熱を行う場合,低 流体抵抗かつ高比表面積を有するスタックが適している.
キーワード: 熱交換器,自然エネルギー利用,熱音響原動機,太陽光,パラボラ反射鏡

[原著論文]
主題 蓄熱器前後のテーパ角度が進行波型熱音響機関の熱効率に及ぼす影響
著者名 千賀麻利子,加瀬竜樹,長谷川真也

要 約:
Ceperley による計算では進行波型熱音響機関の蓄熱 器の熱効率は音響インピーダンスに依存し,音響イン ピーダンスが自由空間中の進行波音場の10 倍程度とな れば,カルノー効率の79 %に達する.その高インピー ダンスを実現する方法には蓄熱器の断面積の局所拡大が あるが,急な断面積変化による渦が生じ,熱効率の低下 にも繋がる.このロスは,断面積拡大箇所にテーパ管を 取り付けることで低減できる可能性がある.本報告で は,蓄熱器断面積を拡大した熱音響機関の蓄熱器前後に テーパ管を取り付け,蓄熱器の熱効率の測定を行った. また,テーパ管の角度を変更させ,テーパ角度が蓄熱器 熱効率に与える影響について測定を行った.その結果, テーパ角度7 °で熱効率は最大となり,カルノー効率の 50.6 %に達した.
キーワード:
ヒートポンプ,熱音響機関,熱効率,進行波
[原著論文]
主題  音波エンジン発電機の試作
著者名 大竹翔太,兵頭弘晃,琵琶哲志

要 約:
熱音響自励振動を応用すると可動部品のない熱機関 「音波エンジン」を実現できる.音波エンジンではこれま で気柱管の固有振動モードを利用することが多かった. 本研究では,気柱管の一端にボイスコイルモーター型の 発電機を接続した音波エンジン発電機の試作を試みた. この装置は,ループ管と枝管共鳴管からなる音波エンジ ンの枝管共鳴管の役割を発電機部分が担うことで,短い 全長と低い周波数を両立させている.エンジン部分と発 電機部分で構成させる合成系の動作条件について実験的 に検討し,動作させた結果について報告する.
キーワード:
熱音響現象,音響インピーダンス,発電機

日本冷凍空調学会論文集Vol.32,No.3 (発行日: 2015/9/30)
[原著論文]
主題 パッケージエアコンディショナの年間効率向上を目指した研究開発
副題 -第2 報:パッケージエアコンディショナの性能実証試験-
著者名 吉田康孝・長野克則・小山昌喜・戸草健治

要 約:
低負荷において効率向上を図った圧縮機,蒸気圧縮方式と自然循環方式で共用出 来る熱交換器,低 負荷での不要な断続運転を防止する適応制御,低外気温度にて高効率運転が可能な自 然循環方式とそ の運転制御を搭載したパッケージエアコンを開発し,効率を計測した.その結果,以 下の結論を得た.
(ⅰ)環境試験室においては,年間効率が現状比1.51 倍であった.
(ⅱ)実使用においては,2012 年の外気温度条件で,札幌にある北海道大学の共 同実験室で現状比1.58 倍,静岡にある日立アプライアンスのCAE ルームでは1.67 倍となった.
(ⅲ)実使用の計測データを平均的な外気温度に修正したところ,東京の標準的 な事務所において現状 比1.55 倍となる事が分かった.
キーワード:パッケージエアコン, 適応制御, 冷媒自然循環システム, 低 負荷, 断続運転, 年間効率, 実使用試験

[原著論文]
主題 小型ラジアルピストン型膨張機の基本特性
著者名 福田充宏・安西史弥・本澤政明・柳沢 正

要 約: 二酸化炭素を冷媒とする冷凍サイクルでは絞り損失が大きいため,膨張弁の代わりに 膨張機を用いて効率改善を図る試みが検討されている.しかし,これまでに研究され ている膨張機は大型のものが多く,自動販売機のような小型のサイクルには適用でき ない.本研究では流量5 kg/h以下の小型のラジアルピストン型膨張機を開発し,その 性能を検討するとともに,性能に大きな影響を及ぼすピストンシールの漏れと摩擦に ついて検討した.その結果,開発したラジアルピストン型膨張機は流量5 kg/h以下の 小流量で運転可能であり,その全効率は約0.45~0.5であった.また,よい性能を得 るためには,まず漏れを抑えた上で摩擦損失を小さくできるピストンシールが必要で あることが分かった.
キーワード: 自然冷媒,膨張装置,膨張機,動力回収,最適設計

[原著論文]
主題 スマートキャンパスの運用による大学の二酸化炭素排出抑制
副題 -第1 報:個別建物の需要特性と外気エンタルピーによる夏期電力需要予測-
著者名 坂内正明・宮崎隆彦

要 約:
本論文では,大学キャンパスにおける電力需要計測値を用いて,大学内の個別建 物の需要特性を分 析し,外気エンタルピーとの相関を用いて夏期の電力需要を予測する手法について検 討した.年間の 需要特性を調べた結果,冷暖房のための電力消費量が増加する夏期と冬期には,外気 エンタルピーと 電力消費量の間に相関関係が見られ,空調による変動成分と電力需要のベース負荷と の区別が可能で あることがわかった.また,理系,文系,医系,事務系の4 種類の建物について電力 需要と外気エン タルピーとの関係を検討した結果,夏期の休暇期等学内の活動者数の変動も電力負荷 に影響を及ぼす ことが明らかとなった.ただし,全学の電力負荷は個別負荷の合成によって特異的な 挙動は緩和され るため,外気エンタルピーのみを用いた単回帰分析でも良好な決定係数が得られた.
キーワード: 教育施設,計測,需要予測,スマートキャンパス,二酸化炭素 排出抑制

[原著論文]
主題 球状活性炭とエタノールを用いた吸着式冷凍システムの性能予測
著者名 今村駿斗・宮崎隆彦・イブラヒムエリシャリカウィビデュットバラン シャハ・小山 繁

要 約:吸着式冷凍システムの性能向上を目指して新規に開発した球状活 性炭は,市販されている活性炭 と比較して大きな吸着量を有していることが確認されている.そこで,球状活性炭を 用いた吸着式冷 凍システムの性能を予測するために,吸着熱交換器の伝熱特性の予測とそれに基づく システムの動 的性能解析を行った.シミュレーションの結果,球状活性炭とエタノールを用いた吸 着式冷凍シス テムは,従来の粉体状活性炭を用いる場合と比較して,最適サイクルタイムにおける COP が12%向 上する可能性があることがわかった.
キーワード: 吸着冷凍機,成績係数,活性炭,エタノール,シミュレーショ ン

[原著論文]
主題 圧縮機運転時のモータ巻線・ステータ間静電容量および比誘電率の推定 著者名 唐一展弋・小笠原悟司・竹本真紹・金森正樹・石田圭一・遠藤隆久

要 約:本論文では,圧縮機運転中におけるモータ巻線とステータの間の 浮遊静電容量と,その時その空間に 存在する冷媒と潤滑油の平均的な比誘電率を推定する方法を提案する.提案法では, 特別な実験装置や センサを用いず,インバータエアコンの接地線に流れる漏れ電流波形から等価回路パ ラメータを同定し, さらに冷媒と潤滑油が封入されていない圧縮機用モータの浮遊静電容量との比較から 比誘電率を求め て,これを実現している.そのため,この方法は圧縮機内部の状態と浮遊静電容量な らびに比誘電率と の関係を検討することにも利用でき,これらの推定値はエアコン用圧縮機駆動システ ムの電磁妨害 (EMI)の検討や設計に有効である.
キーワード: 空調設備,圧縮機,冷媒,潤滑油,静電容量,誘電率,等価回 路

[原著論文]
主題 電圧印加による酢酸ナトリウム水溶液の過冷却解消に及ぼす影響
著者名 寳積 勉・松竹優樹・大河誠司

要 約: 近年,排熱回収システムにおいて,顕熱蓄熱と比較し て単位容量当たりの蓄熱容量が大きな潜熱蓄熱が実用的 なシステムとして注目されている.特に酢酸ナトリウム 水溶液は,過冷却時の安定性や高熱が実用的なシステム として注目されている.特に酢酸ナトリウム水溶液は, 過冷却時の安定性や高い蓄熱量が注目され,建材や給湯 器に利用できる蓄熱材として応用研究がなされている. 一方,過冷却状態の酢酸ナトリウム水溶液は,凝固開 始時期・凝固開始位置の予測が困難であり,実用化への 障害になっている.そこで本研究では,酢酸ナトリウム水溶液の過冷却能動制御に関 して,電圧印加に着目し, 比較的低過冷度の水溶液において電圧印加実験を行っ た.その結果,電圧印加が一定の効果を及ぼしているこ とを定量的に突き止め,かつ電圧印加による凝固現象の メカニズムについて考察した.
キーワード:
酢酸ナトリウム水溶液,過冷却,凝固,電圧印加
[原著論文]
主題 微細流路内沸騰熱伝達の整理式の修正
著者名  榎木光治,宮田一司,森 英夫

要 約:
筆者らは,先に,微細円形流路内の沸騰熱伝達率につ いて,強制対流蒸発と核沸騰の寄与に加え,新たに微細 流路に特有の液膜熱伝導蒸発の寄与を考慮した精度の高 い整理式を提案した.液膜熱伝導蒸発は,主にスラグ流 における気体プラグ周囲の薄液膜を通した熱伝導による 蒸発熱伝達である.しかしながら,近年広く用いられる 比較的高圧の冷媒に対して整理式で用いた核沸騰整理式 の予測精度が良くないこと,また,最近得た水平流の低 流量のデータに対して整理式の予測精度が低いことが明 らかになった.本研究では,この2 点について以前に提 案した整理式を修正し,予測精度の改善を行った.新 たに得られた整理式は,著者らのR 410A のデータのみ ならず,他研究者によるR 32,R 1234yf およびH2O や CO2 を含む広範囲のデータに対して,水平流の低流量の 条件を含め,高い予測精度を示した.
キーワード: 沸騰,蒸発,微細流路,熱伝達,整理式

[原著論文]
主題 HFE-7100の飽和蒸気圧力および飽和液体密度の測定
著者名 田中勝之

要 約:
HFE-7100(C4F9OCH3, methoxy-nonafluorobutane)の 飽和蒸気圧力と飽和液体密度を300 ~ 400 K において 10 K 間隔で抽出法により測定した.得られた飽和蒸気 圧力の範囲は,28 ~ 629 kPa,飽和液体密度の範囲は, 1203 ~ 1516 kg・m-3 であった.測定不確かさは,温度 0.028 K,圧力0.4 kPa,密度0.7 kg・m-3 と見積もった. 測定結果を用いて,飽和蒸気圧力と飽和液体密度の相関 式をそれぞれ作成したところ,飽和蒸気圧力については 標準偏差が0.6 kPa 以内,飽和液体密度については標準 偏差が0.4 kg・m-3 以内で相関できた.
キーワード:
冷媒,熱物性,HFE-7100,飽和蒸気圧力,飽和液体 密度,相関式
[原著論文]
主題  電気自動車が京阪神地域の光化学汚染と気温に及ぼす影響の評価
著者名 安田龍介,小澤卓也,吉田篤正

要 約:
2010 年夏季の大阪平野を中心とした約100 km 四方の 領域を対象に,電気自動車の普及が光化学汚染と気温 に与える影響について,数値モデルを用いた評価を行っ た.現行の全ての乗用車と軽自動車が内燃機関自動車か ら電気自動車に置き換わる場合(EV 化)を想定し,汚染 物質と顕熱の排出量変化を既存の排出インベントリー を基にトップダウン的に推計した.電気自動車に対する 追加電力需要は地域電力会社の発電所から供給されると 仮定し,原子力発電所(Nuclear Power Plant, NPP)が稼 働している場合と全停止している場合について調べた. オゾン汚染レベルと熱環境に対するEV 化の影響をそれ ぞれ閾値超過積算値によって評価した.NPP が稼働して いる場合,EV 化によりNOx,NMVOC,CO2 の排出量 はいずれも減少し,地域内の汚染レベルは低下する.低 下量は領域北側と東側で大きい.この傾向は海風経路と 光化学レジームに関係している.地表近くの暑熱環境に 対する緩和効果は非常に小さい.NPP が停止し火力発電 により不足電力を代替する場合,NOx の地域排出量は大 幅に増加し,NPP 稼働時に比べ汚染レベルは微増する. また,EV 化によりCO2 排出量は増加するものの,汚染 レベルは現況ケースより低下する.
キーワード:
環境負荷,省エネルギー,電気自動車,光化学汚染, ヒートアイランド,数値シミュレーション
[原著論文]
主題 建物からの大気熱負荷量に占める空調排熱と対流顕熱の詳細割合に関する 数値解析
著者名 浅輪貴史

要 約:
数値解析により,実在街区における建物からの空調排 熱と対流顕熱の放出割合を明らかにした.解析システム は,屋外熱収支計算部,建物熱負荷計算部,空調用エ ネルギー計算部,人工排熱計算部により構成されてい る.12 階建の事務所ビルを対象に解析を行った結果,ガ ス焚吸収式冷温水発生機+冷却塔を使用する場合,空調 排熱は潜熱分が大部分であるため,12 時の時点の大気顕 熱負荷量には対流顕熱が約8 割を占めた.熱源機器を空 気熱源ヒートポンプチラーに変更した場合,トータルの 大気顕熱負荷量が2 倍以上に増加し,空調排熱の顕熱 分は対流顕熱の2 倍近くまで増加した.
キーワード:
大気熱負荷,空調排熱,対流顕熱,数値シミュレー ション,熱収支
[原著論文]
主題 実測調査に基づく冷却塔のヒートアイランド対策効果に関する研究
著者名  竹林英樹,笠原万起子,田辺慎吾,髙山 眞

要 約:
冷却塔によるヒートアイランド対策効果について,冷 却塔排熱の潜熱比に注目して,冷房負荷,気象条件との 関係に基づき分析した.冷却塔を導入することで,①空 調負荷が大きい場合(冷却塔定格値795 kW の3/4 以上) には,ファンが稼働して潜熱交換量が増加するが,顕熱 交換量も大きくなった.②空調負荷が中程度の場合(定 格値の3/4 程度)には,ファンが稼働してほぼ潜熱交 換量のみで熱交換が行われた.③空調負荷が小さい場合 (定格値の1/4 ~ 3/4)には,ファンが稼働して潜熱交 換量が増加すると,潜熱比が100 %を超える結果となっ た.空調負荷が小さい時に冷却塔を稼動させ,強制的に ファンも稼動させると,顕熱交換量が負値となり,より 大きなヒートアイランド緩和効果が得られると考察さ れた.
キーワード:
冷却塔,ヒートアイランド,実測調査,潜熱,顕熱
[原著論文]
主題  冷却塔を併用したハイブリッド地中熱ヒートポ ンプシステムの設計・性能予測ツールの開発とその応用
著者名 葛 隆生,長野克則,中村 靖

要 約:
冷却塔を併用したハイブリッド地中熱ヒートポンプシ ステムの設計・性能予測とコミッショニングを行うため に,筆者らはシステムのシミュレーションツールを開発 した.そして,このツールを用いて,北九州市の新しい オフィスビルに導入されたハイブリッド地中熱ヒートポ ンプシステムの性能を予測した.その結果,このシステ ムの冷房期間の期間成績係数(SPF)は5.4 と高い値にな ることがわかった.また,ツールを用いて地中熱交換器 と冷却塔の接続方法や,冷却塔の運転方法を検討した. その結果,冷却塔を地中熱交換器の前に接続した場合 に,システムは最も高いSPF を示すことが確認された. さらに,この場合において,ヒートポンプの一次側入口 温度に応じて冷却塔の運転を行うことにより,更なる SPF の向上が可能であることがわかった。
キーワード: 熱源方式,ヒートポンプ,地中熱利用,設計・性能予 測ツール,冷却塔

[原著論文]
主題 複層地盤を考慮した地中熱交換器のシミュレーションツールの開発とその 応用
著者名  葛 隆生,長野克則,中村 靖

要 約:
本論文では,地下水流動存在下の地中熱交換器周囲温 度を計算する手法を,深度ごとに分割することで複層地 盤に対応させた,地中熱交換器内部熱媒温度の計算モデ ルについて示した.また,計算モデルを応用して,熱応 答試験時に得られる見かけ上の有効熱伝導率から,地 下水流動の存在する層の全層に占める割合や地下水流速 を推測する方法について検討した.結果より,加熱時 間50 h の熱応答試験で得られる見かけ上有効熱伝導率 が4.5 W・m-1・K-1 を超えると,全層に対して25 %以上 の地層で300 m・y-1 以上の地下水流動があることが示唆 された.また,地下水流速が300 m・y-1 以上の地層が 存在する地点での熱応答試験では,経過時間50 h から 150 h における見かけ上有効熱伝導率の上昇率に対する, 地下水流動の存在する層の全層に占める割合は,ほぼ一 致することが確認できた.
キーワード:熱源方式,ヒートポンプ,地中熱利用,地中熱交換 器,複層地盤,地下水流動,熱応答試験,見かけ上有効熱伝導率

[原著論文]
主題 Considerations for Horizontal Ground Heat Exchanger Loops Operation
著者名 Salsuwanda SELAMAT, Akio MIYARA,Keishi KARIYA

要 約:
Horizontal ground heat exchanger in ground source heat pump systems is susceptible to ground surface variations thus affecting its thermal performance. However, this configuration is desirable due to low installation costs as it mainly involved burying pipes in shallow trenches. The optimization of horizontal ground heat exchanger was investigated by simulating a cross section of the ground containing a single unit of slinkyloops. The analysis shows that although trench depth increased by one third in vertical orientation, there was no significant improvement on thermal performance compared to horizontal orientation. Unless land area is limited then it is suggested that loops are installed in vertical orientation. When the material used as ground heat exchanger was copper pipe, heat exchange rate improved by 20 % compared to conventional HDPE pipe. As expected, ground thermal resistance has a limiting effect on thermal performance although the pipe was changed to a material with thermal conductivity of over 800 times higher. The effect of distributing the flow into a group of loops in parallel was also examined. Thermal performance increases as more heat transfer area was provided in parallel loops. The spacing between adjacent loops was studied to elucidate heat interference in parallel loops operation.
キーワード:Heat exchanger, Environment, Ground source heat pump, Ground heat exchangers, Horizontal loops, Thermal performance.

[原著論文]
主題  動的シミュレーションを用いたNH3-H2O系溶 液輸送型吸収冷凍機の輸送配管が制御性および 冷媒,溶液受液器に及ぼす影響
著者名 渡辺 史,田中成吾,榎木光治,秋澤 淳, 武居俊孝

要 約: 溶液輸送型吸収冷凍機(STA)は熱エネルギーを濃度差 に転換し熱輸送するため,常温での熱輸送が可能となる. 本研究では,熱輸送距離10 000 m,冷凍出力3 517 kWの 大規模なSTA を想定し,冷凍負荷が20 %減少した時 の動的挙動をシミュレーションし,輸送配管の仕様が制 御性および冷媒受液器に及ぼす影響の解析を行った.同 条件の制御機構において,冷凍出力の動的挙動は輸送距 離によらずほぼ同じ追従性を有する.強溶液輸送配管内 の冷媒質量の増加は,冷媒受液器の冷媒を用いているた め,配管内容積が大きいほど受液器の冷媒が減少し,溶 液受液器の冷媒が増大する.よって,STA は従来の制 御機構により冷凍出力を制御可能であるが,受液器体積 や冷媒充填量の増加が必要となる.
キーワード: 吸収冷凍機,制御,熱輸送,排熱,動的シミュレー ション,冷媒濃度

[原著論文]
主題 低温熱駆動に向けた3 つの吸着器を用いる二段型吸着冷凍サイクルの実証
著者名 高橋郁也,榎木光治,秋澤 淳,窪川清一,吉江建一,米澤泰夫

要 約: 吸着冷凍機は低温排熱から冷熱を供給できることか ら,化石燃料削減やピーク電力負荷削減に有効である. 吸着冷凍機の導入を促進するためには,本体の小型化と駆動温度のさらなる低温化が 課題となっている.こ れらの課題を解決するために,本研究では,従来の二 段型吸着冷凍サイクルに必要な4 つの反応器を1 つ減 らした,3 ベッド二段型吸着冷凍サイクルに,アルミノ フォスフェート型吸着材FAM(Functional Adsorbent Material)を用いて実験的研究を試みた.その結果, 55 ℃の熱源を利用して冷凍能力0.6 kW 程度を出力する ことができた.このため,3 ベッド二段型吸着冷凍サイ クルと2 種類のFAM のそれぞれの特徴を活かすことで, 提案する二段型吸着冷凍サイクルが有効に動作すること を実証した.
キーワード:吸着冷凍機,冷凍サイクル,冷凍能力,FAM-Z01, FAM-Z05

[原著論文]
主題 熱駆動ケミカルヒートポンプにおける冷凍冷熱生成能力向上の検討
著者名 小倉裕直,三上弘文,鈴木彦司郎

要 約:筆者らは先に,走行中の冷凍車両の排ガス廃熱をケミ カルヒートポンプに化学蓄熱し,アイドリングストップ 時には蓄えられたエネルギーのみでコンテナ庫内に冷熱 を放熱するエネルギーリサイクル利用システムを提案し た.本報では,より低い冷凍温度レベルの長時間保冷を 目標とし,まず蒸発/凝縮器用水溶液としてエチレング リコール水溶液の蒸気圧および反応平衡線の分析を行っ た.さらに,ケミカルヒートポンプモデル装置で,蒸発 /凝縮器内エチレングリコール水溶液濃度を変えて反 応挙動および冷熱生成能力の比較検討を行った.その 結果,硫酸カルシウム系ケミカルヒートポンプ実験で は,蒸発/凝縮器に50 wt%エチレングリコール水溶液 封入により,蓄えられた熱のみで258 K 以下の冷熱を約 110 MJ/m3-CaSO4 以上にて12 時間以上生成可能なこと が示された.
キーワード:冷凍サイクル,凍結装置,化学蓄熱,蒸発,平衡,硫 酸カルシウム,車両

[原著論文]
主題  Importance of Pre-cooling and Pre-heating on Performances of One Bed Adsorption Cooling Systems with Activated Carbonethanol Pair
著者名 
 Fauziah JERAI, Takahiko MIYAZAKI, Bidyut Baran SAHA, Shigeru KOYAMA
要 約:This paper presents theoretical and experimental investigation of an adsorption cooling system to predict the cycle performance of one bed adsorber based on the equilibrium condition. For this particular study, activated carbon-ethanol pair was chosen as the adsorbent-refrigerant pair because of a high adsorption capacity of activated carbons against ethanol. The experiment was conducted on five different precooling and pre-heating settings. The experiments carried out were divided to two sections. First, the preliminary experiments were carried out on two extreme conditions. For the first extreme condition, the adsorption and desorption process were carried out without pre-cooling and pre-heating. Whilst for the second extreme condition, the adsorbent was pre-cooled and pre-heated until the adsorbent reach adsorption and desorption temperature. Then the experiments were carried out with three different time of precooling/ pre-heating time which was selected based on the preliminary experiments. The heat balance were analyzed critically and the optimum cycle time, namely the pre-cooling and pre-heating time for each adsorption and desorption process is discussed by identifying the suitable adsorbent pressure and temperature of the system.

キーワード: Adsorption, Cooling, Activated carbon-ethanol, Optimization

[原著論文]
主題 SrCl2アンミン錯体形成時の熱・物質移動速度
著者名  桑田和輝,小林敬幸,布施卓哉

要 約:
反応系として,SrCl2/NH3 系を用いた高出力・高密度 蓄熱装置の開発を見据え,種々の検討を行った.充填 層型反応器を用いて,熱源温度90 ℃,気化器温度0 ℃ の条件で蓄・放熱サイクルが構築可能であることを実証 し,反応材体積当たり1.1 ~ 1.3 kW/L の放熱速度を得 た.また,放熱時の物質移動速度,化学反応速度,熱移 動速度を個別に評価した結果,放熱速度に対して熱移動 が律速過程であることを明らかにし,実際に層厚みの差 が総括反応速度に及ぼす影響を確認した.そこで,熱移 動抵抗を評価するため,SrCl2 充填層の有効熱伝導度を 測定した結果,λeff = 0.18 W/m/K であった.また,薄層 充填層をモデル化して熱移動解析を行った結果,接触熱 抵抗Rc = 2.3 × 10-3 m2・K/W であると予測した.
キーワード:蓄熱,熱伝導,物質移動,SrCl2,アンミン錯体

[原著論文]
主題 マイクロ波照射下におけるシリカゲルの加熱お よび水蒸気脱着特性
著者名 窪田光宏,島田直樹,松田仁樹,黄宏宇

要 約:
本研究では,マイクロ波加熱を用いた吸着材の再生操 作によるデシカント調湿システムの高効率化を目指して いる.本報では,水蒸気吸着特性の異なる3 種類のシリ カゲルについて,マイクロ波照射下における粒子充填層 の発熱特性および吸着水の脱着挙動に関する実験的基礎 検討を行った.この結果,マイクロ波吸収・発熱特性はシリカゲル種により大きく異 なり,シリカゲルRD が最 も優れたマイクロ波吸収特性,初期脱着速度,平衡脱着 率を示すことが確認された.さらに,シリカゲルRD で は初期吸着量が大きくマイクロ波出力が小さいほど平衡 脱着率が低下すること,マイクロ波出力の増大に伴い平 衡脱着率が向上することが明らかになった.
キーワード: デシカント空調,吸着,マイクロ波,シリカゲル, 水蒸気

日本冷凍空調学会論文集Vol.32,No.2 (発行日:2015/6/30)
[原著論文]
主題 VRF型圧縮式ヒートポンプ空調機の定常特性解析
副題 第1 報:室内機運転台数変更時の数値解析と実験による評価
著者名 松本邦康,大野慶祐,齋藤 潔,岸本哲郎

要 約:
近年,ビルや商業施設等の業務用の施設では,冷媒の 相変化を利用した圧縮式ヒートポンプ空調機の導入が進 んでいる.特に,複数台の室内機を個別に制御可能な空 調方式の普及が進んでいるが,制御が容易である反面, 運転条件が時々刻々と変化し,冷媒流量等が大きく変化 するため,最適な運転条件を判別することが非常に困難 となる.そこで本稿では,数理モデルによりシミュレー ションモデルを構築し,実験による評価試験でモデルの 妥当性を検証するとともに,本モデルを用いて静特性の 解析を実施するものである.特に,室内機の一部が停止 して,同時運転する室内機の運転台数が変化した場合に ついて,実験および解析により,システムの効率等に与 える影響を評価する.
キーワード: 計測,冷凍サイクル,成績係数,定常解析,ヒート ポンプ

[原著論文]
主題 戸建て量販店舗における個別分散空調の省エネ ルギー化に関する検討
副題 室内温度設定変更による省エネルギー効果
著者名 宮岡洋一,渡邉澂雄,中山 浩,廣田真史

要 約:
本研究では,個別分散空調が使用されている2 つの衣 料品量販店舗において,外気温度とエアコンのエネル ギー消費量を1 年間にわたり10 分間隔で測定し,それ らとエアコンの部分負荷性能とを組み合わすことで建物 内の空調負荷を求めた.さらに,既存空調設備の省エネ ルギー化手法として室内温度設定の変更を取り上げ,実 測された省エネルギー効果を,空調負荷モデルとエアコ ンの部分負荷COP 特性を組み合わせて予測される省エ ネルギー効果と比較した.その結果,測定された空調負 荷は外気温度に対し線形的に変化するが,冷・暖房の切り替わる温度帯や通年冷暖房負荷の割合がJIS の空調負 荷モデルとは異なることが明らかになった.また,室内 温度設定の変更による空調の省エネルギー効果について は,実測結果と予測結果が定量的にも良く一致したこと から,空調負荷モデルとエアコンのCOP 特性に基づき, 空調エネルギー消費量の予測が可能であることを示した.
キーワード: 空調設備,商業建築,省エネルギー,現地計測,個 別分散空調,部分負荷性能

[原著論文]
主題 パッケージエアコンディショナの年間効率向上 を目指した研究開発
副題 第1 報:パッケージエアコンディショナの開発
著者名 吉田康孝,長野克則,小山昌喜,戸草健治

要 約:
実負荷に合わせ現状比1.5 倍の年間効率の向上を目指 したパッケージエアコンディショナの開発を実施し,以 下を開発した. (ⅰ)空調負荷率30 ~ 40 %において効率向上を図った 高効率ワイドレンジスクロール圧縮機 (ⅱ)蒸気圧縮方式と冷媒自然循環方式に共用できる 熱交換器 (ⅲ)低負荷での不要な断続運転を防止する適応制御 システム (ⅳ)低外気温度条件にて高効率運転が可能な冷媒自 然循環方式とその運転アルゴリズム また,机上検討にて現状機と開発機の年間効率の比較を 行ったところ,現状比1.52 倍となることがわかった.
キーワード: パッケージエアコン,圧縮機,最適熱交換器,適応 制御,冷媒自然循環方式,低負荷,断続運転,年間 効率

[原著論文]
主題 ナノ・マイクロ粒子懸濁水の凍結と凍結濃縮現象に関する研究
著者名 春木直人,堀部明彦,佐野吉彦

要 約: 機能性流体に使用する蓄熱粒子のナノサイズ化は,凝集や合一化による分離等の欠点を生じる.このため,ナ ノ粒子懸濁液を凝集が生じない低濃度で保存し,使用の 際に任意の濃度まで濃縮する凍結濃縮法に着目した.本 研究では,ナノシリカ粒子懸濁液の粒子径および初期粒 子濃度が凍結・凍結濃縮現象に及ぼす影響について実験 的に検討し,シリカ粒子径の減少によって過冷却度の増 大と低凝固速度での氷結晶構造の拡大を測定,さらにシ リカ粒子の結晶粒界付近の偏在を確認した.一方,界 面前進凍結法によるシリカ粒子懸濁液の凍結濃縮実験よ り,シリカ粒子のナノサイズ化は撹拌条件では凍結濃縮 現象に影響しないが,無撹拌条件では沈殿現象を抑制 し,適切な凝固速度下にて凍結濃縮を行えば,マイクロ 粒子よりも高い凍結濃縮効果を得られる可能性があるこ とを確認した.
キーワード: 凍結濃縮,凍結,ナノシリカ粒子,氷結晶,過冷却, 懸濁液

[原著論文]
主題 Measurement and Prediction of Absorbed Irradiation Energy Distribution in Narrow Channel of Desiccant Rotor 著者名 Jie LI, Yoshinori HAMAMOTO,Hideo MORI

要 約: The objective of this paper is to present experimental results on absorption characteristics of irradiation energy absorbed on the narrow channel wall of a regenerated desiccant rotor. Energy absorption rate was measured in conditions of different channel lengths, incident irradiation angles, temperatures and humidity. The results indicated no influence of ambient temperature and humidity on energy absorption rate, and showed symmetry with respect to the irradiation incident angle. In addition, two prediction models were proposed and examined to evaluate the absorbed energy distribution rate. Both models reproduce the measurements well. Among them, the prediction model based on view factor in radiative heat transfer is simpler than the other. These models are useful to predict desorption rate of water vapor in a desiccant rotor in which concentrated solar irradiance is used to heat and desorb from the rotor wall.
キーワード: Absorption, Adsorption, Irradiation energy, Laser, Narrow channel, Desiccant rotor, Experiment, Prediction

[原著論文]
主題 冷凍マグロ魚肉の解凍過程におけるタンパク質 変性がドリップ流出量に与える影響
著者名 小林りか,田村朝章,渡辺 学,鈴木 徹

要 約:食品冷凍において,凍結,低温貯蔵,解凍といった一 連の冷凍操作すべてが品質劣化に影響を与える.特に, 大部分をタンパク質で構成される魚介類の品質は,タン パク質の冷凍変性に大きく影響を受ける.そのような 中,解凍過程におけるタンパク質変性挙動に関する研究 は,凍結貯蔵過程と比較してあまり着目されてこなかっ た.そこで本研究では,マグロ魚肉の解凍過程でのタン パク質変性の反応速度をCa-ATPase 活性値を指標とし て算出し,解凍中保持温度よる影響を議論した.同時に ドリップ流出量を測定して両者の相関性を検証した.結 果として,10 ℃以下の解凍中保持温度によってタンパク 質変性進行は抑制され,Ca-ATPase 比活性値とドリップ ロスには緩やかな相関関係が確認された.
キーワード: 解凍,タンパク質変性,ドリップロス,マグロ魚肉, Ca-ATPase 比活性値

[原著論文]
主題 水平微細三角形流路内の沸騰熱伝達と気液二相 圧力損失
著者名 宮田一司,中津留拓哉,平田健人,森 英夫,濱本芳徳

要 約:
本研究では,微細冷媒流路を用いた空調機用熱交換器 への応用を目的として,水力直径が0.88 mm の水平微 細三角形流路における冷媒の沸騰熱伝達と気液二相圧力 損失の実験を行い,それらの特性を明らかにした.試 験冷媒にはR 410A を用いた.沸騰熱伝達実験は質量速 度30 ~ 400 kg/(m2・s),熱流束2 ~ 20 kW/m2,クオリ ティ0.05 ~ 1.0 の範囲で行い,気液二相圧力損失実験は 非加熱条件下で質量速度30 ~ 400 kg/(m2・s),クオリ ティ0.05 ~ 0.9 の範囲で行った.冷媒の飽和温度はすべ て10 ℃とした.得られたデータを,既に得ている円形流 路,矩形流路のデータと比較することにより,流路形状 の違いが与える影響を検討した.実験結果の検討には, 以前発表した微細流路内の気液二相流動様相の観察結果 も参照した.
キーワード: 熱伝達,沸騰,圧力損失,気液二相,微細流路,三角形流路,冷媒

[原著論文]
主題 スクロール圧縮機の圧縮室給油量適正化に関す る研究
著者名 近野雅嗣,柳瀬裕一,松永睦憲,中村 聡,太田原 優

要 約:
低速で漏れ損失が増大する中間負荷条件では,圧縮室 への給油不足の場合に効率が著しく低下する.よって, 圧縮室への給油量を適正に制御し,圧縮室のシールに必 要な量の油を供給することが重要となる.そのためには, 油ポケット構造やスリット構造などの圧縮室への給油構 造について,その仕様と給油量の関係を把握することが 必須である.本稿では,要素試験により油ポケット構造 およびスリット構造での給油量を実測し,その給油特性 を明らかにした.また,得られた給油特性をもとに給油 量の予測式を構築した.本予測式により,圧縮室給油量 に対する効率特性に応じて,給油構造とその仕様を選択 し,圧縮室給油量を適正に制御することを可能とした.
キーワード: 圧縮機,パッケージエアコン,スクロール,部分負 荷運転,給油

[原著論文]
主題 東北産水産物からの不凍タンパク質(AFP)の探索
著者名 高橋幸幹,田口尭麻呂,宮城晃太,大瀧恵莉,﨑山高明,萩原知明

要 約:
不凍タンパク質(AFP)は氷結晶の再結晶化を抑制す る機能があり,冷凍食品に添加することで,貯蔵および 流通過程での品質劣化を効果的に抑制可能であると期待 されている.本研究では,AFP を東北産の水産物から探 索することを念頭に置き,東北産の魚類,貝類などの水 産物21 種類を対象に,それらの水抽出液に氷結晶再結 晶化抑制活性が検出されるか調べた.その結果,マダラ およびマコガレイの抽出液に明確な氷結晶再結晶化活性 が見いだされ,東北産のこれらの魚種にAFP が含まれ ている可能性があることがわかった.
キーワード: 氷結晶,凍害保護物質,不凍タンパク質,東北地方, 再結晶化,マダラ,マコガレイ

[原著論文]
主題 東北産マダラ由来不凍タンパク質(AFP)の 特性解析と中間精製
著者名 田口尭麻呂,高橋幸幹,﨑山高明,萩原知明

要 約:
前報において,我々は東北地方で漁獲されたマダラ (Pacific cod Gadus macrocephalus)およびマコガレイ (marbled sole Pseudopleuronectes yokohamae)に不凍 タンパク質(AFP)に含まれている可能性を明らかにし た.本報では,マダラからのAFP の中間精製を効率的 に行うことを目的として,マダラ水抽出液が示す不凍 活性の季節変動,加熱処理がマダラ水抽出液の不凍活性に及ぼす影響,限外濾過による分子量分画がマダラ水抽 出液の不凍活性に及ぼす影響を調べた.2013 年11,12, 3,5 月に岩手県宮古で漁獲された試料の不凍活性を調べ たところ,11 月及び12 月に漁獲された試料に明確な不 凍活性が確認できた一方で,5 月に漁獲された試料は不 凍活性が著しく弱かった.60 ℃,70 ℃,80 ℃で15 分間 加熱処理を施した水抽出液は,未加熱試料と同様の不凍 活性を有していた.限外濾過による分画の結果,分子量 10 000 ~ 30 000 Da の範囲の抽出液分画に強い不凍活性 が確認され,マダラ由来のAFP の分子量はこの分子量 範囲内であることが示唆された.
キーワード: 氷結晶,凍害保護物質,不凍タンパク質,再結晶化, マダラ,中間精製,東北地方

[原著論文]
主題 Freeze Denaturation of Myofibrillar Protein from Unstable Winter Silver Carp(Hypophthalmichthys molitrix)and its Suppression by Sucrose
著者名 Chunhong YUAN, Kefeng YU,Shunsheng Chen, Xichang Wang,Yutaka FUKUDA

要 約:
Freeze denaturation of myofibrillar protein prepared from winter silver carp and its suppression by sucrose when frozen as mince and washed mince was investigated. The ATPase activity and salt-solubility of myofibrillar protein were measured as the indices of myosin denaturation. Sucrose at 8 % was used as cryoprotectant. All samples(with and without sucrose)were frozen at different freezing rates(1, 0.1,0.01 ℃/min)and then stored at -40 ℃, -20 ℃, and -10 ℃ for one month. Ca2+.ATPase activity decreased to near 50 % just by freezing for the washed mince, while the remaining activity for minced meat was about 80%. Addition of sucrose suppressed the Ca2+.ATPase inactivation by freezing and kept near 100 % activity regardless of the freezing rate. Myosin denaturation was determined by the frozen storage temperature, showing high remaining activity for the samples stored at lower temperature (-40 ℃). However, decrease in Ca2+., Mg2+.ATPase activity and salt-solubility upon frozen storage was almost completely suppressed by adding 8 % sucrose, even if the storage temperature was -10℃. These results indicated that sucrose at 8% was sufficiently high for protecting myosin denaturation. It is also suggested that the utilization of surimi is promising for the unstable winter silver carp.
キーワード: Sucrose, Freeze denaturation, Freezing rate, Frozen storage, ATPase activity

[原著論文]
主題 アニサキス亜科L3幼虫の生存に与える凍結の影響
著者名 竹内 萌,松原 久,高橋 匡,小坂善信,     工藤謙一,渡辺 学,鈴木 徹

要 約:
アニサキス亜科線虫L3 幼虫の生存に与える凍結およ び脱水の影響を検討した.冷却速度1℃/min に設定し てDSC(示差走査熱量計)中で-20 ℃まで冷却すると, 死亡および凍結しているものはなかったが,幼虫の温度 を過冷却解消点より1 ℃低いところまで冷却すると生存 しているものはなかった.故にL3 幼虫はその体内でひ とたび氷核が形成されると死亡することが示唆された. L3 幼虫は周囲の培地が凍結後,それ自体も直ちに凍結 した.10 %および23.3 %のNaCl 溶液に浸漬すると,浸 漬24 時間後に生存率が10 %以下まで低下した.マサバ のフィレーではさみこんだ状態もしくはセミドレスの腹 腔内に放置したL3 は,-20 ℃で90 分凍結後に-20 ℃ もしくは-60 ℃で保管すると,保管24 時間後に生存し ているものは見られなかった.
キーワード: 凍結,熱分析,過冷却,凍結濃縮,アニサキス

日本冷凍空調学会論文集Vol.32,No.1 (発行日:2015/3/31)
[原著論文]
CaCl2を用いた液固反応による移動体向け高出力高密度蓄熱システムの放熱基礎特性
丹羽亜衣* 小林敬幸*
* 名古屋大学大学院工学研究科化学・生物工学専攻(464-8603名古屋市千種区不老町1)
要 約:
本研究は,環境汚染物質の排出抑制と燃費向上を目的とし,蓄えた排熱を加熱対象機器に放熱する蓄熱システムの開発である.化学蓄熱で,従来用いられる蒸発器は,移動体用に装置体積を減少させるために省略した.固液反応による溶解熱を用い,溶液を熱伝達媒体として加熱部に送る.CaCl2 (s) / H2O(l)反応に着目し,発熱量,発熱速度及び繰り返し性能を測定した.溶解熱は環境温度下で,飽和溶解度まで質量濃度に比例し上昇した.単位質量当たりの発熱量は高濃度に比べ低濃度がより高いことを示した.飽和溶解度下の出力は, 初期1分間で5.06 kW / L -H2Oを得た.50回の繰り返し反応の結果,化学組成に劣化は見られなかった.
キーワード: 蓄熱,熱物性,省エネ,CaCl2,固液反応

[原著論文]
低湿度空気を用いたゼオライト系水蒸気脱着のマイクロ波照射効果
伊藤聖也* 渡邉藤雄**黄宏宇* 架谷昌信*** 小林敬幸*
* 名古屋大学大学院工学研究科化学・生物工学専攻(464-8603愛知県名古屋市千種区不老町)
** 愛知工業大学総合技術研究所(470-0392愛知県豊田市八草町八千草1247)
*** 愛知工業大学工学部機械学科(470-0392愛知県豊田市八草町八千草1247)
要 約:
デシカント空調機のコンパクト・高出力化を目指した熱・マイクロ波照射ハイブリッド空調機を提案し,本研究では,吸着過程と同湿度空気(Case-1)および吸着過程の湿度より低い湿度空気(Case-2)を用いた条件下のマイクロ波照射加熱による吸着水の脱着促進効果について脱着率,脱着速度を指標とする評価を行った.実験では,ゼオライト充填層による温風温度(50-100℃),マイクロ波強度(30-100W),3種の初期吸着量条件下の脱着過程における充填層内温度,層出入り口の湿度の測定を行った.その結果,以下が示された.1)Case-1,Case-2の熱収支は同一手法で評価できる.2)Case-2の温風系脱着率を基準とするマイクロ波併用系の脱着時間,熱効率は温風系のそれぞれ最小0.3倍および最大1.3倍となり,温風加熱型デシカント空調機に比べて処理空気量の1.25倍の増大,もしくは吸着ローター断面積の0.8倍の低減が可能になることを示唆している.3)マイクロ波の導入は効率的な高度脱着に寄与する.
キーワード: デシカント空調, 熱伝達, 脱着, マイクロ波, ゼオライト, 調湿

[原著論文]
筋肉と筋原線維で異なるミオシンとアクチン凍結変性
今野久仁彦*, 今野敬子*
*北海道大学大学院水産科学研究院(041-8611函館市港町3-1-1)
要 約:
 ヒラメ魚肉およびそこから調製した筋原線維(Mf)(0.1 M NaCl, pH 7.5)を-20°Cで凍結貯蔵した時のミオシン,アクチン変性を比較した.Mf ではCa2+-ATPaseの失活とミオシン単量体の減少は8日程度の期間で同様に進行したが,ミオシン溶解性の低下はほとんど起こらなった.キモトリプシン(Ch)消化で生成するRod量はほとんど低下せず,尾部の変性は少ないと判断した.凍結Mf のCh消化でアクチンが消失したので,アクチンの著しい変性が示された.このアクチン変性速度はCa2+-ATPase失活と同じであった.一方,ヒラメ筋肉を凍結した場合,全ての変性速度は著しく小さくなり,60日貯蔵でも75 %のCa2+-ATPase活性を維持していた.また,Ch消化パターンの解析からアクチン変性はほとんど認められなかった.以上のことより,Mf中のアクチンは魚肉中とは異なり,凍結に対して耐性が低く,容易に変性するので,結果としてミオシンを安定化できず早い変性を引きおこすと結論した.以上の結果から,凍結変性研究においてMfは筋肉のモデルとしては不適であることが示された.
キーワード:ヒラメ, 筋原線維,凍結変性,ミオシン,アクチン

[原著論文]
冷凍サバの品質に及ぼす影響要因の解明
中澤奈穂* 和田律子** 田中竜介*** 岡野利之****
福島英登**   前田俊道**   岡﨑惠美子*  福田 裕*
*東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科(108-8477東京都港区港南4-5-7)
**独立行政法人水産大学校食品科学科食品安全利用学講座(759-6595山口県下関市永田本町2-7-1)
***宮崎大学農学部海洋生物環境学科(889-2192宮崎市学園木花台西1-1)
****一般社団法人海洋水産システム協会(103-0027東京都中央区日本橋3-15-8)
要 約:
 冷凍サバの品質への影響要因を明らかにする目的で,国内数ヶ所で製造された国産冷凍サバと輸入冷凍サバを用いて,品質指標として刺身としてのおいしさ,影響因子として鮮度指標K値,脂質含量,漁獲から凍結までの経過時間および冷凍保管期間などを相互に比較した.その結果,国産および輸入冷凍サバは,原料ごとにK値,脂質含量などが異なり,刺身としてのおいしさもそれぞれ異なった.主成分分析の結果,刺身としての品質には,脂質含量の高さと鮮度の高さが影響しており,脂質含量が高い方が刺身としての品質は高い傾向があった.しかし同じ脂質含量では鮮度が高い方が品質は高かった.また冷凍サバの品質を向上する手段の一つとして,漁獲後,鮮度の高い状態での凍結が考えられた.
キーワード: 凍結食品, 凍結貯蔵, 冷凍サバ, K値, 脂質含量, 官能評価, 凍結前氷蔵期間

[原著論文]
国内流通サバ類の冷凍期間・温度による脂質酸化ならびにアルデヒド類への影響
田 中 竜 介* 中 澤 奈 穂** 前 田 俊 道*** 福 島 英 登*** 和 田 律 子*** 杉 浦 義 正***  松 下 映 夫*** 幡 手 英 雄* 岡 野 利 之**** 福 田   裕**
*宮崎大学農学部海洋生物環境学科(889-2192宮崎市学園木花台西1-1)
**東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科(108-8477東京都港区港南4-5-7)
***独立行政法人水産大学校食品科学科(759-6595山口県下関市永田本町2-7-1)
****一般社団法人海洋水産システム協会(103-0027東京都中央区日本橋3-15-8)
要 約:
 日本国内で流通している冷凍Norway産タイセイヨウサバ (Scomber scombrus Linnaeus)ならびに冷凍国内産マサバ(Scomber japonicus Houttuyn)において,漁獲場所,漁獲時期,冷凍期間,冷凍温度による,脂質酸化ならびにアルデヒド類の影響について検討を行った.脂質含量はNorway産タイセイヨウサバと冬期に日本近海の低緯度で漁獲されたマサバが高かった.過酸化物価,アルデヒド類は冷凍温度が高く,冷凍期間が長くなると増加した.また,ビタミンE含量の減少とともに,アルデヒド類の一つである4-hydroxy-2-hexenal が増加したことから水産物に多く含まれるn-3系不飽和脂肪酸の酸化が示唆された.以上の結果から,国内で流通している冷凍サバ類は様々な脂質酸化レベルの商品が存在し,これらの品質を向上させるためには,冷凍期間・温度に留意する必要があることが示唆された.
キーワード: 脂質酸化,凍結貯蔵,過酸化物価,4-hydroxy-2-hexenal,ビタミンE

[原著論文]
冷凍サバの物性に及ぼす品温および脂肪含有率の影響
松 原  久*   竹 内  萌*   高 橋  匡**   小 坂 善 信* 工 藤 謙 一**   鈴 木 徹***
* 地方独立行政法人青森県産業技術センター食品総合研究所(031-0831青森県八戸市築港街2-10)
** 地方独立行政法人青森県産業技術センター弘前地域研究所(036-8363青森県弘前市大字袋町80)
***東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科食品生産科学部門(108-8477東京都港区港南4-5-7)
要 約:
 ラウンド冷凍サバの品質を維持しつつフィレーにできる最低品温を明らかにするため,冷凍サバの力学的物性に及す品温と脂肪含有率の影響について検討した.  その結果,冷凍サバの侵入応力が,品温,脂肪含有率の低下に伴い高まること,?30?Cと?40?Cの間に侵入応力の変化点があること,脂肪含有率はその侵入応力を抑制する事を明らかにした.
キーワード: 冷凍 固化 力学的物性,脂肪含有率,サバ,品温

[原著論文]
ゴマサバにおける鮮度および凍結温度が氷結晶に及ぼす影響
橋本加奈子*   瀧口明秀**   
* 千葉県水産総合研究センター(295-0024千葉県南房総市千倉町平磯2492)
** 千葉県水産総合研究センター(295-0024千葉県南房総市千倉町平磯2492)
現所属 東京海洋大学(108-8477東京都港区港南4-5-7)
要 約:
 ゴマサバにおける鮮度および凍結温度が凍結貯蔵中の氷結晶生成に及ぼす影響を調べた.漁獲後,冷却貯蔵期間を変えて鮮度の異なる試料を調製し,-20 ℃,-30 ℃および-60 ℃で凍結し,それぞれを凍結と同じ温度で1か月間貯蔵した.筋肉中に生成した氷結晶の大きさは,鮮度の良い試料を凍結したものほど小さく,凍結温度の低いものほど小さかった.氷結晶の大きいものほどドリップ量は多く,両者には正の相関がみられた.また,鮮度の悪い試料は,低い温度で凍結しても氷結晶は比較的大きく,ドリップ量も多いことが判明した.
キーワード: 温度,ゴマサバ,鮮度,凍結,ドリップ,氷結晶

[原著論文]
遠洋まぐろはえ縄で漁獲されたマグロ類の品質評価
‐第1 報:凍結マグロ肉の部位による品質の差異‐
鈴木道子* 木宮隆* 岡﨑惠美子** 平岡芳信***  大村裕治* 上原崇敬**** 横田耕介**** 澤田克彦****  伏島一平**** 今村伸太朗* 
*独立行政法人水産総合研究センター中央水産研究所(236-8648 神奈川県横浜市金沢区福浦2-12-4)
**国立大学法人東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科(108-8477東京都港区港南4-5-7)
***愛媛県産業技術研究所食品産業技術センター(791-1101愛媛県松山市久米窪田町487-2)
****独立行政法人水産総合研究センター開発調査センター(220-6115神奈川県横浜市西区みなとみらい2-3-3クイーンズタワーB 棟15 階)
要約:
マグロ類などの魚体の大きな魚種では,エアーブラスト冷凍機等により魚体の外側から順次凍結され るため,中心部分が凍結されるまで時間を要する.そのため,部位により肉質の違いが生じると考えら れるが,それを調べた報告は極めて少ない.本研究ではメバチを対象とし,魚肉成分の分布と色調(a* 値)との関連を調べた.魚体断面におけるATP の割合は脊椎骨周辺で低かった.ATP の割合が低い部 位では乳酸含量が高かった.a*値はATP の割合および全糖含量と負の相関,乳酸含量およびミオグロビ ン含量と正の相関があった.以上から,魚体中の魚肉成分の分布は大きく異なり,それらが色調の部位 による差異に影響していると考えられた.
キーワード: 凍結,解凍,色調,魚肉成分,マグロ,ミオグロビン

[原著論文]
凍結条件がマガキのエキス成分組成に及ぼす影響
村 田 裕 子*   東 畑  顕*   
*独立行政法人水産総合研究センター中央水産研究所(236-8648横浜市金沢区福浦2-12-4)
要 約:
 マガキ殻付きおよびむき身における凍結条件によるエキス成分組成への影響について調べた.殻付きおよびむき身について液体窒素およびエタノールブラインを用いた急速凍結や冷凍庫内での緩慢凍結を施し,それぞれ-84℃で実験まで保管した.カキは凍結状態で過塩素酸で抽出を行い,抽出したエキス中の遊離アミノ酸,核酸関連化合物,有機酸組成を調べた.その結果,むき身では,有意差はないものの凍結によって有機酸総量と遊離アミノ酸総量が増加する傾向が見られた.一方,殻付きでは,凍結によって,遊離アミノ酸総量と有機酸総量が減少したが,これは,殻の中の水が凍結してむき身の重量に加わったためと考えられた.
キーワード: 凍結, 急速凍結,緩慢凍結,エタノールブライン,液体窒素

[原著論文]
数値計算モデルによる食品凍結時の過冷却解消予測および 過冷却状態維持のための冷却条件の検討
小山内泰亮*  森義樹**  牧内俊樹*  大河誠司*  宝積勉* 
* 東京工業大学大学院理工学研究科機械物理工学専攻(152-8550東京都目黒区大岡山2-12-1)
** 東京工業大学工学部機械科学科(152-8550東京都目黒区大岡山2-12-1)
要 約:
 凍結による食品組織の損傷を抑制するためには氷結晶を均一にする必要がある.この方法の1つとして過冷却現象を利用した凍結が挙げられるが,食品中心部が過冷却状態に達する前に過冷却が自然解消するという問題がある.本稿では試料温度変化を基に,任意の形状の試料中に氷核が発生して試料全体の過冷却が解消されるまでを予測する数値計算モデルについて提案する.また,本モデルを用いて試料形状や冷却速度の違いが凍結開始時の温度分布に及ぼす影響について検討し,マグロ試料の凍結実験結果と合わせて評価した.その結果,試料内に温度分布が付かないように冷却することで,試料表面からの過冷却解消を抑制し,試料中心部の過冷度を高められることが分かった.
キーワード: 食品,過冷却,温度分布,凍結,数値計算モデル

日本冷凍空調学会論文集Vol.31,No.4 (発行日:2014/12/31)
[論  文]
リキッドデシカント空調システム用再生器の熱・物質移動特性
著者名:山口誠一,木村健,大野慶介,齋藤潔,原田政利,宮内彦夫
 本論文は,デシカント空調システムの一種であるリキッドデシカント空調システムを対象としている.リキッドデシカント空調システムでは,液体デシカントである吸収溶液と湿り空気とを直接接触させることで,湿り空気中の水蒸気を吸収分離している.しかし,システムの主要要素である充填層型除湿・再生器の熱・物質移動特性については,いまだ十分に解明されているとは言えない.そこで本研究では,充填層型除湿・再生器における再生過程での基本的な熱物質移動特性について実験的調べることを目的としている.具体的には,通風する空気の全面風速および散布する溶液の質量流束が変化した場合の,出口空気状態や平均総括熱物質移動係数への影響について明らかにする.実験の結果,各パラメータが熱物質移動係数に与える影響について明らかにした.これらの知見は,システムの基本的な設計に関する指針となることが期待できる.
キーワード:デシカント空調システム,熱移動,物質移動,リキッドデシカント,塩化リチウム水溶液

[論  文]
水平微細流路における気液二相流の流動様式とスラグ流における液膜厚さ
著者名:吉 永 祐 貴,党 超 鋲, 飛 原 英 治
本研究では,微細流路を流れる気液二相流の流動様式及びスラグ流における気泡速度と液膜厚さを, レーザー共焦点変位計と高速度カメラを用いて実験的に観察を行った.液相の物性や流路の寸法によ る影響を包括的に評価するため,内径が0.5 mm, 1.0 mm, 2.0 mm のガラス円管と,液相には水, エタノ ール, FC72, 二種類のシリコンオイルKF-96L-0.65cs とKF-96L-2cs を用いた.微細流路における流動様 式は,管径が大きくなり,液相の表面張力が小さくなるという影響により,微細流路を用いた既存研 究で提案されている流動様式線図と異なる一方,粘性による影響は小さいことが確認された.また, 気泡速度と液膜厚さに関しては,実験結果と既存研究における相関式がおおむね一致したが,特に液 相の表面張力や粘性が低い条件では,既存の相関式よりも実験値が低い値を示した.また管径が大き くなるに従って,その誤差も大きくなることが確認された.
キーワード: 流動様式,微細流路, スラグ流, 気泡速度,液膜厚さ

[論  文]
スクリュー圧縮機の吐出損失動力の低減
著者名:千葉 紘太郎,土屋 豪
給油式スクリュー型空気圧縮機の吐出完了直前における圧力の急上昇現象を指圧の測定により確認 した.この現象の原因は,吐出完了直前における吐出ポートの開口面積の急激な縮小にあると考え, 吐出空間と吸込圧力にある作動空間とを隔てている吐出ポート中央凸部を短縮した.その結果,内部 漏洩による損失動力が増大するものの,吐出損失動力が減少した.これにより,内部漏洩と圧力急上 昇現象に対する抑制効果が総合的に大きくなる吐出ポート形状の存在を明らかにした.
キーワード: 圧縮機,圧力損失,吐出ポート,指圧線図,過圧縮

[論  文]
R 245faの飽和蒸気圧およびpρT性質
著者名:丸 子 晃 平, 田 中 勝 之, 田 中 誠
R 245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン)の飽和蒸気圧および液相,気相におけるpρT性質について,金属ベローズ法を用いて測定した.測定は310 Kから410 Kまでの温度範囲で行った.液相においては圧力範囲502から5002 kPa,密度範囲910から1323 kg・m-3において29点のデータを得た.気相においては圧力範囲209から2632 kPa,密度範囲12から184kg・m-3において44点のデータを得た.これより飽和蒸気圧も決定した.測定結果に基づき,液相においてはSato型状態方程式,気相においてはビリアル型状態方程式の各係数を決定した.その結果,Sato型状態方程式は相対標準偏差0.07 %,ビリアル型状態方程式は0.36 %で測定結果を再現した.また作成した状態方程式に飽和蒸気圧を代入し飽和液密度および飽和蒸気密度を決定した.さらに測定値を既存の状態方程式と比較した.
キーワード: 冷媒, 熱物性, 飽和蒸気圧, pρT性質, R 245fa

[論  文]
冷媒R245fa の水平加工管上での凝縮様相および凝縮熱伝達
著者名:松 野 友 暢, 野 口 照 貴, 地 下 大 輔, 井 上 順 広, 高 橋 宏 行
本研究では,水平な2 次元ローフィン付管および3 次元微細溝付管上でR245fa の凝縮実験を行い, 流動様相,液充満角度および凝縮熱伝達について検証した.試験伝熱管には外径19 mm の7 本の2 次 元ローフィン付管および3 本の3 次元微細溝付管を用いた.本実験では液滴モード,液滴・液柱共存 モードおよび液柱モードの3 つの流動様相が観察された.流動様相が遷移する膜レイノルズ数はロー フィン付管と微細溝付管とでは異なり,微細溝付管の方がローフィン付管に比してより小さい膜レイ ノルズ数で液滴モードから液滴・液柱共存モードへと遷移した.また,液充満角度および凝縮熱伝達 特性に及ぼすフィンピッチ,フィン高さおよびフィン形状の影響について検討した.
キーワード: 凝縮,伝熱,流動様相,ローフィン付管,微細溝付管,液柱モード,R245fa

[論  文]
A Three-Stage Adsorption Cycle with Three Silica-Gel Beds
著者名:I Gusti Agung Bagus WIRAJATI, Muhammad UMAIR,Koji ENOKI, Yuki UEDA, Atsushi AKISAWA
This paper proposes a three-bed three-stage adsorption cycle with a new operational strategy. The cycle consists of three adsorber/desorber heat exchangers, one evaporator, and one condenser. The two beds on the low-pressure side operate in a re-heat cycle, and another bed on the high-pressure side operates in a conventional cycle. The objectives of the current study were to evaluate the cycle at a low heat source temperature such that it can be driven by solar or waste heat and to reduce the number of heat exchangers from six beds to three beds. A simulation model was developed, and the system behavior and its performance were predicted. The performance of the proposed cycle was compared with that of a conventional six-bed three-stage adsorption cycle. The simulation results showed that the proposed cycle with the new operational strategy could operate at low heat source temperature i.e., 45 °C, and offers approximately five times higher performance in terms of SCP than the conventional cycle. Consequently, the proposed cycle is effective for use of a low-grade heat source, even with three beds.
Keywords: Adsorption cycle, Three-bed three-stage cycle, Silica gel, water, COP, SCP

[論  文]
太陽熱一重二重効用吸収式冷凍機の設計手法の確立
著者名:八 橋 元,齋 藤 潔,鄭 宗 秀
太陽熱一重二重効用吸収式冷凍機は太陽熱のバックアップとして量産型の高効率二重効用吸収式冷 凍機を備えているため,太陽熱利用空調システムとして普及が進みつつある.本論文では当該冷凍機 の主構成要素の熱・物質収支に関する解析モデルを構築して,太陽熱を利用して効率を高めることを 目的とした設計の最適手法の確立を試みた.従来,設計に際してKA 値を変えることは熱交換要素な どの製作が必要となるため,制約があった.本手法では与えられた仕様に対し,KA 値の特性を得て, 最適のCOP を得る解析を行った.本手法を用いることにより,多くの試作製作を省くことができ,設 計スピードの向上が期待できる.さらに溶液のフローパターンが異なる三種類の二重効用サイクルの 評価を行った結果,リバースフローをベースとしたサイクルが高い効率を得ることが判った.
キーワード: 吸収式冷凍機,成績係数,太陽熱, 解析モデル, 設計手法

[論  文]
冷媒R1234ze(E),R1234ze(Z),R134a およびR245fa の 水平平滑円管上の自由対流凝縮およびプール沸騰熱伝達特性
著者名:永 田 龍 一,近 藤 智 恵 子,高 田 信 夫,小 山 繁
著者らは,外径19.12 mm,有効伝熱長さ400 mm の銅製平滑円管を試験伝熱管として用いて, R1234ze(E),R1234ze(Z),R134a およびR245fa の水平平滑円管上における自由対流凝縮およびプール 沸騰熱伝達特性に関する実験的研究を行った.凝縮実験は冷媒飽和温度20~60 °C,壁面過冷却度0.77 ~28.81 K の条件で行い,全試験冷媒において凝縮熱伝達率の実験値はNusselt の理論値に対して±11% 以内で一致すること,および飽和温度40 oC の条件においてR1234ze(Z)およびR134a の凝縮熱伝達率 はR1234ze(E)およびR245fa に比して高いことを示した.沸騰実験は冷媒飽和温度10~60 °C,壁面熱 流束0.73 ~ 80.13 kW m-2 の条件で行い, 全試験冷媒において, 沸騰熱伝達率の実験値は Stephan-Abdelsalam の式で比較的よく相関できることを確かめた.また,冷媒飽和温度20 °C の条件に おいては換算圧力の高いR1234ze(E)およびR134a の沸騰熱伝達率は換算圧力の低いR1234ze(Z)および R245fa に比して非常に高いこと,およびR1234ze(Z)について換算圧力が高くなると,沸騰熱伝達率は 上昇することを確認した.
キーワード: 凝縮,沸騰,熱伝達,R1234ze(E),R1234ze(Z)

日本冷凍空調学会論文集Vol.31,No.3 (発行日:2014/9/30)
[研究レビュー]
主題 冷媒/冷凍機油混合物の水平管内凝縮
著者名 野津 滋
冷媒/冷凍機油混合物の水平管内凝縮に関する研究レ ビューを行った.主として,油が凝縮熱伝達に及ぼす影 響を扱い,局所および平均の熱伝達と見なせる従来の実 験データを幅広く集約し考察を行った.その結果,油が 熱伝達に及ぼす影響は,液流量が低く蒸気せん断力の大 きな領域で顕著であること,および,圧力損失に及ぼす 影響は熱伝達よりかなり小さいこと等を示した.さら に,単純化された層流膜状凝縮理論を用いて,液相粘度 が熱伝達に及ぼす影響に関する定量的検討を行い,複数 の実験データとの関連を示した.あわせて,マイクロ フィン付管が平滑管より油の影響を受けやすい例も示 した.
キーワード
凝縮,気液二相流,熱伝達,圧力損失,冷媒/冷凍 機油混合物

[論  文]
主題 HFO-1234yf冷媒による扁平管内凝縮伝熱特性
副題 内壁突起と潤滑油の伝熱への影響
著者名 勝田正文,佐藤 遼,山下 暁,黒岩 透
現行のカーエアコンに使用しているR 134a 冷媒のGWP は1430 で,カーエアコン指令により使用ができなくな る.その代替としてHFO-1234yf 冷媒が開発された.本 研究は,この冷媒の伝熱(凝縮)特性を把握し,冷凍効 率を上げることを目的とする.実験装置は圧縮機,凝縮 器,膨張弁,蒸発器で構成される基本的な冷凍サイクル を使用し,テストセクションには突起を設けた扁平管と 平滑管の2 種類を用い,突起が伝熱特性と圧力損失特 性に及ぼす影響を評価する.また,オイルの混入率を変 化させ,同条件でデータを採取し,オイルの影響も評価 する.
キーワード
HFO-1234yf,凝縮,扁平管,内部突起,潤滑油

[論  文]
主題 蒸発器管内冷媒の流動特性と熱輸送を考慮した 冷蔵庫除霜運転の効率向上に関する研究
副題 第3 報:単列千鳥配列管および各種二列モデ ルによる冷媒流動特性評価
著者名 堀井克則,仮屋圭史,中嶋祐紀,松本駿介, 森 英夫
本報では,鉛直方向に千鳥状に並んだ配列管の単列モ デルおよび可視化管,フィン付きアルミ管,内面溝付き 管の各種二列モデルを用いて,無着霜状態での加熱実験 を行い,第1 報の単列直線配列平滑管モデルでの結果と 比較して,冷媒の流動特性を検討した.千鳥配列管およ び内面溝付き管モデルでは,直線配列平滑管の流動特性 と同様であるが,変化の経過時間が短くなった.また, 二列管モデルでは,アキュムレータと接続された列とも う一方の列で流動様相が異なることを明らかにした.さ らに,二列フィン付きアルミ管モデルでは,両列で流動 様相は異なるが,フィンの熱伝導により管表面温度変化 は類似することがわかった.
キーワード
冷蔵庫,除霜,蒸発器,流動様式,加熱実験

[論  文]
主題 蒸発器管内冷媒の流動特性と熱輸送を考慮した 冷蔵庫除霜運転の効率向上に関する研究
副題 第4 報:二列モデルによる除霜評価
著者名 堀井克則,仮屋圭史,中嶋祐紀,松本駿介, 森 英夫
前報と同じ二列モデルを用いて,第2 報同様,着霜状 態での除霜実験を行い,無着霜状態での加熱実験結果と 比較して,除霜時の冷媒流動を検討した.アキュムレー タと接続された列では,液を押し上げながら上昇した発 生冷媒蒸気が,上段で凝縮し下段から順次過熱蒸気単相 状態に至る単列と同じ様相だが,もう一方の列では,上 段への液供給はないが,発生蒸気が供給され,その蒸 気が凝縮して下段へ液が下降していると考えられた.ま た,冷媒を充てんしない真空条件での除霜実験と比較し て,上昇した発生蒸気が凝縮して凝縮潜熱を放出する冷 媒の熱輸送は,両列とも上段の霜の融解に有効であり, 除霜終了早期化に寄与していることを明らかにした.
キーワード
冷蔵庫,除霜,蒸発器,流動様式,除霜実験,熱輸送

[論  文]
主題 空調用スクロール圧縮機のPWM バイパス容 量制御の検討
著者名 飯島遼太,小山昌喜
空調用圧縮機では,低負荷運転時のモータ・インバー タ効率の低下や発停の繰り返しによる効率低下が課題で ある.そこで本研究では,インバータ制御と組合せ可能 な機械的容量制御であるPWM バイパス容量制御につい て検討した.PWM バイパス容量制御では,圧縮室の冷 媒をすべて吸込側へ戻すアンロード運転を行うためにバ イパス通路および電磁弁を設け,電磁弁のPWM 制御に よりフルロード,アンロード運転を任意の比率で切り替 えて容量制御を行う.本報告では,実機における効率お よびバイパス部圧力変動の測定結果,およびシミュレー タによる各制御パラメータの検討結果について報告する.
キーワード
圧縮機,空気調和機,省エネルギー,容量制御,パ ルス幅変調

[論  文]
主題 食品凍結時の過冷却現象が氷結晶の形態および ドリップロスに及ぼす影響
著者名 小林りか,兼坂尚宏,渡辺 学,鈴木 徹
食品冷凍において,氷結晶の形態は食品の最終品質に 大きく影響を与える.既往研究において,凍結過程で偶 発的に顕著な過冷却が生じる場合,微細かつ均質な構造 を持った,特徴的な氷結晶が生成したとの報告がある. この凍結過程を本編では過冷却凍結と呼ぶが,本研究で は,緩慢な冷却によって意図的に豆腐試料の過冷却凍結 を実現し,その過程での過冷却解消温度を変え,解凍後 の復元性,氷結晶の形態およびドリップロスに及ぼす影 響を調べた.その結果,過冷却解消温度が低いほど氷結 晶は微細になり,解凍復元性が良くドリップロスも抑制 された.これらの結果は,過冷却が深くなるほど氷核生 成頻度が上がることに関連すると考えられる.
キーワード 過冷却,氷結晶,氷核生成,過冷却解消温度,ドリッ プ,食品冷凍

[論  文]
主題 R 347mcc の飽和蒸気圧力および飽和液体密 度の測定
著者名 田中勝之
R 347mcc(CF3CF2CF2OCH3,1-methoxyheptafluoropropane) の飽和蒸気圧力と飽和液体密度を,300 K ~ 400 K にお いて10 K 間隔で測定した.測定装置は,大小2 つの容 器と圧力センサからなる抽出法を用いた.測定不確かさ は, 温度0.028 K, 圧力0.4 kPa, 密度0.7 kg・m-3 と見 積もった.測定結果を用いて,飽和蒸気圧力と飽和液体 密度の相関式をそれぞれ作成したところ,飽和蒸気圧力 については標準偏差が0.4 kPa 以内,飽和液体密度につ いては標準偏差が0.5 kg・m-3 以内で相関できた.また, 過去の文献値について本相関式と比較した.
キーワード
冷媒,熱物性,R 347mcc,飽和蒸気圧力,飽和液体 密度,相関式

特集:植物工場に関わる技術の展開


[論  文]
主題 植物工場空調の現状と課題
副題 完全人工光型植物工場の空調
著者名 伊能利郎,稲田良造
第3 次植物工場ブームといわれる現在,植物工場事業 へ参入する企業が増加し,完全人工光型植物工場の数も 増えてきた.植物栽培にあたって重要な要素となる環境 制御技術は,照明,空調などで構成されるが,空調に関 してはイニシャルコスト削減が主な目的でパッケージ方 式のエアコンを使用されることが多い.本報では,完全 人工光型植物工場空調の現状を空調方式や要求されてい る事項,負荷特性などから述べる.また,実際の完全人 工光型植物工場の空調環境を計測して分析した結果よ り,植物工場特有の負荷条件とそこで使用されている空 調機との組み合わせによる課題が発生していることがわ かったので,今後の取り組み課題と併せて述べる.
キーワード 植物工場,空調,温度,湿度

[論  文]
主題 吸収式冷房システムへの太陽熱の導入効果
副題 植物工場への適用可能性の検討
著者名 西村伸也,松原為敏,伊與田浩志,     白柳洋祐,山賀勇真
夏季の冷房負荷が大きい太陽光型植物工場への熱駆動 の吸収式空調システムの導入を想定し,長期間の実証試 験結果に基づいて,冷房運転時のシステムの運転特性と 太陽熱エネルギーの利用が性能に与える影響を実験的に 調べた.その結果,まず,太陽熱の利用により,通常の 都市ガス単独運転時と比べてCOPが20~50 %程度向上 し1.3 から1.5 となることがわかった.また,太陽熱単独 による単効用運転時と,都市ガスのみによる二重効用運 転時のデータを抽出し性能を算出した.その結果,太陽 熱単独運転時のCOPは0.6 から0.8 程度であること,都 市ガス単独運転時のCOPは1.0から1.2程度であること を明らかにした.加えて空調負荷の少ない中間期には, COPは最大で1.8 程度を示した.以上より,吸収式冷房 システムへの太陽熱導入が効果的であることを実証した.
キーワード 植物工場,太陽熱エネルギー,空調,吸収式冷凍機, 太陽集熱器,COP,期間性能,二重効用

[論  文]
主題 CO2 施用時の高い相対湿度がキュウリの生育, 光合成速度,窒素含量に及ぼす影響
著者名 鈴木真実,松尾誠治,梅田大樹,岩崎泰永
より効果的なCO2 施用技術の開発に関する基礎的な 知見を得るため,CO2 施用時に相対湿度を高めに設定し た場合(レベル1;平均74.5 %,レベル2;平均86 %, レベル3;平均97.8 %)のキュウリ幼植物体の乾物重や 葉面積に及ぼす影響を調査した.CO2 濃度が1 000 ppm 程度の試験区では500 ppm の区に比べて光合成速度が 高まった.また湿度の影響を比較すると,レベル2 では レベル1 よりも葉面積が拡大したため,乾物重や相対成 長率が有意に高まった.一方でレベル3 ではレベル2 よ り乾物重が低下した.レベル3 はレベル2 と比べると 光合成速度,葉面積ともに低下する傾向がみられ,そ の相乗作用として乾物重が低下したと推察された.以上 より,加湿は光合成速度と葉面積の両方に影響し,乾物 重に反映されることが示された.CO2 施用時に相対湿度 を高めに設定する場合は最適値があることを意識し,光 合成速度,葉面積,蒸散による養分吸収の関係を考慮す る必要があることが示された.
キーワード 環境,制御,除湿装置,温湿度調整,光合成,生産量, 植物生理

[論  文]
主題 Production of June-bearing Strawberries in Summer under Controlled Day Length and Temperature
著者名 Teruo WADA
June-bearing strawberries cannot be produced in summer because they require low temperatures and short days for flower bud formation, and because high air temperatures decrease fruit yield and quality. I tried to produce fruits of June-bearing strawberry in summer by controlling day length and air temperature. Seedlings of three cultivars,‘ Sachinoka’,‘ Benihoppe’, and‘Marihime’, were transplanted to a greenhouse in autumn 2012 and grown in rockwool culture. In late spring 2014 the growing area was covered with shade cloth having heat-insulating properties. Day length was controlled to 12 h and the air was cooled initially to 28/15 ℃(initially)and then to 28/10 ℃ in summer. In the control, air temperature was not cooled. In the airconditioned area, the vapor pressure deficit was always lower and the CO2 concentration in the dark period was higher than in the control. In control plants, fruit yield after May was very low, and no fruit was harvested in September, while the air-conditioned plants produced similar yield as in winter. Soluble solids content and firmness of fruits in the air-conditioned area in summer were higher than in fruit harvested in winter.
キーワード Control, Environment, Heat pump, Temperature, Day length, Quality, Strawberry, Yield

[論  文]
主題 植物工場における栽培植物の活動を組み込んだ 最適空調シミュレーション手法の開発
著者名 小松紗代子,上田保司,岡村信弥,     伊能利郎,吉田篤正,木下進一
植物工場とは,一般に栽培環境制御システムを有する 植物栽培施設を指す.一年中安定した生産と短期間での 栽培が可能であることが特徴である.植物工場の空調シ ステム課題としては,コスト削減と最適栽培環境の実現 が挙げられる.本研究では,植物工場のための最適空調 システムを開発することを目的として,植物活動を考慮 した空調シミュレーション手法を提案した.植物活動 は,温湿度とCO2 濃度に影響を与える蒸散と光合成で ある.シミュレーションに必要な植物に関する諸数値を 栽培実験により同定した.また,シミュレーションによ り植物工場内の空調環境の状況を把握し,収穫量を評 価した.シミュレーション結果と栽培実験との比較から 本手法の妥当性を確認した.
キーワード 数値流体力学,空調設備,植物工場,栽培実験,収 穫量,光合成,蒸散

[論  文]
主題 温度変動が誘起する発芽期における概日リズム の集団同期
著者名 有働龍太,守行正悟,鵜飼和也,福田弘和
植物工場施設の大規模化に伴い,温度分布の不均一 性や時間変動が発生するリスクが高まる.このため,植 物の高い温度感受性に着目し,温度変動の影響を定量 化する研究が求められている.そこで本研究では,レタ ス発芽期の温度感受性を,概日リズムの集団同期現象を 指標として定量化することを目的に行った.実験には, 遺伝子組換えグリーンウェーブレタス(AtCCA1::LUC) を用い,レタス種子の発芽期における概日リズムを計測 することで,個体間の概日リズムの同期率を解析した. その結果,温度の周期的変動や急激な低下によって,個 体間の概日リズムが集団同期することが明らかとなっ た.これにより,植物工場において概日時計の計測に 基づいた生育のモニタリングや苗の生育診断を行う際に は,空調による温度制御には十分注意しなければならな いことが示唆された.
キーワード 産業用空調,制御,位相同期,温度揺らぎ,概日リズ ム,植物工場

[論  文]
主題 植物工場産フリルレタスの抗酸化成分および冷 蔵保存中の変化の評価
著者名 明神千穂,大房 健,粟田 智,小倉東一, 木下進一,吉田篤正,川西正子 本研究では,大阪府立大学植物工場研究センターで栽 培されたフリルレタスの抗酸化性と保存中の変化につ いて検討を行った.植物工場産フリルレタスと太陽光 栽培レタスと玉レタスを収穫後および4 ℃で4 日間冷蔵 保存したものを試料とした.DPPH ラジカル捕捉活性, ORAC 値,総ポリフェノール量,アスコルビン酸の分 析を行った.植物工場産フリルレタスのDPPH ラジカ ル捕捉活性と総ポリフェノール量は保存中に有意に増 加した(p < 0.01,p < 0.05).しかし,アスコルビン酸 は有意に減少した(p < 0.01).
キーワード 植物工場,冷蔵保存,フリルレタス,抗酸化性,ポ リフェノール

日本冷凍空調学会論文集Vol.31,No.2 (発行日:2014/6/30)
 魚類筋肉組織の死後変化が凍結時の氷結晶生 成に及ぼす影響 (pp.47-56)
著者名 小南友里,渡辺 学,鈴木 徹

魚類筋肉組織における死後変化と凍結時の氷結晶生成 の関係について検討することを目的とし,筋肉組織の保 水力と筋内膜に着目した実験を行った.冷蔵保存中の筋 肉組織についてATP 関連物質分析,保水力評価,結合 組織観察を行った.保存期間中にATP 分解生成物の増 加,保水力低下,結合組織の脆弱化がみられた.そし て,即殺直後に凍結した組織と2 日間冷蔵保存した組織 では異なる様相が観察された.画像解析の結果から,凍 結前保存期間の差によって凍結時の氷結晶のサイズおよ び数が異なることがわかった.以上より,魚類筋肉組織 において冷蔵保存期間中の死後変化の進行に伴う組織性 状変化が,凍結時の氷結晶生成に影響を及ぼすことが定 量的に示された.
キーワード: 凍結,氷結晶,保水力,筋内膜,筋肉組織,マアジ


 冷媒R 1234ze(E)およびR 32 の水平扁平 多孔管内沸騰・蒸発熱伝達および圧力損失 (pp.57-65)
著者名 地下大輔,小宮佑太,近藤智恵子,小山 繁

本報は,冷媒R 1234ze(E)およびR 32 における,水 力直径1.13 mm の微細矩形流路を有する水平扁平多孔 管内沸騰・蒸発熱伝達および圧力損失について,実験的 に検討した結果を報告する.熱伝達および圧力損失実験 は質量速度100 ~ 400 kg/(m2s),熱流束5 ~ 20 kW/m2 の条件で行い,圧力損失については断熱気液二相流の 実験も行った.熱伝達特性に及ぼす質量速度,クオリ ティおよび熱流束の影響について検討するとともに,冷媒 R 1234ze(E)とR 32 との比較を行った.また,熱伝達お よび圧力損失の実験結果と従来提案されている予測式と の比較を行い,予測式の適用性についても検討した.
キーワード: 沸騰,熱伝達,圧力損失,R 1234ze(E),R 32,扁平 多孔管,ミニチャンネル


 メソポーラスシリカ系デシカントロータの低温 吸脱着特性に関する研究 (pp.67-77)
著者名 中川直紀,古谷野赳弘,党 超鋲,飛原英治

近年,ヒートポンプのさらなる高性能化,省エネル ギー化を目指しデシカント材を適用した空調機器が考案 されている.このようなシステムを設計するためには, デシカントロータの吸脱着特性を把握する必要がある. したがって本研究では,重量法を用いてデシカントロー タの吸脱着速度計測実験を行い,等価物質拡散係数を決 定することでデシカントロータの吸脱着特性を明らかに した.また,本実験で採用したデシカントロータは再生 温度が低いメソポーラスシリカおよび高分子収着材を用 いた.実験条件は,幅広い環境下においてデシカント ロータが使用されることを想定し,供給空気の流速の影 響および温度の影響について調査し,吸脱着特性を明ら かにした.
キーワード: デシカントロータ,メソポーラスシリカ,吸脱着速 度,重量法,等価物質拡散係数


 デシカントハイブリッドヒートポンプの冬季 ノンフロスト運転性能評価 (pp.79-90)
著者名 古谷野赳弘,中川直紀,党 超鋲,飛原英治,神戸正純,綾目久雄,黒田尚紀

冬季多湿となる寒冷地ではヒートポンプの蒸発器への フロストが問題となっているが,デシカントロータを用 いて,蒸発器に流入する空気を除湿することにより,フ ロストを防ぐことができる.本研究では,低温下で利用 可能な吸着材,メソポーラスシリカを用いたデシカント ロータとヒートポンプを連結し,デシカントハイブリッ ドヒートポンプシステムを作成した.環境試験室での試 験で,ノンフロスト運転が可能であることが示された. また,吸着した水分を部屋の加湿に利用することで高い システム効率を示すことがわかった.ハイブリッドシ ステムのシミュレーションモデルを作成し,ロータの回 転数や脱着空気に凝縮器から投入される熱量の影響を調 べた.本システムでは潜熱供給が可能であり,居室へ の供給空気をSHF 0.5 ~ 1 の範囲で調整できることがわ かった.
キーワード: デシカント空調,デフロスト,加湿,シミュレーション, SHF


 強制対流下における凹凸平板間の着霜現象
副題 空気条件が伝熱と流動に与える影響
 (pp.91-98)
著者名 勝田正文,金子 智,浜野友樹,高野雄督

自動車業界ではEV の普及が加速しており,それに伴 い車両用空調機器に対して高効率化や暖房熱源の確保が 求められている.車両燃費(電費)を考慮するとヒート ポンプによる暖房を行うのがもっとも有効であると考え られるが,室外熱交換器の着霜現象による熱伝達率低下 と圧力損失増加が大きな課題となることが予想される. そのため,熱交換器での着霜の抑制が特に求められてい る現状にある.以上を背景に,結露水の滞留を抑制する ことによる着霜耐力・除霜性能の向上効果が期待されて いるフィンレス熱交換器の着除霜特性の評価手法を確立 するとともに,空気側伝熱・圧損や霜成長の基礎特性把 握を実施した.
キーワード: 着霜,フィンレス熱交換器,圧力損失,熱伝達,湿度


 小型吸収ヒートポンプ給湯機における断熱吸収 器の性能解析 (pp.99-110)
著者名 岡本洋明,党 超鋲,飛原英治

本研究では,H2O/NH3 型吸収ヒートポンプ給湯機の 小型化を目指し,従来の流下液膜式吸収器に換えて,ノ ズル噴射式,トレイ散布式,充填式の3 種類の断熱吸 収器を用いた場合の吸収性能とサイズの検討を行った. ノズル噴射式では,主にFraser et al. の理論にもとづい て微粒化のモデリングを行った.その結果,システム側 で要求される吸収器入口溶液量を1 つで賄えるノズルを 用いた場合でも,50μm 以下の液滴径を得ることがで き,ノズル噴射口から最大60 mm 程度で吸収が完了す ることがわかった.また,それをもとに容積を概算し た結果,1.1 × 10-3m3 程度で十分であると考えられる. トレイ散布式では,吸収性能解析に際して,Grant and Middleman の液ジェット分裂条件を実験によって補正し, 液柱分裂条件を与えた.その結果,アンモニア水溶液で は液柱分裂距離が非常に短く,液滴が大きくなること, そのことで気液接触面積が拡大せず,1 500 mm 以上とい う非常に大きな吸収高さが必要となることがわかった. 充填式では2 種類の不規則充填材を用いた場合につい て,Onda et al. の充填材有効濡れ率相関式を用いて,吸 収性能を解析した.その結果,充填材を流下する液膜の 厚さは2.5 ~ 4.8 mm と厚くなり,十分な吸収に要する充 填高さと吸収器直径は,1 000 mm 以上と大きくなると考 えられる.ノズル噴射式は小流量で高吸収率を得るよう な設計に向いており,トレイ散布式と充填式は低吸収率 で大量に流す設計の方が向いていると考えられる.
キーワード: 吸収冷凍機,吸収器,断熱吸収,シミュレーション, ヒートポンプ給湯機


 稚内層珪質頁岩を用いたデシカント空調の開発
副題 第7 報:外気条件に対する予冷・再生温度の 検討
 (pp.111-121)
著者名 鍋島佑基,長野克則,外川純也

本研究の目的は,稚内層珪質頁岩を用いたデシカント 空調の開発である.本報はその第7報である.これまで の研究において,稚内層珪質頁岩(WSS)デシカントロー ター2 枚とフィンチューブ熱交換器を4 枚搭載したデシ カント空調機を開発した.本報では,供給空気の状態を 予測できるように,空調機を再現した数値シミュレー ターを作成し,再生,予冷送水温度条件について検討を 行った.まずは,本シミュレーターの結果が実験結果と 一致していることを確認した.次に,予冷による結露を 生じさせない範囲において,投入熱量が最小となるよう な送水条件を明らかにするため,再生,予冷温度につい て検討した.その検討結果をもとに,夏期における性能 予測計算を日本の5 都市で行い,除湿に必要な投入冷 熱量を比較した.その結果,従来の冷却除湿プロセスに 比較して18 ~ 30 %の冷熱量が削減できることが明らか となった.
キーワード: デシカント空調機,稚内層珪質頁岩,システムシ ミュレーョン,熱物質移動,制御方法


 デシカントハイブリッドヒートポンプの夏季ノンドレイン運転性能評価 (pp.123-131)
著者名 綾目久雄,神戸正純,黒田尚紀,古谷野赳弘,中川直紀,党 超鋲,飛原英治

ノンドレイン化の達成のため,従来品と比較してフィ ンピッチを半減化し伝熱面積を増加させた熱交換器を組 み込んだルームエアコンと,デシカントロータを接続し たハイブリッドシステムの性能試験を行った.また,デ シカント室内空気入口の前段にプレクール用の熱交換 器(蒸発器)を追加した際の性能試験も行った.熱交 換器フィンピッチ半減化は,冷房運転においてシステ ムCOP 改善に有用な手法であった.また,蒸気圧縮式 冷凍サイクルのスーパーヒート熱量を利用してプレクー ルを行うシステムは,ヒートポンプ・デシカントハイブ リッドシステムのノンドレイン化に対し,有用な手段で あることが確認された.
キーワード: デシカント空調,ヒートポンプ,ドレイン,除湿, 熱交換器


 廃熱利用高温ヒートポンプサイクルの基本性能 に関する熱力学的考察 (pp.133-144)
著者名 近藤智恵子,小山 繁

工場のプロセス設備などでは蒸気ボイラが用いられて いるが,利用後の熱が回収されずに排出されている場合 が未だ多い.そこで近年,廃熱を昇温して再利用する産 業用ヒートポンプを導入し,エネルギー消費を低減する ことが試みられているが,一次換算エネルギー基準では ヒートポンプの効率が燃焼式に劣るのではないかという 懸念も依然強い.本稿ではその検討事例として,加熱媒 体として圧縮水を用い,これを80 ℃の廃熱源を利用し て160 ℃まで昇温するというシステムについて,ヒート ポンプを適用した場合の計算検討を行った.本論文で は,そのシステムに対し,4 つの具体的な高温用ヒート ポンプサイクルを提示し,それらに新規低GWP 冷媒を 含む,臨界温度の異なる数種の冷媒を適用した場合の 性能を熱力学的に評価し,目標昇温温度と最適冷媒の 選択について重点的に考察を行った.三連のタンデム サイクルは,後流側サイクルの圧縮比が大きくなり総合 COP は他のサイクル構成よりも低くなる.これに対し 多段抽気サイクルは,膨張損失,凝縮器内エクセルギ損 失,および圧縮比を低減できるため,計算した事例中で は比較的高いCOP を示した.3 段抽気サイクルへ体積 能力の最大点が目標昇温温度160 ℃にもっとも近い冷媒 R 1234ze(Z)を使用した場合に,もっとも高い総合COP を達成した.さらに,圧縮機効率および熱交換性能の低 下する場合を検討したが,今回検討した範囲において, これらの影響があった場合にも一次エネルギー換算効率 にして約1.4 以上となる結果が示され,提案する廃熱利 用高温ヒートポンプシステムの導入によりエネルギー消 費低減を達成できる見込みを得た.
キーワード:
成績係数,冷媒,高温ヒートポンプ,廃熱回収,温 暖化係数


 スクロール圧縮機における歯型間に作用する押 接力の解析 (pp.145-156)
著者名 福田充宏,木村航太,本澤政明,鶸田 晃, 野場圭佑

スクロール圧縮機は,冷媒の漏れ防止のために,ラッ プ同士を半径方向に適切な力で押しつけており,最近で は固定クランク式の圧縮機でも,軸受け隙間内の軸の移 動を利用してラップ同士を押しつけているものがある. この押しつけ力を押接力と呼ぶ.本研究では固定クラン ク式スクロール圧縮機の軸受部で発生する油膜力に注目 し,軸および旋回スクロールに作用する力やモーメント のつり合いより押接力を解析的に求めた.軸受け内の軸 の傾きを考慮しないモデルとすることで,計算時間を短 縮し収束性を改善し,解析において,ラップ間に形成さ れる油膜の影響も考慮した.その結果,押接力の発生メ カニズムおよび設計パラメータの影響が明らかとなった.
キーワード:
圧縮機,潤滑,スクロール圧縮機,漏れ,接触力


 情報通信装置向けフリークーリング併用型ハイ ブリッド空調システムに関する研究
副題 第1報:高精度数理モデルの構築と静特性解析
 (pp.157-168)
著者名 宇田川陽介,関口圭輔,柳 正秀,齋藤 潔,大野慶祐

近年,情報通信装置を収容するデータセンタの消費電 力は年々増加傾向にあり,消費電力の低減が強く求めら れている.データセンタにおける空調は,情報通信装置 の運用時に常時発熱を伴うことから年間を通じて冷房を 行う必要がある.そのため,年間での消費電力低減に は,中間期から冬期の低温外気の有効利用が効果的であ る.本研究では,低温外気を利用するフリークーリング サイクルを併用した空調システムを対象に詳細な特性解 析を行い,安定した運転を実現する制御手法の確立を目 的とする.本論文では,まずシステム全体の静特性数理 モデルを構築し,実験結果との比較により数理モデル の妥当性を検証するとともに,システムの静特性解析 を行う.
キーワード:
フリークーリング,電算機室,空気調和機,システ ムシミュレーション,ポンプ


霜・雪・氷に関わる技術の進展(その3)
 V 字型障害物を用いた極低温冷却円管の着霜 低減 (pp.169-177)
著者名 佐藤颯大,吹場活佳,園部誕紀,山田悠太

本研究では,V 字型障害物を用いた極低温冷却円管の 着霜抑制方法を提案し,その有効性を検証した.V 字型 障害物を冷却円管の上流に配置することで,円管に主流 が直接衝突するのを妨げるのが狙いである.強制対流下 で-20 ℃および-196 ℃の冷媒を用いて着霜実験を行っ た.冷媒温度が-20 ℃の場合,円管前方に付着する霜の 低減には成功したものの,圧力損失の低減や熱交換量の 増加には至らなかった.一方,冷媒温度が-196 ℃の場 合,円管前方に付着する霜の成長を抑制し,圧力損失を 低減し,熱交換量を増加させることができた.これらの 結果から,本手法は冷却面温度が低い場合に有効な手法 であるとの結論を得た.
キーワード: 冷凍,除霜,着霜,極低温,円管,強制対流


 強制対流中の金属フィン上の着霜現象に関する 実験研究 (pp.179-185)
著者名 吉田憲司,片岡 勲

フィン形状伝熱面の強制対流下での着霜の基礎的現象 を明らかにするため,空気湿度と流速を変化させた場合 の着霜過程について,ビデオカメラによる詳細現象観察 ならびに熱電対によるフィン表面での温度測定を行い, 空気流の温度・湿度の影響より生じる特徴的な現象を明 らかにした.また,フィン上流側エッジ部直ぐ下流部に 発現する少霜領域について,フィン表面上の温度分布測 定により,熱伝達と物質伝達の低下に起因することを表 す合理的な結果を得た.
キーワード: 着霜,金属フィン,湿度,熱伝達,物質伝達


 冷凍機用フィンレスフラットチューブ熱交換 器の着霜下の伝熱性能に関する実験的検討 (pp.187-198)
著者名 大西 元,御堂翔太,多田幸生,瀧本 昭

冷凍貨物車などの冷凍機で使用される熱交換器への着 霜は伝熱量低下や流動抵抗増大をまねき,大きな問題と なっている.そこで本研究では,このような着霜条件下 で有効性が期待できるフィンレスフラットチューブ熱交 換器を対象に実験的に追究した.具体的には,着霜,圧 力損失,熱通過特性に風速,入口空気温度が与える影響 を実験的に検討し,着霜条件下の伝熱性能を評価した. さらには,この熱交換器をフィンアンドチューブ熱交換 器と比較することによって,着霜環境下でのその有効性 を評価した.その結果,フラットチューブ熱交換器の方 が霜層の成長が大きくなるものの,フィンアンドチュー ブ熱交換器に比べ優れた伝熱性能を示すことが確認で きた.
キーワード: 熱交換器,熱伝達,フィンレス,フラットチューブ, 冷凍,着霜,実験


 霜層厚さに及ぼす冷却面姿勢の影響 (pp.199-206)
著者名 大久保英敏,松下 将,齋藤 修

氷と空気の多孔質層である霜層を形成する着霜現象 は,熱移動と物質移動が同時に起こる非定常現象であ る.現象は複雑であり,この現象の系統的な理解は未だ 十分でないのが現状である.本研究では,着霜現象の基 礎的な理解を目的として,着霜現象の諸量の一つである 霜層厚さに着目し,着霜の低減化に効果があると期待さ れている冷却面表面のぬれ性をパラメータとして,霜層 厚さに及ぼす冷却面姿勢の影響を検討した.結果とし て,霜層厚さに及ぼす冷却面姿勢の影響は顕著であり, 霜層厚さを変化させる原因として,霜結晶の線成長速度 に及ぼす重力の影響,熱移動と物質移動の相関関係,霜 結晶の脱落および傾斜(→結晶が倒れる現象)が挙げら れることを明らかにした.
キーワード: 着霜,物質移動,氷結晶,結晶成長,過冷却,冷却 面姿勢,ぬれ性


 中性子ラジオグラフィを用いた着霜の評価
副題 冷却平板での着霜量と物質伝達率の評価
 (pp.207-217)
著者名 松本亮介,吉村智也,梅川尚嗣,網 健行, 伊藤大介,齊藤泰司

本研究では,中性子の物質による減衰率の差異を利用 した放射線透過法の一つである中性子ラジオグラフィを 用い,強制対流下における単一冷却平板上の着霜につい て,冷却平面に対し垂直方向から中性子を照射し,霜層 による中性子の減衰から平面上の着霜量の定量的分布の 評価を行った.中性子源の照射強度の時間的変動につい て画像内の基準輝度値を用いて補正を行い,その有効性 を確認した.水の質量減衰係数を用いて着霜量を評価し た結果,掻き取った霜の質量と一致することが示され た.さらに,時間的な着霜量分布の変化から局所物質伝 達率分布の評価を行った.以上の結果より,中性子ラジ オグラフィは着霜現象の定量評価に有効であることが示 された.
キーワード: 着霜,中性子ラジオグラフィ,強制対流,着霜量, 物質伝達,画像処理


 除霜時の霜層変化に関する研究 (pp.219-227)
著者名 下村信雄,片山真一郎

上部からの自然融解による除霜時の融解水の霜層への 内部浸透を可視化観察し,氷・空気・水の3 相で構成さ れる霜層の熱物性値を推算し,非均質霜層成長モデルで 計算した霜層をベースに融解終了の予測が可能かを評価 した.融解は上部より進み,融解水は融解部に隣接する 下部霜層に順次移動すると同時に毛細管力により霜層最 下部まで一気に移動する.浸透距離や浸透量の計算,最 下部へ移動する融解水の挙動を毛管力により予測するの が困難なため,3 相の割合で決定される熱物性値が不確 かになり,実験結果と大きく異なる結果となった.
キーワード: 着霜,水分内部浸透,除霜モデル,融解,数値計算


 無落雪住宅向けフェンス状太陽光発電架台部に おける堆雪挙動に関する研究 (pp.229-236)
著者名 平野繁樹,川南 剛,保科秀夫

北海道などの積雪寒冷地に多い屋根部が平坦な無落雪 住宅の屋上に設置する太陽光パネルおよびその架台の設 置について,屋根部からの設置高さの違いによる雪の吹 きだまりが発電性能に与える影響について実験的に検討 を行うとともに,架台高さの違いによる吹きだまり形成 の違いについて実験的および解析的に検討を行った.粒 子法を用いて流れのある空気中に雪粒子を一定の比率で 発生・流入させ,太陽光パネルを模した構造物との相互 作用により雪による吹きだまりの発生過程を再現した. その結果,概ね屋根部からの高さが200 mm 以上の場合 には,雪による吹きだまりによる発電面の被覆が見られ ないことがわかり,実験結果とも良い一致が見られた.
キーワード: 雪,数値流体力学,特殊設備,住宅,物質移動


 ギ酸カリウム水溶液の基本的性質の温度・濃度 依存性 (pp.237-244)
著者名 田中三郎,小川 清,佐々木直栄

昨今の環境問題の高まりにより,環境負荷が低く,安 全で省エネルギー性が高いブラインの開発が必要とされ ている.このような観点より次世代ブラインとして有機 酸塩系ブラインであるギ酸カリウムが注目されている. しかし,広範囲な温度ならびに濃度についての詳細な物 性に関する報告例が極僅かであることが現状である.本 報では,ギ酸カリウム(Potassium Formate:PF,分子 量:84.12,分子式:HCOOK)水溶液の基本的な物性で ある屈折率,密度,比熱および粘性率に及ぼす温度およ び濃度の影響を明らかにし,測定結果に基づき実験式を 作成したので,その結果について報告する.
キーワード: ギ酸カリウム水溶液,屈折率,密度,比熱,粘性率


日本冷凍空調学会論文集Vol.31,No.1 (発行日:2014/3/31)
シリカゲル/FAM-Z01を用いた凝縮熱による二重効用吸着冷凍サイクルの性能解析 (pp.1-9)
 Marlinda,上田祐樹,秋澤 淳,宮崎隆彦(東京農工大学・九州大学)
 
本論文では,シリカゲル/FAM-Z01 を用いた凝縮熱 による二重効用吸着冷凍サイクルの動的解析を行った. 本サイクルは2 つのサイクルからなり,高温サイクル側 と低温サイクル側である.高温サイクル側で発生した凝 縮熱を再利用し,低温サイクル側を駆動させる.出口温 度を10 ℃に固定した時,シリカゲル/FAM-Z01 二重 効用サイクルは,90 ~ 150 ℃においてシリカゲル/シ リカゲル二重効用サイクルより高いSCP・COP が得ら れる.熱源温度が130 ~ 150 ℃の時にサイクルタイムは 1 100 ~ 1 300 s の範囲でCOP が最大値を取る.高温サ イクル側と低温サイクル側に充填された吸着材の質量比 は,二重効用サイクルのCOP に影響することがわかっ た.また,FAM-Z01 の質量を28 kg に固定した時に, 質量比r が1.0 ~ 1.15 の時にCOP が最大になる.
キーワード 吸着,吸着冷凍サイクル,二重効用,凝縮熱,シリ カゲル,FAM-Z01



R 245faの飽和蒸気圧力と飽和液体密度の測定  (pp.11-17)
 田中勝之(日本大学)
 
R 245fa の飽和蒸気圧力と飽和液体密度を2 つの等容 容器からなる装置を用いて測定を行った.測定範囲は, 温度310 ~ 400 K,圧力224 ~ 2 203 kPa,密度957 ~ 1 306 kg・m-3 であった.なお,測定不確かさは,温度 ±0.028 K,圧力±0.4 kPa,密度±0.7 kg・m-3 であった. 本測定結果を用いて,飽和蒸気圧力と飽和液体密度につ いてそれぞれの相関式を作成した.測定結果は文献値と 比較した.
キーワード 冷媒,熱物性,飽和蒸気圧力,飽和液体密度,R 245fa



微細加工面を利用した着霜の低減化  (pp.19-26)
 大久保英敏,松下 将,池本 駿(玉川大学)
 
低温機器の熱交換器に発生する霜層は熱抵抗層であ り,低温機器のCOP 向上の妨げになっている.近年, 省エネルギー技術の向上を目的として,着霜の低減化技 術の進展が望まれている.着霜の低減化のためには,着 霜現象を評価するための諸量の中で,霜層厚さおよび着 霜量を減少する必要があるが,革新的な低減化方法はい まだ見出されていないのが現状である.本研究では,霜 結晶生成・成長の制御および抑制を目的として,冷却面 表面に筋状の微細加工を施し,着霜現象に及ぼす表面の 微細加工形状の影響を検討した.さらに,霜層の掻き取 り力に及ぼす影響についても検討した.結果として,物 質移動量および霜層の掻き取り力を減少させることに成 功した.
キーワード 着霜,物質移動,氷結晶,結晶成長,省エネルギー, 熱交換器



給湯用コルゲート管内の単相熱伝達および圧 力損失 (pp.27-37)
 渡邊和英,地下大輔,井上順広,高橋宏行(東京海洋大学・㈱コベルコマテリアル銅管)
 
給湯用ヒートポンプ機器のさらなる省エネルギー化に は,給湯水側の熱伝達性能向上による熱交換器の高効率 化が必要である.本研究は,給湯用ヒートポンプ機器の 水用伝熱管に使用されているコルゲート管を用いて,低 レイノルズ数域から高レイノルズ数域までの広範な流量 条件下で単相熱伝達および圧力損失実験を行った.コル ゲート溝ピッチや溝深さの異なる9 種のコルゲート管, 平滑管および内面溝付管の実験結果より,本論文では, コルゲート溝ピッチや溝深さが,熱伝達特性および圧力 損失に及ぼす影響について明確にし,コルゲート管の最 適な溝形状について実験的に検討を行った.
キーワード 熱伝達,圧力損失,コルゲート管,単相流,臨界レ イノルズ数



微細三角形流路における気液二相流の流動様相 (pp.39-45)
 松瀨裕大,中津留拓哉,榎木光治,森 英夫,仮屋圭史,濱本芳徳(九州大学・東京農工大学)
 
本研究では,可視化ガラス管と高速度カメラを用い, 微細三角形流路内を水平に流れるR 410A の流動様相観 察実験を行った.可視化ガラス管の冷媒流路の等価直 径は0.82 mm 程度である.観察結果に基づき,流動様 相をいくつかの典型的な流動様式に分類し,重力に対す る流路配置の流動様相への影響を明らかにした.さら に,過去に報告した三角形流路の垂直流,および円形, 矩形流路の水平流の結果と比較検討し,流動方向や流 路形状の影響についても明らかにした.
キーワード 冷媒,流動様式,流動様相,気液二相流,水平微細 三角形流路

日本冷凍空調学会論文集Vol.30,No.4 (発行日:2013/12/31)
枝管付きループ管型熱音響冷凍機における冷却性能の数値シミュレーション (pp.341-352)
 経田僚昭,多田幸生,瀧本 昭,大西 元(富山高等専門学校・金沢大学)
 
微細流路内での音波による熱輸送現象を利用する熱音 響冷却システムは,可動部がない簡単な構造で実現でき る環境調和型の冷却技術として注目されている.本論文 は,枝管付きループ管型熱音響冷凍機を対象に,音波に よる熱輸送効果をスタック構造と関連づけて理論的に追 究したものである.具体的には,時間領域差分法を用い た音場解析とスタック流路内での熱輸送解析を連成した 数値計算を行い,管内の音場特性とスタック内の温度場 の詳細を熱的応答性と関係するスタック流路径と関連づ けて明らかにした.また,冷却性能を最大とするスタッ ク流路径を数値計算結果から予測する方法を提示し,実 験結果との比較によりその有効性を明らかにした.
キーワード 冷凍,熱音響冷凍機,FDTD 法,スタック構造,エネ ルギー変換



ドライエア製造条件におけるデシカントロータの除湿挙動
第1 報:ロータ回転方向湿度・温度分布の測定と考察
 (pp.353-364)
 綾目久雄,永坂茂之,神戸正純,辻口拓也,児玉昭雄(新日本空調株式会社・金沢大学)
 
本研究の最終目的は,低露点空気生成時のデシカント ロータにおける除湿挙動および性能を予測できる,数値 計算手法の開発である.数学モデルの妥当性を検討する には,実験データとの比較が必須であるため,まず低露 点空気生産条件でのデシカントロータ出口空気温湿度 の回転方向角度分布を,正確に実測した.ロータ回転速 度,再生空気温度,吸着入口空気絶対湿度を変化させて 実験を行った.得られた結果を空気線図にて整理した結 果,除湿・再生運転中のデシカントロータ出口空気状態 の変化は,一般空調用途の場合とほぼ同様の傾向を示し た.低湿度域での物性値を測定し適用すれば,既存の 熱物質移動解析による計算手法が適用できることが示 唆された.
キーワード デシカント空調システム,吸着,数値計算,熱物質 移動,低露点



蒸発器管内冷媒の流動特性と熱輸送を考慮した 冷蔵庫除霜運転の効率向上に関する研究
第1 報:単列モデルによる冷媒の基本流動特性の評価
 (pp.365-375)
 堀井克則,仮屋圭史,宮崎祐輔,森 英夫(パナソニック株式会社アプライアンス社・九州大学工学研究院・パナソニック株式会社エコソリューションズ社)
 
本研究では,家庭用冷蔵庫の省電力化に向けた除霜性 能向上のため,除霜運転時における蒸発器管内冷媒の流 動による熱輸送現象に着目した.本報では,この現象解 明の第一段階として,蒸発器を単純化した多段単列管モ デルを用い,無着霜状態での加熱実験により冷媒の基本 流動特性の検討を行った.加熱中,下段冷媒液の蒸発 により発生した冷媒蒸気が管内を上昇する際に,冷媒液 も押し上げられるが,一部は逆流する繰り返しで,下段 に冷媒液が最後まで残り,加熱とともに上段への液供給 量が減少して,最上段より順に過熱蒸気になることがわ かった.また,測定した冷媒圧力,冷媒温度および管 表面温度の変化と冷媒流動の変化の特性の関係を議論 した.
キーワード 冷蔵庫,除霜,蒸発器,流動様式,加熱実験,可視化



蒸発器管内冷媒の流動特性と熱輸送を考慮した冷蔵庫除霜運転の効率向上に関する研究
第2 報:単列モデルによる除霜評価
 (pp.377-387)
 堀井克則,仮屋圭史,宮崎祐輔,中嶋祐紀,森 英夫(パナソニック株式会社アプライアンス社・九州大学工学研究院・パナソニック株式会社エコソリューションズ社)
 
前報と同じ単列モデルを用いて,着霜状態での除霜実 験を行い,無着霜状態での加熱実験結果と比較して,除 霜時の冷媒流動を検討した.基本的には,下段で蒸発し た冷媒蒸気が上段に冷媒液を押し上げながら上昇し,上 段で冷媒蒸気が凝縮する様相であり,霜の融解が終了し た下段では,上段からの液の下降が滞り,下段から順次 過熱蒸気単相状態に至ると考えられる.さらに,冷媒を 充てんしない真空条件での除霜実験と比較して,上昇し た冷媒蒸気が上段で凝縮して凝縮潜熱を放出する冷媒の 熱輸送は,特に,ヒータから離れた上段の霜の融解に有 効であり,除霜終了を早めるのに寄与していることを明 らかにした.
キーワード 冷蔵庫,除霜,蒸発器,流動様式,除霜実験,熱輸送



HC 600a をドロップイン冷媒としたR 410A用ルームエアコンの性能評価 (pp.389-399)
 大野慶祐,木村 健,山口誠一,齋藤 潔,糸永俊介,松田憲兒,岸本哲郎(早稲田大学・日本空調冷凍研究所・日本冷凍空調工業会)
 
本論文は,R 410A 用ルームエアコンにHC 600a をド ロップインした場合の性能評価を報告するものである. 本報告では,定格および中間冷房条件で性能評価を実施 する.また,冷房能力をパラメータとした場合について 取り扱う.本報告では,実際にR 410A 用に設計されて ルームエアコンを用いて実験を実施し,またシミュレー ションによっても評価を行う.結果では,HC 600a をド ロップインした場合では,COP,消費電力と冷房能力が 低下した.これは,HC 600a の比体積が小さいことから 圧縮機行程容積が不足し,冷媒循環量が低下したためで ある.この時,管内冷媒流速が増加したことから圧力損 失が増大し,COP が低下した.
キーワード 冷媒,家庭用空調機,ドロップイン,成績係数,圧 縮式ヒートポンプ



低GWP 混合冷媒R 32/R 1234ze(E)の水平ら旋溝付管内凝縮および蒸発特性 (pp.401-411)
 近藤智恵子,三島文也,小山 繁(九州大学大学院総合理工学研究院)
 
本稿は,新規代替冷媒R 32/R 1234ze(E)の水平ら旋 溝付内伝熱を実験的に検証するものである.平均内径 約5.4 mm のら旋溝付管を用い,凝縮では飽和温度約 40 ℃,蒸発では約10 ℃で,その熱伝達率と圧力損失を 測定した.混合冷媒の凝縮熱伝達率は循環組成(R 32 質 量分率)約0.45 で最小値をとる.この組成は,温度勾配 が最大となる値よりも幾分R 32 質量分率が高い.一方, 蒸発熱伝達率は,乾き度0.2,0.5,0.8 のとき,気液間の モル分率差が最大を取る循環組成約0.15,0.2,0.25 で 最小値をとる.また,非共沸性による熱伝達率の低下率 は,凝縮流よりも蒸発流の方が大きい.混合物質圧力勾 配は,物性値の変化のみを考慮することで的確に予測で きる.このことは,凝縮流と蒸発流に共通する.
キーワード 熱伝達,圧力損失,蒸発,凝縮,ら旋溝付管



CO2 ヒートポンプ給湯機用ガスクーラの熱交換性能に関する実験的研究
副題 伝熱管形状が給湯水側の熱伝達および圧力損失 特性に及ぼす影響
 (pp.413-423)
 松尾叔美,小山 繁(九州大学)
 
CO2 ヒートポンプ給湯機のガスクーラ内で給湯用水の 流れは層流となり,給湯用水流路における熱伝達性能が 低下することが技術的な課題である.本研究では,給湯 用水流路の伝熱促進を目的として開発されたディンプル ツイスト管の各形状要素である窪みおよび捻りが,給湯 用水流路の熱伝達および圧力損失特性に及ぼす影響を明 らかにするため,5 種類の異なる形状の試験伝熱管を用 いた熱交換実験を実施した.また,超臨界圧のCO2 に 代えて液単相の水を用いて給湯用水側の熱伝達特性を評 価する簡便な実験方法を提案した.その結果,ツイスト 形状を用いることで1000 以下の低レイノルズ数域にお いて既に平滑直管よりも高い伝熱性能を示した.
キーワード CO2ヒートポンプ給湯機,熱伝達特性,圧力損失特性, ガスクーラ,給湯用水流路



微細流路内気液二相流の圧力損失 (pp.425-437)
 榎木光治,森 英夫,宮田一司,仮屋圭史,濱本芳徳(東京農工大学大学院・九州大学大学院・東北大学)
 
本研究では,内径1 mmの円管と一辺が1 mmの矩形 管におけるR 410A の水平流の圧力損失の実験を行った. 実験は,飽和温度10 ℃の断熱条件で,従来の研究より も低質量速度を含む条件で行った.実験結果を,既に 得ている流動様相の観察結果を参照し,また垂直流の実 験結果と比較をして,圧力損失に及ぼす流路形状と流動 方向の影響について,より詳細で包括的な検討を行って いる.また,水平流の実験結果を従来の摩擦圧力損失の 整理式と比較し,整理式の適用性について検討している.
キーワード 圧力損失,微細管,気液二相流,水平流,垂直流, 冷媒



伝熱面一体型吸着体の熱抵抗の測定と吸着材粒子充てん層との比較(pp.439-449)
 大内崇史,濱本芳徳,森 英夫,江藤淳朗(九州大学)
  
吸着冷凍機およびデシカント除加湿器の小型化には, 吸着熱交換器の小型化が重要である.吸・脱着現象は 発・吸熱反応を伴い,これらは吸・脱着現象の進行を阻 害するため,冷凍能力を維持して吸着熱交換器を小型化 するには,吸着熱交換器の伝熱性能を向上させて,吸・ 脱着現象を速やかに進行させる必要がある.そこで,伝 熱面に膜状吸着材を直接生成した伝熱面一体型吸着体を 対象に,伝熱性能向上の程度を検討した.そして,一体 型吸着体の熱伝導率を測定し,厚さが変わったときの熱 抵抗を推算した.その結果,吸着材を厚膜化するほど従 来の粒子充てん型に比べて伝熱性能が向上し,1 mm 程 度の厚さで2 倍程度となることを明らかにした.
キーワード 吸着,熱抵抗,アルミニウム陽極酸化皮膜,測定, 推算



水平細管内の冷媒R 1234yf の沸騰熱伝達に対する潤滑油の影響 (pp.451-462)
 斎藤静雄,党 超鋲,飛原英治(東京大学大学院)
 
内径2 mm,4 mm の水平平滑管内において,低GWP 冷媒R 1234yf の沸騰熱伝達に与える潤滑油の影響を調 べた.局所熱伝達率の測定,流動観察そして圧力損失の 測定は,蒸気クオリティ,質量流束,熱流束,オイル 循環率を変えて行った.低クオリティ域ではオイル循環 率の増加とともに局所熱伝達率の増加がある.この熱伝 達率の増加はオイル混入による泡立ちが要因している. 高クオリティ域ではオイル循環率の増加とともに単調に 減少する.オイル混入による流動様相をオイル循環率, クオリティ,質量流束,熱流束を変えて示した.
キーワード 沸騰,熱伝達,低GWP 冷媒,冷媒R 1234yf,潤滑油, 流動様式

日本冷凍空調学会論文集Vol.30,No.3 (発行日:2013/9/30)
冷水・冷却水変流量制御時における吸収式冷凍機の動特性解析 (pp.191-202)
 藤居達郎,長野克則(㈱日立製作所・北海道大学)
 
セントラル空調の主要な省エネルギー手段である VWV 制御について,吸収式冷凍機の動特性シミュレー タにVWV 制御ルールを適用することにより,エネル ギー削減効果と機器の信頼性を同時に解析可能なツール を開発した.本論文では,一例として負荷率を40 %か ら80 %,60 %に変化させた解析を行い,(1)冷水ポン プ68 ~ 70 %,冷却水ポンプ59 ~ 63 %の動力削減効果, (2)負荷変動後20 分以内に冷水出口温度が目標値の± 1 ℃以内となること,(3)三位置制御の吸収式冷凍機に対 してもVWV 制御方式が適用可能であること,(4)吸収 式冷凍機のエネルギー効率に対するVWV 制御の影響は 1 %未満であること,を確認した.
キーワード: 吸収式冷凍機,自動制御,シミュレーション,VWV 制御,動特性,省エネルギー,三位置制御


エリスリトールの過冷却に関する研究
副題 試料容積,容器接触面積,及び異質浮遊粒子の影響
 (pp.203-211)
 安達卓宏,中嶋達也,田中 学(千葉大学大学院)
 
本論文では,潜熱蓄熱材(PCM)であるエリスリトール をガラス製試験管に密封し,試料容積0.004 0 ~ 16 cm3, 容器接触面積0.40 ~ 28 cm2 の範囲で過冷却度を測定し た.エリスリトールの融点は118 ℃,潜熱は336 J/g で ある.試料容積と容器接触面積は,直径0.4 ~ 27 mm の 試験管を用いて変化させた.さらに,試料内の異質浮遊 粒子を孔径0.7 ~ 25μm の濾紙で濾過した実験も行っ た.実験では,液体状態の試料を冷却速度0.5 ℃/min で 30 ℃まで冷却した.その結果,過冷却度は試料容積に 強く相関し,試料容積の減少に伴って増大することがわ かった.また,孔径0.7μm で濾過した試料は過冷却度 が増大することもわかった.これらの結果より,過冷却 解消には異質浮遊粒子による不均質核生成が影響を及ぼ していることがわかった.
キーワード  蓄熱,過冷却,核生成,潜熱,相変化材料,エリス リトール


直交流熱交換器型吸着器を用いたデシカント 調湿システムの水蒸気吸着特性 (pp.213-220)
 窪田光宏,柴田翔子,松田仁樹(名古屋大学)
 
我々はデシカント除湿システムの除湿性能向上を目指 し,冷却空気により吸着熱を除去しながら等温条件下で 除湿を行うシステムに着目している.本研究では,直交 流熱交換器の一方流路にシリカゲルを塗布した熱交換器 型吸着器を試作し,冷却空気,処理空気流速,シリカ ゲル塗布量を変化させた水蒸気吸着実験をバッチ操作に て実施した.この結果,冷却空気の流通により,吸着初 期において水蒸気の吸着率が大幅に向上することを実証 した.また,冷却空気,処理空気流速が増大するほど, 各時間における吸着率も向上することを確認した.しか し,除湿性能のさらなる向上に向けては,吸着器の伝熱 促進,装置顕熱の低減の必要性が示された.
キーワード  デシカント空調,除湿装置,熱交換器,シリカゲル, 水蒸気吸着


クライオプローブまわりの模擬生体組織の凍結 (pp.221-230)
 高松 洋,内田 悟,安達健二,久保範明,藏田耕作,藤野淳市,神村 岳(九州大学・福岡大学・前川製作所)
 
癌の凍結手術には癌組織を細胞の死滅温度以下にする ことが重要であるが,凍結領域の形成の際に考慮すべき 凍結マージンに関する有用な指針が与えられていないの が現状である.そこで本研究では,まず,軸方向にほぼ 一様な氷が形成されるプローブを用いた模擬生体試料 の凍結実験を行い,得られた温度分布や凍結界面位置と ソースターム法でモデル化した理論解析結果を比較して, 解析法の妥当性を確認した.その後,市販のクライオプ ローブに対する凍結シミュレーションを行い,必要な凍 結マージン量が冷却速度に依存せずアイスボールの大き さで決定できることを示すとともに,施術する医者に とって有用な情報提供の仕方を提案した.
キーワード  凍結,凍結手術,低温医学,クライオプローブ,模 擬生体組織,理論解析モデル,シミュレーション


冷蔵庫用レシプロ圧縮機に用いる低摩擦スラスト軸受に関する研究 (pp.231-241)
 永田修平,香曽我部弘勝,関山伸哉,小野利明(㈱日立製作所・日立アプライアンス㈱)
 
冷蔵庫用レシプロ圧縮機の高効率化を考える上で,摺 動部の摩擦損失低減は重要な開発項目の一つである.本 研究では,微細加工により摺動面に動圧を発生させる周 期構造を設けた低摩擦スラスト軸受を開発し,実験的に その特性を明らかにするとともに理論計算との比較を 行った.摩擦試験では,開発したスラスト軸受は現行構 造と比較して20 ~ 60 %摩擦損失が低減することを示し, 理論計算との比較から開発した軸受では流体潤滑状態が 保持されていることを示した.また,開発した軸受を用 いた圧縮機は現行構造と比較して,冷蔵庫運転相当条件 にて圧縮機入力を1.4 %低減できることを示した.
キーワード  圧縮機,冷蔵庫,摩擦損失,スラスト軸受,動圧軸受


収着剤デシカントにおける内部拡散作用の影響
副題 熱・物質伝達率の逆温度依存性の解明
 (pp.243-254)
 前田健作,稲葉英男(前田技術士事務所・就実大学)
 
高分子収着剤の総括熱・物質伝達率に温度依存性があ ることがわかってきた.そこでデシカントロータの数値 解析方法として,収着剤内部への拡散現象と表面での吸 着現象を別々の伝達抵抗によるものとして扱い,それら が並列接続されたモデルを設定し,それぞれについて計 算で伝達率を求め,重ね合わせによって総括伝達率を求 める手法を導出した.また,温度依存性には物質拡散 率と物質伝達ビオ数が深く関与していることが明らかに なったため,それらを実験データ等から算出した.さら にシミュレーション解析から,高分子収着剤は低温排熱 利用用途ではNTU が極めて大きくなるため,デシカン トロータの小型化やコスト削減の可能性が高いことを 示した.
キーワード  デシカント空調,高分子収着剤,収着,物質伝達,熱 伝達,デシカントロータ,数値解析,物質伝達ビオ数


<特集・固液相変化現象に関わる最新技術>


細孔付き伸縮性膜を用いたカプセルの凝固伝播 と濃度変化に関する研究 (pp.255-263)
 大河誠司,久保田英之,宝積 勉(東京工業大学)
 
食品輸送の分野では,近年,潜熱を利用した保冷材の 需要が高まっている.しかし,過冷却現象が起こるた め,凝固点以下でも凍結しないという問題点がある.著 者らの一人は前報で,部分的に膜の構造を持った水の 入ったカプセルを用いて冷媒の過冷却現象を抑制する方 法を提案した.膜の中央に細孔が加工されており,細孔 から氷核が発生する仕組みになっている.本報では,細 孔の作成方法を変化させることにより,凝固の伝播への 影響を検討した.その結果,孔径が小さすぎると伝播が 起こらず,孔径が大きすぎるとカプセル内の水の濃度が 上昇してしまう,最適な孔径の存在することがわかっ た.また,細孔を作成する際の銅線の先端の形状の違い と銅線の温度により,凝固伝播の有無と濃度変化には違 いの現れることがわかった.
キーワード  膜,過冷却,保冷材,凝固伝播,氷,細孔,濃度


油中の電場付与用電極板と衝突する過冷却水滴の凍結開始
副題 電極板材質の影響
 (pp.265-275)
 川崎直仁,栩谷吉郎(金沢工業大学大学院)
  電場を付与した油中の帯電水滴は,二枚の電極板と交 互に衝突しつつ往復運動する.系が凝固点以下ならば, 衝突が凍結開始の誘因となる可能性があり,現象は電極 板材質の影響を受ける.実験はシリコーン油中で,過冷 結マージン量が冷却速度に依存せずアイスボールの大き さで決定できることを示すとともに,施術する医者に とって有用な情報提供の仕方を提案した.
キーワード  凍結,凍結手術,低温医学,クライオプローブ,模 擬生体組織,理論解析モデル,シミュレーション


Phase Field 法を用いた固体面上における氷の結晶成長シミュレーション (pp.277-287)
 熊野寛之,浅岡龍徳,山本祐治(青山学院大学・信州大学・㈱ニチレイ)
 
本研究では,結晶成長の異方性をより良く再現できる Phase Field 法を用いて固体面上で氷がどのように成長 するかシミュレーションを行い,固体面の物性値が変化 した場合に氷結晶の成長速度にどのような影響を及ぼす かについて検討を行った.また,氷結晶の異方性が生じ る方向を変化させたときの,固体面上における氷の成長 速度に関して検討を行った.その結果,熱浸透率を大き くすることにより結晶の成長速度は大きくなり,熱浸透 率がある程度以上となると成長速度は一定値に収束する ことがわかった.また,優先成長角度が10 °の時に成長 速度は最大となり,優先成長角度と法線方向の角度が小 さい場合に,成長速度が最大となることがわかった.
キーワード  氷結晶,凍結,過冷却,結晶成長,フェーズフィールド法


Pressure shift freezing を利用した氷スラリー連続生成に関する基礎的研究 (pp.289-295)
 麓 耕二,佐藤敏貴,川南 剛,稲村隆夫,城田 農(弘前大学・神戸大学)
 
本研究は,生鮮品の保冷技術分野および医療分野に おいて直接接触用保冷剤として利用可能な生理食塩水 程度の塩分濃度を有する塩化ナトリウム水溶液を用い た氷スラリー生成装置に関する研究である.本報告で は,水および水溶液の加圧に伴う凝固点降下を利用した Pressure shift freezing に基づく新しい氷スラリー連続 生成方法について実験的研究を行った.氷スラリー生成 装置は,対象溶液の圧力と温度を制御することによって 容易に氷スラリーを生成でき,さらに凝固(減圧)のタ イミングを任意にコントロールできる特徴を有している. 結果として,氷スラリーの生成特性におよぼす諸条件の 影響について以下の事を明らかにした.(1)PSF により, 連続生成可能な氷スラリー生成装置を完成させた.(2) PSF により,氷のIPF は対象溶液の付加圧力と温度の 調整により設定できることを示した.(3)氷スラリーの 氷粒形状は,過冷却度が高いほど微細かつ球形状に成る ことがわかった.
キーワード  氷スラリー,Pressure shift freezing,連続生成,塩化 ナトリウム水溶液,過冷却凝固



氷粒子充填層内の空隙率分布を利用した融解形状の能動的制御に関する研究 (pp.297-306)
 浅岡龍徳,熊野寛之,岡田昌志,五十嵐史雄(信州大学・青山学院大学)
 
本研究では,空隙を利用した氷粒子充填層の融解形状 の制御手法を提案した.また,その初期段階の検討とし て,空隙領域の位置と融解形状の関係に関する基礎的な 検討を行った.その結果,適切な位置に空隙領域を設置 することで,融解領域の形状を変化させることができる ことを示した.また,融解領域が分岐することで2 つの 突出部が生じ,その間の領域において氷の融解が促進さ れることを示した.また,融解領域の突出部の高さの差 が大きくなることで,一方からの融解が停止することの 対策として,複数の空隙領域を適切な位置に設置する方 法を提案し,これにより,融解領域の突出部の高さを揃 え,安定的に融解領域を広げることが可能となることを 示した.
キーワード 氷蓄熱,融解,熱伝達,氷粒子充填層,水路


クランク型流路内における氷スラリーの流動および熱伝達 (pp.307-318)
 川南 剛,富樫憲一,波多野周平,麓 耕二,平澤茂樹(神戸大学・弘前大学)
 
トレハロース水溶液を液相とする氷スラリーを対象 に,クランク形状流路内における流動と熱伝達に関する 実験的検討を行った.実験パラメータとして,氷スラ リー流速,流路壁面熱流束,流路の設置姿勢,および曲 り部における流路幅を変化させ,流動模様の観察を行う とともに各流路壁面における熱伝達率分布の評価を行っ た.さらに,同様の条件において単相の水溶液を用いた 実験を行い,双方の結果を比較することで氷スラリー特 有の伝熱現象について検討を行った.
キーワード  対流,融解,蓄熱,混相流,氷スラリー,流れ模様


氷スラリーによるチルド水供給設備に関する研究
副題 蓄氷解氷同時運転での満蓄制御と給水制御
 (pp.319-329)
 三戸大介,万尾達徳,谷野正幸,松本浩二(高砂熱学工業株式会社・中央大学)
 
過冷却方式の氷蓄熱システムは,ビル空調や地域冷暖 房向けのシステムとして実用化されている.これらのシ ステムの蓄熱材である氷スラリーは解氷特性に優れてお り,食品工業向けの低温冷水供給にも適している.しか し,氷スラリーを食品工業で用いるためには,工場独特 の使用条件に即した運転制御技術を新たに開発する必要 がある.本報では,運転制御の内容を説明した上で,取 水温度の予測シミュレーションを用いて氷スラリーの解 氷特性を評価した.その結果,製氷解氷同時運転にて約 1 ℃の低温冷水を安定的に供給できることがわかった. また,氷層盛り上がり高さによる満蓄制御や,氷層空隙 率の計測結果に基づく給水制御が,有用であることがわ かった.
キーワード 蓄熱,氷スラリー,チルド水,食品工業,氷充填率


乳製品加工工場における氷スラリーによるチルド水供給設備 (pp.331-339)
 三戸大介,万尾達徳,谷野正幸,本郷 大,若佐和夫,松本浩二(高砂熱学工業株式会社・中央大学)
 
水の過冷却現象を利用したダイナミック型氷蓄熱シス テムは,空調負荷平準化のための大型熱源として実用化 されてきた.我々は,本氷蓄熱システムが淡水のみを蓄 熱媒体としていることや優れた解氷特性を有しているこ とから,食品冷却プロセスへの適用について検討してき た.その結果,本氷蓄熱システムをチルド水供給設備と して乳製品加工工場に納入した.本報では,冷凍機や蓄 熱槽容量決定のための設計計算結果や,チルド水温度の 維持に必要な蓄熱槽の氷充填率を計算した結果を紹介す る.さらには,満蓄制御や給水制御などの新技術を食品 工場に導入した結果として,実際の負荷処理下でのIPF やチルド水温度の時間変化を紹介する.
キーワード 蓄熱,氷スラリー,チルド水,食品工業,氷充填率, 運転制御