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チーム・マイナス6 %
                             

今年に入ってから,チーム・マイナス6 %という言葉をよく聞く.あらためて言うまでもなく,これは京都議定書と 関係がある.この議定書によれば,今年から2012 年までの間に,1990年を基準とした温室効果ガスの排出量を6%削減 する義務が日本にはある.チーム・マイナス6 %は,この数値目標に家庭・産業が一致して近づけるための一大キャン ペーンの名称である.
キャンペーンのホームページ(http://www.team-6.jp/index.html)によれば,このキャンペーンは,環境省地球環境局地 球温暖化対策課国民生活対策室の肝煎りで,CO2排出量削減のための6つのアクションプランを特に個人向けに訴えてお り,チームへの参加を呼びかけている.2/18 現在で,個人で約200 万人,団体で約17 000 が参加している.1990 年を基 準とすると,CO2排出量は既に7%近く増えているが,同ホームページによれば,そのうち産業部門の増加率が0.3%に 対して,家庭部門は31.4 %である.上記のホームページでは,CO2 排出量の約478 × 10 6 t が産業部門で,約170 × 10 6 t が家庭からによるものと記載されている.キャンペーンが提唱する6つのアクションプランは,温調,節水,自動車,家 電製品,買い物とゴミ,電気の使い方(待機電源など)について具体的に行うことを提言しており,これらを総合する と,1 世帯当たりの年間CO2 排出量の削減率が4.8 ~ 6 %程度になると見積もっている.
ホームページでは,全CO2排出量の数値が記載されていないが,数年前の段階では,合計で約1300×106 t 程度1)であ る.すなわち,家庭部門のCO2 排出量が全CO2 排出量に占める割合は10 %強ということになり,チーム・マイナス6 % のアクションプランによると4.8 ~ 6%の削減率なので,全CO2排出量の0.5~0.7%程度を削減できる試算になる.一方, 産業部門のCO2排出量が全CO2排出量に占める割合は36~37%程度であり,家庭と合わせると両者で全CO2排出量の約 半分を占めている.残りのCO2排出量は,運輸,業務(商業,サービス,事業所など)で全CO2排出量の約20%ずつを 占めており,残りはエネルギー変換施設と工業プロセス(主として化学工業,鉄鋼は含まない)である.
以上の数値を見れば瞭然であるが,このキャンペーンの主な目的は,個人がアクションプランを実行して実質的に総 CO2 排出量の削減をはかるものではなく,個々人にエネルギーと資源の節約の意識を持たせることが大きな狙いと思わ れる.CO2 排出量の規制は,温暖化問題と一体となって議論されることが多いが,実質的には化石燃料起源のエネルギ ー問題であろう.せっかく,一般向けに大がかりなキャンペーンを行うのであれば,CO2 排出=温暖化の図式だけでは なく,その背景にあるエネルギー事情(あるいはそれに関わる食料事情)に関する統計をわかりやすくHPで解説するこ とをしてもよいのではないかと感じた.

後記: CO2 排出とエネルギー問題,地球温暖化を絡めた中高生向けではあるが,わかりやすい丁寧な啓蒙的HP を見 つけたので参考までに記載する2).電機・電子5団体もこのキャンペーンに参加している3).このうち,譖日本冷凍空調 工業会は,特にエアコンの使用方法や購入についてHP 4)でPR している.
 1)例えば,中央環境審議会地球環境部会(第55 回)資料
 2)http://rikanet2.jst.go.jp/contents/cp0220a/contents/index.html
 3)http://www.jema-net.or.jp/Japanese/denki/2006/de-0609/p22-25.pdf
 4)http://www.jraia.or.jp/frameset_p_airconh.html

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