88     廃棄物発電  


     廃棄物エネルギーを利用した発電を総称して「廃棄物発電」という.
     毎日の生活から排出されるごみ(廃棄物)は無害化・減容化・安定化などのために焼却処理されることが多い.しかし,その際に発生する熱エネルギーは有効利用があまり進んでいない.この廃棄物エネルギーは,未利用エネルギー・新エネルギーの中で,最も有効利用がはかりやすいエネルギーの一つと考えられている.
     1997年12月の気候変動枠組条約 第3回締約国会議(COP3)において,我が国は2008~2012年において,1990年比で温室効果ガスを6%削減することを約束した.それを受けて,1998年9月「総合エネルギー対策推進閣僚会議」において「長期エネルギー需要見通し」が改訂された.そのエネルギー供給構造の主要施設の中で,「新エネルギー」は「原子力発電」とともに大きな期待がかけられている.その新エネルギーの中でも「廃棄物発電」は,現状約95万kW(平成9年度末)の発電設備規模が,2010年に500万kWの設備規模目標が掲げられ,「新エネルギー」の柱として期待されている.

廃棄物ガス化溶融発電システム例(流動床炉+燃焼溶融炉)


     廃棄物発電は,廃棄物エネルギーの利用であるから化石燃料の使用を削減し,新たなCO2発生を抑制できる.この電力は連続的に得られる安定した電力で,新エネルギー(太陽光発電・熱利用,風力発電,廃棄物発電・熱利用,温度差エネルギー等)の中では供給の安定性が高いのが特徴である.また,発電と併せて廃熱を利用した,温水・蒸気供給などのコージェネレーション(熱電併給)システムを構築して,より高い効率利用の可能性がある.
     現在稼動している廃棄物発電システムは,廃棄物の受け入れ設備,焼却炉とこれに組み込まれたボイラーと過給器,電力を取り出す蒸気タービンと発電機,排ガスをクリーン化する排ガス処理装置,灰処理施設などで構成されているが,発電効率が低いのが現状である.
     廃棄物発電を2010年に500万kW規模で達成するには現状技術のみでは限界があり,より環境面とエネルギー効率面ですぐれた技術の出現が期待される.
     あらたに,ダイオキシン規制・ごみ資源活用法(容器包装リサイクル法との関連)・発電効率の高効率化・処分場の容量不足対策などに対する新技術として,「廃棄物ガス化溶融炉発電技術」が注目されている.この技術は,ごみの熱分解ガスを高温燃焼することによりダイオキシン類の発生を抑制し,また熱分解残査(灰など)を溶融固化して有効利用可能なスラグとして回収して,灰の減容化を行うことが可能な廃棄物発電技術である(図参照).   
    また,発電効率を高める技術として,従来システムの蒸気温度を400~500 ℃とするシステムや天然ガスを補助燃料として発生蒸気を再加熱する「リパワリング複合発電」,ごみを固形化燃料(RDF)にして発電を行う「RDF発電」なども研究・実用化がはかられている.