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デシカント空調機
                             


  デシカント(Desiccant)とは、乾燥剤または除湿剤の意味である。外気を室内に導入する場合、在来方式では冷媒を 使ってコイルを冷却し、空気中の水分を結露させることで除湿或いは減湿を行っており、場合によっては再熱が必要である。 これに対し、デシカント空調システムでは乾燥剤により空気中の水分を直接除去する。しかる後に顕熱のみを所要レベルに 低下させる。つまり、在来方式では除湿のためには空気を潜熱・顕熱の一体処理するのに対し、デシカント 方式では潜熱と顕熱とを分離処理して、省エネ効果や数々のメリットを享受できる。
 デシカント剤には塩化リチウム、シリカゲル等が使用され、最近では優れた防湿性能を持つゼオライトも使用される ようになっている。除湿のメカニズムは除湿剤表面のマイクロボアによる吸着であり、デシカント空調機は「乾式吸着 除湿空調機」ということもできる。
 空調機は(1)除湿ロータ、(2)顕熱交換ロータ、(3)再生用温水ヒータ並びにコイル、(4)再生側蒸発式冷却器、 (5)処理側温水コイル(暖房用)、(6)処理側・再生側ファン、(7)処理側と室内換気側のフィルター等で構成される。 ユニットは処理側と再生側に分割され、ロータは双方に跨るように分割され、双方の空気流は対向流となる。ロータはシールされ、 対向する空気流が反対側に漏れないようにしている。
  処理空気流は外気(或いは室内還気または外気・還気の混合)を除湿ロータ通過時に除湿される。しかし、除湿の際に 吸着熱が処理空気流に放出される。除湿ロータ通過後温度の上がった乾燥空気を顕熱交換ロータを通過させて室内からの 還気(更に蒸発式冷却器により温度を下げた空気)との顕熱交換を行い、常温にして給気する。更に冷却するには 冷水コイル(12~13℃程度でよい)を通してポストクーリングしても良い。再生空気流は室内還気(或いは外気または 外気・還気の混合)が蒸発式冷却器により冷却後、除湿ロータ再生のための内包する温水ヒータからの温水をコイルに 供給、再生空気を温水コイルを通過させて加熱し(温風温度93℃以下)除湿ロータの再生を行い、もってロータの連続使用が 可能となる。
 除湿運転中は処理側で発生する吸着熱は、顕熱交換ロータにより85%効率で再生用に回収される。温度ヒータは通常 ガス焚きであり、また各種排熱(コジェネ或いはGHP)も利用できる。また、潜熱は処理済であるので、室内の顕熱設定は 高めでよい。省エネに有効とされる所為である。
 用途は、冷凍ショーケースを多く有するスーパーマーケット、劇場・映画館など人の多く集まる所、IAQ(室内空気質) の観点から多くの外気取り入れの必要あるところ、工場などで厳しい温湿度条件が要求されるところなどである。
 現在市販されているものは、処理風量3400~22000CMHのものである。
 

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