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世界水フォーラム
                             


 現代社会は,公害,オゾン層破壊,地球温暖化というように環境関連の問題が次々と顕在化し,国際的な取り組みが なされている.そして,近年それらの問題に加えて水に関する懸念も広がってきている.
 洪水や長期に渡る干ばつなどの水に関する災害は世界各地で発生し,報道を通じてよく目にする状況であり,人口増 加や経済発展に伴い水需要はますます増加し,水不足の悪化も予想されている.このような水に関する災害や資源とし ての水について議論するために開催されているのが,「世界水フォーラム(World Water Forum)」である.
 このフォーラムは,フランスのマルセイユに本部を置く民間のシンクタンク「世界水会議(World Water Council)」に よって運営されており,下表に示すとおり1997 年から3 年ごとに「世界水の日」(3 月22 日)の前後に開催されていて, 第5 回の世界水フォーラムがちょうどこの原稿を書いている時期(3 月16 日(月)~ 22 日(日))にトルコのイスタンブー ルで開催されている.
 世界水フォーラムは民間団体が運営するものであるが,多くの国々から政府関係者や政府代表が参加し,閣僚級の国 際会議が開催され閣僚宣言を出しており,各国の水に関する政策やその議論に大きな影響を与えている. 水資源の問題は人類に多面的な影響を与える問題である.たとえば,農業には大量の水が使用されているため,水不 足は食糧問題に直結する問題であり,多くの食料を輸入している我が国も世界の水不足の深刻化は,対岸の火事では済 まされないのである.
 また,日本では問題になることは稀であるが,世界に目を向けると飲料水の入手が極端に困難であったり,清潔なト イレなどの適切な衛生設備を利用できないなど,水資源の問題によって健康で衛生的な生活を営むことができない人々 が世界には大勢いる.さらに,水質汚染や水利権などを原因とする国際 紛争の危険のある国際河川も世界には数多くあるのである.水は国境を 越えて大循環をしている資源である.人類が安全で健康な生活を営み続 けられるように,世界水フォーラムを含めて各国が協力して水資源に関 する問題の解決を図っていく必要がある.
 開催年 開 催 地
第1 回1997 年マラケシュ(モロッコ)
第2 回2000 年ハーグ(オランダ)
第3 回2003 年京都(日本)
第4 回2006 年メキシコシティ(メキシコ)
第5 回2009 年イスタンブール(トルコ)

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