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フート仕様逆止弁
                             


 フート弁とは,開放回路のポンプ吸込管端に設置する弁である.ポン プの運転が停止しても落水しないように逆流防止構造となっている.一 般には,水中に設置されるため点検や交換に手間がかかる.そこで,代 案として開放蓄熱槽の汲上げ配管の途中に,スプリングを内蔵した急速 閉鎖型のリフト式チャッキ弁を設置する方法がある.近年,使用される 機会が増えているので,その内容を概説する.
 図1は,設置要領図である.ポンプの吸い込み側配管の水面上部に設 置することが,通常のフート弁との相違である.本逆止弁は管端に設置 しないので,厳密にはフート弁ではない.機能が同等という意味でフー ト仕様と称す.
 “水を張った水槽から試験管を持ち上げても落水しない”という大気圧実験 (図2)を思い出してほしい.本逆止弁は,この原理を応用したものである.ジス クをスプリングで比較的柔らかいシートパッキン(たとえばNBR60゜)に押しつ けることにより,密閉性を向上させ,大気圧で落水を防止する.
 図3に構造図(例)を示す.スプリングが内蔵されており,ジスクをシートパッ キンに押しつける構造である.要求される閉鎖時間や圧力損失などの条件で,ス プリング強度を選択することができる.NPSH の観点から,開放回路ではポンプ 吸込側の配管抵抗を小さくしたいので,スプリング強度を メーカと打ち合わせる必要がある.また,材質もステンレ スや樹脂ライニングなどが用意されているので,流体や用 途で選択可能である.
 図4,5は,動作の概念図である.ポンプ停止時は,ス プリングでジスクがシートパッキンに押しつけられ止水し ている.ポンプが起動し,流水力がスプリング力を超える と,ジスクがシートパッキンから離れ,流水する. 本逆止弁の特徴を下記に列記する.
 ・スプリングで止水しているので,落水し難い.
 ・縦配管,横引き配管にも設置可能.
 ・水面上部に設置できるので,点検,取替が容易.
 ・本体を配管から外すことなしにメンテナンスが可能 な,アングル型も用意されている.
 なお,通常のフート弁と同様に,“吸込横引管を流れ方 向に上向き勾配とする”,“ごみ噛みが発生しないよう水 槽内を清潔に維持する”ことが,安定した動作の確保に 重要となる.

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