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ATP関連化合物
                             

 核酸の構成成分である塩基と五炭糖が1つずつ結合したものをヌクレオシド(nucleoside), その五炭糖に部分にリン酸が結合した化合物をヌクレオチド(nucleotide)といい、これらは核酸成分または その関連化合物なので、核酸関連化合物ともいわれている。魚介類の筋肉中ではアデニンヌクレオチド(adenine nucleotide) およびその分解物が核酸関連化合物の主成分である。魚介類筋肉中のアデニンヌクレオチド含量は1g中4~9μmoleで、休息筋では 大部分がATP関連化合物である。ATPは生きている魚類では筋収縮に直接関与し、運動により、また、死後、分解は次のように進む。
  ATP→ADP→AMP→IMP→HXR(イノシン)→Hx(ヒポキサンチン)
ATP分解は早く、数時間でほとんどが分解される。さらにIMPまでの分解は比較的早く進行するが、IMPの分解は緩やかであり、 IMPが蓄積される。無脊椎動物においてはIMPを経由しない分解形式をとるものが多い。
 魚類の鮮度低下に伴っても同様に進むため、これらの化合物は鮮度指標として、以下のようにK値として計算され用いられている。
  
K値(%)=(HxR+Hx)/(ATP+ADP+AMP+IMP+HxR+Hx)×100
 
 魚肉の冷凍については、筋肉中にATP含量が高い状態で凍結した魚肉は、解凍時に硬直(解凍硬直)を起こし、 多量のドリップが出て品質が低下する。とくに近年、冷凍技術などの発達により、高鮮度の魚肉を急速冷凍することが 可能となった一方、マグロ肉などの解凍硬直が大きな問題となっている。
 このような解凍硬直を抑制するためには、緩慢解凍を行ない、解凍中にATPを消費させることも一つの方法である。 しかし、ATPは魚肉タンパク質の凍結変性保護効果があるといわれ、高品質を求める現代の消費者ニーズに対応するためには 、高ATP含量での凍結、貯蔵を行い、解凍硬直の起きない条件での解凍が理想的であるので、水産物冷凍ではこのような 冷凍解凍システムの構築が課題である。
 ATP関連化合物は、IMPなど水産物の呈味に関与する成分も多い。IMPはグルタミン酸ナトリウム(MSG)などの うま味成分および一部のアミノ酸の呈味に対して相乗効果をもたらす1,2)。ヒトではIMP自身は弱い うま味しか呈さず、唾液中のMSGとの相乗効果によりうま味として感じているという説もあるが3)、 その一方、マウスに対しては味覚神経応答が見られ、マウスでは呈味として感じているということが報告されている4)。 また、AMPもそれ自体無味であるが、味の相乗効果をもたらすなど呈味発現に関与するといわれている5)。 一方、ヒポキサンチンは苦味を有し、氷蔵タラ肉の苦味の原因物質であると報告されている6)
文 献


1)S.Yamaguchi:J.Food Sci.,32,473(1967)
2)G.Nelson,J.Chandrashekar,M.A.Hoon,L.Feng,G.Zhao,N.J.P.Ryba,and C.s.Zuker:Nature,416,199-202(2002).
3)S.Yamaguchi:Food Rev.Int.,14,139(1998).
4)Inoue,G.K.Beauchamp and A.A.Bachmanov:Chem.Senses,29,789-795(2004).
5)T.Hayashi,K.Yamaguchi and S.Konosu:J.Food Sci.,46,479(1981).
6)N.R.Jones:Proc.Flavor Chem.Symp.,p.61,(1961).

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