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HFO-1234yf
                             


 オゾン層破壊や地球温暖化の問題がクローズアップされ,地球規模の対策としてモントリオール議定書や京都議定書 が採択され,現在次の段階の取り決めが模索されている.
 冷凍空調の分野における地球環境に係る問題として,冷媒によるオゾン層破壊や地球温暖化が挙げられ,オゾン層破 壊係数を有する冷媒の消費量規制や地球温暖化係数(GWP)の高い冷媒の代替化,冷媒漏洩の防止対策などの検討が進 められている.特にEUにおいては,欧州F-Gas 規制(F-Gas Regulation)が制定され,乗用車および軽トラックのエアコ ンに使用される冷媒はGWP が150 以下であること,また今後6 年間でHFC-134a 使用に関して規制されることとなった. 2011年1月から発売される新型車から段階的廃止が始まり,2017 年1 月からのすべての新車への使用を禁止することと している.
 このような背景から,DuPont 社とHoneywell 社が自動車空調用の代替冷媒の開発が急務と考え,共同で検討を行って きた結果,HFO-1234yfが最も有望と結論付け,冷却性能,エネルギー効率などの確認試験や毒性の試験を行い適用可能 との結論を得て,商品化へ向けた最終段階に至っている. HFO-1234yf(ハイドロフルオロオレフィン)は以下の特徴を有している.

・毒性が低い《ASHRAE Class A(low toxicity)》.
・熱的安定性が良い.
・温暖化係数(GWP)= 4    オゾン層破壊係数(ODP)= 0
・HFC-134aと特性が似ており,冷却性能,エネルギー効率の違いも5 %以内であり,代替として有望である.
・わずかに可燃性がある《ASHRAE A2》(ただし,HFC-152a,R 32などより小さい)
・直接膨張方式対応可能(二次冷媒不要).
・LCCP が,CO2,HFC-134a に比べ低い.
・現在の標準機器の構成や材質で使用可能

 
 米国においても同様にHFC-134a の使用規制に関する法案が提出され,自動車用エアコンのほか工業界全般での地球温暖化ガス排出の削 減が始められている.わが国もこの動向に追従し,メーカーではHFO-1234yfの実用化試験が進められている.

表  HFO-1234yf とHFC-134a の比較
項 目HFO-1234yf HFC-134a
沸 点-29 ℃ -26 ℃
臨界温度95 ℃ 102℃
蒸気圧力(25 ℃) 0.677 MPa 0.665 MPa
蒸気圧力(80 ℃) 2.44 MPa 2.63 MPa
GWP(100 年) 4 1410
ODP 0 0

* DuPont社HPから抜粋
 
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