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 ビッグデータ  
 
学会誌「冷凍」に掲載された記事を集めました。
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  ビッグデータとは,「事業に役立つ知見を導出するためのデータ」1)である.近年,膨大なデータを収集,蓄積,分析 することで,経済活動に有効なことが明らかとなってきた.このようなことが可能となった背景には,以下のようなテクノロジーの進歩がある
 これらの環境整備が整ったため,気象情報,GPS 情報,口コミ情報,ネットの検索履歴,e コマースの購入情報や監 視カメラの映像に至るまで様々な情報を収集,蓄積,分析することで,交通,製品開発,防災,広告,品質管理などに データの活用が行えるようになった.
 具体的には,A 市に居住し,B 市に通勤し,週2 回レストランで食事をし,月2 回CD をレンタルする30 歳の男性に 限り広告を出すことが可能となる.我々の冷凍分野でも,気象情報,受注情報,入・出庫計画,在庫データを基に,庫 内温度が変化する前に冷凍機の運転を制御したり,費用が最小となるようにメンテナンス計画を立てることも可能であ ろう.米国では2012 年の大統領選挙でもビッグデータが活用されたということである.たとえば,SUV を運転し,最 近スーツを購入した50 歳以上の白人男性のうち,居間に聖書があれば共和党支持者,現代絵画が飾ってあれば民主党支 持者であると分析し,有権者の心を効果的につかむことができたという.
 ビッグデータの活用には政府も力を入れているようで,総務省の情報通信審議会ICT 基本戦略ボード・ビッグデータ の活用に関するアドホックグループでは,今後少なくとも10 兆円規模の付加価値創出と12 ~ 15 兆円規模の社会コスト 削減の効果があるとしている1).
 ただし,いいことずくめの話でもなさそうである.スノーデン事件でも米国がビッグデータを広範囲に収集していた ことが世界に衝撃を与えたし,国内でもSuica の利用情報が利用者に説明がないまま企業に提供されていたことで,現 行法でのプライバシー保護の弱点も指摘されている2).技術の進展を人間の理性がいかにコントロールしていくか,我々 のモラルが試されている.

1) 総務省平成24 年度情報通信白書第1 部第1 節より.
2) 朝日新聞社説,2013 年8 月14 日朝刊12 版,p. 11,朝日新聞社(2013).
参考:使える!ビッグデータ,週刊東洋経済,第6456 号,2013 年4 月20 日,pp. 76-85,東洋経済新報社(2013).
 

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