91    凍上  


     冷蔵倉庫が床面下に放熱された冷熱により,地盤が凍結・膨張し,その上の床面の一部が浮き上がることをいう.このような現象は冷蔵室の温度がC2級(-2~-10 ℃)以下の場合に発生する.
   凍上の原理は冷蔵倉庫床面下の土壌の氷結によるものである.土中の水が氷結し,更に生長し続けようとするため,土中の水分は次第に減少する.このため,土は乾燥した状態となるので,下からの水分の吸上げが続き,凍上が成長する.一般的に凍上を発生させる要因は,地下水,温度,土質であるといわれているが,地質調査により凍上の可否を判定することは困難なようである.
   C2級以下の低温冷蔵倉庫では,すべて凍上防止計画を設計上で取入れているが,現在一般的に採用されている方法には次のものがある.
  (1) 床面をG・Lより立ち上げ床下に空間を設け,床下に通気されるようにする.(高床式)
  (2)床面がG・Lとほぼ同レベル(低床式)の場合は,床下(土中)に通気管を埋設して,この管内に通気があるようにする.
   高床式では各地中梁と外壁に通気孔を設け,外壁の通気孔に通気筒を接続して立ち上げておく.
   低床式では一方向に通気管を埋設し,その両端は庫外の気中に立ち上げておく.
   実際に発生した凍上事故の概略を紹介する.

図1

  (1) 高床式約2 000トン級の鉄筋コンクリート平家建,F1級(-25 ℃)の冷蔵庫の場合,竣工より5年を経過して,図1に示す庫内中央部に凍上現象が現われた.この冷蔵庫の各地中梁には200mmの丸孔を設けており,外壁の通気孔は建物の四隅に設けたトレンチ(開口溝)部であり,この場合は通気が庫の中央部に流れないような状態に近いことと,地下水の条件が重なって,凍上が発生したものと考えられる.
   この建物の大梁は900mmの高さがあり(中間梁は750mm),凍上部の梁はスパンの中央部で斜めに全高に対し,亀裂が走っていた.
   また,屋上の天井コンクリートも膨らんでいた.
   凍上部は盆状に盛り上がり,電動フォークリフトはスリップして走行できなかった.
  (2)低床式鉄骨平屋建F1級(-25 ℃)冷蔵庫の場合は,中仕切部(-25 ℃の庫を区切る)の中央部分に凍上が発生した.この場合,図2に示す仕切部の柱部分のスペースは床より天井まで密閉度の高い空間となり,この部分の空気が冷却され常に低温であるため,防熱のないコンクリート部分から土壌が冷却され凍上に至った.
   これらの凍上例での復旧は,(1)の場合は凍上部に向かって二方向よりL字型の大きなトンネルを堀り,調査・復旧のため通路と換気用として,土壌凍結部の解凍を行うようにして,盛上り部を沈下させた. その後,梁部の補修・補強と屋上の防水を修復した.このような大掛かりな補修を行うようなケースは特殊なことではないかと考えられる.
   (2)の場合は,通気管は間仕切部と並行して埋設されていたので,直近の複数の管に電気ヒーターで昇温した空気を連続強制通風して,凍結部の融解を計り,凍上を沈下させ,のち仕切部分の補修をした.

図2