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遺伝子組換え組織
(GMO:Genetically Modified Organism)(1)
                                


  最近、遺伝子組換えについてその有用性と安全性への議論が連日、紙上を賑わしているが、正・否の結論は一朝一夕 には出ない。しかし遺伝子組換え技術の進展を留めることは好むと好まざるに関わらず極めて難しい。従って、まず現状 で認識されつつある、その有用性と安全性について絵図でなぞってみる。
(1)遺伝子の仕組み (図1参照)
 生物の体は細胞の集りから成り、その一つ一つの細胞の中に核があり、その 中にDNA(デオキシリボ核酸)という物質が折りたたまれ、ぎゅっと詰まっ た染色体が入って、ここに遺伝子(genes)が存在する。これからひき伸ばし たDNAは、はしごをねじらせた螺旋状の構造で、たて棒が糖都リン酸の2本の 長鎖で、横木の部分が2個の塩基でできている。遺伝情報(Genetic profile)は この塩基部分にあって、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G) の4種類の塩基で、必ずAとT、GとCの組合せになっている。
 タンパク質はアミノ酸がつながった分子で、塩基配列により次々につながって タンパク質ができる。即ち種を越えた遺伝子組換えが可能なのはそのためである。
 染色体の一揃いをゲノム(Genome)というが、「ヒトゲノム」には約30億対、 60億個の塩基がある。一方、遺伝子は10万個程度なので、一つの遺伝子に 数百~数万個の塩基が含まれている。即ち、塩基配列を全て解析し遺伝子機能を 解明しようというのが「ヒトゲノム計画」で、塩基配列については2001年までに 解明されるようだが、どこにどんな機能の遺伝子があるかの解明には まだまだ時間がかかるとされている。

   図1 細胞からDNAまで

(2)遺伝子組換え技術
 これら塩基の配列と機能が解明されてきたため、或る組織から有用な遺伝子を取り出し、他の 細胞に入れ農作物等の改良に応用されるようになった。これらは従来の交配技術に比し、 ①育種期間の短縮、②有用遺伝子のみの付加で育種が正確になる、③改良品種の拡大、 などの利点があげられている。
 以下、図2にゲノム解析研究(イネ・ゲノムの解析)、図3に組換えDNA技術(トマトの商品化)、 を示し、組換え農産物の作り方については図4にアグロバクテリウム利用法、図5に組織細胞に直接・遺伝子 を入れる方法(①エレクトロポレーション法、②パーティクルガン法、③ポリカチオン法)を絵図解で紹介する。
図2 イネ・ゲノムの解析         図3 組換えDNA技術(トマトの商品化)
図4 アグロバクテリウムを利用した組換えDNA技術 図5① エレクトロポレーション法による組換えDNA技術
  (3)食品への応用例
 
①医薬品(インターフェロン、B型肝炎ワクチン、インスリン、エリスロポエチン(貧血治療薬)、ヘルペスワクチン(虚血性心疾患治療薬等))

②動物用医薬品(インターフェロン等)
③試薬
④工業用酵素(衣料用、洗剤用)
⑤ワタ、タバコ、色変りカーネーション等、生分解性プラスチックのナタネ・シロイヌナズナ等からの生産
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

図5③ポリカチオン法による組換えDNA技術


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