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低炭素社会および冷媒の見える化
                             


 「低炭素社会」とは,究極的には,温室効果ガスの排出量を自然が吸収できる量以内に留める(カーボン・ニュート ラル)社会を目指すものである1).現状の世界の温室効果ガスの排出量は自然界の吸収量の2倍を超えており,世界の温 室効果ガスの排出量は今後数十年に渡って引き続き増加するものと考えられる.そこで,平成19 年5 月に我が国から世 界に向けて発信した「美しい星50」では,「世界全体の排出量を現状に比して2050 年までに半減する」ことを世界全体 の目標として国際的に共有することを提案している.たとえば世界の温室効果ガスが半減した時点で,仮に一人当たり の排出量が世界全体で同じになるとすると,先進国では現在の2 ~ 3 割程度の一人当たりの排出量に,途上国では経済 発展,生活の質の向上を達成しながらも,現状程度の一人当たり排出量に留めることが必要である1).このような社会 は,現在のやり方のままでは実現できないと考えられるため,以下のような3 つの基本的理念1)のもとに,取組みを進 めていくことが必要である.
 (1)カーボン・ミニマムの実現:社会のあらゆるセクターでの温室効果ガス排出の最小化.
 (2)豊かさを実感できる簡素な暮らしへの志向:大量消費からの脱却,「もったいないの心」などに価値を置くこと による生活の質の向上.
 (3)自然との共生: CO2吸収など温暖化対策に不可欠な森林などの維持・再生.
低炭素社会の具体的イメージとしては,モーター駆動自動車(プラグインハイブリッド自動車,電気自動車,燃料電 池自動車),エネルギー効率の高い機器(高効率ヒートポンプ,燃料電池など),高断熱住宅,自然エネルギー利用機器 (太陽電池など),低炭素型電力インフラ(先進的原子力発電,バイオマスエネルギーなど再生可能エネルギーなど),な どが挙げられる.
 低炭素社会実現のための戦略は多数あるが,その中の一つとして,温室効果ガスの「見える化」技術の開発・普及が ある.
 温室効果ガスである冷媒フロンの温暖化効果は,二酸化炭素の数百倍から数千倍と極めて大きいため,万が一,冷凍 空調機器からフロンが放出された場合には,その環境への影響は極めて深刻である.このことを直接的・具体的に認識 できるようにするためには,フロンを二酸化炭素換算量で表示する「見える化」が効果的である2).たとえば,空調機 用冷媒であるフロンR 407C の1 kg はCO2 換算量1 700 kg に相当し,冷蔵庫用冷媒であるフロンR 134a の1 kg はCO2 換算 量1300 kg に相当する.
 (社)日本冷凍空調工業会では,エアコンをはじめ冷凍・空調機器に含まれる冷媒の温暖化の影響度合いを表示する冷媒 の「見える化」を行うことを決定し,平成21 年8 月5 日に報道発表を行った3).この冷媒の「見える化」は,一般消費 者や機器のユーザー,機器の設置工事・修理にあたる方々が,冷媒の大気中への排出による地球温暖化の影響を認識し, 使用時排出の削減,廃棄時回収率の向上を図ることを目的としている.冷媒の温暖化の影響度合いを二酸化炭素に換算 した値を表示するとともに,廃棄時などの適切な処理を呼びかける注意喚起表示を行う.この冷媒の「見える化」表示 は,平成21 年の秋以降出荷される機器から順次行われる.
 
文  献

1)環境省低炭素社会づくりに向けて(論点整理),(平成19 年12 月11 日).
2)経済産業省冷媒フロンの「見える化」について,(平成21 年3 月17 日).
3)日本冷凍空調工業会冷媒の「見える化」に関する報道発表について,(平成21 年7 月28 日).

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