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パンデミック(pandemic :世界的な大流行)
                             


 2009 年5 月初旬,連日ニュースなどで報じられているように,メキシコで発生した新型インフルエンザ(豚由来イン フルエンザA/H1N1)は,世界的な大流行(pandemic :パンデミック)の兆しをみせている.筆者が本記事執筆中の5 月12 日時点では,世界保健機構(WHO)によると,世界29 カ国で4 000 以上の感染確定例が確認されており,6 段階あ る警戒段階をパンデミック期の1 段階前のフェーズ5 としている*注.読者の方々がこの記事を手にする頃には,どうい う事態になっているのか,予断を許さない状況である.
 もともとのパンデミックという言葉は,感染症の世界的な大流用を表す言葉で,AIDS などにも使用されてきた.イ ンフルエンザについては,「インフルエンザ・パンデミック」というべきところを,最近特に鳥インフルエンザウイル スによる新型インフルエンザの脅威が指摘されるようになって,「パンデミック」が「インフルエンザ・パンデミック」 の意味でも用いられる.
 過去のインフルエンザ・パンデミックで20 世紀以降記録されているものとして,1918 ~ 1919 年のスペインインフル エンザ(スペイン風邪),1957~1958 年のアジアインフルエンザ,1968~1969 年の香港インフルエンザ,1977年のソ連 インフルエンザがある.このなかでも,特にスペインインフルエンザは,抗生物質やワクチンのない時代でもあり,被 害の大きさで際立っている.患者数は世界人口の25 ~ 30 %,あるいは約5 億人で,致死率は2.5 %以上,死亡者数は全 世界で4 000万~5 000万人あるいは1億人ともいわれている.日本では,内務省の統計によると患者約2 300万人,死亡 者約38 万人と記録されているが,死亡者45 万人と推計する研究者もいる1)
 新型インフルエンザウイルスは,動物にのみ感染していたインフルエンザウィルスが,当初は偶発的に人へ感染し, 遺伝子の変異によって人の体内で増殖できるようになり,さらには人から人へ効率よく持続的に感染するように変異し たものである.今回のインフルエンザウィルスは,かねてから危惧されていたA/H5N1 型の鳥インフルエンザの変異型 ではなく,ブタH1N1型ウイルスとヒトH1N1型ウイルスの間で遺伝子交換が行われて,新たなウイルスが生じたものと いわれている2).いずれにしろ,これらの新型ウィルスは,人類にとっては未知のウィルスであり,人は免疫を持たな い可能性が大きい.この場合,容易に人から人へ感染して拡がることとなる.現代においては,人類はグローバル化に より,1918年のスペイン風邪のころとは比べものにならないくらいの密度,速さ,スケールで活動しており,一旦,新 型インフルエンザが発生すると,爆発的なパンデミックが起きる危険性をはらんでいる.
 パンデミックが起きた場合の一般的な想定として,医療機関への過剰な負荷による医療サービス供給破綻,社会基盤 従事者への感染による社会基盤の機能マヒ,企業活動の停止などによる社会機能の破綻や莫大な経済損失が挙げられる. こうした最悪のシナリオに備えるために,社会全体としての対策や取組みが必要であることは,改めていうまでもない ことであろう.
 空調設備では,陰圧制御,フィルタ,抗菌,除菌,殺菌,滅菌が関連する技術要素である.また,インフルエンザウ ィルスを不活化するために,湿度制御の重要性も指摘されている3)
 2007 年9 月号の最近気になる用語に「鳥インフルエンザ」が掲載されている.こちらも一読下さい.
 
参考文献

1)国立感染症研究所感染症情報センター(http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/05pandemic.html),インフルエンザ・パンデミッ クに関するQ&A(2006/12改定).
2)ウィキペディア(Wikipedia) http://ja.wikipedia.org/wiki/,‘2009 年新型インフルエンザ’
3)阪田総一郎建築設備と配管工事,1-5(2005.1).
*注:2009 年6 月11 日,WHO は警戒段階を最高位のフェーズ6 に引き上げて「パンデミック」を宣言した.

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